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グラデーションの境界線  作者: 青峰 叶向
第一章【入部届】
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【5】悪夢

 家に帰って夕飯を食べてお風呂に入って、自室に戻る。


 ばたりと、ベッドにそのまま倒れ込んでぼーっとしていたら、

 いつの間にか彩希は、深い眠りに落ちた。



 ──夢を、見ている。

 小さくって、まだ色が見えていた頃の、私が居る。

 隣には、その頃よく遊んだり話したり、仲良くしていた男の子がいて、二人とも楽しそうに笑っている。


 もっともその男の子の顔は、私が昔の事で覚えていないからか、はっきりと確認できないけれど。


 すると二人は、ダメだと言われていたのに部屋を飛び出して、駆け出した。

 親から、周りの大人からの言いつけを破る。

 七歳にも満たない二人には、その小さな禁忌を犯した事に、ドキドキしながら、手を繋いで、一緒に。

 その小さい足で、どこまでも駆け続ける。


 それを今の私は遠目から見ている。

 ──嗚呼、私って、昔はあんな顔をしていたんだ。

 満開の笑顔。今の色の無い景色からも分かる。

 きっと、花のような、桜のような笑顔って、こういう事を言うんだろうな。

 こんな思い出があったなんて、すっかり忘れていた。

 

 そんな風に微笑ましくも、儚げな表情を浮かべながら二人を見ている彩希。


 すると突然、男の子がつまづいて転んでしまった。

 幼い彩希は、立ち止まって男の子に手を差し伸べる。

 男の子はその手をとって立ち上がろうと── 、


 幼い彩希と男の子の手が触れた瞬間、彩希の足元が崩れ落ちた。

 驚いて、周りを見る。

 既に世界はパリンと、硝子のように割れて、無数の破片になって、砕け散って崩れ去って。

 そのまま、彩希は重力に任せて落ちていく。

 どこまでもどこまでも、真っ黒な底無しの世界に。


 ──そこで、目が覚めた。

 特に驚きは無い、夢の中で夢だと自覚していたから。


 体を起こし、しばらく呆然とする。

 悪夢、と言うのだろうか……そもそも、久しぶりに夢を見た気がする。覚えていないだけなのだろうか。

 にしても、起きた今でもこんなに鮮明に、はっきりと覚えているとは、そっちの方に驚きだ。


 ふと、窓の方を見ると既に日が差し込んでいた。

 スマホを確認して時刻を確認してみると、丁度六時を少し過ぎたあたり。学校にはまだ余裕があるが……


 特にすることも無いし、悪夢ですっかり目は覚めてしまったし。ゆっくり準備を始めてしまおう。

 ベッドから下りて、彩希は二日目の朝を、迎えたのだった。

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