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グラデーションの境界線  作者: 青峰 叶向
第一章【入部届】
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【4】入部届

 軽く自己紹介を終えれば、後は適当に活動内容などの説明を挟みながら、和気あいあいと話し込んでいる。

 先輩も明るくて優しいし、まさにアットホームな雰囲気で。

 彩希からしても、その方が気楽で良かった。ピリピリした空気の中に放り込まれるなんて御免だ。

 でも、久しぶりだからか、少しだけ疲れてしまったかもしれない。


「すみません、ちょっとお手洗いに行ってきますね」


 彩希はみんなにそう断って、一旦部室から出る。

 トイレには行かない。ただの理由付けだから。

 少し歩いて階段の踊り場に来て、壁に寄りかかる。

 徐に、スカートのポケットからタブレットを取り出し、一粒飲み込む。そしてゆっくりと、息を吐いた。

 疲れた……でも、


 ──嫌な疲れじゃないかも、と。なんだかそんな風に思えて。


「あんまり長く戻らないと、心配されちゃう……よね」


 短い休憩を堪能した後、部室の前に戻ってくるとそこにはまた知らない男子の姿。

 彩希の気配に気付いて目が合った、しかしその男子はすぐに視線を戻すと部室の中へと入っていく。

 それに続いて彩希も部室へと再び足を踏み入れる。


「おお、怜、来たのか。彩希もおかえり」

「……俺はカメラを取りに来ただけです。すぐに帰るので、じゃあ」


 怜、と史哉から呼ばれたその男子は恐らく部員だ。と言うことは先輩なのだろう。

 彼の態度のなんとまあ無愛想なこと。

 無造作にされた黒髪に赤い目、整っているのにその表情は真顔そのもので。

 怜は宣言通り、スタスタとカメラの前まで歩きそれを手に取ると、即座に出ていってしまった。


 彩希も雫も思わずぽかん、としてしまった。

 すると史哉が先程の彼に代わって謝りながら、


「さっきの文月 怜って言うんだけど、二年生な。あいつも部員なんだ。つっても、ほとんど幽霊みたいな……一人で気ままにやってるだけなんだけどな」


 ……なるほど、納得がいった。

 にしても、なかなか個性的なメンバーが揃っている部活だ。

 それとも、他の所もこんな感じなのだろうか?


 そんなちょっとしたイベントを挟みながら、終わりの時間がきた。


「……わ、もうこんな時間!早いねー……帰らないと。そうそう、二人ともどうする?ここ、入ってくれる!?」

 キラキラした目で、私と雫を交互に見てくる。圧がすごい。

 もう若干、なれてしまったけれど。


「えっと……私は、まだ少し考えたいなって」

「私……は、その……は、入りたいです……!」


 それぞれ答えを出し、口にする。

 私の答えを聞くなり雪はガックリ、と肩を大袈裟に落としながらも、雫の答えを聞くと、満面の笑みを咲かせて。

 

「ほんとに!ありがとー!!じゃあじゃあ、この入部届けに、名前と部活動名を書いて、先生に提出してね!」


 そう言って一枚の紙を雫に手渡す。それを受け取って雫は鞄の中にしまった。

 ついでに、と、何のついでか分からないが私にもそれを渡してきた。

 断るのも面倒だしそのまま受け取っておいたが。


 そうして、二人して部室を後にした。

 雫ちゃんの家を聞いたら、私の家と意外と近かったらしい、途中で別れてしまうけれど。

 なのでそこまでは一緒に、という事になった。

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