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グラデーションの境界線  作者: 青峰 叶向
第一章【入部届】
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【2】生物部へようこそ


 雫に誘われて、部活動見学に行く事にした彩希。

 中学の時も何にも入らなかったし、見学さえしていなかった。

 それは今回も例外ではなく……しかし、誘われては仕方ない。無理やり気持ちを切り替えよう。

 そう、逆に考えれば、行ったことが無いのだから一定の興味は沸くはず……だ。多分。

 まぁそもそも、どっちでも良かったから、行くつもりは無かっただけなのだが。


「そう言えば、雫ちゃん、何部が気になってるの?」

「生物部、です。私の勝手なイメージなんですけど、男子の方が多そうだなぁって。なのでちょっと一人では勇気が……」

「なるほどね、それは確かにそうかも。と言うか少し意外……てっきり吹奏楽部とかなのかと」


 その理由に納得しつつ、そのまま疑問をポロッと漏らす。

 雫は軽く苦笑しながら── 、


「好き……なんです。動物とか……植物とか。特別詳しいとかじゃ、無いんですけど……」


 照れくさそうな、嬉しそうな、そんな表情で話してくれた。



 人が好きな物や人について話すときに見せる表情は、彩希にとっては憧れのものである。

 ゲームだって、読書だって、勉強だって。他にも沢山、今まで色々やってきていた、見つけようとした。

 それでも、彩希にとってのそれは見つからなくて。

 あの表情はあの顔は、大切な何かを想っていないと出来ないのだ。


 色も、感情も薄く、失ってしまった今の彩希には、分からない。


 そんな事を無自覚に自覚しながら、彩希は素直に、その語りに答える。


「……そうなんだ、いいと思うな。別に詳しくなくても、好きなんだからさ。大事にするべきだよ」


 雫は「……はい!」と、ただただ、満面の笑みで頷いた。



 そんなこんなで生物部の部室へ到着した。

 雫は笑顔とは一変して緊張な面持ち。

 初対面は苦手なタイプ……なのだろう。朝、彩希に話しかけた時も同じ顔をしていた。

 コンコン、と部室の扉を叩く。すると出てきたのは── 、


「はーい……わ、いらっしゃい!ねえねえ史哉先輩、お客さん来たよ、可愛い女の子二人!」

「……雪、怖がっちゃってるだろ、もう少し静かに」

「だってー!まさか初日に来てくれるなんて思って無かったんだもん。それも二人!」


 とても元気のある雪、と呼ばれた女子生徒……明るい茶色の髪をポニーテールにして纏めている。黄色の瞳をしたその先輩。

 なんだろう、物凄く期待の眼差しを感じる。

 そして史哉先輩、先程と雪に大きな声で呼ばれ、顔を出してきた男子生徒……同じく明るめの髪色をした、少しはねっ毛で、群青色の瞳でこちらを見ている。


「驚かせてごめんな。えーと……見学だよな?」

「は、はいっ!見学に来ました……!大丈夫でしたか……?」

「もちろん、さあ入って入って!生物部へようこそ!」


 雪と言う少女に背中を押されて、半ば強引に、二人は部室の中へと入った。


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