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グラデーションの境界線  作者: 青峰 叶向
第一章【入部届】
2/6

【1】灰色の景色

 初めて歩く通学路。

 アスファルトの色、道端のふとした隙間に咲いているたんぽぽ、散歩をしている犬とその飼い主さんの服の色。


 一体何色なんだろう。

 その全てが、私にとっては灰色で、ただ少しの濃淡がついているだけで。

 きっと綺麗なんだろうな、でも期待よりはそんな事無いのかな。

 もう何十回、何百回と思ったそれを無意識に心で呟いた。


 諦めたと言っても、やはり願ってしまう。期待してしまう。そんな事は絶対に訪れないと、分かっているのに。


 ──またもう一度、色の着いた景色がみたいと。色を取り戻したいと。

 誰か、誰でもいいから、一度だけでもいい、この無機質な苦しみから、救って欲しいと。



 学校の門が視界に入った、到着したようだ。

門をくぐって、学校の敷地内へと足を踏み入れる。

 この学校も、ただ趣味も楽しみもなく膨大に有り余した時間を勉強に費やして、入る事が出来た学校。

 特に入りたいとか、此処の部活に興味があってとか、そう言うのは特に無かった。


 上履きに履き替えると、先に自教室へ向かうようだ。

 張り出されている紙から自分の所属するクラスを探し、教室へと向かう。

 教室へ着き、自分の席を確認して座ると時計を見た。

まだ入学式には時間がある……まぁ、ぼーっとしていれば過ぎ去るだろう。そう思っていた時だった。


「あ、あのっ……!」


 まさに女の子らしく、可愛らしい声で私に話しかけて来た子が目の前に。


 短く、焦げ茶色に深緑の目をしたその少女は、少し緊張した面持ちで彩希をじっとみつめている。


「えっと……私、かな?どうしたの?」

「そ、その……私、隣の席の雫です!挨拶して置きたかったから……えっと、よかったら、体育館まで一緒に行きませんか?」


 雫は彩希にそう誘い出ると、答えを待っている。

 特に断る理由も無いし、隣ともあれば仲良くした方が身のためだろう。

 それに、入学早々一人きりになる訳にはいかない。


「……うん、勿論いいよ。私は、彩希。よろしくね、雫ちゃん」

 彩希は薄く微笑みを浮かべて、こくりと頷いた。

 その答えを聞いた雫は安堵と嬉しさを表情に全開にだした、可愛らしい笑顔で。

「…はいっ!よろしくお願いします、彩希ちゃん……!」

と、返して、二人で体育館に向かったのだった。


 入学式は粛々と終わり、ただ疲労だけが残る。

 教室に戻ると少しの休憩を挟んだ後、軽く学校についての説明や、自己紹介があって……それも無事に終えると早めの放課後。

 さっさと帰ってしまおうと荷物を纏めていると


「彩希ちゃん、この後の部活動体験とかって、見たりする予定、ありますか?」


 既に大分打ち解けた雫が、横から話しかけて来た。

 おっとりとした性格の彼女は、一緒に居て何だか心地がいい。

 この学校では入学式の日の放課後から、部活動勧誘が始まるそうだ。

 私は特に、入るつもりも無かったのだが……雫ちゃんのこの視線、それにこの言葉、誘ってくれているのと同義である。


「えっと、私は特に行きたい所とかは無いから……」

 と、やんわりと断ろうとすると雫が挟んできて、

「私、気になっている所があって……で、でも一人は少し心細かったので……彩希ちゃんが来てくれたら、とっても助かるし嬉しいなって」


 懇願してくる雫は、彩希からみてもとても可愛い。自分が男子だったら惚れていそうな程。


 ──ま、家に帰ってもする事は無いし。少し位はいいか。

 と、その可愛さに負けた彩希は、雫に着いていく事にしたのだった。


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