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天地の境で働いてみる  作者: 吉川 由羅
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初仕事3

肩を抱かれながら、私は店の中に入った。


ソファー席に座らされる。正直、居心地が悪い。


「取引が終わるまで、大人しくしていろ。」


ボスは私とイムルを交互に睨み付け、奥の席に歩いていった。


「あ、あのさ・・・。」


何か言おうと思った。しかしマスターに監視されていることに気づき、口を閉じた。


すると、イムルがおもむろに体を寄せてきた。


そして、


「落ち着くのん。あいつら、見事にかかったのん。」


驚いてイムルを見る。しかし、イムルは表情一つ変えず、俯いている。


「アヤネも俯くのん。マスターに感づかれる」


慌てて下を向く。


「いいのん。この声はアヤネにしか聞こえてないのん。だから答えずに、一方的に聞くのん。」


私は俯いたまま、心の中で頷いた。


「あいつらは取引を終えた後、私たちをホテルに連れ込むつもりだのん。」


「!?」


「恐らく、そこが戦場になるのん。僕はボスに気に入られているから、同じ部屋。

アヤネは、多分それ以外とだのん。」


「・・・」


「アヤネは3人と対戦することになるが、心配は要らないのん。僕がボスを倒して、すぐ行くから。

あ、そういえば倒し方の説明がまだだったのん。」


「?」


「そのワンピースの力によって、アヤネの戦闘力は大幅にアップしているのん。

その力を信じて、パンチ、キックだのん!わかったのん?」


そう言い終わると、イムルは立ち上がり、マスターのもとへ歩いていった。


「ねえ、マスター。なんか飲み物ちょうだい。」


「金は?」


「ボスの『おきに』なのよ。サービスして。」


「・・・、はああ。」


大きく溜息をつくと、マスターは奥に歩いていった。


「よっしゃ!ラッキー」


イムルはのんきにガッツポーズ。


ところで私、イムルのように魔法使えないんだ。


するとそこへ、男たちが帰ってきた。


「ほら。行くぞ。」


「えーっ、まだ飲み物飲んでないのにい。」


「ぐずぐずするんじゃない。お遊びの時間が短くなる。」


「ねえ、君も早く行くよ。」


「…ホテル、ですか。」


「そうだよ。ほら早く」


また肩を抱かれ、私たちはカフェを後にした。



車で30分。着いたのは、都心部にある高級ホテルだった。


さすがは密売人。さぞ儲けているのだろう。


しかし、イムルが言うにここは今日、殺人の現場になるのだ。


惜しい。そう思わずにはいられなかった。


「行くぞ。」


ボスが、私を呼ぶ。私は身をかがめて、車を降りた。


ふと、イムルを見る。イムルは私を見つめ返し、ぱちっと目配せをした。


そしてエレベーターに乗る。私の部屋は、3階だ。


部屋に入るとすぐに、部下の一人が私に覆いかぶさってきた。


「あっ」


「ふふ、可愛い声出しちゃって。」


「もっと、俺らと遊ぼうよ。」


身動きが取れなくなる。これはまずい。


「や、やめてください・・・。」


何とかして男たちの腕を振り払うと、私は部屋の奥に走った。


しかし不運にも、そこにはベッドが待ち構えていた。


「姉ちゃん、以外にも積極的なんだねえ。」


男たちが追ってくる。


絶体絶命だ。


その時、


『一人目の右腕を掴んで捻るのん!そのあと、もう一人の顔を蹴り上げるのん!』


頭の中から声が聞こえた。


いや、イムルが脳に直接指令している?


そう考えた直後、私の体は勝手に動き出していた。


最初の一人の腕を掴み、捻る。続けて来たもう一人にはとっておきの蹴りをお見舞いしてやった。


「わあっ」


「ぐうう・・・」


叫んで、次々に倒れる。


あと一人。


と、


「大人しくしようか。」


振り向くと目の前にその一人が立っていた。


手に、拳銃を握りしめている。


「手を挙げろ。」


私は素直に従った。殺されては、ひとたまりもない。


「俺の仲間をよくもめちゃくちゃにしてくれたな。責任を取ってもらおう。」


そう言って、男は私をベッドに押し倒す。


私のこめかみには、拳銃。


もうダメだ。


その時だった。


「ぎゃああああああっっ!!」


耳を貫くような悲鳴が、聞こえた。


「なんだ?」


男がひるむ。そのすきに、私はベッドから脱出した。


「あ、おい!」


男が私を撃とうと拳銃を構えた。


しかし、


「な、なんだ!?体が、動かねえ!」


男は痙攣のような動きをみせた。


まさか。


すると部屋のドアが開き・・・


「アヤネ!」


血まみれのイムルが、姿を現した。




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