退化
それから数か月後。
イムルの調子はすっかり良くなり、澄香も元気を取り戻した。
私はそんな二人を集めて、作戦会議を開いた。
「私は、お母さんを殺さない。しっかりと罪を償ってもらおうと思うの。だから、これからお母さんを説得しに行ってくる。…手伝って、くれないかな?」
「ええ、もちろんよ。アヤネは、命の恩人だし。」
「僕も賛成のん。心を取り戻してくれて、本当に良かったのん。」
「ありがとう。」
私は二人を見つめて、笑う。
「でも…」
「どうかしたのん?」
「お母さんに会うの、一年ぶりくらいだから。どうやって話しかけようかな、って。」
「あっ、それにその姿じゃまずいのん。」
「どういう事?」
「澄香は知らなくて当然のん。アヤネは魔法でこの姿に変えられているだけで、本当は11歳、今年で12歳のん。」
「嘘!」
澄香は大声を上げる。本当に初耳らしい。
「う、ううん、本当だよ。」
「マジか…」
「でも、これってどうやって解くの?」
「この魔法は特殊で、かけた本人しか解くことができないんだのん。」
「つまり…スーラ様。」
「そういう事のん。」
「うわあああっ」
私はうめいてその場に座り込んだ。
「そんなに嫌のんか?」
「イムルわかってるくせに。」
「ふふっ、私と一緒ね。」
「私が、どうかしたか。」
肩をびくりとさせて、私たちが振り返ると…そこには腕を組んだスーラ。
「話は全て聞かせてもらった。」
「いや、別にそういう事じゃ」
「分かっておる。こうすればいいのだな。」
その瞬間、いつかのように体が熱くなって…
ポンッ
「こ、これは…!」
懐かしい感覚だった。私はしっかり、11歳の姿に戻っていた。
「わーっ、ほんとに小学生だ!本当だよ、スーラ!」
「分かっておる。あと、呼び捨てをするな。」
「よかったのん…」
三人はそれぞれの反応を見せつつも、私を取り囲んで笑いあっている。
「…ありがとう、スーラ様。でも、どうして?」
「これは、非常に危険な行為だ。お前が死んでもらっては困る。そのためには、協力は惜しまぬつもりだ。」
「本当に…感謝します。」
スーラらしい自分中心の理由ではあったが、協力してくれるならそれで構わない。
「では、行ってきます。」
私は最高の笑みで、スーラを見た。