瀬戸際
あの日から一週間。スーラの読み通り、私の体調はすっかり良くなった。
トントン。
「はあい」
「アヤネ!」
訪ねてきたのは、イムルだった。
「大丈夫のん?」
「うん、もう平気。ご心配どうも。」
「それは良かったのん。あ、これ今日のお昼だのん。」
そう言って、イムルは小さな土鍋を差し出してきた。
「お粥?」
「そうのん。でも普通のとは違って、いろんな薬草と一緒に炊いたから、病み上がりに食べると
完全治癒間違い無しのん!」
「ふうん、ありがとう。」
イムルが部屋を出ていくのを見届けた後、私は大きく息をついた。
さっきの私、変じゃなかっただろうか。
意地でも、スーラを脳内から消していたけれども。
「・・・怖かったああ。」
私は布団で体をすっぽりと覆い隠した。
イムルは、心が読める。感づかれてなければいいけど。
私は一週間前を思い出す。
スーラは、私にキスをした。
私は、ベッドの上で足をばたつかせた。
「失礼します」
「入れ。」
スーラが言うと、扉が開き、イムルが入って来た。
「何用だ。」
「アヤネの体調が回復いたしましたことを、報告に参りました。お粥を食べさせましたので、
明日には完全に治るかと。」
「そうか。それは良かった。」
「・・・、スーラ様。」
「なんだ?」
「アヤネと、何かあったのですか?」
「!!」
スーラの顔が、少し険しくなった。
「な、なぜそう思うのだ。」
「アヤネです。頭の中で、必死にあなたを消そうとしていました。」
「ほ、ほう。どうしたのだろうか。」
「スーラ様は、心当たりは無いのですか。」
「ああ。」
「・・・わかりました。では。」
「ご苦労だった。」
イムルはくるりと回り、戻っていった。
扉を閉めた後、イムルは溜息混じりに呟いた。
「スーラ様、いったい何を隠しているのですか・・・。」
次の日。
「先日はご迷惑をおかけしました。」
私はスーラの部屋で、謝罪をしていた。
「気にするな。お前がいなくても迷惑はしていない。」
「・・・それって、しれっと悪口ですよね。」
「ははは、はは。」
「ごまかさないで下さい。」
少しふてくされつつ、私はスーラを観察していた。
いつもより、対応がぎこちない。
「・・・」
イムルの視線を感じる。
やはり、感づかれているのか?
「アヤネ。」
「ひっ。なんですか」
「?何をそんなに驚いているのん?まじないを教えようとしただけのん。」
「あ、え、いや、大丈夫です。それは、とっても光栄ですね。」
「そうのん。・・・じゃ、行くのん。」
私はイムルに連れられ、開けっ放しの扉へ向かった。
部屋からでる時、私はちらりとスーラの方を見た。
スーラはそっぽを向いて、扉を閉めた。




