天秤
「はい、お終い。」
そう言って私は絵本を閉じた。
「ええ〜!もう一回読んで〜!!」
私の胡座の上でジタバタジタバタと少女は駄々を捏ねた。
どうしてこんな全世界の子供を戒める為の絵本がここまで好きなのだろうか。
そう思い小さい溜息を吐くと、未だ胡座の上で暴れる少女を退かし、痺れかけている足を叩き起こしながらよっこらせと立ち上がっる。
ポンポンとスボンの裾に付いた草を手ではたき落とし、持っていた絵本を少女に返した。
「また明日読んでやるから今日はもうそろそろ寝ようか。」
「や!まだ明るいもん!遊ぶもん!」
そう言って少女は私の手を握った。
「我儘はいけないな、人口太陽で昼夜問わず明るいとはいえ...ほら、あの壁の向こうはもう暗いんだ。太陽を克服する為にも、今日はもう寝るんだ。いいね?」
「むぅー。はぁーい。」
私の言葉を聞いた少女は少しムスッとしたが観念したようで、渋々といった感じで今日の睡眠を取ることを受け入れた。
「あ!じゃあ、寝るまで一緒にいて?ね!?」
もちろん。
「それくらいならお安い御用さ。」
「やたっ!えへへ!」
今日はいつにも増して彼女の機嫌が良い。これは一、二時間くらい奮闘しないと寝付いてくれないかもしれない。
...まぁそれもいつものことか。
彼女はリルル・ルリ・ヴァンピール。魔族の国、魔皇国皇帝の側近である吸血鬼族ヴァンピール始祖家の長女。年は百四十二歳。
とある事情によりヴァンピール始祖家は彼女をここに預けている。
何やら魔皇国で裏工作を働いているらしく、万が一、億が一証拠を掴まれたとしても、人質に取られないようにする為だとか。
何だかんだ、未だに大戦の名残は消えることを知らない。
およそ八千年前のガードナー大戦時代、二百年以上続いた大戦は全ての国が一斉に白旗を上げることで終戦した。
そこから何千年もの時を経てそれぞれの国の仲は少しずつ良くなり、今や多種族が一国で普通に生活できるまでになった。
しかし一度起こった事実を、事象を、無かった事にすることはできないのだ。
できることはそれを教訓に今日をどう生きるかを考えることだけ。
私の名前はエルリオ・ガードナー。ただの元背翼族。
ガードナー大戦を終わらせた張本人であり、
「エルリオの天秤」の管理者。
今日も、そしてその先も、
きっと私は死ぬ為にこの世界を彷徨うのだろう。
百四十二歳...ロリBB.....(ヒぃッ
なるべく定期であげていきたいと考えております。
今後ともよろしくお願いします。
感想、高評価等、どしどしお待ちしております。