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光闇の十字路 〜prince of princess〜  作者: 松代則夫
第1章 帝王と天使の躍動 動きだす6大公爵家。
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第2話 空中に浮かぶスカイシップ



 ☆



 ー世間は目撃する。



 ドーレット伯爵が領民ぐるみで非合法魔法薬を製造していた事を。




 ー世間は驚愕する。




 一般には秘匿されていた自分達も知らない農村が大規模攻撃魔法で破壊され伯爵本人は護衛ごと殺戮されていることを。




 だがしかし、 この事件で1番の衝撃を受けたのはドーレット伯爵を傘下にしていたローズレッド家だった。



 1週間後…

 

 ローズレッド家の屋敷の書斎でローズレッド家現当主セルグ・ゼル・ローズレッドは頭を悩ませた。





 ローズレッド家はある意味1番の被害者である。傘下の貴族の領地再建&領主死亡により代理人を立て今では「元」がつくドーレット領を復興する資金を派閥の元締めとして捻出しなければならず後処理に追われている。

 その他にも「非合法」な魔法薬製造を何故見抜けなかったのか?などといった申し立て書が他派閥の貴族家から山のように届きその対処もしなければならないからだ。

 もちろん悪い噂がたつのは言うまでもない。


 「……どう攻撃すればこれほど精密に破壊出来るのだ。」



 この村を襲った襲撃者について思案する。



 セルグが不思議に思ったのは調査に行かせた調査隊からの報告書だった。




 そこには魔法薬の素材を栽培していた田畑、その素材を加工していた住居兼加工場。


そして


 保管用の納屋が正確に撃ち抜かれそこから炎が立ち昇っていたという報告書。

 街道やその他設備は無事、そして何故か村にあった溜池は不純物が何ひとつない透明度の高い純水と化していた。




 「…浄化されているという事は光属性か?いや、それにしたって威力が高過ぎる。こうも広範囲かつ正確に撃ち抜くには不可解過ぎる。ましてやウェイター家の『聖女』でもあるまいし……」



 考えれば考えるほど謎が増える。

 確かに『聖女』ならば浄化だけならば可能だ。しかしそれ以上の事が発生している。


 「ドーレット伯爵は真っ二つに両断されていて護衛は上下が分かれて切断されていると、しかもその切断面が腐食していた……これは襲撃者が2人いるな。ドーレット伯爵本人は闇属性の使い手によってやられたか。……それも護衛も伯爵本人も何の抵抗も出来ずに。」



 セルグは報告書を握り潰した。



 「情けない!!俺の配下が何の抵抗も出来ずにやられるだと⁉︎相手の技量を加味しても情けないぞ!!」



 セルグは怒りを露わにする。


 彼の派閥では戦力がモノを言う。だがしかし、第3者の攻撃では何の抵抗も出来ずにやられたとらしい。彼の派閥ではそんな事は許されない。



 「はっはっはっ面白い。他の公爵家当主以外でここまで出来るとは出会いたいものだ。」



 彼は笑った。





 ☆



 作戦後…


 カイリーとフェノンは空に浮かんだ飛行船に帰還した。





 この飛行船は半永久式魔力生成動力炉搭載型多目的輸送船「カイロン」ブラッド家の技術を応用しネルセンが開発した大型飛行クルーザー、魔力生成炉は半永久炉の為、航続距離はほぼ無限、しかし実際には定期的な整備が必要な為大体1000キロ程、それでもこの世界では反則と言っていい性能である。そもそも飛行物体がある時点で反則なのだ。



 「カイロン」の中は操縦室、カイリーの次元属性の魔法で作った機関の魔力生成炉から魔力わ供給して使用する次元倉庫、1LKのリビングキッチン、ダブルベットの寝室&シングルベットの寝室、バスタブ付きの風呂まで完備されている。



 現代の日本と似通っているが昔この世界には転生者がいたという。その者が元いた生活環境を記した書物を残した。しかしこの世界の技術で再現するには高価な魔道具や魔石が必要な為、貴族ならともかく庶民には敷居が高過ぎた為一般にはあまり浸透していない。しかしブラッド家の技術があればいとも容易く低コストで再現出来るのだ。



 カイリーとフェノンが甲板に降り立つ。



 「おー初の初陣はどうだった?装備も問題なく機能したようだが……」



 「普通に作戦通り動いて普通に作戦通り成功したよ。」


 むさ苦しい汗かいたおっさんが近づいてくる。


 ちょ、やめて臭いはないけど純粋にうぜぇから、あと絵的にも映えないし。





 「貴方たちは相変わらず仲が良いですね。」



 翼を収納したフェノンがこちらに歩いてくる。フェノンの翼は浮遊魔法を補助するように魔法回路を組んでいる。別に俺のコートのようにそんなことしなくてもいいのだがミズーリさんが翼あったほうが可愛いのでは?という声にネルセンが反応し採用する形になった。ちなみにフェノンは猛反対したが全てスルーされた。そしてミズーリさんに無理矢理着せられ程なくして力を無くし諦めた表情をしたフェノンが俺に助けを求めて泣きついたときはそれはもうめんどくさかった。

 ミズーリさんはいつも以上にニヤニヤするしネルセンはブラッド家は安泰だなぁ。と妙に感慨深い表情を浮かべるしで大変だった。




 「俺達は物心ついたときから一緒だからな」



 「あらあら、皆さんお揃いで」



 そこにミズーリさんがやってくる。



 「とりあえず、初陣は成功しましたよミズーリさん、貴方のデザインしたこの魔法戦闘服思った以上に映えましたよ?これ結構インパクト残るんじゃないですかね。」



 そう言ってカイリーはコートを広げた。



 「ネルセンさんはデザイン性皆無ですからね。それにフェノンの天使ちゃんも可愛く私の自信作ですよ。」



 俺は実用性主義なんだよ。とはネルセンの言葉である。



 「それにしてもこの飛行船豪華ですねぇ〜私がいた王城より贅沢な暮らしが待っているとは想像もしてませんでしたよ。」


 出来たらもう少し豪華にしたいところです。…とか言っちゃってる。



 ……俺達別にそのためにこんなもの作ったわけじゃないんだけどな……




 「ミズーリが完成間近の飛行船の中身を突然半分ぶっ壊して改造し出して『どうせなら最っっ高うぅ〜の生活環境を整えましょう〜♪』とか言って馬鹿みたいにテコ入れし出した時は正気を疑ったけどな、おかげで完成が3ヶ月遅れになったのは忘れたとは言わせねーからな?」



 ネルセンが釘を刺す。



 「ええ、わかっていますとも本来の目的を忘れたわけではありません。ただ私はここまで自分のやりたい事を『ブラッドリー・シルバーズ』に入るまでは自由に出来ませんでした。その欲求が満たされるこの環境は私にとっては離せないものなのですよ。」


 悪びれもなく言ってのけたミズーリ。



 「ああ、わかってる。それは閉塞的な空間で過ごしてきた弊害だろう。だけどあまりやり過ぎるなよ?」



 「もちろん。」



 「さあて、そろそろ次の作戦に動き出すぜ」



 ☆





 ここはウェイター公爵領内にある魔法教会。



 この教会の礼拝堂では今1人の男が生贄にされていた。



 「なんでだ?なんで俺が生贄なんだよー

俺は悪いことなんてしていない。ただ魔法を使っただけで?普通なら軽い罰だけのはずだ!!!何故なんだ!!!」



 「貴様は我らが神が禁忌とした魔法を使用しようとした。よってその汚れた体をこの酒瓶に入った聖水によってその汚れた身体をこの世から浄化し解き放つ必要があるのだ!!!」



 修道服を着た男は告げる。



 その酒瓶に入ったものの正体は「聖水」と見せかけてのただの毒である。


 教会は軽い罰で済むものを重罰化して男を殺し教会の地下で男の死体を使った人体実験を行おうとしていたのだ。



 「ふ、黙るがいい、そしてもう楽になるがいい!!!」



 男は毒の入った水を飲まされそのまま光を失った。


 「よし、いい素体が手に入った。男の魔力は抜き死体は地下に回せ!!」



 「御意!!」



 神父はやけに今日は外が明るいと思いつつ外を警戒して窓を開けようとした。

 その瞬間辺りが発光し()()()()()()()()()()()



 「な、なんだ⁉︎なにが起こった!!」


 光が弱まり司祭はあたりを見渡す。



 外壁は入り口付近だけが辛うじて残っている状態だった。

 

 扉が開きそこから漆黒のローブを纏い仮面をつけた人が入ってきた。



 「…やはり、生贄ではなく人体実験をしていいたか。かわいそうに……司祭がやることではないな自分の神さんに謝っとけ。」



 「く、この男は禁忌を侵した!!そんな男の体のことなどどうでもいいのだ!!!」



 司祭は一瞬自分のやっている事に後ろめたさを感じて引いてしまうが思い直して自分のやっていることを正当化する。


 

 「ああ、別にお前の言い訳なんて聞きたい訳じゃないんだ。そしてこれは最終宣告だ!!」



 「何だっ⁉︎何を言っている?」



 訝しげに神父が訪ねる。



 「()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()




 「光の槍(シャイルスピア)



 「ぐふっ」 「がはぁ」


 その直後修道服を着た司祭達は飛来した数本の眩い光の槍によって次々に串刺しにされ順番に倒れていった。



 「終わったな!!俺の出番がねぇじゃねえかフェノン。」



 「相手が弱すぎるからでしょうに。」



 「まあ、それもあるが……」



 「でもなんで生贄の男は助けなかったので?」



 「助けてもあいつは公爵から追われるだろうな、とても逃げれるとは思えない。それに教会とウェイター家が野放しにするのは考えられない。」



 「うちで保護は?」



「ない、それをしてしまえばキリがなくなる。」


 「でしょうね。」



 「これで教会はこの事が露見すれば俺達が学園に入ることを表向きに反対するものはいなくなる。」


 教会は魔法は選ばれた者が使うべきだと教えてるからな。



 「やっとここまでこれましたね。ふふふ、これでカイリーとの楽しい学園生活が送れると思うと色々とやりたい事が増えてきそうです。」



 夜は、ね?とかみたいなノリだな!!正直夜のフェノンはグイグイくるから俺はそんなお前は嫌いじゃないぞ。



 フェノンは本当に嬉しそうに感情を弾ませる。



 「ま、まあ⁉︎俺も楽しみだよ。」



 フェノンは頬を赤くして照れるようにカイリーに抱きつく。


 「ふっ、そんなに恥ずかしがらなくてもいいのですよ?そんな仲でもないですのに。」



 や、やめろ そ、その無駄にでかい豊満な胸を押し付けようとするな!!!意識跳んでしまうわ!!




 「と、とと、とにかく帰るぞ。」



 「釣れないですねー。」



 動揺したカイリーはそのまま魔力を循環させる。



 2人はそう言って空に浮かびその場を飛び去った。




 その様子を遠くからこの領地を守る聖女が見ていることを知らずに。

























次回は明日の12時更新です。

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