第4話 ブラッド家の過去 〜陰謀の歴史〜
フェノン・ライトシールズは意識が覚醒するのを感じると困惑した。
ーー自分は暗黒街で死んだのでは?
しかし目を開けるとそこは暗黒街ではなく知らない天井だった。
上半身を起こすと体が若干痛いが暗黒街で負った傷跡が完璧に消失しており体内を流れる魔力は気を失う前に比べ大幅に増加しているような感覚を覚えた。それに自分の中で新たな力に芽生えたような気がした。
ここはどうやらシングルベッドと机とデスクチェアが置いてあるだけの部屋のようだった。
「気づいたようで何よりだよ。」
少し上から目線で聞こえた言葉に声が聞こえた方向に顔を向けるとそこにはデスクチェアに座った黒髪灰眼の少年が話しかけてきた。
「貴方は誰ですの?それに母様は?それにここは?」
「まずは落ち着くとしようか、まず君の母は医務室の治療カプセルで治療中だ。あと1時間もすれば完治するだろうな。正直バルザートの近くじゃなかったら死んでたな、内臓やらやられてたし。 ちなみに治療カプセルはこの島に住んでる魔法技師のネルセンが作ったやつで世界には広まってないから知らないかもしれないけど致命傷でもどうにかなるシロモノだから。」
そう言いながら少年は続ける。
「俺の名前はカイリー・ブラッドこの浮遊島バルザートの主人だ。 ああそっちからしたら暗黒街の楽園の管理者と言ったほうがわかりやすいかもね。」
そう言ってデスクに置いてあった。カフェオレを「あっつ」とか言いつつ優雅に飲んでいた。
私は言っている名称おそらくは魔法技術に関することが全く理解出来なかった。
ただ安心する情報もありそこは普通に安心した。
「ようこそフェノン・アールスレイン いや、ライトシールズだったか 今君達は追われる立場にいるんだったな。 あ、そうそう君達2人のアールスカードは追跡されていたから探知されないように真っ二つにへし折ったからここまでは辿り着けないから安心していいよ。 まあ、バルザートは普通のアールスカードだと圏外になるから正直意味ないけど」
最後に新しいのは後日こっちで準備しておくと言われた。
フェノンは普通に喋ってくるカイリーに違和感を感じるも自分はもう王族ではないと思い直した。
「一応言っておくと俺にも薄いけど王家の血は流れてるから」
思考を読まれた。何らかの魔法を使ったと思い体弄るが魔力が漏れ出てないことから安易だと思い直す。
自分の体を見渡したところで自分が着替えさせられている。事に気付く。
「…み、みましたのね」
鋭い目付きでカイリーを見る。
「ご、ごごごごめん!!ここネルセンと俺の2人の男だけしかいないからそれしか方法なかったし着替えさせる前の服ボロボロで臭ったし」
「……私は同年代の殿方に見られてしまったのですね。」
そう言ってフリーズしたフェノンだがカイリーの次の言葉で右手が反応する。
「落ち込むことないのにかなりナイスバディな ん ツっ うぅぅー」
バチーンと音がなりフェノンが魔力まで纏ってカイリーの頬を引っぱ叩いた。
「最低っ」
☆
お互いが気不味い雰囲気になったが現実逃避から立ち直ったフェノンが聞いてくる。
「ブラッドってあの『ブラッド』なのです?」
「ああ、その『ブラッド』だ。 よく知っているなー 流石王族というところか、当代の6大公爵家の当主はもう忘れているだろうな。 百年前、王家のロイヤルガードを代々務めていたその『ブラッド』だ。」
天を仰ぐような姿勢で答えたカイリーは続ける。
「俺の先祖が王族から分離してそのままロイヤルガードに抜擢されて代々アールスレイン王国を支えたのが『ブラッド家』だ」
「何故そんな重要な家の末裔がこんなところに………」
フェノンが不思議そうな顔で訪ねてくる。
「ここからは一般に知れ渡ってはいないが『ブラッド家』は魔法工学にも精通していた。
そしてその技術が高い評価をうけていたんだ。それを当時よく思わない貴族達がブラッド家が魔法実験をしている最中にに密偵を潜らせて実験を失敗させた。 それが原因で多数の死傷者がでた。そのためブラッド家が持っていた魔法技術は全て破棄される方向で進み、家は取り潰しになった。 当時の国王は内部工作と分かっていたが王に賛同する者はいなかったらしいな。」
「それなら何故この島が存在しているんですの?」
「それは当時の当主が今まで築きあげてきたものが崩れ去るのを黙って見ているなんて耐えられないだろう?だから秘密裏に人口のこの浮遊島を作って当時持っていた技術の全てをここに隠したのさ。まあ、当時は暗黒街はただの難民キャンプみたいなのがあるだけの殺風景だったらしいけど、上手い具合に発展したあと捨てられた街になってしまったけどお陰でいい隠れ蓑だよ。」
そう説明した途端にアールスカードがコールする。
「俺だ」
『おお、カイリーこっちの女性はもう大丈夫だから合わせて説明するから応接間まで来てくれ!!ああ、その前にそっちのお嬢さんにバルザートでも一緒に見て回って来い。』
「わかった。」
そう言って通話を切る。なんか切る時にネルセンのニヤついた声色が聞こえたような、 気のせいか。
「今言った通りだ。」
「これからよろしくな フェノン」
「まだ、あって間もないのにそこまで信頼するのですね……」
「ああ、まあ、これから協力して欲しいこととかがあるから信頼関係は早いうちに築いたほうがいいからな今それの話を応接間でするから。」
カイリーは立ち上がり扉を開ける。
「少し散歩して外の空気を吸うといいよ。」
「ではそうさせてもらいます。」
2人は立ち上がり、表に向かって歩きだした。
☆
フェノンは目の前の光景に驚愕した。
「……嘘ですよね。」
なんと島が浮いているのだ。
先程カイリーから話を聞いていたがそれでも信じられなかった。
「この島は空気中にある不純物が混ざった魔力を俺達が開発した魔力生成炉でそれを取り除き魔石に貯蓄してそこから取り出した。魔力でこの島全体を空に『固定』している。ほら、横のドッグを見て!」
振り向くとそこには恐らく船を作るであろうドッグと未完成の船が自立型作業ゴーレムによって建造の真っ最中だった。
「その作っている船は島の動力になっている魔力生成炉を小型化して用途を人口的なプロセスで浮遊魔法を発現して動力にするように設計して今は建造中だ。俺が王立の魔法学校に向かうために建造しているモノだな」
ーほら、俺平民だから入学を邪魔してくる貴族から逃げるためだよっと付け加えた。
フェノンはそれさえも信じられなかった。
そもそも魔力はいくら空気に溶け込んでるとはいえ不純物を取り除いた上で魔法を発現できるのは人間の体や知能のある魔物や動物などの生命体の体内でのみでしか純粋な魔力は生成出来ないのは常識だからだ。
そしてその理由が王立の魔法学校に通うためらしい。あの貴族しかいない魔法学校に平民の少年が通うと言っているのだ。普通なら笑い飛ばすだけだが飛行船といいこの少年といいどうやら本気だと思い馬鹿に出来なかった。
「フェノン、君が俺達の仲間になるのであれば君も通うことになる。」
「えっ⁉︎」
自分はもう名ばかりの王族、それ故にもう「アールスレイン」を名乗れないということは自分も平民で入学しろということだろう。
「まあ、その話は後で屋敷でするからとりあえずこの島を紹介するよ」
そう言ってそのあとに鍛錬場、魔法実験場、魔力生成炉管理小屋などを見て回ったがフェノンはこの島の異端すぎる常識に目眩がした。
「じゃあ、屋敷に戻ってこれからのことを話そう。」