コンビニのふたり
その男子、とはそれからも度々コンビニの雑誌コーナーで出会った。
まあ彼の家についてはよく知らないが、おなじ高校に通う生徒ならば、多少ルートが同じになることもあるだろう。
コンビニ店内に入ると軽快な電子音。
雑誌コーナーで立ち読みをする男の横に、私が近づき、男の顔を見ずに週刊少年跳躍を手に取る………『週刊少年日曜日』、も棚にあった。
それもあとでチェックしないといけないなー。
マンガを読む動作。
それは朝登校して、自分の席につき、カバンを机の横のフックに引っ掛けるのと同程度の心境で行われた。
まあそうやって定位置につくのだ。
「今週の見た?」
「ああ―――『槍使い』、かな………いいよ結構、今週の」
「ふむ」
その男子、家足(なんて読むのかわからん、いえあし?)は、当初は言葉少なではあったが、極端に厳しい目をしているわけでもなく、面白い作品を見たときは面白い、という男子だった。
読み終わると確かに今週は面白かった。
「今週のはなかなか………新キャラがかなりキテるわね」
「剣使い の張 文駆くんがな」
「どうやって勝つの、彼―――群具 煮の攻撃弾いていたけど」
「剣に能力があるけれどなぁ、あの青い宝玉がどういう能力なのかだけわかればいい」
「能力………たとえば槍使いのチカラを弾くとか」
「槍だけ?槍限定………」
「たぶんねー。だって他の攻撃は全部受けてたし」
「んんー、まあそうだけどそれだけかなあ」
「ていうかあの二人知り合いじゃね?幼馴染 かな」
「それ!それあるよな先週のアレの意味って、たぶんだけど」
「うん。ていうかひどいよ、あの別れ方爆笑じゃん」
立ち読みのついでに簡単に話すだけの、この時はそういう間柄だった。
私はそれまでの日常に現れた、少しマンガ好きな男子だと、それくらいに思っていた。
いや、そう思うだけでなくもう少し掘り下げれば、私の方が読んでいるという自信はあったかな。
少女マンガまで守備範囲に入れている私に分があるのではと、意味もなく勝者の気分に浸かっていた。
ううむ、こういうところが私だなぁ。
自分のそういうところは好きだし誇りに思ってるし、でもそれと同時にだから私は男子から好かれないんだろうなとも思っていた。
大抵は私が先に離れる。
雑誌コーナーを離れ、菓子パンか紙パックの飲み物と、読んだマンガを買っていくことが多かった。