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出会いか遭遇か 1

 帰り道にコンビニエンスストアに寄った私。

 どうせ買って帰るのに、マンガの立ち読みは欠かさない。


 それは録画したテレビ番組を、リアルタイムでも観たい、という心境に似ている―――のかもしれない。

 毎週欠かせない楽しみだった。

 発売日に、読む。

 平凡な普通科高校に通っている自分の、数少ない特徴だ。


 マンガ好きなこと以外は、取り立てて大きな特徴がない普通の女子高生。

 その一年生です―――もちろん少女マンガも読んでますよ、はい。

 それと男子向けのマンガも、お兄ちゃんの影響でたしなんでいるの。


 私好みの絵柄なら満足して読み始めるのは、当然として。

 中にはとてつもなくクオリティが高い絵、作品もある。

 それで済めばいいのだけれど、それが理想なのだけれど。

 お気に入りの作品ほど、はやく終わってしまうパターンが何度かある。

 絵が綺麗なマンガほど、その落胆は大きい。


 綺麗すぎるのも考え物だ。

 綺麗なものをみるとうっとりするけれど、それが終わってしまうのは、辛い。

 美人は薄命(はくめい)という風潮があるけれど、絵が綺麗なマンガも、どうだろう、長期連載のイメージがない。

 もちろん面白いマンガが一番初めに目につく。

 絵が美麗な作品。

 人気があるらしい、けれど私にとってはあまり………なマンガ。

 気が付けば休載してしまうマンガ。

 次から始まっている新人のマンガ。

 やや絵が下手な、様子がおかしいくらいのマンガのほうが、長く楽しめるのかもしれない。

 今日も新しく始まったマンガを読んでいる。


「あと何話(なんわ)かすれば化けるかもしれないしねぇ」


 呟くと、近くを通りかかった社会人と(おぼ)しき女性が怪訝な顔をした。

 しまった、声に出てた―――まあいいけれど。

 私はなおもぶつぶつ―――と、呟きます。


「ぶつぶつ、ぶつぶつ」


 一字一句たがわず、正確な発音でぶつぶつと言い、先程の(ひと)り言をごまかそうとする。

 どうごまかしたのかわからないけれど。

 私を白い目で見た(かもしれない)隣の女性はもう、私を見ていなかった。

 なおも私は、ページをめくる。

 そこそこ気に入ったマンガであったが、他の作品が見えるまで、ごっそりページを飛ばした。

 気恥ずかしいので。


「シュウくん、いいわぁ」


 呟いてしまったのは最近の()しキャラ。

 今、話題になっているキャラだ―――私の頭の中で。

 私の中で話題になっているキャラで、全米では話題にはなっていない。

 全米が泣いてもいない。

 ………まあいいんだけどね。

 世間の評判は知らん。


 評判は知らないが―――物語の中では――決して良くない。

 作中イチの、すごい悲劇キャラだ。


「三角関係になってるけどこれ、どう足掻(あが)いてもシュウくんが失恋(やめ)ないといけない流れじゃない」


 ひどいなあ。

 でもそういうところがまた、いいんだよなぁ、とも思う。

 可哀想なキャラがまたいいんだよなぁ。

 恋愛において、やや不憫(ふびん)なキャラ、それが引っかかる。

 いい意味で心に引っかかる。


 それは、正解ではない、絶対に正解ではないけれど―――きっと正解ではない、けれど。

 けれどそこが。

 心に、足跡を残す要素だ。


「ああ、シュウくんいいなぁ………っていうか絵柄(みため)がいい」


 しかしこの展開はあんまりだ。

 これは面白くない。

 ない。



「―――()えな」


 ()いなこれは、と呟くその声は、私が発したものではなかった。

 隣の、頭一つくらい高い位置から聞こえた。




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