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その6

5/26 誤字を修正しました。

 ドラゴンさんの記憶を噛みしめる。彼も私と同じ被害者だったのだ。


 ……うん、そうだよね。みんな、自分の世界で生きていたんだから、そこに帰りたいよね。


 よし! 私の目的はこの洞窟からの脱出、そして元の世界に帰ることだったけど、もう一つ追加だ。

 それはドラゴンさんの家族や友人に、ドラゴンさんの最期とその想いを伝えること。ドラゴンさんを食べた以上、その意思だけでも帰してあげないと申し訳がない。


 私は両手で頬を叩く。よし、痛くは無いけど気合は入った。

 まずは上層に戻ることを考えよう。


 あ、ドラゴンさんの遺体ですが、すでに全部いただきました。

 と言いますか、ドラゴンさんの頭を食べ終わったら、記憶が洪水のように流れ込んできたので、しばらく気を失っていました。

 気が付いた時にはもう遺体は無かったので、恐らく体さんが勝手にいただいたのでしょう。


 とりあえず検証をしよう、私はドラゴンさんに変身……するとズーンと背が伸びて身長が2倍くらいに大きくなった。


 あれ? 今まで肉の量はごまかせなかったのに、何ででっかくなれるんだ?

 そう思っていったん人間に戻ると、感覚的に理解できた。なんというか細胞一つ一つの密度が今までよりも高まった気がする。


 試しに虎さんや蛇さんに変身しても同じようにでっかくなれた。

 やろうと思えば兎さんのように大きくない動物でも、元のサイズよりも大きくなれる。

 ただし、人間サイズより小さくはなれない。多分、これ以上細胞を圧縮することはできないのだろう。

 しかし、そうなると私は見かけ以上に肉を持っていることになるんだよなぁ。今、体重何キロなんだろ? ……やめやめ。


 体をドラゴンさんに戻す。

 まずはそこら辺をぐるぐる飛んでみるが、やはりこの肉体は見た目も性能も素晴らしい。

 柔軟さだけなら虎さんの方が上だけど、それを補って余りあるパワーがある。そのへんの私よりもでっかい岩を殴ったみたら、きれいに粉砕した。


 スピードも鳥の羽で空気操作と炎操作を合わせたときよりも早い。ただ、この部屋ならいいけど洞窟内では使いづらいかな?


 次に光操作だ。

 能力の概要は記憶を見たときにわかっているが、問題は光源だ。

 どうやら今までよく見ていた青い水晶は、かなりの危険物だったようだ。そうなると別の光源を用意しなければならない。


 私は炎を出せるからそれを使う? んー、それだと結界を破壊するほどの光が用意できるかなぁ。

 まず物は試しと魔光を集中させてみる。……あれ? 特に痛くもないし変な感じもしない……あっ、そうか、私は脳みそも痛覚も無いや。

 なーんだ、なら光を集め放題じゃん。私は体全体で魔光を吸収し、それを口に集中して真上に放つ。


 放たれたビームは、以前結界を破壊したとき同じくらい太いものだった。それは天井に穴を開けて突き進み、大きな音を立てる。どうやら別の結界を破壊したようだ。

 おおう、これは自分で撃ってびっくりだわ。やろうと思えばもっと光を集められそうだし。これ、外で太陽光を受けて撃ったらどんだけの威力が出るんだろ?


 ふははははは、しかしこれならばここを脱出することは容易い。今すぐにここを破壊尽くし「我」をこの地に閉じ込めたやつらを根絶やしに、いやそれだけでは足らぬ、この地に住まうものすべてを焼き払って……まてい。


 私はあわてて体を人間に戻す。

 あー危ない危ない、思考が乗っ取られかけてた。

 ドラゴンさんは知的生命だし、記憶量も半端ないから、変身中に気を抜くと私の思考も影響を受けるみたいだ。


 まぁ、あんな目にあわされたら恨みつらみが激しいのもしょうがない。あれだ、ゲームでいう能力は跳ね上がるけど、操作を受け付けなくなるやつだ。

 うーん、ドラゴン変身は強いけど、必要なとき以外は控えるようにしよう。


 それから人間状態で部分変身も試してみたが、人間サイズだと肉体能力は虎さんよりちょっと強いくらいだ。

 まぁ体の一部だけ強力になっても、他のところがついてこれないのでこんなものかな。握力なんかは半端ないけど。


 あと腕をドラゴンにすれば指からビームを打つこともできる。だけど、本来は全身で受けた光を集中して放つものなので、腕だけだとそれなりの威力しか出ない。

 でも、手数が増えるのは嬉しいので腕はドラゴンにしよう。あとは前と同じで鳥の羽に虎耳虎脚だ。

 あんまりドラゴンさんの部位を増やすと、また思考が危なくなるかもしれないし。


 検証も終えたのでさっきあけた穴を飛んでいく。私が岩盤だと思っていた結界もぶち破ったので、そろそろ外に出られるかもしれない。

 あれ、でもまだ結界があったらどうしよう?

 上にはあんまり魔光石がなかったから光源を用意しなくちゃいけないし。その時はまた下から撃つ?


 そんなことを考えていたら穴の先に到着した。えーと、私が元々いたところより1層上になるのかな。

 やっぱり下と比べると魔光石が少なく薄暗いので、炎を出して辺りを見回す。


 うーん、全体的に天井が低かったりしてちょっと狭いけど、あんまり私がいた階層と違いは無いなぁ。

 しばらくその辺をうろうろしてみたが、特に目新しいものは見つからない。空気も流れていないし、出口が近い感じもしない。

 やっぱり下に戻ってもう何層かぶち破ろうかな……。


 どうしたもんかと悩みながら歩いていると、足元に何か……と思ったら私の両足首が切断されていた。

「え?」

 転びそうになりとっさに地面に右手をつくが、黒い何かが私の手首を通り過ぎる。

「んひゃっ!」

 手首が切断されてしまい、そのまま倒れて顎を地面にぶつける。その瞬間、私の首が切断された。


「えええ? え?」

 なっ、なに? 切られた? 首?

 見える範囲には何も見えない。空気の動きも無い。さっき切られた一瞬だけ何か感じたが、それだけだ。


 とりあえず首を戻さないと。ところが、私の体は倒れたまま微動だにしない。

 あ、そうか、首と体がつながってないからダメなのか。とりあえず髪の毛でもなんでもいいから伸ばして体に接続しないと。


 伸ばした髪の毛が体にくっつくと全身の操作ができるようになった。

 まずは足をつないで膝をつき首を拾う。しかし、このまま立ち上がってもまたどこか切られるかもしれない。

 

 私は警戒のために炎で自分の周囲を囲う。

 しばらく屈んだまま周囲を目や空気操作で確認するが、やはり何もいない。頭を元に戻して立ち上がる。


 相手は私に感知されず近づいてきた。なぜ感知できなかったんだ?

 透明? 超高速? それでも空気は動くはず。

 私は切られた時しか相手を感知することができなかった。逆に言えば感知できる何かがあるはずなのだ。

 いや、そもそも一瞬見えた黒い何かは敵の正体か? それともなんらかの攻撃か?


 死角を減らすために炎の数を増やす。地面から壁、そして天井もくまなく探すが、それでも何の存在も感じない。せいぜい影ぐらいしか……影?

 私は一回すべての炎を消す。そして、今度はできるだけ広範囲を照らすように炎を出現させる。

 ……いた! 炎に照らされる地面に、一つだけ黒い影が残っていた。


 影は驚いたようで逃げだしたが、私はすかさずそこに飛びかかり爪を突き刺した。しかし、影はそんなことはおかまいなしに逃げてしまう。

 しまった、影だから普通の攻撃じゃダメか。

 

 ならばとビームを放つと、影の端の方に当たり「影が少し弾けた」。

 ところが、影はそのまま進み、なんと影のまま壁を登って小さな穴に滑り込んでしまった。

 壁の穴は小さく私には入れそうにない。鉱石操作で広げてみたが、相手の姿はすでになかった。

 うーん、逃げられたか。


 私は周囲に影ができないように炎を増やして、影が弾けたあたりを確認する。

 そこに残っていたのは何かの血液と黒い毛だった。とりあえず吸収しておいたが、血と毛だけでは襲撃者の正体は分からなかった。


 さてどうしよう?

 相手が影に隠れられるのは分かったから、待ち構えるという手もある。壁を背にして周りを明るくしておけば、気づかないことは無いだろう。


 でもなー、さっき一撃加えちゃったから相手も警戒してるだろうしなー。

 そうなるともう私を狙ってこないかもしれない。逆に、私があきらめるまで待ってから襲ってくるかもしてない。


 この薄暗い洞窟で、影の襲撃者を見つける方法なんて思いつかない。

 無視して進むという手もあるけど、今後ずっと影の襲撃者を注意しながら洞窟を進むのも避けたい。


 やっぱり地道に行くか。



 というわけで本日の物件はこの洞窟です、かつては(多分)多くの人が往来した通路が、今では荒れ果てて通行を困難にしています。

 魔光石の配置も統一性が無く、どこかに影ができてしまう構造になっております。

 それが……なんということでしょう。匠のビーム一発でまっすぐな通路に早変わり。

 

 細かい凸凹も鉱石操作で整えられ、まるで大理石を貼ったようなエレガントな廊下になりました。

 匠の技は天井にも、なんと一定間隔で配置された炎により、通路には一切の影ができないのです。



 はい、ごめんなさい。どうせ出口もわからないし、地道に洞窟を整地することにしました。

 影よけに炎を大量に配置したので光源も問題なし。洞窟破壊の一環でもあるため、ドラゴンさんの記憶も喜んでおります。


 そんなわけでちょっと動いてビームをゴー、ゴン。ちょっと動いてゴー、ゴン。と、ビームを吐きまくって、この階層を四角い部屋に変えてやろうというわけです。

 あ、「ゴン」てのはビームが結界に当たった音ね。


 あと、下の階層に逃げられないように、私の通ってきた穴は鉱石操作で埋めておきました。埋める前に下層に逃げられてた場合は、こっちに来れないだろうから問題ないし。


 というわけでゴー、ゴン。ゴー、ゴン。ゴー……あれ? 結界に当たった音がしない。それに撃った方から光が、あれはひょっとしてビームが戻ってきて……

「んひゃっ!」

 危な! 私は横に飛んで避ける。なんだ? まさか本当に洞窟が無限ループしていて戻ってきたのか?


 ビームが戻ってきた通路に炎を広げて明るくする。

 その先では4体の動物がこちらを睨みつけていた。

お読みいただきありがとうございます。

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