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その13 悪魔の穴調査命令2

9/6 誤字を修正しました。

 馬車へ機器の積み込みも終わり、一行は予定通り午後一に出発した。

 馬車は3台、御者も含めれば人数は15人となる。


 車体はさまざまな魔法で強化されており、馬にも疲労を軽減する魔道具を装備させている。

 そのためかなりのスピードが出るし、揺れもほとんどない。


 緊急時を除けばお偉いさんの送迎に使われるものであり、俺も乗るのは久しぶりだ。


 今日は日暮れまで走り、街道にある村で宿泊。明日も朝から出発すれば、午後にはグレンツェに到着するだろう。


 他の部署から派遣されてきた人員も半数は顔見知りで、道中に不安は無い。あとは現地での手順の確認だ。


「さて、ポレンタくん。悪魔の穴とその結界について教えてくれたまえ」

 恐らく手順を確認するためメモを見ていたポレンタに、空気を軽くするためにも少し軽い口調で話しかける。


「は、はい!」

 驚きながらもメモのページをめくる。どうやらちゃんと調べておいたようだ。


「悪魔の穴はもともとマナストーンの鉱山で、150年前に発見されて以来、良質なマナストーンが多量に採掘できることから、当時の最新鋭の装備を駆使して大規模な採掘が行われていました。その数十年度には、鉱山が枯れたと言われたこともありましたが、さらに掘削を進めたところ、深部にはさらに大量のマナストーンがあることがわかりました。しかし、採掘を進めようとしたところ悪魔戦争が勃発。鉱山に悪魔が侵入しました」


 ポレンタはメモのページを捲り言葉を続ける。

「侵入した悪魔はマナストーンを汚染しムーンストーンに変異させました。そのムーントーンを利用し大量の悪魔が召喚され、鉱山はいつしか悪魔の穴と呼ばれるようになります。そこで、当時の偉大な魔術師。その後、初代グランドマスターとなる方が先導して内部の悪魔を駆逐しました。そして、今後ムーンストーンが悪用されないよう、大規模な結界を張り悪魔の穴を封印しました。結界は地脈などから魔力を供給し半永久的に稼働しますが、念のため魔法省が3年に1回検査をすることにしています。また、その結界は結界魔法の最高傑作として、現在でもその技術は参考にされています」


 恐らく何かの資料の丸写しだろうが、きちんと調べていたので及第点だ。


 ポレンタを軽く褒めれば頭を掻いて恐縮している。見ればアルバートが肘で小突いて「な、前に調べとけって言ったろ」といっているのが聞こえた。

 どうやらちゃんと先輩しているようだ。


 今ポレンタが言った通り、悪魔の穴は初代グランドマスターが張ったもので、今まで問題が起きたことは無い。

 検査と言う名目で現地に行っているものの、現在ではほとんど研修のようなものだ。


 俺も一度行ったことがあるが、その技術に感嘆し、結界魔法の腕を磨こうと思ったものだ。


 そんな結界に、今更何かトラブルが起きるのだろうか?

 グランドマスターの予感とは何だろうか?

 検査の手順を確認しながらも、不安は消えなかった。


 そんな不安をよそに道中はトラブルも無く、翌日の夕刻前にはグレンツェに到着した。

 今日は魔法省の支部に泊まり、状況確認と明日の準備を行う予定だ。


 しかし、馬車が支部に到着した時に微弱な揺れを感じた。

 だがこれは……地震か? 何か違和感がある。


「今揺れたな?」

 地震調査のため派遣された魔術師に確認する。彼は片メガネ型の魔道具を装備していた。

 恐らく、地震に関するデータを感知する魔法を発動するものだろう。


 こういった感知魔法を長時間発動し続けるには大量の魔力が必要なため、マナストーンを内蔵した充電タイプが使われる。

 このタイプは所有者か、周囲の魔力を吸収して貯めておくことができるのだ。


「はい、しかしこれは普通の地震の揺れとは違う様ですな」

 彼はそう言いながら魔道具を操作している。

 データの確認や検証に少し時間がかかるそうなので、これから支部の魔術師の話を聞くときに、まとめて話を聞くことした。


 俺たちは支部の会議室に案内された。既に数人の魔術師が席についている。

 まずは現地を確認した魔術師から話を聞くことにした。


「私は地震の発生後すぐに悪魔の穴に向かいました。恐らく発生から到着まで1時間はかかっていないと思います。目視で確認した限り異常な点はありませんでした。結界についても簡易検査では異常はありません。現在も交代した魔術師が監視を行っていますが、異常は無いそうです」


 ふむ、特に何もなしか。次は最初の地震の「違和感」についてだ。


「はい、通常の地震では最初『先触れ』のような弱い地震があって『グラッ』と来るものだと思うのですが。今回の地震はいきなり『ドンッ』と来ました。なんというか……地震と言うよりは、地中で何かがぶつかった衝撃のように思いました」


 確かにさっきの地震もそんな感じだった。

 しかし、何かがぶつかった? 悪い予想が頭をよぎるが、まずは専門家の話を聞こう。


「まず、先ほど起こった地震は通常の地震ではない可能性が高いです。細かい説明は省きますが、データを見た限り地震とは異なる揺れ方をしております。そうですな、先ほど話にありました『地中で何かがぶつかった衝撃』と言うのはかなり近いと思います」


「つまり、何者かが外部から結界を破壊しようとしている可能性がある?」

 恐らく誰もが考えていることを口に出す。

 会議室内に重い空気が立ち込める。そんなことをする者といえば悪魔しかない。


 強いて言えば悪魔を信仰するような破滅主義者も存在するが、やつらが結界を壊すほどの力を持っているとは思えないので、除外していいだろう。


 しかし……

「『地震が起きるような戦術レベルの魔法を』『100年近く放置されていた悪魔の穴に』『わざわざ地中で』放つ理由がありますかね?」

 別の魔術師が発言する。


 そう、それだ。

 そんな魔法を撃てるなら、それこそこの街に撃てば悪魔が喜ぶような惨劇が起こる。


「そうですな。先ほどはあのように話しましたが、自然界で起こることに絶対とは言いづらいもがありますので、これもまだ我々の知らない地震の可能性もあります」

 確かにその可能性も捨て切れない。

 

 その後も様々な意見は出るが、現状では推測をするしかない。

 楽観的に考えれば「ただ2回地震が起きただけ」、悲観的に考えれば「悪魔が結界を破壊しようとしている」。


 とはいえ、結局のところ結界が維持されればいいのだから結論はこれしかない。


「まずは地震か、その地震を起こした原因により、結界に影響が出ていないか調べるのが先決でしょう。予定通り我々は明日、早朝から現地に向かい調査を開始します。また、支部の魔術師はすぐに出動できるような体制を整えて下さい。特に防御の結界が張れる者と、戦闘ができる者は最優先です。軍の方にも出撃準備を整えるように要請をお願いします」


 とりあえず、今は予定通りに行動するしかない。そう言ってこの場の議論を終えることにした。



 翌朝、日の出とともに出発する。

 悪魔の穴は以前鉱山だったこともあり、大量のマナストーンが運搬するために道路が整備されていた。


 現在では通行禁止であるため門が閉ざされており、道路には草が生い茂り、穴が開いている所もある。

 

 今回はすでに門は開けてあるし、道路も3年に一度は結界の調査で馬車が通るため、通行が不可能なレベルではない。

 強化された馬車なら問題なく進行することができた。


 現地では2名の魔術師が待機していた。

 彼らの話では昨日の地震以外、特に異常はないそうだ。周辺を飛行しても特に発見は無く、付近には動物くらいしかいない。

 もちろん結界に異常はない。そう言って彼らは街へ戻っていった。


 さて、あとは我々の仕事だ。

 まずうちのメンバーに結界検査の機器を馬車から下させ、それ以外の者にはテント設営、周辺の安全確認、地震の調査、本局や街との通信の確保を指示する。


 事前に手順は確認しておいたので、みんなテキパキと準備を行っている。それでも不安そうな顔を隠せていないのはしょうがないだろう。


 うちのメンバーは悪魔の穴の入り口、結界の発生装置である大扉の前に向かう。

 準備が完了してさて検査と思った時、地面が揺れ轟音が鳴り響いた。


 その場にいた全員が大扉に注目する。今のは間違いなく大扉から発生したものだ。


「作業中止! 通信機は馬車内で準備しろ!」

 大声で後ろに指示をする。

「場合によっては撤退する! 全員馬車付近で待機! 不用なものは馬車の外に出せ! すぐに出発できるようにしろ!」


 しかし、俺達のチームには作業を続けさせる。最低でも結界の状態は確認しなければならない。


「何か分かったか?」

 アルバートは震えながらも機器を操作している。


「今のは内部から結界に攻撃を加えたものに間違いありません。戦術クラスの魔法です。しかし、結界は問題なく作動し、破られる可能性はありません」


 まさか、内部から結界を破壊しようとしているとは思わなかった。

 たが、どうやって内部に? 結界の中に進入することなど不可能なず。

 内部で悪魔が発生した? いったい何が起きているんだ? 


 ふと機器を操作していたアルバートの手が止まる。

「ん……? 内部結界の出力ゼロ? まさか、内部結界が破られた!?」


 過去、鉱山の内部に悪魔が侵入した際。召喚された悪魔の脱出を防ぐため、突入した部隊が各所に結界を張った。


 それば初代グランドマスターのものではないが、範囲が広く出来が良い2枚は、念のため入り口の結界と連携させて強化されたのだ。


 その結界は並大抵の悪魔が破れるものではなく、戦術レベルの魔法が必要になる。

 内部結界は2枚……地震は2回……今の扉への攻撃……だんだん話が見えてきた。


「ポレンタ、通信術士に街に連絡させろ。間違いなくここには戦術レベルの魔法を発動できる化け物がいる。速やかに出撃できる魔術師から派遣されたし、とな。それに返答があるまで馬車で待機してろ」

「はっ! はい!」

 ポレンタは走って馬車に向かう。


「俺たちは次に結界が動作するまではここに居るぞ、そうすればあいつの攻撃の間隔の推測がつく」

 そう言えば2人がうなずく。先の攻撃で結界に問題はなかった。次の1回くらいなら問題は無いだろう。



 1時間ほど経過した。

 さすがに中にいる奴も、あの規模の魔法は連発できないようだ。

 それが分かればここに居る必要は無いかもしれない。そろそろ撤退するか?


「結界が作動しました!」

 ちっ、間が悪い。しかし今回は振動も音もしない。いや、結界の作動音はしている?


「恐らく奴が結界に接触していると思われます」

「何をしているんだ? ……ちょっと待て、まだ結界は作動しているのか?」

 機器を見れば結界は作動し続けている。


 この結界は不用意に触れば衝撃でその部位が消し飛ぶか、ふっ飛ばされるはずだ。

 ならばなぜ作動し続ける? まさか結界の衝撃に耐えられるのか!?


 だが少しすると結界の作動音が消えた。

 さすがに耐えれらなくなったのか? もしかして衝撃でくたばったのではないか?

 甘い考えが頭をよぎるが、それはすぐに裏切られた。


「あっ、また結界が作動しました。……え? 魔力供給に異常? まさか魔法陣に介入している!?」

「馬鹿な!?」

 結界の発動に耐えながら魔法陣に介入!?


 発動している魔法陣に介入するなど、上級魔術師でも簡単にできるものではない。

 しかも、これはグランドマスターの作った魔法陣だ、介入できるものなど本人ぐらいのものだろう。

 

 それに、悪魔というものは、基本的に本能的な殺戮を行う存在のはずだ。

 それだけの知能を持っている悪魔など、悪魔戦争以降に出現した記録は無い。


「ビュンドナーさん!」

 伝言役に馬車にとどまらせていたポレンタが、息を切らせながらやってきた。


「魔術師の派遣が中止されました!」

「は!? ふざけ……」

「グランドマスターがこちらに来るそうです!」


 それを先に言え! という叫びは、大扉が爆発した轟音にかき消された。

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