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第7話 最強パーティーは変人揃いの集まりである

「ご主人様……起きてください」

「ん…………んんぅ…………」


ルナの声が聞こえる。…………もう朝か。でもまだ寝ていたい。急ぐこともないのだから。


「ご、ご主人様?」

「ルナも一緒に寝ようぜ……」


ルナの手を引っ張ってベッドに引き寄せる。


「ご、ご主人様!? 確かにとても嬉しいですが朝食が!」

「まだ眠い……」


ルナを抱き締めながら目を閉じる。このままもう一眠りだな。


「も、もうリルフェン様も魔法を使えるようになりました!」

「んあ?」


リルフェンも魔法を? マジか、それならもう行けそうなわけか。

残念ながら俺の複合魔法はまだ未完成。公式やら何やらが多過ぎる上にその意味をきちんと理解していないと出来ない。

まず重要なのは限りなく魔力を属性に近付けなければならないらしい。例えば雷魔法を使うとすれば魔力も必然的に雷に特化したものに変質するらしい。その状態のまま別の属性の魔法を使うことが混合魔法の最低条件だった。

これがかなり難しい。それはもうあり得ないくらいの難易度だ。出来る人すら少ないらしい。


「あ、あの、ご主人様?」

「ん?」


ルナが真剣な眼差しで見つめてくる。ベッドでこの雰囲気、もしや?


「何かございましたか?」


ルナは俺の細かな違和感に気付いたようだ。おっさん……ミケラ先生との戦闘後に俺は自分の気持ちを見つめ直した。


「別に……ただ今まで俺はお前達に甘え過ぎていたと思ってな」

「そ、そうなんですか?」


もちろん戦闘のみの話だ。誰かに期待していなかった俺が今では誰かを期待するようになった。期待するようになってしまった。

誰かを頼ることが悪いことだとは思わない。でもそれは果たして最強か? 多分それは違うのだろう。


「わ、私はもっと甘えて欲しいのですが」

「あー、いや、そういうことじゃなくてな。日常的な話じゃなく」

「どういう意味でしょう?」


戦闘の時の話だ。日常的なものとはまた違う。まぁ戦闘時に最強である為に日常時からそうしているのも良いかもしれないが息抜きだと思えば丁度良いかもしれない。


「戦闘の時の話だ。協力することは確かに大切なことかもしれないが。それだけじゃ足りなかった」

「…………少し寂しいです」


寂しい? 確かにそれはそうかもしれない。俺もルナに頼って欲しくてそうしているはずなのに。


「頼ってくれませんか?」

「…………頼るのは悪いことじゃない。でもな……それは本当に最強だと言えるか?」

「それは……」


ルナも同じ意見のようだ。最強であることは人に頼ることではない。自分で全てどうにでもなる奴のことを指すのだ。


「ですが……」

「ルナ?」

「私はもっと頼って、それに甘えてくださる方が嬉しいです」


そんなにっこりと微笑まれると困るんだが。そもそも俺の全部はこいつから始まったのか。


「ご主人様?」

「…………でもな、やっぱり俺は」

「それじゃあ探しましょう」


探す? いきなり何だ?

俺の言葉を遮ったルナは優しく俺を抱き締めてくれる。優しく、包み込むように。


「ご主人様も最強になれて、そして私達のことを頼ってくださるように」

「そんな全部を良いとこ取りみたいなことあるわけが……」

「だから探すんですよ」


幻想的なものを探そうなどと無茶を言ってくれる。でもルナはそうして欲しいと思っているのだろう。

人を頼ってなおかつ最強であれと? そんな理想を求めたところで手が届かないなんて当たり前だ。


「最強なんですからそれくらい見つけてください」

「お前……はぁ……」


可愛くおねだりされてしまった。ルナの表情は優しく、そしてどこか嬉しそうだ。

こう言われて俺が断れないのは知ってるのだろう。まったく、付き合いが長いと厄介だな。


「仕方ないな」

「はい。ご主人様が仰ったんじゃないですか。最強は1人じゃなくてもいいって」

「そうだったな」


よく気付かされる。最強であってもその道は違う。それぞれの道があってそれぞれの最強があるのだ。

全てを望んでも手に入らない。でも常に求め続けることは出来るだろう。

しっかりしろ。俺は最強だ。どんなことにも常に手を伸ばし続けろ。


「気分は晴れましたか?」

「あぁ、スッキリした」


ルナは俺の扱いが上手いな。仕方ない。恋人だもんな。


「では朝食にしましょう」


立ち上がったルナの手を握り締める。ここで離すのは簡単だが俺もこいつのことはよく分かっているつもりだ。


「ご、ご主人様?」


戸惑った様子のルナ。でもそこには怯えや不安はない。本当に俺のことを信用してくれている。

俺は立ち上がるとルナの手を引っ張って抱き寄せる。


「ご、ご主人様……あ、あの…………」

「ルナ、好きだ」


俺は優しくルナの唇を奪う。幸せだ。


「…………ズルイ」

「うお、びっくりした」

「あ、アスール様!?」


ちゃっかりと覗いていたアスールが相変わらずの無表情で告げる。


「…………悩みは解決?」

「お前も気付いてたのか?」

「ん…………ルナが話すると思って待ってた」


何でそこでルナ頼みになるんだこいつは。


「…………刀夜の悩みはルナが解決。……一緒に遊ぶのは私の役目。……優しくするのはアリシ。……強くなりたいならコウハ。……エロいことはマオの担当」

「マオの時はひでぇな」


そんな評価本人も不本意だと思うが。でも確かにそうなるのか? 俺には分からんがどうやらそういう点で結構支えられてるんだろうな。


「…………悩みが解決したならルナの番は終わり」

「そ、そうなんですか!?」


そんな順番的なものあったっけ? まぁいいか。ひとまず今日からまた攻略再開だしな。


「いいから飯食って行こうぜ。その前にちょっとムイに声掛けてからだが」


ミケラ先生に関してはこいつらには隠しておいた方が良いだろう。というかミケラ先生女癖悪いからな。

脱線しちまったら女がどうとか言ってくるしな。まぁいざという時はぶん殴ればいいんだが。俺の方が強いからな。

朝食を終えて1人でムイを呼びに行ったわけだが。


「刀夜! すげぇ可愛い子達じゃねーか!」

「はぁぁ…………」


暇だから付いてくると聞かなかった。殴ろうとしたら土魔法で軽く殴られてしまった。油断していた。


「ご主人様、どちら様ですか?」

「…………ミケラ・ソーサリー。世界一の魔法使いで今俺が魔法を教わってる」

「ミケラ・ソーサリー様ですか!?」


ほらやっぱりルナが反応した。しかし絶対にこいつには近付けさせない。


「このおっさんは女癖悪いから絶対に近付くなよ。おっさん、こいつらに手を出したらぶっ殺す」

「おー、怖っ」


俺が睨みつけると両手を挙げて無害アピール。腹立つな。


「ソーサリー様は魔法に関して世界一と聞きますが事実なんですか?」

「まぁ……それはな」

「刀夜くんも僕も今丁度教わってるんだよ」


その通りなんだが……。とりあえずルナの評価を上げるのはやめてほしい。


「そうなのですか!?」

「お、おう……まぁな……」


ルナの顔が近い。俺がのけ反ってしまっているとおっさんが豪快に笑う。


「がっはっはっ! 愛されてんじゃねぇーか!」

「ソーサリー様! 私も教えてくださいませんか!?」


ちょ、ルナさん!? こ、こいつにそんなこと言ったら……。


「ほう? それは俺と身体の関係を結ぶと?」

「いえ、それならいいです」


流石ルナ! もう大好きだ!


「私はご主人様一筋ですので。他の方に身体を許すくらいなら死んだ方がマシです」

「お、おう……重いな」


いや別に重くないだろ。これこそまさに愛だ。

女癖が悪いせいで軽い女としか会ったことがないんじゃないか? こいつに愛だの恋だの聞くのは間違いな気がする。


「安心しろルナ。俺が覚えたら真っ先に教えるから」

「本当ですか!?」

「あぁ」


当然だ。俺もその為に覚えていると言っても過言ではない。

ルナのご褒美は少し期待してるが、まぁ無償で教えるのも良い。ルナと楽しく過ごせるのなら問題なしだ。


「人の魔法を勝手に広めんなよ〜」

「俺が覚えりゃどう使おうが自由だろ。別に他の奴に被害が出るようなものじゃねぇよ」


もちろん多分だけどな。断言が出来ないのは仕方がない。


「確かに刀夜くんなら正しい使い方をするはずだよ」

「お前はもうちょい俺を疑った方がいいんじゃないか?」


俺のこと信用し過ぎだろ。


「…………刀夜は良い人」

「そうだよね? 刀夜くんが悪い人になったことなんてないよね?」

「ご主人様はとても素敵な方です! 悪い人になんてなりません!」

「そうかしら? ふふ……散々悪口を言われたわよ?」

「そ、そうなのか!? …………その割には嬉しそうだぞ?」


マオには確かに言ったけどな……。そんなに嬉しそうだと誤解されるぞ。


「獣人族の姉ちゃんもしやドMか〜? 口では嫌々言ってても身体は」

「潰すわよクソジジイ」


にっこりと笑顔でとんでもないことを言ってた。マオ、なんて口が悪いんだ。もっと言ってやってくれ。


「…………先に潰した方が刀夜さんも安心かしら?」

「よし、それで行こう」

「行くなよ! お前俺の弟子なんだからちょっとは遠慮しろ!」

「どの口が言ってやがんだ。脱線ばっかしやがって」


お前が師匠と認めるのは何か嫌だ。あと俺には既に先生はいるのだ。


「それにお前以上の先生を俺はもう持ってんだよ。慕うならそっちを慕う」

「はぁ!? 誰だそいつは!」

「ここにおられるルナ先生だが」


俺がそう言うとルナが胸を張る。激しく上下する胸に全員の視線が釘付けになってしまう。


「…………流石刀夜の先生だ!」

「胸で判断してんじゃねぇ!」


俺はおっさんに向かって飛び掛る。おっさんを倒して馬乗りになると手をチョキにして眼前に向ける。


「貴様の目を潰す」

「それが師匠にする行動か!」


なら師匠らしい行動を取れよ。普段からこうだから駄目なんだ。

おっさんは俺の腕を掴んでなんとか目潰しをされまいと抵抗する。俺も押し込むように力を込める。


「男の子らしいご主人様は珍しいです」

「そうだね。子供らしくて可愛いよ」


何やら微笑ましそうに見つめられているが俺はこのおっさんを極刑に処すのに忙しい。

ひとまず新しくおっさんも加えて俺達のブルート攻略は再開された。

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