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第4話 シャドウフレイムに似た魔物は見た目だけでスペックは似ても似つかない

 吸血鬼の住む城、ブルートを目指して2日目。相変わらず襲い掛かってくる吸血鬼達を俺達はあっさりと退治しながら進んでいた。

 ちなみに先程村の次に見える街を見てきたが惨状は村と同じだった。

 閑散としており人1人いないという異常事態。その割に破壊された形跡はなく、半壊している家はあれど無茶苦茶にされているような家はなかった。

 ひとまず予定としては今日でブルートへ、そして万全の状態にする為1日置いて明日に古城へ乗り込むという形だ。

 本来は街の様子を見たり情報を集める予定だったんだがその辺りがなくなったからな。ちょっと早い予定になってしまった。


「刀夜さん、今までとは違うレベルの何かが来るわ!」

「それって……」

「いえ、あの気配じゃないわね。でも異常よ」


 なんだ違うのか。でもそういう敵が多くなってきているということはそういうことだろう。

 本能的なのかそれとも意図的なのか。本拠地に近付くにつれて敵が強くなっている気がする。

 これが統率力がある存在が意図的に仕組んでいるとすればかなり危うい敵だ。油断は出来ない。


「来るわ!」

「っ!」


 マオの声が聞こえて気を張ったからこそ気付けた。多分普段なら即座に殺されていたな。

 ギリギリ刀を抜かずに鞘ごと腰から抜いて攻撃を受け止める。

 ライジンに勝るとも劣らない高速の動きで長く伸びた爪で襲って来る女。

 真っ赤なツインテールの髪に黒い目と赤い瞳。黒いゴスロリというなんとも特徴的な奴だった。


「刀夜殿!」


 すぐにコウハが後ろから吸血少女に反撃に出る。俺はしゃがんで振られる大剣を躱した。

 吸血少女は元人間とは思えない脚力でその場から跳躍し、大きく離れて着地した。


「あれも吸血鬼か。凄いな」


 コウハが息を呑んでいる。気持ちはよく分かる。俺もまさかあんなのがいるなんて。


「ゴスロリ美少女が存在するとは!」

「ご主人様がご乱心です!?」


 まぁそのゴスロリは殺すべき対象なのが悲しいところだが。例え可愛い女の子だろうと敵であるなら容赦しない。


「…………流石は有名な萩 刀夜」

「…………刀夜、あれ私とキャラ被ってる」


 無表情で褒めるゴスロリにアスールは微妙そうな表情を浮かべた。


「アスールの方が可愛いから気にするな」

「ん……♡」


 俺がそう言うとアスールはうっとりとした表情で俺の腕に抱き付いてくる。敵を前に余裕だなおい。


「サス……ガハ……ユウメイ……ナ……ハギ…………トウヤ……」


 いきなり何かバグったように片言になり始めるゴスロリ。顔に亀裂が入っていき人の中から黒い腕が飛び出してきた異常事態が発生した。


「アスール、お前はあんなキャラじゃなくないか?」

「ん…………早とちり」


 流石にアスールは身体の中から別の生物が出てきたりしない。つか何あれ。折角のゴスロリが台無しだ。

 中から出てきたのは真っ黒な人間に似た何か。炎を操る黒い人型の魔物、シャドウフレイムに似ている気もするがどこか異質な威圧感がある。

 身体から溢れるように青い液体が流れている。血のようにも感じられるがあいつはどこも傷付いていない。


「あれ全部魔力か?」

「どんな能力よあれ……」


 出来た青い血だまりは瞬時に張り付くように人型の魔物の全身にまとわりついた。その全てが魔力という異常な存在だ。


「あの魔力、どういう攻撃してくるのか分からないな」

「それよりも今回は全員で戦った方がいいんじゃないかな」

「あぁ、その辺りは全員感じてるから大丈夫だ」


 こんな異常な相手を手の内を明かさずに、など無理な話だ。


「いつも通りのフォーメーションだ。リルフェンは危険だから周囲の索敵、マオはリルフェンについてやれ。昨日の通りだ」

「えぇ」

「ガウ!」


 さて、敵はどういう能力を使うのか。いや、そもそもあれは能力なのか魔法なのか。破壊出来るならしたいが。

 視認魔法により魔力が見える俺の目が捉えているのは満遍なく身体を覆う魔力の塊。これはどちらかというと核が身体の内側である身体強化魔法に類似する。

 残念ながら魔法の破壊というのは出来そうにない。そもそも核があるのかどうかすら不明だが。


「グガァ!」

「っ!」


 一瞬にしてライジンを超える速度で後ろに回り込んだその魔物は魔力がまとった腕を振り下ろしてくる。

 狙いは俺だ。こいつは喋ると知能があるんだ。恐らく意図的にだろう。

 俺は振り向きざまに刀を振り上げる。このまま腕を切断してやろうと考えたのだ。しかし……。

 グニっとまるで衝撃を吸収するかのように刀は魔力の衣に受け止められた。


「ちっ……!」


 舌打ちしてしまう。警戒せずに反撃に出たことを後悔した。

 もう片方の手で思い切り掌底打ちを食らった俺は吐血しながら大きく吹き飛ばされた。


「ご主人様!」

「グラァ!」


 一瞬視線が俺の方に向いたのだろう。隙が出来てしまいそこを突かれてしまう。

 またまた一瞬で移動しルナに向けて腕を振り下ろす。しかしそこを割って入ってきたコウハが大剣で受け止めた。


「ぐっ!」


 塞いだというのにコウハが苦しそうな表情を浮かべる。ガードしても相当な衝撃なのだろう。


「刀夜殿があの程度でやられるはずがないだろう!?


 その通り。俺は吐血しながらも立ち上がると駆け出す。


「ん……回復」

「おっと、悪いな」

「ん…………強敵。……気を付けて」


 隣を並走したアスールに回復魔法を掛けてもらう。威力も相当なものだが掌底打ちを食らう直前に脱力したお陰で威力が分散した。吹き飛ばされてしまったが予想よりもダメージは少なかったのだ。

 この世界にいるといつの間にかそういう技術が身につくから困ったものだ。それだけ俺がダメージを負っているということに他ならないのだから。

 あの魔力の衣は身体強化魔法とさして変わらない。問題は防御面が優れていることだろう。

 まずあの柔らかい魔力は物理的衝撃を全て吸収してしまう。本体にダメージが通らないというのは厄介なものだ。


「神速の太刀!」


 一瞬で間合いへと入ったムイが特技を使用して剣を振るう。俺の有様を見て物理攻撃から魔力攻撃に切り替えたわけだ。

 ムイの剣は魔力の衣を断ち切るものの本体にダメージはない。ギリギリ通っていない。


「もう一回!」

「グラァ!」


 空いた穴にもう一度剣を通そうとしたムイ。しかし足をまとっていたはずの魔力が独自に移動しムイの腹部を蹴り飛ばした。


「ムイ!」


 なんだよ今の。あの魔力の衣は自由自在に動くのかよ。その気になればこいつは2体に分身でも出来るんじゃないか?


「ガハッ!」


 ムイも吐血しながらも上体を起こす。しかし衝撃が上手く分散してない。立ち上がれないようだった。

 しかしムイのおかげで突破口は見えた。確かに魔法による攻撃ならば行ける。

 俺はもう片方の手に刀を精製するとライジンを使用しながら一気に突っ込む。

 ムイが傷を付けた魔力の衣は既に修復されている。連続攻撃が必要のようだ。

 アスールがムイに回復魔法を掛けているのを尻目に魔物の懐へと一気に入り込む。


「グガァ!」


 待ち受けていたように腕を突き出してくる魔物。掌底打ちか。二度も食らうかよ。

 俺はそのままの勢いでスライディングをし、後ろへと回り込む。


「ガガ!」


 瞬時に後ろを振り向く魔物。しかしそこには既に俺の姿はない。


「上だぞ」

「グガァ!?」


 俺は後ろではなく魔物の上、つまり空中だ。そしてご丁寧に声を掛けてやる。顔が上を向くように。

 身体を捻りながら大きく遠心力を利用して刀を振り下ろす。炎をまとったその刀は魔力の衣を斬り裂き、またほんの少しタイミングがズレたもう一方の刀が魔物の顔を斬り裂いた。


「ガァァァァァァ!!」


 痛みで苦しんでいるのか顔を押さえて苦しむ魔物。しかしそう易々とこのチャンスを見逃す気は無い。

 その場に着地すると同時に踏み込んで一気に距離を詰める。次は斬り裂くのではなく切断する。完全に殺し切る!


「っ!」


 距離を詰めた瞬間、まるで自分の意思があるかのように魔力の衣が動き出し、腕が俺の服の襟を掴む。

 そのまま乱雑に投げられてしまう。一瞬呼吸が止まってしまった。


「ゲホッ、ゲホッ。っ!」


 咳き込んでいると自立するように魔力の衣が俺に向かって走ってくる。魔力だけだというのに。というか本当に分身したみたいだ。


「紫電の突き!」


 しかしその魔力の衣が俺に到達することはなかった。横からアリシアの紫の雷をまとった槍が胸元に突き刺さり、大きな穴を開けて吹き飛んでいった。


「今がチャンスだ!」


 魔力の衣はない。物理攻撃だろうと通る。

 マオがいち早く弓矢を放つ。魔物の身体に幾つもの矢が突き刺さった。


「グガァ!?」

「ロックフィスト!」


 ルナの上級土魔法、土の拳が魔物を殴るようにして押し出してくる。向かう先にはコウハが立っていた。


「コウハ様! 私の魔法ごとお願い致します!」

「うむ! 破壊の断罪!」


 振り下ろされた大剣が大きな衝撃波を生み出しながら土の拳ごと魔物を一刀両断した。なんとかなったか。


「僕はあまり役に立てなかったね」

「お前は確かに攻撃は速いが連続攻撃はしないタイプだろ。相性が悪かったな」


 神速の太刀や神速の一閃は高速で動きながらその勢いとともに剣を振るう技だ。追撃にはどうしてもタイムラグが出来る。

 コウハもそれは同じ。大剣で魔力の衣と同時に本体も斬り裂けるか微妙なところだ。相性はあまり良くないだろう。

 マオも同様か。逆にこの中で真正面から渡り合えるのは俺、アリシア、ルナくらいのものか。ルナも魔力消費量が激しくなることを考えれば苦手な相手とも言えるな。なかなか難しい。


「あの相手はこれから苦労しそうだな……。ひとまず今日は退散するか」


 何か対策を立てないといけない。それにリルフェンにもしてもらうことはあるしな。

 流石に索敵要員としてだけ置いておくには勿体無いスペックを持っているのだ。知能があるわけだし魔法を覚えさせるのもいいかもしれない。


「リルフェン」

「ガウ……」


 お、おう……あからさまに落ち込んでるのが俺でも分かる。そんなに役に立てないのは嫌なんだな。まぁそうだろう。


「お前にはちょっと魔法を覚えてもらうか」

「ガウ!?」


 今度は驚かれた。まぁ本能で動く魔物が本能的に魔法を使えることはあっても意図的に覚えさせるというのは初めての事象だろう。


「物は試しだ。ルナ、頼めるか?」

「はい、問題ございません」

「マオもルナについてリルフェンのこと頼む」

「えぇ」


 ひとまずはリルフェンにも働いてもらおう。流石に狼用の兵器は思い付かない。別の方向性を見出してもらう必要がある。


「頑張ってご主人様を驚かせましょう!」

「ガウ!」


 やる気満々なリルフェンに俺は小さく微笑む。こいつも何だかんだ俺達の仲間なだけあって頼もしい。

 ペットの前に大事な俺の仲間だ。悲しい思いもさせないしいざという時自衛はしてもらわないといけないだろう。

 俺達はルナの転移魔法陣で少し早めに街へと戻ることにした。

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