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第1話 新たな依頼は吸血鬼退治!?

「本日の依頼はこちらになります」


 ギルドの受付員、アイに渡された資料に目を通す。

 有名になってしまった俺はこうしてギルドから名指しの依頼を受けることが多くなった。というのも新種の相手というのはかなり危険なのだ。

 最近新種の魔物が多発しているらしくこういう機会が多くなったのだ。


「そろそろ俺達だけじゃなく他の奴らにも行かせた方がいいんじゃないか? 納得いかなくなると思うぞ」


 俺は新参者だ。ただでさえ活躍を持って行っているくせにこのまま有名になり続ければ必ず不満が出てくるものだろう。


「いえ、逆です」

「逆?」

「はい。刀夜様がいるお陰で危険なことも減ってきているという見解の方が強いそうです。むしろ刀夜様にはより一層期待されていることですよ」


 何だそれは。本当に冒険者かよ。しっかりしろよ。


「当たり前です。ご主人様は凄い方ですから!」


 俺のことを褒めて何故か自信満々な金髪美女。爆乳でとんでもないプロポーションを持つ精霊のルナである。


「…………刀夜なら当然」


 更には酷く無表情な翼の生えた青髪の美女も同意した。有翼種と呼ばれる半人半魔のアスールだ。


「冒険者としての誇りやらプライドはどうしたんだよ……」

「みんな命優先になっちゃうからね」


 半ば諦めたような表情を見せる黒髪美女。かなり高身長のお姉さんで唯一俺と同じ種族の人間であるアリシアだ。


「情けない。刀夜殿を見習って欲しいものだ」


 そんな人間達を一蹴するのは赤髪美女のエルフ族のコウハだ。エルフ族特有の尖った耳が可愛らしい。


「刀夜さんを見習うなんて無理よ。低俗な人間なのよ?」


 そして人間に憎悪すら抱いている様子の緑髪美女。猫耳に尻尾という大変魅力的な特徴を持つマオだ。


「ガウ! ガウガウガウガウ!」

「刀夜さんを真似るのは無理だって言ってるわね」


 最後に純粋生物でありながら知性を持ち合わせ、かなり可愛いうちのペット。白い狼の姿をしているリルフェンだ。

 以上の5人と1匹が俺の大切な仲間達である。俺だけでなく人間の世界に馴染む数少ない他種族達も有名になってきたものだ。


「お前らは俺を持ち上げ過ぎだ」

「それはないかと思います。刀夜様は大変魅力的であると私も思いますよ」


 アイまで何言ってんだか。つい溜息を吐いてしまう。


「まぁいい。依頼は……どこだこれ」

「えっと……古城ですか?」


 古城なのかこれ。聞いたことのない場所だな。


「ブルートってとこらしいけど」

「ひぃ!? ぶ、ぶぶ、ブルート!?」


 いきなりアリシアが顔を真っ青にして俺の腕に抱き付いてくる。これは……普通に怖がってるな。


「何か怖い噂でもあるのか?」

「きゅ、吸血鬼が出るとか聞くよ!?」

「吸血鬼って怖いのか?」


 この世界だ、吸血する奴だって多い。たかだか血を吸う人間が怖いなどとは思わないが。


「吸血鬼ですか。高い身体能力を持ち合わせた魔物ですね。吸血することで更に身体能力が強化されると言われています。ですが……700年前程に絶滅しているはずですが」

「そ、そうなの?」

「はい。危険な魔物ということで討伐隊が1匹残らず清掃するというイベントが」


 流石は1000年以上生きている精霊だ。そういう知識も豊富なようだ。


「そ、そっか……よかった」

「いや、良くないな。今回の討伐依頼は城に住むその吸血鬼とやらの退治みたいだぞ」

「え…………?」


 安堵していた表情が一瞬にして青ざめた。流石に怖がらせるのはあれだな後々知って現場で騒がれても困るしな。

 決して! 決して怖がってくっついてくれるのが嬉しいだとか思っていない。柔らかい胸の感触をもっと楽しみたいとか全くない。


「…………刀夜、下心が見え見え」

「いや、何がだ?」


 くそ、流石にアスールの目は誤魔化せないか!


「ご主人様がそんなことを考えるはずがありません! 単純に現地で知ってしまって混乱してしまうくらいならと思ったはずです!」

「お、おう。俺の心情ってもしかして読まれてる?」


 それにルナさんごめんなさい。実は下心もなくはありませんでした。


「…………ごめん」

「別に気にしなくていい。俺も男だ、そういうことを考えなくはないしな」

「ん…………今回はごめん」


 謝るのは俺の方なんですよね。なんかごめん。

 アスールの頭を優しく撫でた後に怖がっているアリシアに視線を向ける。


「…………何なら家で待ってるか?」

「刀夜くんと離れないのは嫌だよ! それに1人で家にいるのも怖い!」

「お、おう……」


 そんなに怖がりだとは思わなかった。これは本気で心配になってくるぞ……。


「普段1人の時どうするんだよ……」

「あ、明るい内はあんまり意識しないんだけど……。く、暗くなってきたら早く寝るようにしてるし……」


 怖がりは大変だな。色々と心配になってくる。


「うん……まぁこれからはいつでも俺の部屋に来ていいからな?」

「ほ、本当!?」


 そりゃあそんなに心配になる程震えるんだから仕方ない。俺も流石にこのまま放置というわけにもいかないしな。男として彼氏として。


「わ、私も怖いので一緒に眠りたいです!」

「ん……私も」

「わ、私もそうしたい……」

「ふふ、私もよ」


 お前らは余裕そうだなおい。俺と一緒に寝たいだけなんじゃないのか……?


「ま、まぁいいとして誰か行ったことあるか?」

「申し訳ありません。ありません……」

「私もないわね……」

「同じくだ……すまない」

「…………ない」


 残念ながら全滅らしい。場所が分かればひとまず近くまで行って、という形になるか。


「ひとまず地図で場所の確認するか」

「少々お待ちください」


 ルナが鞄から地図を取り出してくれる。場所は……いや、どこだよ。広過ぎて分からん。


「こちらになります」


 ルナが指差してくれて何とか場所は確認出来た。なかなかに遠いな。


「この近くに行ける奴いるか?」

「私この村に行けるよ?」

「マジか」


 予想外にもアリシアが行けるようだった。わざわざ近付いて行くとか実は怖いもの好きなんじゃないか?


「お父様に連れられてご挨拶に……本当に死ぬかと思ったよ」


 あー、うん、そういうパターンね。でもこいつのことだから男であるということから怖がったりせずに我慢とかしたんだろうな。


「と、刀夜くん?」

「アリシアは良い子だな」


 つい優しくアリシアの頭を撫でてしまう。アリシアの頑張りに対して多少なりとも俺は何かしらしてあげたかっただけだ。


「さて、それじゃあさっさと行くか。この村から向かうとして……次の街に行って……大体3日くらいか?」

「はい、その程度かと思います」


 3日か。ちょっと時間が掛かるな。もしかして移動手段に何か車的なものを作った方が良いか? いや、まずエンジンがねぇな。俺流石にエンジンの構造は知らねぇな。無理だ。

 しかしそういうギミックを作った武器というのは面白いかもしれない。多彩に動けるのは強くなれる上に色々と戦術に幅が出る。

 威力面から考えると魔法を組み合わせる必要はあるだろう。鉱石だけでは硬度は足りても威力までは恐らく足りない。それなら銃を撃った方が強い。


「あれ? 刀夜くん?」


 そこでタイミング良く話し掛けてくるイケメンな男。白髪ストレートヘアーで柔和な笑みを浮かべながらもまるで感情を感じさせない男だ。俺が認める最強の剣士、ムイである。もちろん戦えば俺の方が強いがな! ギリギリだけど!


「よう」

「うん、久しぶり。今から依頼かな?」

「まぁな」


 ん? そういや吸血鬼ってのは相当強いんだよな? なら万全を期すためにもこいつの力もあった方がいいか……?


「どうせならお前も来るか? 吸血鬼退治」

「吸血鬼?」


 依頼書を渡すとムイはそれを読んで納得した様子で頷いた。


「確かに少し面白そうな依頼だね」

「だろ?」


 ムイはこういうの好きそうだしな。怖いものとか見たい派の人間というか、色々と首を突っ込みたくなるタイプというか。

 ともかくこいつも最強と呼ばれるほどの剣士だ。吸血鬼の噂を知っているのならどれだけ強いのか知りたいくらいだろう。


「僕も同行してもいいのかい?」

「あぁ。報酬は全部お前にやるよ。俺達は別にいらないしな」

「キミは本当に欲がないなぁ」


 だからあるっての。今更金なんて貰っても嬉しくはないしな。多いに越したことはないが最低限の生活が出来るならそれでいい。


「あぁ、そうだ。お前はこの古城行ったことあるか?」

「いや、ないかな」


 残念ながら駄目のようだ。まぁ仕方ないか。誰が好き好んでこんな古城に行くのかって話だ。


「じゃあ近くまでは行くか。アリシア、頼む」

「う、うん」


 近付くの嫌なんだろう。申し訳ないな、こんなこと頼んで。

 アリシアの転移魔法陣で村へとやってきた。なんか寂れてね……? もしかして例の吸血鬼とやらにやられたとか?


「な、何この状況!?」

「さぁな……。ひとまず生きてる奴探すか」


 そんな奴がいるのかは分からないが。生存者がいればなんとか状況だけは分かるはずだ。

 周辺を探すものの家の残骸しか見当たらない。仮に吸血鬼だとすれば人を持ち去って食料にしたりとか……。


「と、刀夜くん……」

「ん?」


 アリシアが真っ青な顔で俺の服の袖を掴む。何で涙目?


「も、もも、もしかして吸血鬼が持ち去ったとか……ち、ちち、違うよね!?」


 俺と同じ想像をしたのか。うん、ひとまずちょっと怖いのは分かるんだが今それに怯えても仕方なくないか?


「落ち着け。ひとまず生存者はいなさそうだな」


 それどころか死体ひとつないとはな。俺は顎に手を当てて思案する。

 本当に餌として奪ったのか? それにしては違和感がある。血痕一つなく抵抗する人間を攫えるものか?


「刀夜さん、どうするつもりなのかしら?」

「この村に泊まるのは無理だしな。ある程度まで進んでから家に戻るか」

「その前にギルドに報告も必要だね」


 それもあるのか。面倒だが仕方ない。ひとまず先に進めるだけ進んでしまうか。


「うぅ……」

「アリシア、落ち着け? というか本当に大丈夫か?」

「だ、だ、だ、だい、たいじょ!」

「大丈夫じゃないな……」


 まぁこいつがここまで怖がってるんだ。無理強いは出来ないな。

 仕方ないのでアリシアの手を握ってやる。戦場で片手を塞ぐなど愚行も良いことだがアリシアの気がこれで紛れるならそちらの方が良い。

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