第9話 異世界魔法に必要な知識はレベルじゃどうにもならない
ここ数日同じような日常が流れていった。勉強しながらルナに癒され勉強しながらルナに癒され。そうしてルナとの距離感も縮まってきたことに安堵と嬉しさを感じながら異世界生活も1週間を経とうとしていた。
俺はというと流石に1週間、いや、5日間くらい文字の練習をしていれば流石に覚える。今では本も当たり前に読めるようになっており、この世界の知識を蓄えていた。
本を読んでいて分かったことがある。まずは魔法だ。魔法とは己の魔力を使用することで放つことが出来る力のこと全般を指すのだ。
次に特技。こちらは己の体力を使用するらしく使い続けると真面目に死ぬらしい。ピンチの時に使って死ぬというケースもなくはないようだ。
以上のことから魔法の方が優れている、と思えばそうではない。それは魔法よりも特技の方が威力が高いという点である。魔法を使う人と特技を使う人が現れた場合は特技を使う人に軍配が上がるということだ。割と複雑なものらしい。
「うーん……」
要はバランス良くどちらも覚える方が確実ということになるわけだが。残念ながら俺の周りの人、まぁルナしかいないわけだがルナは特技を覚えていない。現状完全に覚える手段を絶たれたというわけだ。
次に魔法だがこちらはルナが使えるので教えてもらうことは出来る。問題は俺が魔法陣の基礎的な構造を把握しておらず魔法が上手く発動しないというのが問題だろうか?
普通に日本に存在するRPGならこんなことを悩まずレベルを上げればいいのだがこの世界ではそうではないらしい。本当に知識がなければ駄目でステータス上の知識は魔法の攻撃力になるらしい。
「ご主人様、どうかなされましたか?」
「いや……まぁちょっと考え中」
何よりも酷いのは鍛冶師のことである。戦闘には全く向いておらず足手まとい。戦場に出ることすら邪魔とまで書かれていた。いや、他にもあった商人やらコックやらも同じようなことが書かれていたのだが。
ひとまず戦闘職と補助職という分け方をされるらしい。俺は補助職に属するわけだから足手まといでも仕方がない。しかし妥協する気もない。
例えば剣を作ったとして、それがどの場面にも対応出来ると言われればそうでもない。つまり俺は戦場というその場で適切な剣を精製出来るという利点はある。
「っ!」
魔法はそもそも魔力核というものから出来ているらしい。つまりその魔力核を破壊するという手段を使えば相手の魔法を封殺出来るということである。
「んー……」
これは技術も必要になるな。しかしまぁその辺も使えるレベルにまではするつもりだ。問題はないだろう。
「あの、ご主人様?」
「ん?」
ルナに呼ばれて顔を上げた。するとルナはにっこりと微笑んだ。
「難しい顔をされてます。またマッサージ致しますか?」
「マジか。いや、あれ集中出来なくなるんだよな……」
主にルナの胸で。弾むからな。
「そうですか……」
うお、あからさまに落ち込んだ!? ど、どうする!?
「あ、あれだ。今日は魔法に関して教えてもらおうかな!? ルナ先生頼めるか!?」
「っ! はい! お任せください!」
最近ルナの扱い方が分かった気がする。とりあえず何か世話をさせていればいいんだと。いやいやいやいや。なんだその最低な考えは……。
笑顔で魔法に関する本を持ってくるルナ。準備早過ぎる。どんだけ楽しみにしてんだよ。
「ふふ、ご主人様にお教え出来て嬉しいです」
俺も超絶美人の先生に教われて嬉しいな。
とりあえずルナの教えを受けてみる。ルナは俺より知識があるのだから何か為になることもあるだろう。
「まず魔法というのは魔力を通じて放つこと全てを言いまして、ご主人様もご存知の通り魔力核というものが存在します」
「そうだな」
「その魔力核を破壊されると魔法は機能を失ってしまい魔力に戻ってしまいます」
それも知ってる。
「そして魔力核とは必ず魔法の丁度中心に存在します」
「そうなのか?」
それは初情報だな。でも魔法の中心ってどこだろうか?
「見本をお見せ致します」
ルナはにっこりと笑みを浮かべて手の平に赤い魔法陣を展開してみせた。魔法陣からポコっと火の玉が出てくる。
「こちらはファイアボールという初級魔法になります。ここに魔力装備生成魔法で作成致しました短剣で中央を刺してみます」
ルナの手の平に創り出され短剣が火の玉に突き刺さり、中央に突き刺さった瞬間赤い粒子となって弾けた。
「凄いな。というか綺麗だ」
「ふふ。他にも例えば氷魔法なども同じです」
ルナが青い魔法陣を展開し手の平に小型の氷山を作る。
「こちらも丁度この真ん中が魔法核となっているんです」
「そうなのか」
少し分かりにくいがルナがそう言うならそうなのだろう。ルナは短剣で氷を突き刺すと見事に青い粒子へと変貌を遂げた。
「こちらの魔法核が通用するのは属性魔法だけとなります」
「属性魔法?」
聞き慣れない言葉だ。しかし何となく分かる。
「属性魔法というのは火、水、風、雷、土の5つの魔法という扱いになります。属性魔法の他に非属性魔法というものもございまして、私のこの魔力装備生成魔法やランケア様の身体強化魔法などが該当します」
「なるほどな」
確かにそういったものは核が内側にあるのだろう。だからそこに到達する時には既にそのものが破壊されていると同義。核がないというのはそういうことなのだろう。
「ちなみにですが精霊も胸元に核を持っております。魔法による存在ではないかという説もありますが実のところはよく分かっておりません」
「ということはルナは胸を刺されたら死んだりするのか。いや、俺も死ぬんだけどな?」
弱点という点では人間と精霊も変わらないらしい。
「そうなります」
「まぁルナの胸に触れようものならその時点でもう死刑だな。とまぁ脱線したが。それじゃあ魔法使いって結構不利なんじゃないか?」
魔法核が中央にあるということはそういうことになる。手練れならば一瞬で見抜いてしまう可能性が高い。
「いえ、そういうわけではありませんよ。例えば今お見せしましたのは初級魔法ですがこれが上級魔法や特級魔法になると規模が大きくなります」
「まぁそうだろうな」
上級って言ってるのに初級より威力が落ちたら意味がない。
「規模が大きくなればそれだけ狙いにくく、また例えば短剣が投げ込まれたとしましても核に到達する前に消失してしまいます」
「あぁ、なるほど」
つまり核に到達する前にその物体は無くなっているのだ。火の魔法では短剣は溶けて消え去るだろうし氷なら硬すぎて貫けずに途中で勢いは止まる。確かにそれならば狙うという選択肢そのものを取らなくなってしまうだろう。
「もちろん初級魔法などは破壊されてしまう確率が非常に高いです」
「だろうな。俺でも破壊出来そうだしな」
もちろん俺の場合は腕を犠牲にしてという話になるのだが。ひとまず魔法に関しては弱点もあるにはあるが弱点になっていないわけか。確かに強力だ。
「では続いて魔法陣の基礎構造となります」
「お願いします」
ひとまず魔法を使えるようになるにはこれを覚える他ないだろう。レベルじゃどうようもないからな。
「魔法陣というのは大きく分けて3つの機関を持ちます」
「お、おう?」
そうなのか。あの術式みたいな円にそんな機関とかいうのがあるのな。
「まず使用者の魔力を受け止める器が1つ、効力が1つ、発動が1つとなっております」
あー、確かにそうなるか。魔力を受け止める器がなければ魔力を使う必要がなくなる。効力がなければどんな魔法になるのか不明だ。そして発動させなければ魔法の意味がない。確かに重要な3機関だな。
「こちらのどれか1つが欠けても魔法は発動致しません。では具体的な構造に関しましてですが」
ルナが丁寧に魔法陣を書き上げていく。コンパス使ってないのに何で真円が書けるんだろうか? それも是非教えていただきたい。
「こちらは初級魔法の魔法陣となります」
「お、おう、よく違いが分からない」
「最初はそうだと思います。私もこの辺りに苦労致しました。ですが魔法を使う上で必ず必要なものとなります。もちろんこちらは初級魔法ですので1番簡単かと」
「そ、そうだな。続きを頼む」
それからはルナにまるで呪文のような勉強を教えてもらったわけだが相変わらずよく分からない。
ひとまず3つの機関によって魔法陣は確立されており、どれか1つが違うと魔法というものは発動しないようだ。一瞬強引に魔法時を書き換えてやろうかと考えたが魔法陣とは本人の頭の中で思い浮かべたものを発動させるらしく記憶をいじる以外の方法はないらしい。
「難しい……」
「だ、大丈夫ですか?」
ひとしきり教えてもらったが理解出来たかどうかと問われると微妙だ。恐らく3、4割くらいなのだと思う。
頭から煙が出そうな俺をルナは心配そうに見つめてくる。ええ子や。
「とりあえず初級魔法も覚えておかないと他の魔法が使えないしな……」
「そうですね。1つ覚えてしまうと後は連鎖的に覚えていきますので」
ということだった。ならば今が一番苦労する時期のようだ。
「それに私よりも理解力がお有りです。流石ご主人様です」
ルナはにっこりと微笑んで俺の頭に手を置いた。そのまま優しく撫でられる。
「あの……ルナさん?」
「はっ! す、すみません。つい……」
「いや、それは別に良いし続けてくれてもいいんだけどな。そっちじゃなくてその……胸がな」
ルナが前屈みで撫でるので俺の眼前に胸が。しかもそれがブルンブルンしたら流石に童貞には厳しいものがある。
「す、すすすす、すみません!?」
ルナは慌てて胸を両腕で隠した。余計に強調された気がするのは気のせいか?
「と、とりあえず魔法を使えるよう頑張りましょう!」
「お、おー……」
お互い赤面しながらも前向きに。俺の異世界生活は少し前に進んだ。