特別編ルナ視点第1話 いつまでも続いて欲しい日常
私は精霊だから奴隷としての扱いを受けるものだと思っていました。だって私の周りの人はそういう風な生き方を強要されていたから。
それが今ではどうでしょうか? 素敵なご主人様と恋人同士になれ、そして更には沢山の仲間に囲まれて幸せな日々を過ごしていました。
いつも通りの日常は退屈だと思う方々も多いでしょう。ですが私にとってはそういう当たり前な日常がとても楽しく、嬉しいです。
「これで足りますよね……?」
ご主人様は今も鍛冶屋スペースで銃に関して試行錯誤されてるのだと思います。夕食にもお顔を出さなかったのでお夜食におにぎりを作りました。
ご主人様の世界のものでとても簡単かつ美味しい食べ物です。異世界とはやはり食文化も違うようで、ご主人様の教えてくださるレシピはいつも新鮮です。
時刻は既に日が変わる時間帯でした。皆様そろそろお眠りになるのでしょうが……。
1人で眠るのはとても寂しいです。もちろん1人で眠れないというほど酷いわけではありませんが可能なら常にご主人様と眠りたいと思ってしまいます。
鍛冶屋スペースに向かうもののご主人様は私の存在に気付かない程に熱中されているようでした。
私はその凛々しい横顔を眺めながらうっとりしてしまいます。ご主人様とても格好良いです。
「ふぅ……」
「お疲れ様です」
「おおう、ビックリした。気付かなかった」
私が声を掛けるとご主人様はビクリとしました。本当に気付いていなかったようです。
「すみません、驚かせてしまって」
「いや、俺の方こそ悪い。それでどうかしたのか?」
「夕食を取っていらっしゃらないので。お夜食を」
私は置いていたお盆を手に持つ。ご主人様はキョトンとした後に少し微笑みました。
「悪いな、助かる」
「いえ、ご主人様が頑張っておられるのは知っておりますから」
本当に知っています。私が一番長くご主人様と一緒にいるんです、誰よりも知ってます。
「手洗ってくる」
「はい」
ご主人様は鍛冶場を後にしました。静寂はやはり少し寂しいものがあります。
1人でいた頃の方が長いのに、私は今では誰かと一緒にいたいと思っています。本当に人の感情というのは移ろいやすいものです。
ご主人様は戻ってくると私の握ったおにぎりに手を付けてくださいました。
「美味いな」
「味に変化はないかと思うのですが」
「ルナが作ってくれたってだけでもう満点だからな」
そんなことを言われると照れてしまいます。私が作ったものであれば……ですか。
「おにぎりっていうのは作った人の気持ちが大事だからな」
「そうなのですか?」
それは感情論というものかと思います。味には比例しないはずですが。
「あぁ。こうして心配して作ってきてくれたってだけで俺の心はもう満たされてる」
「そういうものですか」
私にはあまり分かりませんが。ですが確かに逆の立場で仮にご主人様が作ってくだされば私も胸がいっぱいになりそうです。ご主人様の心が満たされるというのはそういうことなのでしょう。嬉しいです。
「ご主人様が喜んでくださるのであれば幾らでも……」
「ルナ……」
「ご主人様……」
私達は見つめ合うとどちらがともなく軽くキスをしました。これだけの行為のはずなのに胸の内からポカポカと暖かいものが溢れてきます。
「ふふ……」
「嬉しそうだな」
「ご主人様とこう出来るのはとても嬉しいです」
「…………そうか」
無愛想に返したご主人様ですが照れていらっしゃるようです。可愛いです。
「そういえば話は変わるのですが」
「ん?」
私は昼間に聞いたアイさんの話をすることにしました。これからの事になりますので予定は早く立てた方が良いと思いまして。
「近々また依頼を持ってくるそうです。名指しらしいです」
「そうなのか?」
「はい。まだきちんと受理されていないようなので近々ですが」
受理されるのも時間の問題のようです。簡単な依頼ですのですぐに終わるとは言っておりましたが。
「…………ずっと思ってたんだけど、ルナって普段は様付けだよな?」
「はい、そうですが……」
「なんであの人だけアイさんなんだ?」
そういえばそうです。何故かと言われると……。
「私のお姉さんという感じだからでしょうか?」
「そうなのか?」
「はい。私の方が年は上ですが。包容力があるとても素敵な方ですので」
「包容力の点で言ったらお前に勝る奴なんていないと思うが……」
ご主人様はそんな評価をしてくださっているようでした。嬉しいです。先程から胸がいっぱいになってしまいます。
ご主人様はおにぎりを1つ食べ終わると指に付いたご飯粒を食べます。少し色っぽいです。
「ん? どうした?」
「い、いえ」
舌なめずりされるなんて珍しいです。ふ、普段はそこまで色香を出さないはずですが。今日はその……そういうことをする予定なのでしょうか?
「ご主人様はこの後どうされるのですか?」
「この後? あー……ひとまず銃の試作品は出来たしな。残りの作業は寝た後に回そうかと」
やはりそうでしたか。と、ということは……。
「きょ、今日は誰かの寝室に……お邪魔する予定などは……」
「いや、ないけど」
「な、ないんですか!?」
あれはご主人様の自然な仕草でしたか! ま、まさかおにぎりにこんな魔性があるとは思いませんでした。
「そんなに意外か?」
「は、はい……」
ご主人様のことですからその……そういう予定はたくさん入っているものかと思っておりました。
私の番がいつ回ってくるのかと心待ちにしていたくらいです。よ、予定がないのであれば私が立候補しても良いのでしょうか……?
「あ、あの、ご主人様」
「ん?」
「その……」
わ、私から言ってもいいものでしょうか? そ、そもそもご主人様も1人になりたい時とかありますよね!? だ、だだ、大丈夫でしょうか!?
「どうした? 言いにくいことか?」
「い、いえ……」
ほ、本当にいいんでしょうか。ご主人様はお優しいですから、私が言ってしまうと絶対に了承されます。例えご主人様が嫌だと思っていたとしても。
「言いたくないなら言わなくてもいいぞ?」
「そ、そういうものじゃないんです。え、えっと……」
このままではご主人様が別の考えを持たれてしまいます。頭の良いご主人様ですから私のことを絶対に気にして考え込んでくれます。
あ、あれ……? そうしてくださる方が嬉しいです? い、いえ、ご迷惑をお掛けするわけには……!
「だから言わなくていいって。それよりルナ、一緒に寝ようぜ?」
「え、あ、は、はい!」
ご主人様の方から言われてしまいました! も、もしかして私の気持ちに気が付いて気を遣ってくださったんでしょうか!?
「ルナと2人で寝るのも久しぶりだな。楽しみだ」
「あ……そ、そうなのですか?」
「あぁ。優しいし包容力凄いし抱き締めてくれるし」
わ、私ってそこまでご主人様に色々と与えられてるんでしょうか。ですが嬉しいです。ご主人様がそういう風に思ってくださるなんて。
「い、言ってくださればいつでも幾らでも添い寝させていただきたいです!」
「お、おう?」
ご主人様が望んでくださるのならいつでも構いません。例え私が死にそうであってもです!
「ご主人様」
「ん?」
「あーんしてください」
「あーん」
ご主人様は何の抵抗もなく私のあーんを受け入れてくれました。他の人がいますと恥ずかしそうにされますが2人きりなら問題ございません。
「どうですか?」
「ん……美味い」
「こちら、中身はサンドトゥーナになります」
「え、マグロ?」
マグロというものがよく分かりませんが恐らく異世界の言葉なのでしょう。
「マグロというのはどういったものなのでしょうか?」
「えっと、赤身の魚というべきか?」
「あ、確かにその通りです!」
ご主人様の世界ではマグロというのですね。覚えておきましょう。
「おにぎりにマグロを入れるとは思わなかったが……」
「そ、そうだったのですか!?」
「いや、でも美味いぞ。この世界版のおにぎりだな」
ご主人様は本当に美味しそうにしてくれます。作ってきて良かったです。ご主人様のこの表情が見れたのなら充分です。
ご主人様は少し急ぎめにお夜食を食べると散らばっていた部品を回収して一箇所にまとめます。
「それじゃあ寝るか」
「はい!」
歯を磨いてご主人様のお部屋にお邪魔させていただくと2人でベッドの中に入ります。
「ルナ」
「ご主人様」
どちらがともなく抱き締め合います。ご主人様の男らしいゴツゴツとした感触がとても心地良くてついつい浸ってしまいます。
「ルナは抱き心地良過ぎてもう二度と離したくない……」
「そ、そうですか?」
ご主人様も私と同じように私の身体に浸ってくれているのでしょうか? 私の身体はご主人様の目に魅力的に写っていますでしょうか?
そんな不安をあっさりと解決してくださるようにご主人様は背中に手を回してギューっと抱き締めてくれます。
そこまで強く抱き締めてくださっているのに私は全く痛くありません。ごれがご主人様のテクニックです。丁度痛くない、それでも強いくらいに抱き締めてくださいます。
「ルナ……キスしたい」
「はい……」
ご主人様からのお願いを断るはずがありません。私もご主人様ともっとしたいです。
2人で目を閉じると何度も何度もキスをします。その時間は徐々に長く、そして情熱的なものへと変わっていきます。
「ん……んぅ……」
ご主人様の舌が入ってきて私の舌と絡まります。それだけの行為ですがとても気持ち良く、ついついもっと求めてしまいます。
「ご、ご主人様……その……か、硬くなって……」
「わ、悪い」
「いえ……」
それは私で興奮してくださっているということです。恥ずかしいですがとても嬉しいです。
周りにたくさん魅力的な方々がいらっしゃいますのに私もきちんと愛していただけて。それだけで私はとても嬉しいです。
「その…………しませんか?」
「お、おう。ルナの方からお誘いいただくとは」
「わ、私もその……したいです」
ご主人様は私の頬に手を添えると優しくキスしてくださいました。その手はどんどんと胸へと伸びてきて。
「んっ……!」
「ルナは胸、敏感だよな……」
「そう…何でしょうか?」
ご主人様が這わすように優しく胸を愛撫してくれます。気持ち良くて嬉しくて、私もこれだけで昂ぶってきます。
「ご、ご主人様……私もう……我慢出来ません……」
「俺もだ。その……もっとしたい」
私達の気持ちが同じかどうかは分かりません。ですが願わくば……このまま幸せな日々が続いて欲しいと思います。




