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特別編マオ視点第2話 初めてのデート その2

 刀夜さんをひとしきり抱き締めた後にその場に座る。刀夜さんも少し落ち着いたようでボーッと湖を見ながらのんびりとした時間を過ごしている。


「刀夜さんの友達ってどんな人だったの?」

「変わった奴だぞ? 見た目は男で中身は女だったな」

「いきなり強烈ね」


 確かにそういう人もいるけれど。そんな特殊な人と友達だったのね。

 確かに刀夜さんはそういう人でも全く気にしなさそうだもの。人間ですらない私のことですら好きだって言ってくれるものね。


「まぁそいつは自殺しちまったんだけどな」

「本当に強烈ね……」


 どうしてって言わなくても大体分かるけれど。人は人と違うからという理由だけで蔑まれるもの。

 見た目と中身が違うというただそれだけの違いなのにそういう扱いを受けるのね。

 刀夜さんも両親がいないから特別な目で見られることが多かったらしい。やっぱり苦労人なのね。


「刀夜さんはその時どうしたの?」

「…………何も出来なかったな。でも止めようともしなかったしあいつの理論もよく分かってたからな」

「そうなの」


 多分友達というだけでそこまで深い付き合いはしていなかったのね。でも話す程度だったから一応友達と。


「そいつに死ぬ前に告白されちまってな。ちょっと驚いた」

「こ、告白……本当に壮絶ね」


 そんな特殊な経験誰がするのかしら。刀夜さん本当に色々経験してるのね……。一生敵わない気がするわ。


「まぁ何も出来なかった無力な人間だったんだ」

「そんなことないわよ」


 詳しくなくてもなんとなく分かる。その子が刀夜さんに告白した理由も。


「あなたはその子にとっても唯一だったっていうことでしょう?」


 刀夜さんの世界では一夫多妻、一妻多夫じゃない。だからこそ唯一なのよね。

 そんな刀夜さんに告白したのだからその子は刀夜さんに色々と気持ちをもらっていたはず。だから後悔なんてしていないんじゃないかしら。


「最後に言いたいことも言えて、良い人生だって死んだんじゃないかしら?」

「…………いや、多分違うんだろうけどな」

「そ、そうなの?」


 やはり憶測で話し過ぎたのかもしれない。私はその子のこと何も知らないのに。


「…………一緒に死んで欲しかったんだろうな。多分だけど……」

「…………そう」

「でもその唯一っていうのはそうだったかもしれないな。なら良い事もあったんだな」


 刀夜さんは少し寂しそうに笑ってみせる。普段からクールながらものらりくらりとしているくせにこういう顔が出来るのだからズルイ。

 いつもの雰囲気じゃないのは私がさっき抱き締めていたからかしら。もしかして私に甘えてくれている?

 だとしたらとんでもなく不器用ね。本当に可愛らしいわねもう……。


「…………また抱き締めてあげましょうか?」

「もう流石にな……」

「あら、甘えてもいいのよ? こ、恋人でしょう?」


 刀夜さんがこうやって気持ちをきちんと吐き出してくれる機会は少ない。抱え込んだりしないでもっと頼って欲しい。


「お前は優しいな」

「そんなことないわよ。刀夜さんの方が優しいに決まってるわ」


 本当にね。私は刀夜さんのように自己犠牲で誰かの為に動けない。そういうことが出来るのは刀夜さんが優しい証拠よね。


「俺が優しい?」

「どうしてそこでキョトンとするのかしら」

「いや、自覚がねぇから」


 ルナちゃん達にも散々言われててまだ自覚ないのね……。まぁ刀夜さんにとっては当たり前のことをしているのだろうけど。


「はぁ……」

「溜息を吐かれることなのか?」

「自覚がないって罪よね」

「えー…………」


 刀夜さんの表情が……感情がころころと変わる。少し楽しいわねこれ。今からかったらもっと良い顔を見れるかしら?


「ふふ……このままだとルナちゃん達に嫌われちゃうわよ?」

「え…………」


 しかし私が想像した表情を上回るくらいに絶望した表情を浮かべた刀夜さん。え、こ、言葉だけでも駄目なの?


「俺……嫌われるの?」

「じょ、冗談よ! 冗談だから!」


 涙目になった刀夜さんを慌てて慰める。刀夜さんはこの手の話題に敏感なのね。あ、焦ったわ……。

 そもそも刀夜さんが嫌われるはずないじゃない。私も負けないくらい好きだけれどそれ以上にルナちゃん達のあれは異常だと言わざるを得ないわ。


「刀夜さんってそういうところ繊細よね……」

「あいつらに嫌われたらもう俺に生きる価値なんてねぇよ……」

「そこまで!?」


 あの子達もあの子達だけれど刀夜さんも刀夜さんよね。流石に私もビックリよ……。


「例え世界中の人が刀夜さんを嫌いになっても私だけは好きだから安心なさい」

「お、おう……」


 刀夜さんに向ける愛は重過ぎるくらいが丁度良いのかもしれない。絶対に離れないって気持ちをきちんと向けないと不安にさせてしまうわね。


「そんな状況になったらどうしようか」

「とか言いつつもあまり気にしないのでしょう?」

「気にするだろ。お前らが危険な目にあうんだぞ?」


 あ、そっちの心配をしてるのね。刀夜さん自分のことは後回しにするんだから。


「はぁ…………」

「何故溜息を吐く……?」


 刀夜さんは本当に変わらないわよね。仕方ない。


「刀夜さん、こっちへ来なさい」

「え?」

「いいから来なさい」


 無理やり刀夜さんの手を引っ張って私の前に座らせる。私は後ろから刀夜さんを抱き締めた。


「ちょ……!」

「せっかくのデートなんだからこうしててもいいでしょう?」

「そりゃ別にいいけど……」


 ふふ、刀夜さんの背中は暖かいわね。それに胸も押し付けているから刀夜さん顔真っ赤。私も恥ずかしいけれどこんな刀夜さんが見れるならそれもどうでもいいわね。


「刀夜さん可愛い……」

「ちょ、お前な……」


 刀夜さんは本気で恥ずかしがってくれている。ふふ……もう4人も経験しているのにまだ初心なのね。可愛い……。


「ほら、もっとやりたいことあるでしょう? 今なら私も好きにしていいのよ?」

「…………えっと、じゃあこのままで」


 あら、現状維持? それは逃げているんじゃないかしら?

 わざわざ胸を押し付けているのだから反応してくれてもいいのに。もうここで初めてを奪ってもらおうかしら?


「こうしてもらえるのもいいな。のんびり出来るし嬉しいしで」


 刀夜さんは私の手に自分の手を重ねると目を閉じた。こ、これはエッチなんて雰囲気じゃないわよね。

 こうして落ち着いてくれてるならいいけれど。ふふ……。


「おっぱいを押し当てられてるのがそんなに嬉しいのかしら?」

「え、ま、まぁそりゃあな。俺だって男だぞ……?」


 正直に返してくれるのね。私の胸、刀夜さんの好みに合うかしら?


「今揉んでもいいのよ?」

「…………それなら家のベッドでしたい」


 まぁそうよね。刀夜さんそういうのは気にしてそうだものね。特に私にとっては初めてだからという理由で。優しいわね。


「…………外でしたいとか見られながらしたいとかないよな?」

「ないわよ」

「そ、そうだよな」


 そういう性癖は苦手なのかしら? 刀夜さんは色々とオープンだもの。外でも気にしないと思っていたけれど。


「流石に他の奴らにお前らの裸は見せられん。見たら殺す」

「あ、そんなレベルなのね」


 そういうこと。遠回しな嫉妬ねこれ。

 刀夜さんも意外と独占欲があるのね。なら私達が他に好きな人が出来たらどうするつもりなのかしら? ないと思うけれど。


「もしルナちゃんが他の彼氏を連れて来たらどうするの?」

「そ、そん時は受け入れるしか…………」

「どうしてそんなに涙目なのよ」


 確かに刀夜さんがそうだから強くは言えないわよね。刀夜さんだけ複数関係を持っていて私達は駄目なんてワガママもいいところだわ。

 けれどあり得ない話じゃない。それだけ魅力的な人達に囲まれているというのも事実。刀夜さんも苦労してるのね。


「危ないのはルナちゃんとアリシアちゃんね、他は大丈夫でしょう」

「んなことねぇよ。お前ら全員魅力的なんだ、その良さに気付く奴も多い。というか気付かないとか馬鹿じゃねぇの」

「あなた私達のこと好き過ぎでしょう……」


 どれだけ愛してるのよ。う、嬉しいけれど。心配にもなるわね。


「刀夜さんは心配し過ぎよ。私達が刀夜さんと同じくらい魅力的な人を見つけられるはずないでしょう?」

「そ、そうか? 俺が魅力的だっていうのも甚だ疑問だがそういうことなら……」


 刀夜さんは渋々ながら頷いた。納得はいっていないみたいだけれど。


「刀夜さんは格好良くて魅力的よ? ふふ……じゃなきゃ私が惚れるはずないでしょう?」

「そ、そうか。ま、まぁお前らがそう思ってくれるなら他の奴らなんて知ったことじゃないんだけどな」


 でしょうね。刀夜さん、自分の噂とかあまり興味なさそうだもの。だからコロシアムの時も平気で喧嘩を売れるんでしょうけど。

 あんなのを聞かされて惚れない人なんていない。コウハちゃんが心底刀夜さんを心酔してるのはそういうのがあるからなのでしょう。


「さて、結構のんびり出来たし、そろそろ服屋行くか?」

「そうね」


 日が暮れてしまうと特にルナちゃんに怒られそうね。さっさと買ってさっさと帰らないと。


「お前とのデートももう終盤か……なんか寂しい感じだな」

「あら、刀夜さんなんだからデートなんて何回もしてるでしょう?」

「いや、色々忙しくてな。この世界って何でこうも暇がないんだ?」


 今が絶賛暇なのだけれど。まぁ獣人殺しが出るまではの話だけれど。刀夜さんならあっさり殺しちゃいそうね。もう片腕がないもの。

 あの時の刀夜さんは格好良かったわね。絶対に私の方へは来させないようにしてくれていたもの。そういうことが出来るとは思っていなかった。

 本当に、この人に依頼をして良かった。それも見返りなんてなければむしろ沢山色々なものを貰ってしまった。


「ん? どうした?」

「いえ。刀夜さんは可愛いわね」

「何だよいきなり?」


 今まで同族をからかってきたけれどもう駄目ね。刀夜さんじゃないと満足出来ないみたい。そういう意味でも私の唯一と言えるのでしょうね。


「ふふ……早く行きましょう?」

「お、おう」


 刀夜さんの腕に自分の腕を絡めると私は転移魔法陣を展開した。今の幸せな時間は終わるけれどこれからも続いていく。

 刀夜さんには恥ずかしいから言えないけど私は今自信を持って言える。

 私は今幸せです。

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