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特別編アスール視点第1話 幸せな夜

「すぅ……すぅ……」

「ふふ…………」


 ベッドの中、刀夜の頭を撫でる。心地好さそうな表情を浮かべる刀夜は格好良いというよりは可愛い。


「ん…んぅ……?」

「…………起こした?」


 まだまだ深夜。寝ていても良い時間帯だ。刀夜は寝惚け眼のままボーッと私を見つめる。


「…………刀夜?」

「アスール……今何時だ?」

「…………まだ3時」

「そうか……」


 刀夜の目が再び閉じられる。そのまま何故か私を抱き締めて心地好さそうな寝息を立てる。


「…………刀夜かわゆす」


 刀夜を抱き締めると嬉しい気持ちが胸の底から溢れてくる。この気持ちが幸せだということなのを私は刀夜に会って初めて知った。

 私は有翼種。それに加えて言葉を話すのが苦手だ。何かを聞かれると一瞬何を言えばいいのか分からなくて考えてしまう。

 多分刀夜はそれを独特の間を持っていると思ってる。それくらいの認識でいてくれる。

 元々有翼種の私は人と話す機会に恵まれない。加えて少し間を空けてしまうせいで誰にも話を聞いてもらえなかった。

 刀夜が初めてだった。あの図書館で話し掛けてくれた時から私にとって刀夜は特別だった。


「…………刀夜好き」


 折角考えてから発言してるのに結局こんな陳腐な言葉しか出なくて恥ずかしくなる。でもこれが正直な私の気持ち。

 ギューっと刀夜を抱き締める。刀夜は相変わらず目を閉じて心地良さそうに眠っている。

 刀夜も私と同じようにこうして眠ることが嬉しいと思ってくれてる? 添い寝しているだけなのに嬉しい?


「…………刀夜」


 時折不安になる。刀夜は本当に幸せ? 私と一緒にいて他の人から色々言われてるのは知ってる。だからこそ不安になる。人の心は移りゆくものだから。

 …………私のお母さんもそうだった。人が変えてしまった。


「んぅ……胸揉みたい……」

「…………」


 随分と酷い寝言を言っていた。私がこんなに悩んでるのに刀夜はそんなくだらないことを考えてるの?


「…………刀夜?」

「んぅ……いひゃい……?」


 思い切り頬を引っ張ると刀夜の目がゆっくりと開いた。頬を引っ張られていることにキョトンとした。


「あ、あんあ?」

「…………刀夜は呑気」


 本当にこんな人がそんなことになる? ならないような気がした。むしろそんな世の中の偏見すらも変えてくれそう。


「え、な、何? 俺なんか怒らせるようなことしたか?」

「…………おっぱい揉みたいって言った」

「え、マジで?」


 普段クールなイメージがあるから。刀夜もそんなことを口走ったなんて到底思えなかったんだろう。

 刀夜は強い。何よりも心が。

 悲しみに対して。人の恨みに対して。痛みに対して。だからこそ心配になる。

 強いが故に脆い。一度亀裂が入るとそこから崩れてしまう気がした。そんなギリギリの中で生きている気がする。


「アスール?」


 キョトンとする刀夜。本人に自覚があるのかは分からないけど。いや、刀夜はそういうの鈍いか。


「…………」


 不安にならないわけがない。だから刀夜は必死で、それに格好良いんだろう。一時のくだらない感情だけで刀夜を起こしてしまった。


「…………ごめん。……起こして」

「胸触りたいとかアホみたいなこと言ってる俺が悪いんじゃないのか?」

「…………それは否定しない」


 というか出来ない。刀夜は想いを伝えるのが苦手だからこういうワガママも少ない。

 別に悪いことをしてるわけじゃない。刀夜も人並みの男の子だということだ。何も変わらない。私達と何も変わらない不安になったり、悲しんだり、喜んだり。

 そんな何も変わらないのにこうも違う。こうも魅了的に見えてしまう。


「…………おっぱい揉めたら刀夜は嬉しい?」

「え? まぁそりゃあな。俺だって男だぞ?」


 こうやって正直に言うのも当たり前のようだった。刀夜は良くも悪くも嘘をあまり付かない。多分必要だと思った時だけ。

 確かに人とはあまり変わらないかもしれないけど。でもそういう人にはない部分を多く持ってるから魅力的なんだと思う。


「…………なら触る?」


 だからだろう。簡単に身体を許してしまう。いや、多分違う。多分もっと私に触れて、私のことを知って欲しい。

 刀夜になら自分の全てを見せて、その上で受け入れて欲しい。

 刀夜は目をパチクリとさせた後に頬を少し染めて視線を逸らした。指が頬をかいていた。


「それはなんというか……止まらなくなりそうだから遠慮する」

「…………別にいいのに」


 恥ずかしいのか全然触ってくれない。どうすれば触ってくれるんだろう?


「あ、いや、触りたいんだけどな? 明日は依頼に行くだろ? 疲れを残したんじゃ流石にな……」

「…………止まらない時は止まらない」

「そうなんだが。今はまだ我慢出来る。あ、でもヤバくなったら頼もうかな」


 刀夜でも抑えられない時があるんだ……。


「…………1人で処理しないの?」

「お、おう……。まさか女性の口からそんなこと聞くとは思わなかったが」


 みんな恥ずかしがるけどこれは当然みんなしてる行為。生理現象のようなものだと思う。


「いや……その……やっぱりしてもらった方が気持ち良いし……」


 刀夜は恥ずかしそうにしながらもそんなことを言ってくれる。つまり刀夜も1人で出来るけどそれよりもしたいってこと?


「…………刀夜かわゆす」

「お、お前な……」


 刀夜は呆れた様子で私の頬を引っ張った。優しく摘むように。

 刀夜のお仕置きはいつもこう。優しいから好き。からかっていると毎回してくれるのも好き。


「…………刀夜、もっとキツイお仕置きある?」

「キツイお仕置き? もうしてんだろ?」


 刀夜にとってはこれもキツイお仕置きらしい。普段他の人には冷たいのに仲間にはいつもこう。


「…………ならもっとする」

「え?」


 刀夜にももっと自分の感情を出して欲しい。私は表に出すのが苦手だから。一緒にワガママを言って欲しい。

 私は刀夜に抱き付くと強引に刀夜の手を掴んで自分の服の中に入れる。


「ちょちょ!? あ、アスールさん!?」


 刀夜は慌てたように頬を真っ赤に染めた。可愛い。それに刀夜の手は暖かくて気持ち良い。


「ん……っ……!」


 気持ち良い……。刀夜の手、もっと触って欲しい。


「ちょ、あああアスールさん!?」


 本当に大慌てで刀夜はパニックを起こしている。刀夜に素直になって欲しかっただけなのに私が我慢出来なくなってきた。


「…………刀夜、もっと触って」

「いやだから明日! …………そ、そんなにしたいのか?」

「ん…………興奮した」


 刀夜もしたいと思ってくれているらしい。少し戸惑いながらも確かめるように私のおっぱいに手を這わせる。


「ん……んぅ……」

「い、痛いか?」

「……平気。…………気持ち良い」


 私も負けじと刀夜の肌に触れる。刀夜の肌は男らしくてがっしりしてる。


「…………男らしい」

「そうか? いや、まぁ男なんだけどな?」

「ん……素敵な男の子」


 そんなこと言われなくても分かってる。そうじゃなきゃ刀夜をこんなに好きにならない。


「…………どうも」


 刀夜は一見無愛想に見えるような台詞を返してきた。でも分かってる。恥ずかしいだけなんだろう。


「…………刀夜好き」

「俺もだ」


 互いにどちらがともなく顔を近付け、キスをする。願わくばこういう時間が永遠に続きますように。


「もう止められないぞ?」

「ん…………刀夜になら何されてもいい」


 それくらい愛してる。私は刀夜の背中に手を回すと下腹部の膨らみに手を掛ける。


「……手で大きくする」

「俺もは触ってていいか?」

「ん…………私も気持ちよくして?」


 例え次の日ルナに怒られるとしても私はこの愛してもらえる幸せな時間を楽しんだ。

 次の日、案の定ルナには怒られた。怯える刀夜は少し可愛かったのは内緒。

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