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第74話 拳銃の方向性? 嫁の助言で即決!

 複雑なパーツを幾つも作製する。鍛錬魔法を持ってすれば物の形を変形させることなど容易いのだ。

 軽く叩いて角を落としたりと大変繊細な作業を繰り返しながらどんどんと必要なパーツを作っていく。


「あ、やべ。数ミリズレてる」


 魔力を通す部分は誤差など許されない。こればかりは運や感覚だけの問題になってしまう。

 何度も何度も修正を繰り返し、何度も何度も当てはまるかを確認する。気が付けば周囲は部品のゴミだらけになっていた。


「ご主人様、朝です……って何ですかその部品の量は!?」

「いや……まぁなかなか難しくてな……。というかもう朝なのか」


 普通に徹夜してしまったみたいだ。これはマズイ。


「ご主人様?」

「いや、わ、悪い。ちょっとのめり込み過ぎて」


 ひとまず起きてきたのならリルフェンのライジン装備も試すか。俺の銃もなんとか形にはなったしな。


「でもほら」

「あ、綺麗な白銀ですね」

「だろ?」


 俺の手元には白銀の綺麗な拳銃が。火、水、雷、風、土の5属性を使い分けられる優れものだ。


「とりあえず飯食ってそれ試すか」

「はい」


 ルナが嬉しそうに頷いてくれる。

 朝食を終えると全員で街の外へ。何かあって街を傷付けたら大変だからな。

 そして観客は俺達だけじゃなくもう1人。


「僕も楽しみだよ。異世界の武器」


 俺が最強の剣士だと認めるその男、ムイは柔和な笑みを浮かべていた。何というか、相変わらず読めない男だ。


「今日はいいのか?」

「うん。今日は僕もオフだからね」


 俺は最近ずっとオフだな……。ギルドからの緊急の依頼もないしな。ムイは1人だから余計に忙しいのかもしれない。


「貴重なオフを俺達に使うなんて物好きだな」

「そんなことないよ。キミの作るものは大抵面白いし実用的なものばかりだからね」


 そんなムイの足にはライジン装備が。これは久しぶりに出来るか?


「それじゃあ約束通り剣術を教えてくれって言ったらどうするんだ?」

「大丈夫だよ? その為にも来てるしね」


 だからお前貴重なオフだろうが。ま、まぁお前がいいならそれでいいけど……。


「そうか。悪いな」

「ううん。これも約束だからね」


 こいつは義理堅いからな。そこが良い点でもあるんだが。

 ひとまず気を取り直して適当な位置に標準を決めて銃を構える。さて、どうなることやら。


「まず炎属性から行くぞ?」

「うん!」


 そんな楽しみにされても困るんだけどな。

 俺はカチリと魔力の通る管をスイッチ1つで変える。セーフティの箇所にそれを付けてあるので片手で変えることが出来るようにしてある。

 銃弾を装填する必要がないのでそのまま構えると引き金を引いた。

 赤い魔法陣が銃口に展開され、炎のビームが一気に射出される。俺はその衝撃に少し後ずさる。

 炎はあっさりと標準からズレ、目的の岩の横を軽くスルーして彼方えと消えていった。


「痛って……」


 流石に反動が大き過ぎる。そして手が裂けそうになった。超痛い。


「だ、大丈夫ですか!?」

「あぁ、まぁな」


 アスールが瞬時に回復魔法を掛けてくれる。ありがたい。痛みがどんどんと引いていき、最終的には完璧になくなった。


「悪いな」

「ん……気にしなくていい」


 アスールの頭に軽く手を置くと優しく撫でる。アスールは目を閉じてその気持ち良さに浸っていた。


「かなり高威力にしたわね」

「まぁな。ひとまず上級属性魔法にしてる」


 流石に特級属性魔法にしてしまうと銃そのものが溶解しそうだったしな。ワンランク威力を抑えた。

 しかし予定外なのはそれでも発射される銃口が小さい為に自然と魔力が一点に集まることだ。その為、上級属性魔法でも特級属性魔法に匹敵する威力を軽々出してしまう。

 銃を見るとその威力に白銀の綺麗な構造があっさりと傷だらけになってしまった。これに耐え得る鉱石を探さないといけないわけだが。


「これ後4回も撃てるのか……?」


 俺が予想した通りの結果にはならなかったが。分解して中の構造を確認すると中は全くと言っていい程に無傷だ。

 ここから想像出来るのは魔法というのは撃ったとしても核の内側になる銃の内側には何の力も働かないということだ。


「ふむ……」


 つまりは内側の構造は別に強化する必要性はないということだ。しかしそれは炎属性に限るのかもしれない。だから他のも試さないといけないわけだが。


「まぁいいか……」


 ひとまず死にはしないだろ。俺はスイッチをカチリと切り替える。これで水魔法を撃てるようになった。


「んじゃ、撃つぞ」


 言葉と共に引き金を引いた。撃ち出された大量の水が彼方へと消えていった。標準合わねぇ……。


「水属性はほぼ威力ないんだな」


 炎魔法に比べて全く影響がない。逆にこれで敵を倒せるのかどうか怪しくなってくる。


「水魔法は基本的に広範囲攻撃ですから。氷魔法にした方が良いのではないですか?」

「そういうことか……」


 基本的に広範囲攻撃なのだ、それを一点に集中させたところで広範囲攻撃という特性は変わらない。つまりは強制的に集中攻撃したところで悲しいだけだという現実だ。

 水魔法は銃には向かない。なら氷魔法に変えておくべきだろう。


「悪いな」

「いえ、ご主人様の力になれることが私にとって何よりもご褒美ですから」


 そんなことにっこりとした笑顔で言わないで欲しい。照れるだろうが。


「……そうか」


 ルナから視線を逸らして頬をかいてしまう。俺もルナの力になれるだろうか?


「…………刀夜、照れてるの分かりやすい」

「そういうのは分かってても指摘しないのが優しさだろ?」

「…………更に刀夜が羞恥するから」


 こいつ……。仕方ない。こういう性格だしな。こいつなりの愛情表現と考えれば可愛げもあるというものだ。


「…………刀夜、お仕置きは?」

「ん?」

「…………お仕置き。……いつもならするのに」

「お仕置きして欲しいのか?」


 アスールの頬を軽く引っ張ると何やら少し嬉しそうな顔をされた。Mか? ドMなのか?


「…………ありがと」

「お、おう。礼言われるようなことしてないんだがな」


 ひとまず進めようか。まだ後3発残ってるしな。


「次、風魔法だ」


 俺は銃口を再び標準にしている岩に向ける。全く当たらないんだけどな。俺の射撃の腕が悪いんだろうけど。

 カチリと魔法を切り替え、引き金を引く。瞬間緑の魔法陣が展開され、強い風と共に竜巻が撃ち出されてどんどんと上空へと登っていく。


「おー……終わりか」


 射程短っ! なんか知らんけど上に上がっていったせいで岩にも当たらなかった。


「今のは恐らく核が移動したからです」

「核が? あー、そういうことか」


 つまり持続的に風が発生するのだが拳銃の反動で腕が上を向く。そのせいで風が上向きになってしまい、結果として真っ直ぐには飛ばないということだろう。


「なるほどな……」

「…………実現は難しそうですか?」

「まぁそうだな……」


 銃はやはりこの世界じゃ使えないのか? いや、そんなことはないはず……だと思いたい。


「と、とりあえず雷と土も撃っちまうぞ」


 これを撃って後から色々と決めよう。そうじゃないと今は結論を出せない。


「行くぞ?」


 拳銃を標準に合わせ、カチリと属性を変えて今度は雷に。俺はそのまま引き金を引いた。


「ぐっ!」


 バチンッ! と強い衝撃を発生させて雷を纏った銃弾が高速で岩を貫いた。雷魔法は貫通力に優れる。銃を使えば苦手なはずの岩をも貫けるらしい。

 しかし反動が強いな。慣れれば使えなくはなさそうだが。普通にハンドガンを作ったはずなのにマグナムになっちまったぞ……。


「次、土魔法だ」


 続けて銃口を向けると引き金を引く。撃ち出された石が普通に飛んで行くという悲しい結末になり、標準にしていた岩にぶつかると両者ともに砕ける。


「…………普通に石投げたのと変わらないね」

「そうね……」

「うむ……い、いや、威力は凄かったぞ?」


 そんな微妙そうな顔しなくても。いや、確かに微妙だけどよ?


「使えるのは炎と雷だけだったな」


 これじゃあ実現は微妙か? 多分上級属性魔法を特級属性魔法に変えても威力が上がるだけで大した変化は見られないだろう。


「あの、ご主人様。少し提案よろしいでしょうか?」

「ん?」


 提案があるのか。これは聞かなければならない。特にルナのことだしな。魔法関連で何かあるのかもしれない。


「無理に全ての属性を使う必要はないんじゃないでしょうか?」

「…………え?」


 そこ否定しちゃう? 今回の実験全否定することになるんだが。


「魔法属性は確かに多様性が高い物ですが、威力が高くなるのは魔法使いのみです。ですから多様性を求めるのではなく威力を重視すればいいんじゃないでしょうか?」

「…………確かに」


 俺が魔法を使ったところでその威力は魔法使いに劣る。なら一点集中型になってしまうのを利用して威力のみを重視したものを作る方が効率的だ。

 なら雷魔法を纏った銃弾で当たると破裂するようなものを……その場合魔法陣を分ける必要があるから銃弾を作ることにして銃弾に炎魔法を付与、銃で雷を纏わせることが出来れば……。


「ルナ!」

「は、はい!? お、お気に召さなかったでしょうか!? でしたらすいません!」

「いや! ナイスだ! やっぱりお前は最高の嫁だな!」

「は、はい!」


 ルナの助言は頼りになる。もう駄目だな! ルナ無しじゃ生きていけない!


「大好きだ!」

「ご、ご主人様!?」


 ギューっとルナを抱き締めてしまう。きちんと自分の意見を示してくれ、そして理想の女性特有の奥ゆかしさなどもうまさしく完璧な嫁だ。


「み、皆様が見てらっしゃいます!」


 あ、そうだった。つい嬉し過ぎて忘れていた。…………ん? みんながいなかったら良いみたいな言い方だな。


「刀夜くんって意外と情熱的な部分もあるんだね……」

「いや……! お、おう……」


 ムイにまで見られてしまった。余計に恥ずかしい。


「…………刀夜顔真っ赤」

「だからお前はなんでいつも指摘するんだ……」


 俺はアスールの頬を少し強めに引っ張るのだった。

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