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第68話 新たなペットは飼い犬……ではなく飼い狼

「ふんふふんふ〜ん♪」


 鼻歌を歌いながら僕と手を繋いで歩くコウハお姉さん。なんでも話し合いの末僕とのデート券を勝ち取ったらしい。

 よく分からないけどあの暴露大会の報酬が関係しているようだった。仲が良いのか悪いのかよく分からない関係性だなぁ。

 ということで2人きりで色々な店を回る。それは食べ物屋だったりおもちゃ屋だったりと色々だ。


「あっちで騒ぎみたいだ」

「何かあったのかな?」

「もし街の危険なら放って置けないな。少し様子を見に行こう」

「はい、そうですね」


 やはり冒険者という職業柄、こういうのには首を突っ込むらしい。

 人混みをかき分けて様子を見ると複数の男性が見覚えのあるホワイトウルフを嬲っていた。


「はは! こいつ全然抵抗しねぇ!」

「このまま狩って金にしちまおうぜ」

「その前にストレス発散だろ!」


 何……やってるのこいつら? それにあのホワイトウルフは何故やり返さないのだろう?


「グウゥゥ……」


 今にも生き絶えてしまいそうなホワイトウルフ。この魔物は死にたいのだろうか? だからと言ってこの殺し方は許容出来ない。


「と、刀夜殿!?」


 気付けば僕は駆け出していた。今にも蹴ろうとする男性に全身で体当たりしてなんとか防ぐ。


「痛って! 何すんだよガキ!」

「それはこっちの台詞です! 何してるんですか!」


 こんなことが許されるはずがない。殺し合いならまだ良い。でもこれは一方的な蹂躙だ。そんなことは許さない。


「うるせぇ! ガキは引っ込んでろや!」


 遠慮も躊躇いもなく僕のお腹を蹴り上げた男性。いきなりに呼吸が一瞬止まる。


「ゲホッ! ゲホッ!」


 そしてその場に倒れるとむせてしまった。その様子を見て男性は嗤う。

 ああ……やっぱり僕は無力だ。こんな小さな手じゃ何も守れない。


「…………刀夜殿に何してるんだ貴殿は」

「へ? 痛って!? 肩! 肩外れる!」


 嗤う男性の肩を思い切り掴んだコウハお姉さんは今までの言い争いや喧嘩とは比べ物にならないくらいに冷たい視線を向けていた。

 その表情は僕も怖かった。つい言葉を失ってしまう。


「さっさと消えろ。さもないと殺す」

「ひぃぃ!!」


 それは虚言ではなかった。そういう雰囲気の台詞じゃない。これ以上危害を加える気なら本当に殺す気だ。そんな目をしていた。

 その表情に怯えて男性3人は一目散に逃げていく。足がもつれて転んだりする様子も見られたので本当に怖かったんだろう。


「大丈夫か!?」


 3人が去っていったのを確認したコウハお姉さんは慌てて僕の方へと駆け寄ってくれる。結局助けられてしまった。男なのに情けない。


「ありがとう」

「い、いや、私は別に…………刀夜殿がやられてカッとなってしまっただけで……」


 確かに本当に僕は大事にされていると思う。こんな人達を見つけたんだからやっぱり未来の僕は凄いのかな。


「クゥゥン…………」

「あ……」


 いつの間にか唇を切っていたらしい。口元から垂れた血をホワイトウルフが舐め取ってくれる。しかしそれもすぐに限界だったのかそのまま横たわった。


「は、早くアスール殿の元へ連れて行こう!」

「う、うん!」

「転移魔法陣を展開する!」


 あ、そういう魔法があるんですね。救急車いらないなぁ……。

 コウハお姉さんの転移魔法陣で慌てて家に戻ってきた僕達は玄関にホワイトウルフを横たわらせる。その間に異常な音を聞きつけてかマオお姉さんが顔を出した。


「どうしたのよ? ってまたあのホワイトウルフ?」

「うむ! アスール殿を!」

「わ、分かったわ」


 マオお姉さんも慌てた様子になりアスールお姉さんを呼びに行った。

 アスールお姉さんが回復魔法を掛けると元気になったご様子。良かった……回復魔法でも死んでしまったらもう駄目だろうし。


「クゥゥン」

「あら、あなたかなり好かれたわね」

「え?」


 何で僕? そもそも助けたのはアスールお姉さんだ。それに僕は代わりに一回蹴られただけでそれを解決したのはコウハお姉さんなのに。


「ガウガウ!」

「私のご主人になってくれって言ってるわね」

「言葉が分かるんですか!?」

「えぇ、まぁ。同じく動物だもの」


 獣人族はそうなんだ。でもご主人様って言われてもなぁ……。


「僕じゃなくてアスールお姉さんとかコウハお姉さんじゃないの?」

「クゥゥゥゥン♪」


 いきなり頬擦りされてしまう。ふわふわの毛が気持ち良いけど……やっぱり何で僕?


「私達は刀夜さんが言うから助けただけで本来なら見逃しても良いと思ってるのよ。その子はそれを分かっていて、一番自分を助けようとしてくれた刀夜さんに懐いてるのよ」

「そうなの?」

「ハフーッ!」


 何その返事。ハフーッて鼻息掛けられたんだけど。


「そうです! って言ってるわね」

「うーん……イメージは格好良い感じなのに実は結構可愛い系?」

「キャンキャンキャン!」

「女の子だかららしいわ」


 よく分からないけど好かれてしまったようだった。うーん……でも流石に僕が勝手に飼っても良いわけじゃないし。


「お名前付けましょう」

「ん…………女の子らしい名前で」

「何があるだろうか?」


 あ、飼う方向で話進めるんだ。でも名前かぁ……。


「ホワイトウルフだからルフちゃんとかどうかしら」

「それだとブラックウルフやウルフビーストなどと被ってしまいませんか?」

「確かにそっちにも付けられる名前だね」

「ならホワイトから取った方が良いかしら?」


 いや、どっちかっていうとホワイトの方が魔物多い気がするけど……。魔物の名前から取ったら多分一生決まりそうにないと思うよ。


「ポチはどちらかというと男の子に付ける名前だよね……うーん……」


 僕はこういうセンスがない。未来の僕は技名とか考えたりしてたのだろうか?


「キャンキャンキャンキャン!」

「え、な、何?」

「ご主人様に名前を付けて欲しいそうよ。刀夜さん何かある?」

「えっと……」


 なんで僕なんだろうな。名前……名前……。犬だからってそれっぽい名前付ける必要もないだろうし。


「それじゃあ……リルフェン?」

「リルフェン? 異世界でよく使われる名前なのかしら?」

「いや……よくは使われないけどみんな知ってるんじゃないかなぁと……」


 フェンリルから取っただけなんだけどね。リルフェンならちょっと女の子っぽいし問題ないような気がして。


「ガウガウ!」

「えっと……」


 初めて聞く鳴き声だった。よく分からない。


「気に入ったみたいよ」

「そうなの?」

「ハフーッ!」


 ハフーッて多分頷いてるなこれ。でも気に入ってくれたならいいかな。


「それじゃあリルフェンで。よろしくね」

「ハフーッ!」


 これは分かりやすい。それに可愛い。

 リルフェンを撫でると気持ち良さそうな鳴いた。僕も触り心地抜群で気持ち良い。


「リルフェンもふもふだぁ……」


 ギューっと抱き締めるとふわふわでもふもふな感触が返ってくる。これはハマる。


「クォォォォン♪」

「うん? あ、もしかして苦しかった?」

「その子も嬉しいみたいよ? それよりいつまでも玄関にいないで居間に行きましょう?」

「うん」


 居間に移動すると座ってリルフェンの頭を撫でる。リルフェン可愛い。


「可愛いです……」

「うん。可愛いね……」

「う、うむ……」

「そうね……」


 あ、みんなも癒されてる。やっぱり生き物って良いよね。僕も犬とか猫飼いたかったんだよね。


「…………刀夜が?」

「はい! ペットを可愛がるご主人様が可愛過ぎです!」

「極上の癒しよね。見ているだけで心が穏やかになるわ」


 違った! こっちじゃなくて僕の方だった!

 ま、まぁいいかな。大人の僕に許可も取らずに飼うのはあれだけど。でもきっと許してくれるはず。だって僕だもんね。生き物好きだろうし。

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