第63話 その疲れ、本当に普通の疲れですか?
自宅へと戻ってくるなり俺は速攻でソファに倒れた。
「そんなに疲れたの?」
「まぁな……」
何だろうか。色々と言いたいことはあるがひとまず言えることは一つだ。
「獣人族って人間への警戒心薄過ぎないか?」
「あなた達が特別なのでしょう?」
あのあと報告に行ったらすっげぇもてはやされて気が付けば何人か嫁にもらうところだった。危なかった。責任は取れないことはしたくないんだがな。
「ま、まぁ確かに刀夜さんが素敵なのは認めるけれど。そう何人も恋人を作られると時間が減ってしまって困るわ」
「いや、俺も作ろうとして作ったわけじゃないんだが」
何か話の流れ的にそうなってしまっていただけでそこに俺の意思はなかった。そもそも俺は好きな人以外と一緒にいたくない。
「夕食、どう致しましょうか?」
「え? 普通に作れば……あ、お買い物行かないといけないんだね」
「はい……今から行くととても遅くなってしまうんです」
獣人殺しが現れたのがいきなりだったからな。仕方ないとはいえ流石に飯無しは色々と限界だろうな。
「遅くてもいいから買ってきた方が良さそうだな。んん……」
気だるい身体に鞭を打って上体を起こす。ん? 何か身体に違和感があるような? 気のせいか?
「ご主人様はお休みください! 一番無茶をなさっていらっしゃったんですから!」
「ん…………それにまだキスしてもらってない」
そうでした。そういう約束してましたね。
「な、何のお話ですか!?」
「あ、えっと……み、みんなにしてくれるのかな?」
「え、全員? そ、それは恥ずかしいな……」
というかそもそも全員俺とキスして何かあるのだろうか? なんか不安だったりするのか? 俺もしかして軽い男だとでも思われてる?
うん、軽い男だね。美女5人もはべらせておいて今更言い訳なんてしません。でもこいつらも幸せそうなら別にいいと思うんだが。
「…………刀夜、好き」
「え、いきなっ!?」
予想外にもいきなり近付いてきたアスールが俺の唇を奪う。俺が呆然としている間に唇を離し、相変わらずの無表情ながら頬を赤く染める。
「…………刀夜からもしてほしい」
「お、おう……」
約束だもんな、仕方ない。俺はゆっくりと顔を近付けるとアスールの唇を優しく奪った。
「こ、これでいいか?」
「ん…………照れ顔見れて満足」
「なら1回目で良かっただろうが……」
最初から恥ずかしかったぞ俺は。
「つ、次私だよ?」
「え、お、おう」
アスールに変わり続いてアリシア。アリシアも自分から俺の唇を奪ってきた。うーん、何でこんなことに。
「しちゃった……。あ、あの、私も刀夜くんからしてほしいな……?」
「おう……」
もうここまできたら仕方ない。アリシアの唇も奪ってしまう。それから続いてコウハ、ルナ、マオと続く。このハーレム感、正直たまりません。
「……お腹の前に胸がいっぱい」
「いや、俺は腹減ったんだけど」
「…………ルナのおっぱい飲めばいい」
「わ、私まだ出ませんよ!?」
あ、出るには出るんだな。精霊だからその……そういうのないのかと。
「…………出たら良かったの?」
「そ、それは……ご主人様が望むのでしたら」
マジで!? 確かに魅力的だがこうなんだ? 屈辱的な感じもしてきた。そういうのが興奮するのだろうか?
「私なら今すぐでもいいわよ♡」
マオにいきなり抱き締められ、胸に顔を埋める形となってしまう。いやお前も出ないだろうが。あと胸柔らかっ!
「な、何を言っているんだ!?」
「あら、あなたはいいの?」
「え、そ、それは……私だって刀夜殿ともっと色々したいけど……。つ、疲れている刀夜殿に無理はさせられない!」
「なら私達が動けばいいじゃない」
今そういう話だっけ? いつの間にエロい話に? でも面白そうだし俺もしたいから黙っとこ。
「…………今孕むとダンジョン行けなくなる」
「それは駄目だな!」
最強というのが維持出来なくなっちまう。間違いなくムイ辺りが抜いてくる。それにあの獣人殺しのようなものがまだいるかもしれない。
「くぅ……やはり世の中はままならない!」
「刀夜さんが本当に悔しそうね……」
「ん…………冗談じゃない。……刀夜はいつも真剣」
そんなこと当たり前だろう。こいつらに関しては俺は妥協する気はない。これが俺がこいつらに見せられる精一杯の愛情だ。
「う、うーん……だからって刀夜くん疲れているのに無理をさせるわけには。それで体調崩しちゃったら駄目だと思うよ」
うんうん、当然こういう意見も出るだろう。アリシアは本気で俺を心配してくれているから嬉しい。
「も、もちろん私もその……こ、子供は欲しい……よ?」
マジで!? 何か全員子作りOK的な雰囲気なんですけど!?
「…………刀夜」
「ん?」
「…………興奮してる?」
「もちのろん!」
「…………刀夜がバグった」
失礼な。まぁ確かに俺のキャラじゃないな。
「いや、普通にテンション上がるだろ?」
「……美女を孕ませられるなら当然」
「お、おう。というかお前、なんでこっち側?」
こいつおっさんかよ。いや、俺もこいつもおっさんって年じゃないんだけど。…………そもそもこういうこと考えるのっておっさんなのか?
「というかこんなこと言ってる場合じゃなくないか?」
「そうでした! お買い物行きませんと!」
「ん…………荷物持ち」
買い物はルナに任せていいみたいだ。アスールは自ら荷物持ちを進言するとは、なかなかだな。
まぁルナがいるなら変な物は買ってこないだろう。アスールは何買うか分かんねぇからな……。
「じゃあ悪いが買い物、頼んでいいか?」
「もちろんです!」
そんな張り切って返事しなくてもいいんだよ?
まぁ確かに今日は疲れたしな。ルナ達の好意に甘えてしまおう。俺はソファに深く腰掛けた。
「お疲れ様」
「え? あ、あぁ」
何故かマオが頭を撫でてくる。重要なのはそっちじゃない。前かがみになったことで見える胸の谷間が重要なのである!
「うん? ああ……おっぱいが気になる? 何なら手を入れてもいいのよ♡」
マジですか。し、しかし今手を入れてしまえば間違いなく止まらなくなる! そ、それではルナ達に申し訳が立たない!
「い、いや……やめとく」
「あら、紳士ね?」
「今回はヘタレじゃないのか?」
「ふふ、ルナちゃんやアスールちゃんに申し訳ないって思ってるんでしょう? 本当、真面目で可愛い子ね」
誘惑しないようにしたのか、それとも無意識なのか。俺に視線を合わせるように中腰になったマオは優しく俺の頭を撫でてきた。その表情はまるで我が子を微笑ましげに見つめるような優しい笑顔で不覚にもそちらに視線が奪われてしまった。
「それじゃあ私は着替えてくるわね」
「お、おう」
マオ達が着替えに行ってしまう。俺も着替えなければなとは思うのだが身体が動かない。
「っ!」
いや、動かないのはさっきのアレが原因じゃない! か、身体が熱い!?
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、な、何だこれ」
頭の中がぐちゃぐちゃする。何も考えられない。真っ白になって大事な想いまでもが抜け落ちてしまっていく。
駄目だ。これだけは駄目だ。あいつらのことだけは嫌だ。やめてくれ。
「痛っ!」
頭が割れるように痛んだ。抗えない。抗いようのないその強制力に俺の意識は強制的に暗転させられた。
「ん…………んぅ?」
上体を起こし、キョロキョロと周りに視線を向ける。
「お待たせ刀夜さ……ん?」
「うん?」
突然部屋に入ってきた猫耳に尻尾の生えた物凄く美人な女性が僕の名前を呼んではキョトンとしていた。
「お姉さん……誰?」




