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第61話 獣人殺しvs最強冒険者達

「た、大変です! 大変ですご主人様!」


 勢い良くドアを開けられる。訪ねてきたのはルナだった。朝っぱらから何でそんなに騒いでいるのだろうか?


「んん……もうちょい寝かせてくれ……」

「そうね。朝のひと時くらいゆっくりしたいわ」


 裸で寝転がっているマオが悠然の笑みを浮かべている。ん? あれ、何でマオがいるんだっけ?

 あ、そうか。そういや昨日奪ったんだった。色々と良い体験が出来た。ケモミミだしな。


「こっちも大変です!?」


 そういやあの時ルナはいなかったから聞いてなかったのか。何やらとんでもなく驚いている。


「…………朝から何なんだ? ゴキブリか?」

「コッグローチじゃないです!」


 それは魔物の方のゴキブリだろ。というかよく分かったな。


「獣人殺し様が出たみたいです! 獣人族の方が来られてます!」

「え」

「本当それ!?」


 マジかよ。なら起きないと仕方ないな。


「ってあわわ!? ふ、2人とも服を着てください!」

「お前にだけは言われたくないわー……」


 お前も魔力装備生成魔法で寝間着作ってた頃あっただろ。今は流石にあれなので流石に買ったけど。

 朝の準備を手早く済ませると朝食も抜いて急いで玄関へ。


「お待たせ致しました!」

「大丈夫なの!?」

「は、はい! 問題ありませ……ん? マオ様何やらイカのような生臭い匂いが……」


 え、いや、昨日一緒に風呂入ったし。そんな匂い残って……。


「…………」


 うお、マオが顔真っ赤になった。そ、そうか獣人族は五感全てが鋭いから人間には感じない匂いも感じるんだな。


「ですが何でしょうか……き、気分が高まって来ますが」


 発情させた!? いやいや、落ち着け。というか今こんなくだらない話をしている場合じゃない。


「いいから早く案内! 一刻を争うんだろ!?」

「は、はい!」


 即座に獣人族は転移魔法陣を展開する。不意に何やら不満げな空気を感じて横を見ると全員が冷たい目をしていた。


「いや…………というかアリシアとコウハは知ってただろ!?」

「私も誘って欲しかったよ……」

「わ、私も……」


 あ、そういう感じで怒ってるのな。いや、流石に初めてが4Pとかヤバいだろ。

 気を取り直して転移魔法で獣人族の住処へとやって来た。今回は違う場所か。まぁあんなボロボロの木々を見たら捨てたくもなる。ルナの特級属性魔法は効いたことだろう。


「すぐに向かいますので付いて来てください!」

「ん…………」


 獣人族の案内の元、森を駆け抜ける。何やら戦闘音が聞こえる。もう既に戦っているのだろう。


「あれか!」

「ここから狙って援護するわ!」

「あ、あぁ」


 エルフ族と獣人族はやっぱすげぇな。俺には点にしか見えんが。

 しかし点でも見えたのなら問題ない。俺達はライジンを使用して一気に距離を詰める。


「うおおぉぉぉぉ!」

「ひっ!」


 足を怪我して回避手段を失った獣人。振り下ろされる無慈悲なまでの一撃を俺は蹴り上げた。


「大丈夫か?」

「は、はい! 刀夜様!」


 何かいきなり満面の笑みを浮かべ始めたんだけど。気でも狂ったか?

 まぁいい。今は気にしている場合じゃないな。こいつを仕留めないと。

 着地すると同時に俺は一気に距離を詰める。


「その腕、どうやって治したんだ? なんて、答えられるとは思ってもないけどな!」


 刀を抜くと同時に振り上げた。獣人殺しはバックステップでそれを躱す。


「やぁ!」


 しかしそこにはアリシアがいる。アリシアの連続の突きが獣人殺しの背中に突き刺さる。


「なっ!? ひ、怯まないの!?」


 全く動じた様子がない獣人殺し。俺は更に距離を詰めた。

 手数ではこいつに負ける。なら距離を、と思ったがこいつは体格が大きい。腕はあれだが足は恐らく俺の刀と同程度。そして奴の方が若干速度が優ってる。

 こいつ前より運動神経が上がってやがる。そらに腕も再生してやがるし面倒な。とりあえず相手の土俵に付き合う必要はない。こいつは速いながらも単調な攻撃が多い。

 刀から手を離すと魔力となって散っていく。そして俺は新たに刀を創り出す。

 自分の体長程ある刀とは違う。腕くらいの長さの短刀というには長く、刀と呼ぶには短いものだ。

 それを二対に構える。少しの静寂。今にも触れられそうな程に近い距離で睨み合う。


「…………」


 本能的に理解しているのか、それとも思考能力が戻ったのか。獣人殺しは動かない。

 まず間違いなく先に動けば負ける。ほぼ同じ速度だ、加えて刀である分殺傷能力は俺の方が高い。

 あっさり乗って来たところをカウンターで腕と足を切り裂き首を落としてやろうと思っていたがそう上手くはいかないらしい。


「っ!」


 しかし予想外にも先に動いた。それも拳や蹴りではなく指のみをこちらに向け、緑の魔法陣を展開する。

 風の弾丸のようなものが飛んで来る。ギリギリ顔を横に向けて頬を掠めながらも躱した。

 やばい。視線を逸らした。距離を取るか? いや、向こうの方が速い! 詰められれば逆に体勢が崩れちまう!


「後ろに下がってください!」

「っ!」


 ルナの声に咄嗟に反応して後ろに下がった。当然体勢が崩れるものの仲間の声だ、信用出来る。

 俺が後ろに下がったことで空いたスペースに氷の壁が展開された。ちらりと矢も見えたので援護もしてくれていたのだろう。


「うおおおおぉぉぉぉ!!!!」


 氷の壁越しに雄叫びが聞こえた。多分大したダメージになってないんだろうな。


「切断しなきゃ駄目だな」


 ならやれるのは俺とコウハだけだ。完全に切り離して四肢を削いだ方が速い。

 体勢を整えるとルナに視線を向ける。ルナは頷くと瞬時に俺の意図を理解して氷の壁を解いた。


「コウハ!」

「うむ!」


 コウハも分かっていたのかすぐに頷いた。ここからコウハとの連携だ。


「行くぞ!」

「うむ!」

「アリシアは援護を!」

「うん!」


 俺は我先にと突っ込む。腕を伸ばして拳を入れてくる獣人殺しに半身になりながら刀を刺し入れた。


「ふんっ!」


 腕を少し切り裂いた。こいつの皮膚が硬過ぎる。どんだけ硬化したんだこいつは。


「コウハ!」

「破壊の断罪!」


 魔力を纏った大剣が振り下ろされる。しかしいきなり緑の魔法陣が展開され、竜巻のような風が獣人殺しを纏った。


「こ、これは!?」

「引け! コウハ!」

「う、うむ!」


 明らかに前の戦闘の情報を蓄積している。こいつ本当は頭が良いんだな。それに魔法の腕や発動速度も異常だ。

 多分ルナより魔法の腕が上だろう。それにこの体術と異常なまでの身体能力。どんな手を使えばそんなことになるんだか。


「薬でそこまで強くなれるのはある意味羨ましいけどな」


 楽だからな。しかしそのせいで寿命やら何やらを縮めているというのなら話は別だ。多分ルナ達が悲しむだろうからな。そんな険なものをルナ達に使わせるわけにもいかない。


「アスール!」

「ん…………」


 アスールが防御魔法を展開する。完全に受け身になってしまっているがこいつは慎重になる程度が丁度良いだろう。

 俺にはムイのような速度の剣術はまだ使えない。あれがあれば早き終わるのだろうか、それとも逆に硬い皮膚に防がれるのだろうか。

 とにかく無い物ねだりをしても仕方がない。現状一番期待出来るのはコウハの大剣。しかしあの竜巻がある限りは近付けないな。

 竜巻の魔法の核は中心、だからあの獣人殺しが邪魔で破壊出来ない。防ぐ手段ねぇな……。


「ん…………身を守る?」


 つまり身を守るそれそのものが攻撃に転じられたらどうしようもなくないか?


「コウハ! さっきのもう一回してくれ!」

「う、うむ!」


 多分同じパターンは通用しない。だから無理にでも使わせる方向に持っていかないとな。


「うおおおおぉぉぉぉ!!!!」


 雄叫びを上げた獣人殺しは俺の方へと突っ込んでくる。決め手をコウハにするのだから狙うのは俺かアリシアに誘導するつもりだったが上手く事が運びそうだ。

 こいつには生半可な攻撃は通用しない。なら反撃に転じてちょくちょく削りながら作戦を立てるしかないか。

 俺は軽く跳躍しながら手に持っていた短剣を獣人殺しに投げた。小回りが利く武器にしたのは良いが魔法付与しなければ多分切断には至らない。

 風魔法を付与した普通の刀を精製すると空中からそれを振り下ろした。自重を乗せたその一撃、そして風魔法による切断の付与を施したそれは絶大な威力だ。


「ぐぅぅ!」


 それらをバックステップで躱す獣人殺し。短剣が刺さってもビクともしないのに危険な一撃はきっちりと躱してきやがる。


「はっ!」


 バックステップしたところを後ろからコウハが大剣を横薙ぎに振り払った。しかし獣人殺しは背後に赤い魔法陣を展開、まるでロケットの如く炎を噴射して前へと詰めてくる。

 更にその炎は攻撃も兼ねていた。ギリギリ大剣を挟んで致命傷は避けたようだが腕などが焼けてしまっていた。片膝を付いてしまっている。


「うっ……」

「コウハ!」


 油断したわけでもない。相手の行動が完全に予想外なのだ。読めない分対処法が立てれない。

 獣人殺しは少し跳躍すると背後に倒れ込むように身体を仰け反らせた。こ、これは! プロレス技でエルボードロップとかいうやつか!?


「アスール!」

「ん……!」


 ギリギリでアスールの防御魔法が間に合い、獣人殺しによって防御魔法が破壊される。しかし同時に向きが変わったことでコウハへの直撃は避けられた。


「コウハさん!」


 すぐに詰め寄ったアリシアがコウハを救出する。これ以上の追撃は俺がさせない!

 マオの矢がいち早く飛んできて倒れている獣人殺しの腕に突き刺さる。やってみる価値はあるか……?

 俺は刀から手を離して大剣を精製すると矢を叩き込むような振り払った。


「うがぁぁぁぁ!!!!」


 予想通り矢は獣人殺しの腕に更にめり込み、苦しませる。

 大剣を離して即座に落とした刀に持ち変える。痛みに苦しむ獣人殺しの胴体に向けて風魔法を発動させながら振り下ろした。

 腕が裂けて血が吹き出る。それくらいに力を込めてようやく獣人殺しの腕を切断した。本当は胴体を狙ったのだが暴れるせいで標準がズレたか。


「ふぅ……まずは一本」


 手が痛いもののそれを凌駕するくらいの達成感である。ひとまず俺の腕は千切れようが何しようがアスールに治してもらえる。

 攻撃手段を奪う。次いで機動力。最後にその命を。


「うがぁぁぁぁ!!!!」

「何だ、怒ってるのか? ならさっさと掛かって来いよ」


 俺だってこんなもの早く終わらせたい。人間を切るというのは存外勇気がいるものだ。それでも躊躇いがないのは必死なのと、加えて仲間を苦しめたクソ野郎だからだろうか。


「殺してやる」


 初めて向ける同族に対しての殺意。それでも関係がない。普段魔物の命を奪うのとさして変わりはなかった。

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