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第59話 人の好みも好きな事も千差万別、だからこそ良い!

 獣人殺しとの対面から更に数日が経過した。一応何かあれば獣人族が知らせに来る手筈になっているわけだが相変わらず何もないようで暇である。

 ダンジョンにも行けないこの状況。素材集めも出来ずに完全に手持ち無沙汰な状態だ。

 ということで俺は今完全にイチャイチャする以外の選択肢がないわけで。

 ソファに寝転がった俺はソファの前で座って本を読んでいるアスールに手を伸ばす。


「…………どうしたの?」

「いや……、暇だなぁと思ってな」


 言いながらアスールの髪を梳いた。サラサラしていて気持ち良い。


「…………刀夜質問」

「ん?」

「……刀夜の好きなタイプを教えて」


 好きなタイプ? それって女の子の、ということなんだろうけど。


「お前らみたいなタイプで」

「…………もっと具体性が欲しい」


 具体性と言われてもな。人を好きになるのにそんな大層な理由なんてないだろうに。


「具体性って例えばどんなだ?」

「…………おっぱいは大きいのと小さいのどっちがいい?」

「別にどっちでも。どっちも揉んだら気持ち良いしな」


 そんなところで人を判断しない。まぁ好みということだから必ずしもそれが恋人に当てはまるのかどうかと言われると別問題なのだろう。


「…………髪は長いのと短いの、どっちがいい?」

「あー、それは長い方かな。なんというか、髪を梳いたりしたくなる」

「……今みたいに?」

「あぁ」


 でもまぁそれは短くても出来るんだけどな。長い方が楽しめるというか、そんな感じだ。


「…………初めての告白は?」

「え?」

「…………刀夜は格好良い。……彼女が出来てなくても告白はされたはず」


 確かにされたことがないというわけではないが。よく知りもしない相手にそういう気分にはならないし、あの時はまぁ色々と余裕もなさそうな時だったからな。


「されたことはなくはない、ていう感じだな」

「…………曖昧?」

「いや、まぁはっきりと好きだとは言われたけど。…………同性から」

「…………流石」


 何が流石なのか分からない。それに俺の考え方を変えたような奴だ。悪い奴でもなかっただろう。


「…………付き合ったの?」

「いや」

「……残念」


 何が残念なのかよく分からないがこいつはいつから腐女子の道に入ったのだろうか?


「…………嫌だった?」

「それも別に」

「…………刀夜はクール」


 クールというか、そういう問題でもなかったのだろう。俺もあいつも変わり者で、だから社会という枠組みから外された。それだけの話だ。


「あら、何の話をしているのかしら? ホモとかゲイとかバイとか聞こえたけれど」

「そんなこと一言も言ってねぇ……。いや、そういう話だったけど」


 そんな直接的な表現は一切してない。というか最悪の組み合わせだなおい……。


「…………刀夜の昔の話」

「あら、それは興味あるわね」

「俺のことはいいだろ?」

「駄目よ。あなた自分のことは全然話さないじゃない」


 そうか? そんなつもりは全くないんだけどな。


「アスールちゃんも聞きたいわよね?」

「ん…………だから質問中」


 そうなのな。でも俺の昔のことを知ってどうするんだよ。


「……刀夜」

「ん?」

「…………おっぱいの大きさが好きな人答えて」


 あ、そういう話に戻るのな。


「胸の大きさを言われてもな……。だから別に大きくても小さくてもどっちでもいいって言ったろ?」

「…………形は?」

「…………何だ形って」


 一体何が気になってるんだこいつは……。とりあえずまともな話にして欲しいんだが。これまだ続くの?


「垂れ気味だったり綺麗だったりロケットだったりね」

「生々しい話すんなよ……。だから俺は好きな人の胸なら好きだっての」

「…………刀夜はおっぱいで人を判断しない出来た子」


 そんな褒められ方したの初めてだぞ……。


「それじゃあ顔は?」

「顔?」

「美人と可愛い、どっちがいいかしら?」


 美人か可愛い感じのどちらかか。まぁこいつら全員美人だしな、でも別に可愛いのも嫌いじゃないな。


「どっちでも良いな」

「…………刀夜はストライクゾーンが広い」

「優柔不断ね」


 今度は罵倒された。こいつら言いたい放題言いやがって。俺の方からも何か聞いてみるか?


「お前らはどんな顔が好みなんだよ?」

「……童顔でクールで無愛想な感じ」

「童顔なのにクールで無愛想に見えて優しい雰囲気の人かしら?」


 2人とも全く同じなんだな。しかも同時に喋り出すのはやめて欲しい。


「…………つまり刀夜」

「つまり刀夜さんね」

「俺かよ」


 いや、恋人だから当然といえば当然か。でも俺って童顔でクール系で無愛想なのか? そんなこと言われたの初めてだが。


「それに頼りになるものね」

「ん…………格好良い時もある」

「はい! 大賛成です!」


 突然ルナがやってきて大きく頷いた。何が大賛成なのか。


「ご主人様が格好良いのは当然です! 加えて頭も良く性格も良く、それに心が綺麗なとても素敵な方です!」

「突然出てきてどうした?」

「え? ご主人様を褒めていらっしゃったのではないのですか?」


 違う。いや、違わないけど話としては違う。というか仮に俺を褒めていたとして何でルナが食い気味に参加してくるんだ?


「…………私達の好みの男性の話」

「え? ご主人様一択ではないんですか?」


 相変わらずルナは嬉しいことを言ってくれる。流石俺の嫁。


「…………刀夜一択なのは分かる」

「それを踏まえての好きなタイプよ」

「そうだったんですか。では童顔でクールで無愛想に見えて実は大変心優しい素敵な男性ですね」

「お前もかい」


 俺ってそんな評価なのか。というか無愛想か? 確かに誘いにホイホイ乗るような性格でもないけど。


「ん…………仕方ない」

「そうね、恋人だものね」


 マジかよ。こいつら俺のこと好き過ぎない? ま、まぁ愛されてるっていうことなんだろうけど。そう考えたら悪くもないか……?


「確かに魅力的な方なので皆様好きになってしまうのは仕方ありませんが……。1番の座は譲りませんから!」

「あら、もう1番のつもり? 付き合いが長いだけで1番だなんて思わない方が良いわよ」

「ん…………譲れない」


 おやおや? 何やら風向きが変わったような。1番って何の話だ?


「それではご主人様に聞いてみましょう! ご主人様、この中で誰が1番好きですか!?」

「え」


 今それを決めろと? 無理無理無理無理。というか何でそんな話になるんだ?


「みんな違ってみんないいじゃ駄目なのか?」

「駄目よ」

「ん……駄目」


 駄目らしい。この中で1番……いやいや、無理だろ。


「やっぱり選べないぞ……」

「ヘタレねあなた」

「う、うるさいな……俺だって優柔不断だとは思ってる」


 何でだろうか。幸せな空気だったのに一転して辱めを受けてる気がしてきた。俺をいじってそんなに楽しいか?

 ひとまず3人はこの話題はこれで終わりにしてくれるらしい。ほっ……1番とか言われても困るんだよな。俺は普通に全員好きだし。


「そういえば私も詳しく聞いたことはありませんでした。ご主人様は昔はどんな子だったんですか?」

「どんな子って……今のままだろうな。捻くれてた」

「確かにあなたは回りくどいやり方をするけれど、それでも捻くれてないわよ? 本当に捻くれてる人がどういう人か知らないのよ」

「そうなのか?」


 本当に捻くれてる奴か。うーん……確かに日本では取り繕った人間ばかりで捻くれてる奴って印象はあまり受けなかったな。


「…………刀夜はそういうの疎い」

「そういう天然っぽいところも可愛らしいです」

「お前にそれは言われたくなかった……」


 ルナの方が天然っぽいだろ。別に何もないところで転んだり砂糖と塩を間違えたりといった天然というより異常な行動は取らないが。


「そんな!? 私天然じゃありませんよ!」

「…………」

「どうしてお2人も静かになるんですか!?」


 アスールとマオも同意見のようだ。やっぱりそういう認識になるらしい。


「いや……だってなぁ?」

「ん…………自覚ないの?」

「それが天然というものでしょう?」

「皆様酷いです!?」


 酷いというか事実だろうけど。でもまぁそこがルナの可愛らしいところでもあるんだけどな。完璧じゃないからこそ補い合える。


「そ、そういうアスール様こそよくご主人様をからかっているじゃないですか! 私だけが駄目な子じゃないです!」


 何その張り合い方。あ、そうか。1番にこだわってるんだから人より劣ってるって思われるのはアレなんだろうな。

 でもルナの天然はむしろ可愛いと思うんだけどな? そう思ってるのは俺だけなのか?


「…………刀夜はからかうと面白い」

「気持ちはよく分かるわ」

「酷いと思います! ご主人様もいつも困ってるじゃないですか!」


 まぁそれがいたずらってものだからな。困らせなければそれはいたずらじゃない。


「刀夜さんの困った顔、良いわよね……」

「ん…………そそる」

「ドSかお前らは」


 何だそれ。人を困らせて何が楽しいんだか。


「…………刀夜もしてみればいい」

「俺もか? からかうとかどうやるんだ?」

「…………耳貸して」


 こそっと耳打ちしてくれる。ふむふむ、なるほどな。それ大丈夫か……?

 まぁ言われたからにはやるしかないな。相手は……そうだな。最近よくからかってくるマオでいいか。


「なぁマオ」

「あら何かしら? 私をからかうつもり?」

「いや、そういうことじゃなく。今日の服可愛いな」

「あ、あら、そうかしら?」


 マオは少し照れたように自分の格好に目をやる。今日のマオの服装はドレスのようなフリルのついた緑の服だ。よく似合っている。


「俺はそういうセンスがないからな。今度でいいから服を見繕ってくれると助かる」

「いいわよ」

「そうか? 悪いな。まぁそれでお前らが気に入るかどうかは知らんが」


 言った後に何故かシーンとなった。え、何?


「…………刀夜、今の何?」

「俺なりにからかったつもりなんだが」

「え、今のが!?」


 誰よりもマオに驚かれた。いや何でだよ。


「…………刀夜下手」

「え、マジで?」

「ち、ちなみにどんなアドバイスしたのよ?」

「…………上げて落とす」

「私の気分上がっただけだったのだけれど……」


 いや、えっと……えぇ?


「軽くマオのセンスを疑ってみたんだけど……」

「全然そんな風に感じませんでした」

「むしろ服のセンスを褒められただけだったわよ?」

「…………ちなみにマオの服のセンスは?」

「いや普通に綺麗だなと思ったけど」


 褒めるところで真っ先に目が付いたから言ったのだ。事実であるが。


「からかいの見本を見せてあげましょうか?」

「是非頼む」


 というかからかいの見本って何だ。


「こうするのよ?」

「え、ちょ、何故顔近付ける?」

「ふふ、好きよ」

「ああー!?」


 そのまま何故かキスされてしまう。しかも頬を赤く染めながらもからかうような表情で。そういうのドキドキするからやめて欲しい!


「ズルイですマオ様!」

「ん…………私もしたい」


 2人も何やら迫ってくる。これを狙ってやってるとすればマオは確かにからかうのが上手いだろう。実際今俺を困らせているんだから。

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