第52話 デジャヴを感じる初登場! だから動じない!
「ん……んぅ…………」
朝の眩しい日差しが差し込む部屋。その眩しさについ寝返りを打ってしまう。気持ちの良い微睡みを失いたくないのだ。
寝返りの先、もにゅっと何やら柔らかい感触を感じた。柔らかくも弾力があるそれは何やらとても幸せなものに触れているかのようで手放したくない。
「ん……ふぁ……!」
色っぽい声が漏れた。誰の声だろうか? 昨日は誰ともしてないしあれか、夜中に侵入して来たか。
「誰だよ……?」
ゆっくりと目を開ける。するとそこには緑髪の美女が全裸で寝転がっていた。悠然な笑みを浮かべながらも若干頬が赤く染まっている様はお世辞抜きで綺麗だ。
長い髪に切れ長の目、緑色の瞳を持つ色香たっぷりの女性だ。胸も十分大きく、またスタイルがモデル並みに良い。
何よりも特徴的なのはその顔立ちやスタイルというよりは耳だろうか。これは猫耳か! 猫耳美人というやつか!
「朝から大胆ね♪」
「…………え?」
えっと……ん? 俺は寝てて……それで起きたら美女と裸でベッドイン?
「…………いや、誰だお前?」
「あら、随分冷静ね?」
「初めてじゃないからな」
そう、初めてではない。見知らぬ人とのベッドインなんてな。
「で、何してんだお前。イタズラにしてもタチ悪くねぇか? 痴女か?」
「残念ながらそういった経験はないのよ」
「経験なくその格好はやっぱり痴女じゃねぇか」
駄目だこいつ。というかこの距離感で何もして来ないってことは暗殺とかじゃないな。まぁ最も最初から暗殺目的なら寝てる間に殺されてるだろうけど。
「で、何か用か? ここは警備設備満載で普通は侵入すら出来ないはずなんだけどな?」
まず特定の時間帯は人間の足音で探知され警報を鳴らすものがある。家の中にはないが外にあるので訪ねて来たらすぐに分かる。
加えて侵入ルートと言えば壁を破壊するくらいのものだ。もちろん窓とかはあるがこの家の窓は魔法すら耐え抜く優れもの。簡単に開けれるようなものではないはず。
「私は獣人よ? 人間のように足音も立てないなんて簡単よ。それにピッキングって分かるかしら?」
「いや分かるけどよ……。この家をピッキングするって俺のいた世界じゃ世界最強じゃね?」
だって日本よりも鍵が複雑だ。妙な仕掛け的なものもあって初見じゃ読めない。俺達も覚えるのにどれだけ苦労したか……。
「確かに複雑だったわね。1時間くらい掛かったわよ」
「むしろ1時間で何してくれてんだお前は」
無駄なことを。でもわざわざこうして会っているということは俺が目的であって金銭じゃないんだろうな。
「で? 用件は?」
「あら、性急な男は嫌われるわよ?」
「え、マジで?」
そんな馬鹿な。いや、しかし確かに慌て過ぎてずっとこんな感じだとうざいな。る、ルナ達は大丈夫だろうか!?
「私のことに関して慌てないのにどうして今の台詞で慌てれるのか不思議だわ……」
「そんなこと言われてもな。俺には俺の心配があるんだよ。というか話する前にまず服を着ろ」
「そうね」
とりあえず俺は部屋を出ていた方がいいだろうな。というか誰か助けて!
「後ろ向いてもらえるかしら?」
「お前羞恥心はあるのに何でそんな登場をしたんだよ……」
「驚く顔が見たかったのよ。可愛い顔してクールなんだから」
「え、俺が怒られる流れ?」
俺何も悪くなくね? 普通に自分の部屋で寝てただけなんですけど? それに後ろ向くだけでいいのな。
言われた通り後ろを向くと布切れが擦れる音が聞こえてくる。この音……下着を着けていないな!?
「お待たせ」
振り返るとノースリーブの黒い服を着ており、膝くらいまでの青いスカートを履いた女性が正座していた。
こうして見てもやっぱり色っぽいな。これで処女とかマジですか。
「あぁ。それで話を聞くのは俺だけでいいのか? 俺の仲間にも聞かせるべきか?」
「そうね……あなたの仲間にも聞いてもらおうかしら?」
「はいはい……」
面倒な事になりそうだな……。ひとまず居間
で話をする事にしよう。
居間に連れて行くと金髪と黒髪の美女2人がが起きていて朝食の準備を始めていた。俺の顔を、というよりは獣人の女性の顔を見るなり目をパチクリとさせていた。
「ルナ、アリシア、おはよう」
「お、おはようございます」
「お、おはよう。えっと……その人は?」
まぁそうだよな。でも何で大して驚いてないんだろうか?
「なんか知らんけど俺の部屋にいた」
「女性を連れ込んでいたんですか!? 言ってくだされば私がお相手しましたのに!」
「そ、そうだよ! 私も準備万端だったよ!」
お、おう、そんなはっきり言わんでも。それに俺は何もしてないのに何でそんな誤解を生んでいるのだろうか? あ、俺の部屋にいたからか。
「はっきり言うが何もしてない」
「あ、そうなんですね」
「そ、そうなの?」
俺が言うのも何だけどあっさり信じ過ぎじゃいか? 詐欺とか心配になるからもう少し疑う努力をだな。
「でも刀夜くんが連れ込んだんじゃないならどうしてこの家にいるの? 普通は入れないよね?」
「ピッキングしたらしい。1時間掛けて」
本当に無駄なことして何がしたいんだか。普通に尋ねてくるのと何も変わらないような気がする。
「驚く顔が見たかったのよ」
「ということらしい」
良い性格をしている。まぁこんな美人にイタズラされるのも悪い気はしないだろうけど。
「刀夜殿おはよう…………。うん、その人は誰だ?」
「…………おはよう。……新しい愛人?」
「おはよう2人とも。アスールは朝からキッツイな」
青髪の美女と赤髪の美女が寝ぼけ眼を擦りながら顔を出した。相変わらずこの2人もこういう状況を何とも思っていないらしい。
冒険者をしていると自分の考えの及ばないレベルの自体にも陥る。こういう不慮のケースに慣れてくるのだ。
「あらあら、一気に勢揃いね?」
「お前が俺の起きる時間まで放置してたからだろ? 俺が起きる時間帯にこいつらも起きてくるだけだ」
これはただの偶然である。偶然ではあるがタイミング的にはバッチリだ。
「あー、飯食ってく?」
「あら、いいの?」
「俺達だけ食ってもな……。ルナ、アリシア、俺も手伝うからさっさと用意しちまおう」
「はい」
「うん」
しかしこの女性は何の用なのだろうか? というかそもそも……。
「…………その耳と尻尾は本物?」
「ええ、本物よ? 触ってみる?」
「…………いいの?」
「えぇ」
馴染み過ぎじゃないか……? むしろ俺より距離感近くないか? あと俺も触りたい!
「…………刀夜が羨ましそう」
「え? あら、あなたも触りたいの?」
「いいのか!?」
マジかよ! アスールの時はすぐには触らせてもらえなかったからな!
「ご主人様……身を乗り出して……。私の時はありませんでした……」
「わ、私もなかったよ?」
「うぅ……私も翼や耳や尻尾が欲しかったです……
「私も……」
な、何かルナとアリシアがしょんぼりしてるんだけど!? な、何で?
「ど、どうした2人とも?」
「いえ……私はこうして別のことでしか好感度を稼ぐ方法がありませんから……」
「うん……私もだよ……」
いや、何でそうなるんだ!? お前らにだって触りたい場所はあるのに。
「いや……え、じゃあ遠慮なく触ってもいいのか?」
「え? どこを触るんですか?」
「胸」
だってルナのそれは豊満だし。アリシアは丁度こう安心する感じというか。
「是非触ってください!」
「う、うん! 大丈夫だよ!」
マジか! こちらも全然オーケーらしい。
「ねぇ……そちらの2人の方が私よりも痴女なんじゃないかしら?」
「確かにそんな気がしてきた」
でもこう、恥じらいが足りないな。まぁ別にいいんだが……。それよりも初対面の人にこんなこと言われる方が問題じゃないだろうか?




