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第4話 異世界の美形男子は顔だけじゃなく性格も良いらしい

 少しの間待つと受付の女性が戻ってくる。


「もう少ししましたら来ますので。少々お待ちください。2階に酒場があるのでご利用していただければ」

「はい、ありがとうございました」


 2人で頭を下げて礼を言うとそのまま階段を上がって酒場へとやって来る。


「来たはいいけど金がないから何も買えないな」

「そうですね……」


 何この悲しい待ち時間。まぁ俺はあんまり酒は得意じゃないからいいんだが。


「ルナって酒は飲むのか?」

「いえ、特には。飲めないわけではありませんが」


 まぁそうだろうな。1000年以上生きていたら流石に飲む機会もあるだろう。


「ご主人様はどうなのですか?」

「俺も特にはって感じだな。飲めなくはないがあんまり好きじゃない」


 何が美味いのだろうか? 全く理解出来ない。


「それじゃあお詫びに奢るのはやめた方がいいかな?」

「っ!?」


 ビックリした。急に真後ろに立たないでもらいたい。

 俺達に声を掛けたのは驚くくらいに美形の男性だった。本当に同性の俺でも思うくらいに顔立ちが整っている。身長も高く、スラッとしており、さぞモテることだろう。黒髪のポニーテールで睫毛が驚く程に長い。青いインナーシャツと黒い長ズボン、それに膝下まである長いコートを着ていた。


「あなたは?」

「僕の名前はリア・ランケア。受付のギルド員から聞いていると思うけどキミ達の依頼の同行希望者さ」


 うわー、すっげぇ爽やかな人だ。こういう人が一番信用出来ないんだよな。


「俺は萩 刀夜です」

「私はご主人様の精霊、ルナと申します」


 とりあえず挨拶には挨拶を。俺達も名乗るとランケアさんは爽やかな笑みを浮かべる。


「よろしくね」


 うーん、殴りてぇ。この爽やかな笑顔が逆に腹立つ。何でだろうか、どこか嘘っぽいからだろうか?


「あの、ご主人様。敬語をされる必要はございませんよ?」

「あ、そうだったな」


 この世界は年功序列ではないのだから無理に敬語を使う必要はないわけだ。しかしこう、罪悪感というのか。ねぇ?


「うん?」

「あぁ、いや、気にしなくていいぞ。それよりランケアさんは何でこの依頼に同行したいんだ? 何か理由があるのか?」

「ああ、そのゴブリンが作った巣の場所が僕の故郷の近くでね。故郷に沢山の思い出や大切な人がいるんだ。守りたいと思っても不思議じゃないだろう?」


 確かにその通りだろう。しかし故郷か。俺の故郷はそんなに良いものじゃなかった。この人は結構恵まれているのだろうか?


「だから今回の報酬は僕はいらないよ? それにキミ達初めての依頼なんだよね? 何かあれば色々と教えるよ」


 マジかよこの人。余計に信用出来なくなったな。


「ちなみにレベルと職業は?」

「僕は槍使いでレベルは43だよ」


 43か。まぁ戦力になるだろうし、この世界でのレベルの概念はあまり重要視するべきではない。もちろんレベル差があり過ぎるとあれだが20や30開いていたところで覆せるくらいだ。

 つまり重要なのはレベルではなく戦い方だろう。どういう戦闘方法を取るかによって大きく変わって来るものだろう。


「キミ達のレベルと職業を聞いてもいいかな」

「え、えっと……私は魔法使いでレベルは78です」

「78!?」


 まぁそりゃあ驚くよな。でも仕方ない。事実なんだし。


「えっと、それじゃあ刀夜くんは……」


 いきなり呼び捨てかよ。別にいいけど。


「俺はレベル1で……か……」

「か?」

「鍛冶師……です」

「えぇ!?」


 今度は別の意味で驚かれた。そりゃあこんな奴が冒険者をしていたら駄目だよな。


「そ、そうなんだね。が、頑張ってね?」

「お、おう……」


 応援されてしまった。ちょっと良い人なのかもしれない。いや、同情されただけか?


「それじゃあそろそろ行こうか。僕が転移魔法を張るね」


 ランケアさん。あー、向こうも俺のことを名前で呼んでるからリアでいいや。リアは転移魔法陣という白い魔法陣を床にパパッと展開した。魔法は呪文詠唱するものではないらしい。

 ということはほぼノータイムで魔法は撃てるわけか。そりゃあ有利だな。

 展開された移動魔法陣は少し広がって俺とルナの足元へも。そのまま周囲の景色が光に包まれて真っ白に変わってしまう。


「おー」

「ふふ、ご主人様。目が輝いてますよ?」

「いや、魔法ってのを初めて見たが、こうなんだ。テンションが上がるな」

「初めて? 今まで1回も見たことがないのかい?」


 あ、また驚かれてしまった。まぁ珍しいんだろうな、俺のような人は。


「まぁ色々訳ありで」


 誤魔化していると周囲の光がどんどんと消えていき、見慣れない景色が視界に入った。

 そこは森の入口だった。道は作られているものの木の根っこなどで足場は悪くなっており、また樹齢何万年単位だろう高くそびえ立つ木々が幾つも生えているせいで日の光がほとんど入っていない薄暗い場所だった。


「ここが目的地か?」

「うん、そうだよ。この森のどこかにゴブリンの巣があるはずだよ」


 うーん、この森から探すのか。そんな馬鹿な。1日じゃ無理だろ、絶対に。


「心配そうな顔をしなくても野宿用のテントは複数持ってきてるよ。それに食料ならこの森でも調達出来るから大丈夫さ」


 この人マジで良い人。というか用意周到だなおい。それに人の機微にも敏感だ。俺にもこういう力があれば他の人より一歩リード出来るだろうか?

 ひとまずは金だな。金がなければ勉強すら出来ない。ルナに魔法に関して教わるにしても基本知識がないと教えにくいだろう。


「文字を読めるようになるとこからか……」


 まずは書物を漁る。その前知識として文字を読めるようにならなければならない。一般的に簡単な言語であれば2ヶ月程で覚えられるという。しかしそれは言葉を話す、書けるという2段階が主になっている。何故かは知らないが言語だけは通じるのだから話すことは既にクリアしていると思っていい。ならば後は書けるようになるだけ。期間的には1ヶ月、もしくはもう少し短縮出来るだろう。

 それもこれも全て金に余裕が出来てからの話だ。それまでは申し訳ないがルナに頑張ってもらうとしよう。


「それじゃあ僕が先頭を、後衛はルナさんかな?」

「そうですね。ご主人様は真ん中です」


 なんかさらっと役立たずって言われなかったか? 俺の被害妄想か?

 3人で並んで森の中へと入る。並んで歩く様はちょっとRPGっぽい。でも命懸けだからそんな呑気なこと言ってられないんだよな。


「ゴブリンは複数で動くはずです。私はご主人様の護衛を最優先させていただきます」

「うん、僕も刀夜くんを守るように動くよ」

「…………俺は何をしていればいいんだ?」


 何もすることがない。鍛冶師って何すればいいんだ? はい、街で武器を作る職業ですよね!


「えっと……」

「そ、そうだね……」


 ほらー、2人も困ってる。そもそも鍛冶師のくせに何で依頼受けてんだよって話だよな。


「…………リア、荷物貸して」

「僕の荷物を?」

「荷物持ちしか……やることないから…………」


 あぁ、なんて悲しい運命か。これがずっと続くと考えると泣きそうになるな。


「そ、それじゃあ……。でも中身は絶対に見ないでね?」

「そんなプライバシーを侵害するようなことしない。というか野郎の鞄に興味ないんだけど」


 俺って実はそっちの趣味だと思われてる? まさかぁ、そんなわけ……ないよな?


「ルナさんも、あんまり見ないでね?」

「私も特に興味はありませんが……」


 何か隠したそうだな。何だろうか?


「ちょっと重いし……まさか人の死体が入ってるとか?」

「そんなわけないだろう!?」


 まぁそうだろうな。それに人の死体ならもっと重いはずだしな。相当バラバラにしないと入らないはずだから残念ながら死体ではない。


「とりあえずもう気を引き締めて欲しい。いきなり出てくることもあるからね」


 どうやらそうらしい。確かにもう魔物の行動範囲内だろうな。気を引き締めないといつ何が起こるのか分からない。


「ご主人様、怖かったらいつでも私に抱き付いてくださって良いですから」

「お前俺のこと子供か何かと思ってないか?」


 こんなので怖がるわけないだろ。いや、でもちょっと薄暗いしこの感じってアレに似てるよな?


「なぁ、幽霊とかって出ないのか?」

「ひぃ!」

「うお、気持ち悪っ」


 あ、つい本音が。リアは幽霊の話題を聞いた瞬間真っ青になって俺の腕に抱き付いてきた。


「と、とと、刀夜くん! そういうことは言わないで!」

「あ、はい、ごめんなさい。…………ん? 幽霊? それとも気持ち悪い? どっちの話だ?」


 めちゃくちゃ真剣に怒られた。でも何に対して怒られてるんだろうか? そしていつまでも抱き付いて来ないで欲しい。


「ん? 何か柔らかい?」

「っ! 人の二の腕触って何してるの!?」


 ばっと離れられた。二の腕だったのか。まぁ確か二の腕は胸の感触がするらしいんだが。いや、ちょっと待ってくれよ?


「そもそも抱き付いて来たのお前だよな……?」

「うぐ……」

「ランケア様、ご主人様にあまりご迷惑をお掛けしないでください」

「ご、ごめんなさい」


 すっごい素直に謝られた。しかし何だろうか? さっきの身体の感触といいこのしおらしい態度といい男に思えないんだが。

 勢い良く頭を下げたリア。その際に首に掛けていたロケットペンダントが外れて落ちてしまう。

 地面にぶつかった際に蓋が開いて中が見えてしまう。そこには可愛らしい女の子の写真が入れてあった。


「落ちたぞ?」

「あ、ありがとう」


 恋人か? ということはこの人は別に女性というわけではないということになる。よかったような、ちょっと期待したような。


「とりあえず先に進もう。今日中に木の実が生っている場所に行きたいだろう?」

「はい、かしこまりました。ご主人様、辛いようでしたらいつでも私にご報告ください。抱っこ致しますので」

「だから俺は子供かっての」

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