表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/190

第24話 新種討伐! そして世間は有翼種を認めるだろう

「ケケケケ!!」


 魔物はアスールに狙いを定めたようだ。そりゃそうだろう。アスールがいる限り俺達の傷は治るのだから。

 しかし消耗戦などする気はない。長引けば逆にこちらの魔力が尽きるのは明白だ。


「蒼連の乱!」


 リアの特技、青い魔力を帯びた連続の突きで魔物を攻める。片腕の魔物は防ぐことも受け止めることも出来ないだろう。

 連続攻撃に後退する魔物だがそれをルナは許さなかった。


「アイスウォール!」


 地面を伝って氷の壁が魔物の背後に出来た。これを砕きながら避けるのは魔物の速度では不可能だな。


「ランケア様!」

「うん!」


 攻撃を一瞬止めたリアは脚を広げて槍を構える。


「紫電の突き!」


 紫の雷を纏った強烈な突きを放った。これはかなり強そうだが使える場面は限られそうだな。最初の構えで何をするのが分かる。

 突きは魔物の右肩を見事に貫き大穴を開ける。背中に生えていた腕の接合部が貫かれたことでぼとりと落ちて黒い粒子となって消えていく。

 両腕使えない状態の魔物に勝ち目などない。ないはずなのにここで大きな魔法陣を展開した。


「これは……さっきの火炎放射か!」


 マズイな。いや、やってみる価値はあるしやらなきゃ駄目か。避けれるならいいが多分あの規模なら無理だ。

 狙いは絶対にアスールだ。させてたまるか。


「アスール! 防御魔法!」

「ん…………!」


 アスールが防御魔法を展開する。数にして5枚。防御魔法は複数同時に展開出来るわけか。


「ケケケ!」


 魔物は案の定魔法陣を俺達に向けた。少なくともアスールだけは守らなくては!


「私もやります!」


 ルナも入ってきて更に水色の魔法陣を展開する。氷魔法は簡単に言えば水魔法。溶かされても水として残る為に炎魔法との相性は良い。

 防御魔法5枚にルナの氷の壁。ここまでやって防げないならもう無理だろう。


「ケケケケ!!」


 発射された火炎放射はもう既にビームのようなレベルである。近くにいるだけで高熱を感じるほどだ。

 アスールの放った防御魔法は触れた瞬間全て弾けるように割れ、ルナの魔法も徐々に破壊されながら押し込まれる。

 2人を抱えて逃げるか!? いや、そんなことをしてる場合じゃない。ならどうする!?

 盾! は駄目だ! 拳程度で破壊されるってのにこんなもの防げるわけがない!

 ああ! くそ! 考えろ! 考えろ!


「ご主人様!」

「……刀夜!」


 あぁ、駄目だ。いや、待て。逃げるな。ここで逃げると余計に危ない。


「2人とも俺の後ろにいろ!」


 これは賭けだ。でも成功させなきゃならない。2人が死んでしまうから。

 自分の命を賭けると時、自然と生きていることを実感する。笑みが漏れてしまう。


「はっ! そんな魔法ぶっ潰してやるよ!」


 俺は青色の魔法陣を展開、更に剣も水魔法を発動させた。普通の上級属性魔法に加えて武器の属性魔法を使用するという重ね技。

 魔力がごっそりと持っていかれるが問題ない。ここで決めるだけだ!

 ルナの氷魔法が破壊されると同時に俺は大量の水を放出した剣を突き刺した。

 魔力核は魔法の中央。この場合は必ず魔物の胴体だ。この撃っている円形の中央に突き刺し、そして届けばいい。


「ああああぁぁぁぁ!!!!」


 剣を押し込み水を放出し続ける。ここで魔力の全てを使い切る勢いで。くそ! まだか!? まだ届かないか!?


「はぁぁぁぁ!! 蒼水の一矢!」


 更にリアが俺の横に並んで特技を発動させた。槍から大量の水が噴き出て更に押し込んでくれる。


「届けぇぇ!!!!」


 突如として弾けた炎魔法。そして俺達の魔法や特技によって飲まれた魔物は大量の水の攻撃により噴き飛ばされて建物を複数貫通して黒い粒子となって消えていった。


「はぁぁぁぁ…………」


 終わった。つか腕痛い。


「大丈夫か、リア?」


 炎のビームの中腕を突っ込んだせいで俺もリアの手も火傷でとんでもないことになっていた。まぁこれは仕方ない。


「刀夜くんも大変だろう? それに腕も折れてしまっていたし、大丈夫?」

「俺はこういうの別にって感じだしな。死ぬのも大して怖くないしな」

「刀夜くんは凄いなぁ……」


 これは凄いのだろうか? ひとまず俺達全員の力を合わせりゃ別にあの魔物も怖くないわけだが。


「…………あんまり役に立てなかった」

「初めてはそんなもんだろ。それよりアスール、リアの怪我治してやってくれ」

「刀夜くんもだよ……?」

「ん…………」


 とりあえず身体に力が入らない。これが魔力がない状態ってことか。初めて感じるがなんだろうが、例えるならマラソンした後みたいな感じだ。しんど。

 俺はその場に座り込んでしまう。流石にもう無理。今日は何もしたくない。


「ご、ご主人様大丈夫ですか!?」

「あぁ……多分?」

「ゆ、ゆっくりしてください。私に持たれかかっても構いませんから!」

「お、おう……」


 その場で正座したルナに後ろから抱き締められてしまう。胸の感触が! 色々とヤバイんですか!?


「…………おっぱいムギュってしてる」

「マジか。すっごい見たい」

「ん……変形」

「あの、その、や、やめて欲しいんですが……」


 アスールに腕を回復してもらうと本当に元通りだ。痛みもない。ただ魔力だけは回復魔法じゃどうにもならないらしい。


「キミ達流石だ!」

「ん?」


 そういやいたな他の冒険者。何でこいつらだけなんだろうか。


「はい、これ」

「何だそれ?」


 渡されたものを受け取る。これは……黒い欠片?


「さっきの魔物の素材だね。拾っておいたよ」


 わざわざ持ってきてくれたのか。しかし別にいらないな。


「やるよ。俺達はいらないし」

「えぇ!?」

「刀夜くんは相変わらずだなぁ……」


 相変わらずなのだろうか。まぁ金に目がくらむ理由も分からなくはないが今は困ってないしな。問題ない。


「そんな! 貰えないよ! それにその……その子にも守ってもらったし……」


 冒険者達は気まずそうにアスールに視線を向けた。これも良い機会か。


「あぁ、自慢の僧侶だ。凄いだろ?」

「う、うん」


 何でそんなに気まずそうなんだよ。


「お前らが思ってるほど有翼種は危険じゃないし、むしろそういう固定観念が自分の身を危険にしてるんじゃないか?」

「こ、固定観念?」

「簡単に言えばお前らが有翼種を敵だと思ってるってことだ。お前らだって自分を殺そうとしてくる奴と仲良くなんてなりたいと思わないだろ?」

「た、確かに……」


 うん、良い流れだ。このまま有翼種が敵ではないというのが広まればかなりアスールも過ごしやすくなる上にアスールが仲良くしたがっている奴の耳まで届く。


「その……俺達が謝っても仕方ないって分かってる。でもその……色々とごめんな?」

「ん…………何が?」


 アスール……そこはちゃんと気持ちを汲んでやれよ。


「…………無理に敵対したくない、でも仲良くもしなくていい」

「そ、そう?」

「ん…………それに」


 ん? アスールがこっちを見て何故か口元を緩めて小さく笑みを浮かべた。な、何だ?


「…………刀夜達がいれば充分♪」

「ちょ、おい!」


 いきなりアスールに腕に抱き付かれてしまう。や、柔らかい中に弾力が! ルナのと全然違う!


「ふふ……刀夜くんモテモテだ」

「ご、ご主人様! アスール様だけでなくわ、私も愛して欲しいです!」


 後ろからもルナに抱き締められてしまう。な、何これ!? これがハーレム!?


「これから大変そうだけど頑張って」

「ちょ、他人事みたいに!?」


 リアに見放された。ルナは何やら必死だしアスールは幸せそうだ。もういいのかなこれで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ