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第79話 暴走する触手の化け物

「流石にこれで終わりだろ……」


 またまた分身でしたとか言われたら殺したくなる。いや、どの道殺すんだけど。

 しっかし全く身体が動かない。相当強い薬を入れられたようだ。多分だけど触手に直撃でもしていれば薬のショックで死んでいたんじゃないだろうか?


「刀夜殿、肩を貸すぞ」

「悪い、助かる」


 流石に薬品を体内に仕込んでいるなどはないと思いたい。仮に時間を戻すのであれば薬品が身体を中心に発動してしまい臓器の機能が幼くなって現状の身体に付いていけなくなる、とかであると嬉しい。


「刀夜殿? どうかしたのか?」

「いや、あっさり終わり過ぎて何かあるんじゃないかと思ってな」


 魔人がこんなもののはずがない。俺1人で勝てるような奴であれば大した脅威にもならないはずだ。


「っ! 刀夜殿!」

「なっ!?」


 メディシーナ・リーベの死体から大量の細長い触手が出てくる。また、背中から黒い触手が出てきて迫ってくる。

 コウハが咄嗟に庇ってくれたものの俺達はその強烈過ぎる一撃で大きく吹き飛ばされてしまう。

 ルナ達のいる壁まで吹き飛ばされる。咄嗟にリルフェンが身体を張って俺達を受け止めてくれる。


「ガウ!」

「ごほっ! わ、悪いリルフェン……」

「ぐっ……と、刀夜殿!? 大丈夫か!?」


 大量に吐血してしまう。身体が痺れているせいか身体強化魔法や硬化魔法などの自分に作用する系統の魔法が上手く発動してくれない。

 コウハが直撃に耐えてくれてリルフェンが受け止めてくれなければ死んでいたことだろう。危なかった。


「…………回復!」


 アスールが回復してくれたことでなんとか体勢を整える。麻痺まで回復してしまった。

 そういやキマイラ戦で回復魔法で毒が治っていたか。麻痺も同様の分類に含まれているのかもしれない。


「ご主人様! コウハ様!」


 全員が壁から降りてきて心配そうに見つめてくる。俺は手を適当に振って無事を伝える。


「ふぅ……で、あれは何だ?」


 背中からは4本の触手が、口からは細い触手が何本も出ており、全身に触手がまとわりついた黒い化け物。

 荒い呼吸をしており、ポタポタと真っ赤な血を吹き出しているものの全く聞いていないのではと感じさせるくらいに元気そうだ。


「浅野の時の暴走状態と一緒……ってわけでもなさそうだけどな」

「ハギ トウヤァァァァ!!!!」

「…………刀夜モテモテ」

「あんなのにモテても嬉しくねぇな」


 化け物の姿で人の名前を呼ばないで欲しいものだ。腹が立ったのと試しにということで銃を構えて引き金を引いてみる。

 銃弾は口から出ている細い触手によって弾かれてしまう。爆破もしなかったんですがもしかして爆発の発生前に既に魔力を吸われたということか?

 もしかしてあの触手に捕まった時点で身体の中の魔力を吸われるんじゃ……うーわ、面倒くせぇ。


「やっぱりあれは放置の流れでよくないか?」

「だから駄目だろう!?」

「…………刀夜の触手プレイ。…………萌える」

「萌えません」


 何言ってんだか。とりあえず確かにこれは放置出来ないだろうけど面倒な相手だ。


「知性飛んでんだし穴に落としてはい終了って感じじゃ駄目か?」

「そんなに戦いたくないのか?」

「まぁ正直。確かに俺は戦闘狂かもしれん。だが戦う相手くらい選ぶぞ? あんな触手18禁野郎はちょっと……」

「…………萌えるチャンス」

「燃やすチャンスかもしれんが萌えない」


 本当、焼却だけで死んでくれると助かるんだが残念ながら無理なんだろうな。魔力を吸収する……か。


「それでまだ1人で突っ込む気かしら?」

「ん?」

「どうせ薬品に警戒しながら戦う上で更には魔法も効かない相手だから私達じゃ危険って判断して1人で突っ込んだんでしょう?」

「いや、だから美女と触手の組み合わせはな?」


 ちょっとマオさん怖い。何で人の心読めるんですかね。


「隠さなくてもすぐ分かるわよ……」

「刀夜くん、私だって戦えたよ? 槍だから距離を取って戦えたんだから」

「あなたは貫通力に優れているのだからあの触手は抜けられないわよ」


 ちょ、ま、マオさんどこまで分かってる? これ以上人が誤魔化してきたことを掘り下げないで欲しいんだけど?


「コウハちゃんは一撃一撃の隙が大きいからそこを突かれると厳しい、アスールちゃんは素手で触るのは論外という感じかしら?」

「あ、あの、マオ様。ご主人様が顔を真っ赤にしていらっしゃるのでそれ以上は……」

「1人で突っ込んだ罰よ」


 くぅ……全部言いやがった。


「だからトドメをムイちゃんに任せるつもりだったんでしょう? 本当に策士なんだから」

「へー、俺が聞いた時はそんなこと一言も言ってなかったけどな〜」

「私とコウハちゃんには聞かれちゃうもの。言うわけないでしょう?」


 わざと全部言ってやがる。後で覚えてろよ……。


「と、とりあえずまだ変化するみたいだぞ」


 身体に巻き付いた触手がまるで固まったかのように動かなくなる。硬化しているのは明らか、物理攻撃も効くかどうか分かんなくなってきたな。


「なんか封印の魔法的なのないのか?」

「そういった魔法はございません。大昔はあったそうなのですが……」

「ふーん……つーことは実力で殺さなきゃならないわけか」


 なんて面倒な相手なんだ。まぁ別にいいか、殺さなきゃならないのなら殺すだけだ。


「さてと……」

「刀夜さんは休んでなさい。魔力も結構使ったでしょう?」

「あいつ殺す分には残ってるぞ?」


 多分だけど。長期戦になれば怪しいが1人殺すくらいの魔力ならば残っている。


「心配し過ぎなのよ。過保護ね」

「お前にだけは言われたくない」


 お前の方が過保護だろうが。それが別に悪いことじゃないんだけどな。


「とりあえず俺だってまだやれる。あいつに関しては俺の方がやりやすいだろ」

「1人で抱え込まないでください。…………私達だって強いんですよ?」

「ルナ……」


 確かによく言われる。そうだ、俺にはもう頼りになる仲間がいるんだ、もっと頼ってもいい。

 俺1人で最強だ。だが全員でやればもっと最強だ。だからこの程度の脅威も余裕だろう。


「…………悪い。とりあえず全員であいつ殺すか」

「ん…………私もまだまだやれる」

「俺もリケラの敵討ちしてーしな」


 急にそう言う話ぶっ込んで来るなよ。とりあえずまずはあいつの情報から集めていく必要があるな。


「色々試すから刀夜くんはよく観察していてね」

「刀夜くんの代わりは僕が務めるよ」

「え、俺しばらく観察?」


 全員でぶち殺そうと言ったそばからなんだけど?


「中衛、後衛の護衛しなきゃなんねーだろ? 刀夜が適任なんだからしっかりやれよ〜?」

「ということで僕達が攻めるよ」

「私だって戦えるんだから! 銃だけじゃないよ!」

「行って来る!」


 ムイ、アリシア、コウハが臆することもなく触手の化け物に向かって突っ込んで行ってしまった。俺ここで見てるだけか。

 マオが弓を構えて撃つ機会を伺っている。いつでも放てるようにと既に特技を使用しながら弓を引いていた。

 ルナも魔法で攻撃ではなく防御を優先して前衛の安全率を高めているようだ。吸収されてしまうことを考えると確かに得策だろう。

 アスールはあちこち飛び回りながら撹乱と援護をしている。触れるだけで魔力を持っていかれるのを分かっているようで安易に触れることはしないようだった。

 魔法による攻撃はミケラ、リルフェンがが担当。ミケラは火力ではルナに劣るとも様々な角度から様々な魔法で色々と試しているようだ。リルフェンは動き回りながら色々な角度で当てているようだ。


「…………」


 俺だけが何もしない、ということはない。前衛が引きつけている隙に銃の引き金を引く。

 弾丸は触手を抜けて化け物の腹部に突き刺さる。しかしやはり爆破はしないようで加えて弾丸は硬い皮膚に弾かれてしまう。

 既存の銃をホルスターにしまうと鞄から更に別の銃を取り出す。


「また新型か?」

「まぁな」


 敵の本拠地に攻めに行った際に魔法に耐性のある化け物に襲われた。その時から考えていたものだ。

 黄色い魔法陣を展開、雷がバチバチと音を立てて銃に帯電していく。狙う先は化け物。タイミングは外さない。


「何だそれ!?」

「レールガン」


 短く伝えてじーっと観察を行う。コウハの大剣が背中から生える大きな触手を切り飛ばした。その瞬間別の触手が襲う。


「神速の一閃!」


 ムイの特技が触手を更に切り飛ばす。しかし切るたびに何度も生え変わっていくようだ。面倒な相手である。


「やあぁぁぁぁ!」


 アリシアが一気に距離を詰める。小さな触手が幾つもアリシアに伸びて来るがアリシアが槍をバトンのように回転させたり薙ぎ払ったりして上手く躱す。

 アリシアが一気に距離を詰めたその瞬間を狙って俺は引き金を引いた。バチンッ!と雷が空を切る音が鳴るその瞬間には銃弾は化け物の胸部だ。


「グガァ!?」


 銃弾は見事に皮膚を抜けて貫いた。撃った衝撃に耐え切れず俺の腕が裂けて血が噴き出してしまうが問題はない。

 雷魔法によるレールガンに加えて更に貫通力を高める為に銃弾にも細工をしている。雷魔法に加えて炎魔法による逆噴射、更には風魔法による回転の速度の上昇と水魔法を噴出させて雷魔法の性能を底上げしている。

 銃だけでなく銃弾も精密な技術が要求される為に数はあまり用意出来ていないが絶大な威力を誇るのは当然だ。


「アリシア! やれ!」

「双雷撃槍!」


 青と紫の雷を纏った槍が俺が空けた風穴に差し込まれ、大きく抉る。例え皮膚が硬かろうが一点を貫くことが出来れば後はそこから攻めていけばいい。


「ゴガァァァァ!」

「っ!?」


 痛みなのかそれとも抵抗なのか。いきなり暴れ出した化け物である。アリシアは槍を抜きながら慌てて距離を取ろうとする。


「なっ!?」


 暴走しているはずなのに動きは精密だった。先程の俺のように地面から触手を伸ばしアリシアの足に絡みつく。


「ま、魔力が……それに痺れて……」


 アリシアが力なく尻餅を付いた。

 俺は即座に縮地でアリシアの元へと向かうと同時に刀で触手を切り裂いた。


「アスール!」


 アリシアの腹部に手を回して思い切り上へと放り投げる。旋回していたアスールがアリシアをキャッチしてそのまま離脱しようとする。

 逃さないとばかりに触手がアリシアの方へと向く。


「神速の風刃!」


 俺はその触手を根本から斬り落としてやった。注意がアリシアに向き過ぎだ。隙だらけ過ぎて話にならない。


「ガァ!」


 まるで聞いていないとばかりに俺の方を向いた化け物は口元の触手を伸ばして来る。俺は小さく口元を緩めた。


「いいのか、俺に注目してて」

「ガッ!?」


 側面から回り込んできたコウハが炎を纏わせた大剣を振るう。


「破壊の炎撃!」


 大剣は見事に化け物の胸部を捉えて真っ二つに切断させながら大きく吹き飛ばした。

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