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第74話 タイミングの良い奇襲

 テイルに案内されて村長の元へ。獣人族の時にも経験しているが確かに上に話を通す方が早いだろう。

 村長は村の中央の巨大な大木の中に住んでおり、ロウソクのような薄暗い部屋の奥に座っていた。

 白髪の老人で身長も小さく、長いあごひげを生やしたいかにもな人だ。村長とかそういうお偉いさんはこういう風な風貌にならなきゃいけない決まりでもあるんだろうか?


「村長、こちら萩 刀夜様がお話ししたいことがあるそうで」

「話ってか交渉だけどな。内容はシンプルにそっちの技術をいただきたい代わりにこちらの持つ情報を明け渡す、というものだ」

「情報の方を先に聞かせてくれるのかね?」

「あぁ」


 それは当然だろう。技術だけ渡してはいじゃあ情報は何もないですじゃ話にならないからな。


「私達の身が危険ということでしたが……そこまでのものなのですか?」

「あぁ。内容は人間、エルフ、獣人に魔物の細胞を埋め込んで作り出した新たな生物に関して、だからな」


 俺が大体の話のタイトルを言うだけでテイルも村長も息を呑んだ。

 大方の話をするとテイルは身体を震わせる。とてつもない恐怖は話すだけでも人を畏怖させるものらしい。


「つまり……新たな生物が誕生しているということかね?」

「そうとも言うし既存の生物を掛け合わせただけとも言える。元々有翼種が存在しているくらいだしな。微妙なとこだろうな」

「そ、そうか……」


 さて、俺達の話は終わったわけだがこいつらにとってかなり有益な話をしたはずだ。


「で、俺達に技術の提供をしてもらおうか? 具体的には魔法に関して、だが」

「うむ…………」


 渋ったご様子……でもなさそうか。状況が状況だが本当かどうかという判断材料がないのだ。今の話が事実であると誰が信じれるだろうか。


「……?」


 今何か外で怒号が聞こえたような……?


「刀夜さん! 化け物が来たわよ!」

「あー……マジか」


 タイミングが良いのか悪いのか。仕方ないが俺達で処理するしかないだろう。もちろんこいつらにその化け物の姿を見てもらった後の話だけどな。

 しかしそうタイミング良く襲ってくるものか……? もしかして俺達の行動がバレていて襲って来たとかか?


「刀夜殿! 早く助けよう!」

「あぁ……」


 乗り気はしないが仕方ないだろう。村長の家を出ると村には特に被害はなさそうだった。


「村の外だ! 早く行こう!」

「…………」


 コウハにとっては守りたい奴らなんだ、乗り気にはならないが無駄な犠牲を出す必要もないだろう。

 ライジンを使用して一気に村の外まで駆け抜けていく。出来ればもっと危機感を与えてから手を貸したいところだが……。

 そういう打算的な考え方をしてしまうのはやめようか。コウハが聞いたら悲しむだろうし。

 何人かのエルフ族が一体の化け物を囲んでいた。タコのようなのと融合した微妙に見覚えのある化け物だ。

 8本もの触手がエルフ族を捕らえようと蠢く。なんというか……エルフ族と触手とか色々と18禁になりそうな展開だな。

 そんな状況をルナ達に見せるわけにはいかないので俺はライジンで即座に懐に飛び込むと同時に刀を抜いて化け物の首を刎ねる。


「っ! やった!」


 そういうのお約束だな。残念ながら化け物は首を落とした程度では死なない。

 首のないというのに化け物の触手は全て俺に向けられる。エルフ族がいるのに俺が18禁展開とか誰得だよ。


「な、なんでまだ動いてるの!?」

「やべぇ! やべぇよ!」


 触手を全て避けながら更に懐に入り込んで全身をバラバラに斬り刻む。刀は炎を纏わせていたので切り口から発火して死体諸共焼き尽くしてしまう。

 なんだ、今回もこういうのか。もっと何かあるのかと思っていたが。


「刀夜さん! まだ来るわよ!」

「こいつらは魔法の方が倒しやすい。アリシア、コウハはルナ達とエルフ族の護衛、ルナ、マオ、リルフェンは殲滅に参加してくれ」

「はい!」


 アスールはその間に何をさせておこうか……。と思っていたら防御魔法で襲って来た化け物をぺちゃんこにして潰して仕留めていた。


「…………問題なし」

「みたいだな。お前も殲滅に参加で」

「ん……」


 多少は何か対策をしているかと思えばそんなこともない。俺達の情報は既に向こうには筒抜けだと思ったんだけどな。どうやら対策をしようとしても簡単に出来るようなものではないらしい。

 圧倒的に滅ぼして死体の山を形成していく。エルフ族はぽかーんと口を開けたまま固まってしまっていた。


「戦闘中な惚けてはいけない! 油断しているとあっさり殺されてしまうぞ!」

「え、あ、うん!」


 コウハの怒号に周囲のエルフ族がハッとする。瞬間木の上から飛び出してきた半人半鳥の化け物が鋭い爪を向ける。


「ふっ!」


 コウハが大剣を振り上げて爪を弾く。その衝撃に吹き飛ぶ化け物の翼をマオの矢が貫いて落とす。


「リルフェン!」

「ガウ!」


 落ちてきた化け物をリルフェンの落雷が無慈悲に襲う。上級属性魔法はあっさりと化け物を跡形もなく灰にした。


「あ、ありが」

「次が来るぞ! 刀夜殿! 私も参戦する!」


 本当に数だけは多いな。やはりはぐれが来たわけじゃなく意図的に襲って来たんだろう。俺達がいるからかもしくはエルフ族を捕らえる為か。

 最初の触手野郎を見る限りでは恐らく後者か。ということは運がなかったな。


「そうだな……ちょっと厳しいか」


 数が重なれば流石にしんどい。というか魔力が持たない気がしてきた。


「じゃあ頼む」

「うむ!」


 コウハと2人で前線へ。襲い来る化け物達を斬り刻んでその数を減らしていく。


「破壊の断罪!」


 コウハの特技で化け物の身体が吹き飛ぶと同時に木っ端微塵に。これなら確かに殺す事も出来るだろうが……。


「コウハ、足を切り落として動きを止めながら一箇所に集めてくれ。魔法で一気に殲滅する」

「分かった!」


 殺しは出来ても1体ずつでは話にならない。人間の街にでも向かわれれば面倒である。


「クロスフレイム!」


 ルナが放った十字の炎が敵を一気に殲滅していく。俺の小賢しい作戦なんていらなかったんじゃなかろうか?


「ご主人様! 流石に魔力が持たない気がして来ました!」

「ん…………ちょっと多い」

「そうだね! 私も全然倒せないから困ってるんだけど!」


 マズイな。こんな地形じゃ銃を乱射も出来ねぇし……。仕方ない、アレ使うか。


「全員覚悟は出来てるか!?」

「っ!」


 全員の顔が一気に強張る。そう……禁断のアレを使う時が来たようだが……出来れば使いたくはなかった。


「し、仕方ありませんよね!」

「ん…………でもキツイ」

「私は必要ないんだけど……。あ、でも仲間外れも嫌だからやるよ?」

「う、うむ……仕方ないな!」

「やらなきゃ駄目よね……。もう、仕方ないんだから」


 周囲の敵を一気に殲滅して少しの間前線を押し下げた。猶予が出来たところで鞄からとあるものを取り出す。


「まさかまたこれを使うとは……!」


 俺達の手に持っているのは……ご存知ポーションである。ゲロマズだけどな。

 一気にポーションを飲み干すと濃厚なまでのゲロみたいな味が口いっぱいに広がる。うん、クソマズイ。


「…………やっぱりゲロ」

「うっ……き、効きますね」

「不味いわ……」


 ポーションだけでこのダメージである。実はこんな化け物どもよりも一番辛いのがこれだったりするわけだが。

 しかし効力は実証済み。味が不味いような薬はよく効くのと同じ理論なのかもしれない。


「えっと……何でこんなに騒いでるの?」

「ポーション飲んだだけだよね……?」


 エルフ族から何やら珍妙なものを見ているかのような視線を向けられてしまったがとりあえず無視した。

 一気に殲滅してなんとか片付けてしまう。2杯目とかなくてよかった。流石に遠慮したいからな。


「口直ししてぇな……」

「…………キスする?」

「お前も飲んだ後だろ? 一緒だと思うぞ?」


 とりあえずひと時の安全は確保出来たわけだが……。こうなると獣人族の方も心配になるな。


「刀夜殿が何を考えているのか大体分かる。行こう」

「えっと……いいのか?」


 ここでエルフ族を放置するっていうのは結構な事なんだが……。


「2度ここが襲われる可能性は少ないだろう? それよりも獣人族が襲われている可能性の方が高い」


 俺達が解放を行ってしまってバラバラとなった化け物も多い。戦力強化を図ろうとするのは当然の話だっただろう。

 しかしこれで色々な欠陥が見つかって来たというものだ。付け入る隙はある上に魔人は残り1人、新たに生み出されている可能性も考慮するともう1人くらいだろう。


「…………ごめんなさいね。すぐに転移魔法陣を展開するわ」


 マオが申し訳なさそうな表情を浮かべながら転移魔法陣を展開した。少しの間はエルフ族ともお別れだ。

 もっとも仮に獣人族が襲われていなければまたすぐにでも戻って来るのだが。報酬の魔法の技術は流石に欲しい。


「すげぇなあんたら!」

「あんな化け物の軍団をあっさり退けちゃった!」

「…………ま、まぁ凄いんじゃないの?」


 こいつらの手のひら返しにはイラっとしたがとりあえず静観する。俺にとってはどうでも良い事だ。

 しかしコウハにとっては嬉しい言葉だったのかもしれない。それを聞いたコウハは優しく微笑んでいたから。


「悪いが別のとこも襲われているかもしれない。またすぐに戻ってくるつもりだがそれまではお前らで何とかしてろ」

「はっ!」


 いや、なんで敬礼されなきゃならないんだ。


「…………軍隊」


 確かにそうかもしれんが……。もう獣人族とエルフ族で手を組めばいいんじゃなかろうか。軍隊同士仲良くなれると思うんだけどな。


「コウハさん……」

「う、うむ?」


 エルフ族のうちの1人がコウハに向かって勢いよく頭を下げた。その行動にコウハは目を大きく見開く。


「ありがとうございました!」


 あー、やっべぇな。うん、超イライラします。


「…………」

「…………刀夜、落ち着く」

「はい、今はコウハ様にお任せしましょうね」

「流石に何も言わねぇよ……」


 俺だってこういう空気くらい読める。流石に何も言わない。イライラしてるだけだ。


「…………うむ、皆が無事で良かった」


 でもまぁコウハが喜んでいるからひとまずは及第点だと思ってもいいのかもしれないな。

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