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第71話 獣人族の村で見つける新しいこと

「あの装備本当にあげちゃって良かったの?」

「んー、まぁ別に問題はないな」


 どうせライジンだしな。旧型なのが申し訳ないくらいだが。


「前のやつだからな。獣人殺しと渡り合えるくらいしか出力しか出ないぞ?」

「それ結構凄いことなのだけれど……」


 確かにそうかもしれんが。でも別にそれで何か出来るわけでもないだろう。そうだな……人間滅ぼせるくらいか?


「けれど確かにそれがあると安心出来るわ」

「そうか? …………なら別のもっと凄いのを作って渡さないと意味ないか?」

「だからどうしてそんなに渡そうとするのよ……。そもそも私の意思で刀夜さんの側にいるんだから刀夜さんが気にすることないのよ」


 そんなこと言われてもな。俺だってマオのそばにいたいんだから全ての責任をマオに押し付ける気はない。そもそも……。


「普段から俺には周りに頼れって言ってるのにこんな時だけ自分で抱え込もうとするなよ」

「うむ、そうだぞ。私だってマオ殿は大切な仲間だからな、何があっても手を貸すぞ!」

「私も同じです。マオ様が困っているなら力になりたいです」


 流石俺の嫁達だ。


「困ってないわよ?」

「困ってなくても頼れ。とまぁそれは置いておいて中戻るか」


 アスールとアリシアに任せっぱなしなのだろうか? 早く戻らねば。


「もう平気なのか?」

「ルナに癒されたからな。ルナ、ありがとな」

「はい! ご主人様が望むならいつでもいいですよ!」

「あぁ、俺にも甘えたくなったらいつでもいいぞ」


 本当に良い嫁もらったな俺……。

 中へ戻るとアスールとアリシアがライジンと銃の説明をしてくれていた。俺がこいつらに説明した台詞を一言一句間違えないで。そこまで覚える必要はなかったんだけどな。


「任せちまって悪い」

「ううん、それより大丈夫?」

「ん…………私達も癒す?」


 まるで見てきたかのような物言いだった。いやもうある程度予想は付いているんだろうけどな。流石なものである。隠し事出来ないんじゃなかろうか?


「もう平気だ。とりあえずそれ全部貰ってくれ。幾分かは戦力強化になると思うが……」

「幾分というか倍以上に跳ね上がるわよ……」

「そうですね。普通の人がライジンを使用するとそうなりますから」


 確かにそうかもしれんがな。しかしそれ以上にその速度そのままに連携やらが出来るのかという疑問点が残る。だから慣れれば戦力は跳ね上がるだろうがそう単純なものでもないだろう。


「本当にその装備の数々を譲っていただけるのじゃろうか?」

「あぁ、別に俺達にそれで何か損害があるわけでもないしな。そんなことよりもお前らが死んでマオが悲しむ方がこちらとしては酷い損失だ」

「刀夜さん……」


 俺としては当たり前のことを言ったつもりだったのだがマオから感動したような視線を向けられてしまった。同じような話家でもしただろ。


「ではありがたく頂戴しよう。マオルーク、最後に1つ聞かせて欲しい」

「はい?」

「主は今……幸せか?」


 その質問はマオを想ってのことだろう。マオは大きく目を見開いた後に頬を赤く染めながらこれまで見たことのないような満面の笑みを浮かべた。


「はい、幸せです」


 それはこの場にいた全員が満足するような回答だった。

 積もる話などもあるだろうことから村で一泊することとなった。俺達はマオの部屋と更には客室を与えられたので問題はない。当然男女別々だ。


「まぁ流石にこんなとこじゃ出来ないよな……


 聴覚に優れる獣人族が多く住む村なのだから当然そういう行為に走れば村中にバレる。エッチなことは家までお預けだ。

 ということで俺はこの村の鍛冶屋へとやってきていた。もちろん勉強する為だ。


「温度の調整?」

「はいっす! 鉄を溶かして叩くっすよね!?」

「まぁそうだな」


 犬耳を付けた中性的な男の子に捕まってしまった。鍛冶屋の見習いらしいのだが……話長い。

 その横では無言で鉄を打つ豚耳の寡黙なおじさんが。この人豚なのに格好良いんですけど。豚なのに。


「あの調整難しくないっすか?」

「慣れれば簡単だと思うが……」


 流石に俺も慣れてきたので問題ないんだがな。というかこいつ俺よりこの世界長いんだからその分俺より鍛冶について分かってるんじゃ?

 見習いの話を若干聞き流しながら作業を見ていると妙な粉末を上から掛けた後に鉄を打っていた。なんだろうが今の?


「今の何してるんだ?」

「え? 粉を振りまいてるだけっすよ?」

「だからその粉は何の意味があるんだ?」


 上から粉を振りまいて何かあるのだろうか?

 おじさんはこちらを振り向くと無表情で本棚を指差した。


「……?」


 言われた通り本棚を物色するも特にめぼしいものはない。


「これっすよこれ」


 見習いが代わりに抜き取ってくれた。それは鉱物の本ではあるが……やはり人間のものとは違うので獣人族独自で集めた資料だろう。

 中を開くと当然だが様々な鉱石が載っている。しかし気になるのはその内容だ。


「特技に反応して……え、マジ?」


 鉱石の一部には特技に反応するものがあるらしい。効力を上げるのは言わずもがな、その性質までも変化させてしまうものがあるのだとか。

 確かに人間は特技も使うが上手く使いこなせる人間はあまりいないのが現状だ。そしてそれを知る機会が鍛冶屋にはあまりない。つまり……。


「獣人族だけが知る情報ってことか……」


 これは大きな収穫だ。しかしいいのか?


「この本読み漁ってもいいのか? 俺人間なんだけど」


 おじさんは無言で頷いて鉄を打つ作業に戻った。何この豚様超格好良いんですけど!

 ありがたく本を読みふけって今度はきちんと見習いの話にも耳を傾ける。特技に関してはやはり見習いの方が俺より優れているようでなかなかに面白い話が聞けた。最初鬱陶しいとか思って悪かったな。


「…………刀夜、何してるの?」

「ん? あぁ、アスールか。お前こそ何してるんだ?」

「…………あれ」


 アスールが指を差した方向を見てみる。するとコウハが数人の獣人族を相手に厳しく指導していた。


「…………衛生兵」

「そうか、休むべきだと思うんだけどな……」


 獣人族を鍛えているようだ。コウハは真面目で自分にも他人にも厳しいからな。いや、俺にはダダ甘なんだけど。

 そんなコウハだからこそ長官には向いているのかもしれんが厳しくしてしまって獣人族のやる気が削がれたりしないのだろうか?


「敵は強い! だからこそ常に柔軟な思考が大切なんだ! 刀夜殿がいつも言っているが頭が固いだけでは守りたいものも守れないぞ!」

「Yes,ma'am!」

「武器を取れ! 戦うんだ!」

「Yes,ma'am!」


 何だあれ……軍隊か何かだろうか。あ、だからアスールが衛生兵って言ったんだな。


「せっかくの休日に何してんだか……」

「…………それは刀夜も。……また鉱石?」

「あぁ、特技に反応するものがあるらしい。ほら、これなんか身に付けるだけで回復魔法の効力が上がるらしいぞ」


 エメリア鉱石というらしい。緑色の鉱石で価値が高く、また回復作用のある魔法に反応してその効力を高めるもののようだ。

 本にはその効力の度合いが星5つを最大にして載せてある。めちゃくちゃ有能なんだけど……これ誰が作ったんだろうか?

 本の背表紙を見ると製作者のような名前が。製作者『クールピッグ』。クールな豚?


「あの豚様マジ格好良いんですけど」

「…………そうなの?」


 やべぇよこの人、天才かよ。そうか、こうして少しずつだが情報を集めているんだな。何この人すっげぇ尊敬する。


「…………刀夜が褒めるなら相当凄い」

「そうか? 俺は結構凄い奴は普通に褒めると思うんだけどな」

「ん……でも刀夜が思う凄い人が滅多にいない」


 そんなことはない。現に俺はお前ら全員を凄いと思う。何かを考えて動いているのは当たり前の話だが明確に俺はそこに触れようとはしてこなかった。

 コウハを見ながらあの言葉の意味を考える。コウハは何故こんな提案をしたんだろうか?


「…………コウハに何かあるの?」

「いや……ちょっとな」


 確かにコウハは仲間想いだ。だからマオのことを気遣ったと言われれば納得出来ないわけでもない。

 しかしだ。それでもやはり何か違和感があった。いつものコウハらしくないというか……。


「うーん……」

「…………そんなに頭を悩ませる事態?」

「あぁ。解決しないと俺が超絶鈍いという称号を与えられそうだ」

「…………既に手遅れ」


 そうだったようだ。俺はもう鈍い認定されてるのは知ってるけどな、超絶鈍いとまで思われているとは思わなかった。

 アスールの言葉にショックを受けているとコウハが一息吐きながら歩いてくる。


「2人ともどうかしたのか? 刀夜殿はずっと私を見ていたみたいだが……」

「いや、熱心だなと思っただけだぞ? 流石だな」

「そ、そうだろうか?」


 照れた様子のコウハ。うん、可愛い。


「でも休む必要ないのかと思った程度だ」

「鉱石の本片手に言われても説得力がないぞ」


 それは確かにそうだろう。しかしこういう機会じゃないと獣人族から色々と学べないからな。仕方がない。


「それに皆良い子達だ。私の話を真っ直ぐに聞いてくれる」

「ん…………普通?」

「確かにそれが普通だな」


 むしろ人の話を真っ直ぐに聞かない奴の方が色々とマズイ気がするんだが。


「……確かにそうだな」


 しまった、コウハが少し俯いて悲しそうに笑みを浮かべてしまった。

 コウハはその髪のせいでまともに話を聞いてもらえていなかった過去がある。真っ直ぐに話を聞いてくれるという普通のことですら嬉しいのだろう。


「まぁ確かに話半分で聞く奴もいるからな。そんなに良い奴らなら俺も知り合っておいた方がいいか……?」

「刀夜殿も入ってくれるのか?」

「あぁ。鉱石の本は明日でもいいからな」


 今日は徹夜だな。徹夜で読み漁ろう。あわよくば色々と覚えて俺の武器に応用しよう。


「それじゃあ早く行こう!」

「お、おう……」


 コウハに腕を引っ張られてしまう。そんなに楽しそうにされても困るんだけどな……。


「皆、今から刀夜殿も混ざってくれるようだ。一緒に色々と学ぼう!」

「Yes,ma'am!」


 え、俺軍隊の指揮取らないといけないのか……?

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