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第69話 大人なエルフ族は年下を見習っている

 ゆっくり休みたいという全員の要望はしっかりと聞き入れなければならない。ということで俺は全員のやりたいことを聞いて回ることにしたわけだが……。

 とりあえず一番近くにいたコウハに声を掛ける。


「なぁコウハ」

「どうした?」

「何かしたいこととかあるか?」


 コウハはキョトンとした後に少し思案し始める。そしてにっこりと微笑んだ。


「膝枕とかはどうだろうか?」

「膝枕?」


 昼寝でもしたいということだろうか? そこまで色々と疲労が溜まっているのか、それなら仕方ないな。


「おう、いいぞ」


 と安請け合いしたもののご想像通り俺が思っていたのと逆だったわけだが。

 ソファに寝転んでコウハの太ももに頭を乗せる。コウハは満面の笑みを浮かべて俺の頭を撫でているわけだが……。


「なぁコウハ、やっぱり逆じゃないか?」

「逆?」

「俺が膝枕するべきだと思うんだが」

「確かにそれも魅力的だが私にも甘えて欲しいんだ。だから今はこうしていたい」


 そんなことを言われてしまってはどうしようもない。それにコウハに甘えたことなかったっけ? あると思うんだが……。


「…………羨ましい」

「うお、アスール殿!?」


 いきなり現れたアスールに驚いてしまった。コウハも驚いてるし本当に気配ないんだな。戦闘で役に立ちそうだ。


「お前も膝枕して欲しいのか?」

「…………したい方」

「お前もかよ」


 何でみんなされる方じゃないんだ。どんだけしたいんだよ、アスールが珍しく無表情を崩してシュンとしている。


「…………休みなんだからまた今度にでもしてくれ」

「ん…………楽しみにしてる」


 いつもの無表情に戻ったアスールだったがスキップしながら自室へと戻っていった。何というか……色々読めないな本当。


「アスールの考えてることはよく分からんな」

「そうか? 私には手に取るように分かるぞ」

「マジか」


 コウハは俺と同じでそういうのに鈍いタイプだと思っていた。


「刀夜殿とイチャイチャしたいのだろう? 私も同じ気持ちだからよく分かる」

「お、おう……」


 そうだったのかアスール。しかもコウハ、お前もそんなこと思ってくれていたんだな。

 コウハの優しさに心もポカポカと暖かくなってくる。俺の恋人は俺を喜ばせる術を心得てらっしゃるので困る。


「俺もイチャイチャはしたいが……普段からしてるからな」

「確かにそうだが私達は刀夜殿の1番になりたいんだ。だから他の皆よりイチャイチャしたいのは当然だろう?」

「うーん……1番じゃなきゃ駄目なのか? ナンバーワンよりオンリーワンじゃ駄目か?」

「確かにそれもいいかもしれないがやはり刀夜殿と密接な関係を築きたい。だからナンバーワンに私もなりたい」


 どうやら何を言っても無駄のようだ。俺が誰かを選んでしまって……他の人をないがしろにしてしまわないか心配になってしまう。それにみんな美人で可愛いのだ、誰かを選べという方が今更難しい。


「刀夜殿が難しく考える必要はないんだ。私達がそれを目指しているだけでそれを刀夜殿に強要したりはしないさ」

「そ、そうなのか?」

「うむ。もちろん選んでくれる方が嬉しいが刀夜殿が優し過ぎて選べないのは皆分かっているからな」


 褒められてる気がするんだが微妙に優柔不断と言われているような気もする。いや、実際優柔不断なんだろうけどな。


「他の何もかもを犠牲にしてでも私達の為に最強であり続けてくれるのが刀夜殿だからな」

「そんなことねぇよ。むしろお前らに見放されないようにっていう後ろ向きな理由だぞ?」

「ふふ……謙虚なんだな」


 コウハは俺の頬に手を添えると優しく撫でてくる。うーん……何やら子供扱いされてる気がするんだが気のせいだろうか?


「…………私も刀夜殿に習って強くならないと」

「俺を目指しても俺にはなれないぞ」

「もちろんそんなことは分かってる。それに私と刀夜殿では求める強さに違いがあるからな」

「…………」


 以前アリシアも同じように悩んでいたように思う。しかしアリシアとの決定的な差は自分の目指す強さを既に持っている点だろう。

 目指すものがあるからこそそこに向かって行ける。そこに向かう途中に見つけた見習うべきものから良い点だけを吸収していく。そういうものだろう。


「…………そうか。やっぱり俺は人を見る目がないらしい」

「そ、そうなのか?」


 本当にそう思う。この中で一番考えて自分の意思を持っているのはコウハだった。それなのに俺はコウハはがむしゃらに強くなりたいものだと思っていた。

 目的を定め、きちんとなりたい自分を見つめていた。俺なんかよりもよっぽど大人だ。


「お前ならもっと強くなれる。だから頑張れよ」

「うむ」


 コウハの手を握り締める。少しでも繋がっていたくて。少し甘えたくなって。

 大人であることを示されて寂しくなってしまったのだろうか? とにかく側にいて欲しかったのかもしれない。


「ところで……」

「どうした?」

「俺の習うべきとこってどこなんだ?」


 目を大きく見開いたコウハは少し思案する。あれ、やっぱり漠然と俺を目指してないかこいつ?


「…………言うのは恥ずかしい」


 違った。単に恥ずかしがっていただけだった。


「そんなに恥ずかしいところあったか……?」

「うむ……いや、その生き方自体は格好良いんだが……口に出すのは恥ずかしい」


 生き方は格好良いのに言うのは恥ずかしい? 何だそのなぞなぞみたいなのは。


「何だそれ?」

「えっと…………」


 頬を赤く染めたコウハは恥ずかしそうにしながら顔を近付けて誰にも聞こえないよう小さな声を出す。


「…………刀夜殿が私達の側にいたいと思ってくれるように私も刀夜殿の側にずっといたい。だから……刀夜殿がどんな敵に出会っても守れるくらいに強くなりたいんだ」


 顔を離したコウハはそれはもう耳まで真っ赤にしていた。視線を逸らして恥ずかしそうな顔を隠している。

 何この可愛い子。お嫁に欲しい。いや、もう嫁なんだけど嫁に欲しい。


「コウハ、こっち向いてくれ」

「は、恥ずかしいから嫌だ」

「いいから」


 コウハの頬に手を添えて少し力を加える。コウハはあまり抵抗は見せずにその羞恥に満ちた表情を見せてくれる。可愛い。

 俺は上体を起こすと顔を近付け、そのままキスをする。コウハが可愛過ぎるのが悪い。


「と、刀夜殿……!」


 コウハは目尻に涙を溜めながら驚いていた。あ、あれ、俺泣かした?


「わ、悪い、嫌だったか?」

「そ、そんなわけないだろう!? で、でも嬉しいからやめてくれ!」


 嬉しいのに駄目らしい。よく分からんな。


「コウハが可愛いから悪い」

「私のせいか!? それに私なんて可愛くないだろう!?」

「そんなことねぇよ」


 自分の可愛さに自覚がないらしい。そろそら美形だってことを知って欲しいくらいだ。毎日毎日可愛いことされると俺の心が持たなくなってしまう。俺を幸せで殺す気だろうか?


「お、女らしさの欠片もないだろう……」

「誰だそんなこと言った奴? ぶち殺そう」

「物騒なことを言わないでくれ! だ、だって私だぞ?」

「あぁ、お前だな。可愛い」

「また可愛いって言ったな!?」


 こうやってすぐに照れるところとか褒められ慣れていないとことか。すっげぇ可愛いんですけど?


「あまりコウハちゃんをからかわないであげなさいよ……」

「ん? いや、からかってないぞ? 本心だぞ?」

「そんな当たり前だろみたいな顔で言われても……」


 マオに呆れられてしまった。マオが止めに入るくらいコウハが恥ずかしそうだったということか。


「でもコウハは可愛くないか?」

「可愛いのは認めるけれどあまり言うのは可哀想よ。適度に褒めてあげなさい」

「マオ殿まで何を言ってるんだ!?」


 流石はマオ、よく分かってらっしゃる。


「も、もうこの話はいいだろう!? それよりも刀夜殿! 獣人族に研究所のことを言わなくてもいいのか!?」

「研究所のことをか?」

「う、うむ……。浅野殿の件は片が付いてしまって落ち着いたんだろう? 獣人族にも化け物のことを注意喚起しておかなくても良いのか?」


 確かにそういうのは必要かもしれないが……。


「獣人殺しの件もあったのだし大丈夫よ」

「だがその獣人殺しは目の前で倒してしまっただろう? 気が緩んでしまったりしていないか?」

「…………」


 ちょっとマオさん? そこで何故黙る。沈黙は肯定ということになってしまうぞ?


「だい……じょうぶかしら?」

「疑問形になったな。はぁ……ひとまずじゃあ獣人族には話を付けておいた方が良さそうだな」

「あのギルド長には情報を渡す気がなかったのに獣人には良いのかしら?」


 確かにそうなってしまうのも無理はないだろうが……。


「マオの大切な奴らだろ。こっちの情報くらい軽いもんだ。何なら今からでも全員分のライジン装備でも作るか」

「それはやり過ぎよ」


 そのくらいしないとあっさりと殺されそうなんだけどな。いや、統率力のある獣人族であれば基本的には何とかなるかもしれない。獣人殺しの進行すらも食い止めていたくらいだからな。


「それに使いがここに来ていないのならまだ安全なんでしょうね」

「あー、確かにな」


 真っ先に飛んで来そうだもんな。ということは最悪村が全滅なんてことはないか。


「とりあえず明日からでも様子を見に行ってみるか」

「せっかくの休日でしょう? 私1人でいいわよ」

「いや、もしかしたら何か聞けるかもしれないしな。あわよくば獣人族の特技の技術でも学ぼうかなと」

「抜け目ないわね……」


 魔法に関してはエルフ族の方が得意だろう。連携や特技の面では身体能力に優れる獣人族の方が得意だ。マオから話を聞いたことはあるが詳しく聞くことはなかったからあまり知らないんだよな。


「でもいいわ。それじゃあ悪いけれど私の里帰りに付き合ってちょうだい」

「あぁ」


 少し嬉しそうなマオに心も満たされてくる。仲間のこういう顔ならずっと見ていたいくらいだ。


「…………ふふ」


 そんな俺を微笑みながら覗いてくるコウハ。なんかすっごい恥ずかしい。


「あんまり見ないでくれ」

「さっき刀夜殿も見ただろう? お返しだ」


 顔を近付けてくるといきなりキスされてしまう。さっきしてしまった手前拒めなかった。いや、拒む気もないんだけど。


「あら、大胆な。なら私も……」


 マオにもキスされてしまう。幸せだなおい。


「ありがとう。コウハちゃんもね」

「私が何かしたか?」

「…………天然なのかしら?」


 発案者はコウハのはずなんだけどな。俺に習うにしても鈍いのは習わなくていいんだぞ?

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