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第67話 態度が横柄な奴は大抵ロクな奴じゃない

 一旦集合した俺達はギルドへと来ていた。というのもきっかけはミケラの言葉だった。


「今結構魔物にされた人間の噂が広まって来てるらしいぜ〜。その件でギルドも対応に困ってるみたいだな〜」


 まず間違いなく俺達のせいなわけだが。本陣を半壊させたことでかなりの数の化け物が漏れ出ているだろうからな。

 ということで、かいつまんで現状の俺達の状況をギルド側に伝えた。もちろん肝心な部分は一切話していないが。

 一般的な情報という部分ではギルド側の方が詳しいだろう。クロのことを知ってるのに

 は驚いた。


「クロ様という方にも協力を仰ぎました。お知り合いなのですよね?」

「あぁ。今はこの街で家を探しているらしいけどな」


 結構難航しているんだろうな。それもそうだろう、見た目は化け物のそれと何も変わらないからな。


「その辺りの事情を詳しくは萩様に聞けと言われてまして」

「あー……」


 多分バラしていいことと駄目なことの境目が分からなかったんだろうな。操られて云々は言えるだろうけど。


「答えれる範囲内ではこちらの情報を答えよう。だが忠告しておくぞ。余計な事はするな、死ぬぞ」

「…………それはこちらにも言えない事があると?」

「当然だ。俺ははっきり言ってお前らを信用すらしていない。アイが出てくるなら話は別だがな」


 ルナが姉のように慕っている人だ。そういう人であるならば当然信用出来るが、たかだかいちギルド員の人間に貴重な情報を渡す気は無い。


「アイ? ………………ああ、彼女もギルド員です。結局は情報は私達に伝わるのでは?」


 何故少し間があったんだ。もしかしてこいつ同じギルド員の名前すら覚えてないのか?


「俺の見立てではあいつも秘密に関してはどこにもバラさないタイプだと思うがな」


 もちろんそれは不利益になるならば別ではあるが。いや、アイさんのことだから不利益になろうとも黙ってそうだな。ちょっと心配になってしまう。

 ギルド員は納得がいっていない様子だった。しかし俺にとってはこいつの反応などどうでもいいことだ。


「…………つまり萩様はギルドにとって敵、という解釈でよろしいんでしょうか?」

「お前らが対立を望むのならな。全力でぶち殺してやるぞ」


 人間相手だろうと別に何も感じない。俺の敵は全て抹消する。その考えに変わりはない。


「それではただでさえ他種族を連れ、好意的には見られない方々から恨まれることになるかと」

「そいつらも全員殺せばいい。別に人間全てが敵に回ろうと俺は構わない」


 こいつらにその気があるのならの話だがな。こいつの真意が読めないがこれは恐らくブラフだろう。


「…………そうですか。ではどうあっても聞き出せそうにありませんね」

「他人のプライベートな面だからな〜。あんまり踏み込み過ぎんのもよくねーぜ?」

「肝に命じておきます」


 ミケラが最後にフォローを入れてくれたのでなんとか事なきを得た気がする。このままじゃ俺がただの悪者だからな。別にいいけど。


「ちなみに……本当に人類を滅ぼす力があるのですか?」

「あー、そりゃあるなぁ。こいつ、魔力使わなくても大量虐殺出来るし」

「人聞きが悪いな」


 そりゃあ銃を使えば魔力消費無しでこんな街なんて崩壊させられる。加えてルナとアリシアも使えるから1日も掛からないだろう。


「クロに会ったのならその力の一端くらいは分かるだろ〜? こいつ、そんな相手にわざわざクロを生かして角を切り落とした天才だぞ〜?」

「誰が天才か」


 俺は別に天才とは思わない。特技使えないしな。


「ご主人様は天才ですよ?」

「…………天才だと思う」

「天才だよね」

「刀夜殿は天才だろう?」

「天才よね?」

「ガウ!」


 なんだこの仲間達の全力な援護は。いやまぁ嬉しいっちゃ嬉しいんだけど過度な期待はして欲しくないな。


「とまぁその上で観察眼に優れているわけだ。試すようなことしても無駄だと思うぜ〜」


 やはり俺は試されていたのか。あの程度の脅しで口を割るような奴は信用出来ないと思うがな。


「そうですか。ギルドの名前を出すと大抵は全て吐いてくださるんですが……」

「俺には通じないし関係ないな」


 どうでもいいことだ。こいつらが敵対して来ようが俺達にとっては何の影響もない。


「…………ギルドマスターを呼んでまいります。奥の部屋でお待ちいただけますでしょうか?」

「何でここでギルドマスターなんだ?」

「あなた方に頼みがあるからだとか」


 何だそりゃ。そもそもギルドのマスターから直々にか? 珍しいこともあるもんだ。

 ギルド員に案内されて奥の部屋へ。会議などに使うような少し高級そうなテーブルや椅子が並んでいる。


「ご主人様はここでお願いします」

「別に端っこでもいいぞ?」

「それだと隣に座れるのが1人になってしまいます」


 あー、そういうことね。やっぱり俺の隣に座りたいのな。

 真ん中に座ると全員で話し合った末、最終的にはジャンケンを。勝ったのはアリシアとコウハだった。


「えっと……緊張感ないね」

「そうだな。別に緊張することもないんだけどな。とりあえず2人から凄く良い匂いがするのが気になるくらいか?」


 何故かアリシアとコウハが椅子を寄せて俺の腕に抱き着いてくるので柔らかい胸の感触が腕に伝わってくる。あとやっぱり良い匂いがする。同じシャンプー使ってるはずなんだけどな。


「緊張感なさ過ぎだろー……。これからギルドの長に会うんだぜ〜?」

「長って言ってもこの街のギルドの長だろ」


 コンビニの店長みたいなものだ。別に大して身構える必要もないだろう。


「ギルド長は確かこの近くの街全体を牛耳る実質この土地の王様だよ?」

「そうなのか?」


 ムイがそう言うってことはそうなんだろうな。意外と高い地位にある人間のようだ。


「ちゃんと礼儀良く振る舞えよ〜?」

「相手次第だな。気に食わなきゃ多分横柄になる」


 敬うべき人間であるならば礼儀良くもなるだろう。取り繕うのはもうやめたのだ、気に食わない奴は知らん。


「酷いことを言う人であればお仕置きですね」

「ん…………泣くまで殴ろう」

「酷いことを言ったらもう駄目だね」

「王様なんだから駄目だろう? 心を折るくらいならいいだろうけど」

「どうせくだらない人間でしょう? お仕置きと言わずに殺しちゃえばいいのよ」

「ガウガウ〜」


 俺より酷いんですけどこの人達。


「アリシアはやめとけ。父親の立場が悪くなるだけだと思うぞ?」

「別にいいよ? お父様が困るだけだもん」

「それは良くないんじゃないか……?」


 アリシアも色々と犠牲にしてるな。いやまぁ確かにあの父親が困ったところで俺達が困るわけじゃないけど。


「今まで沢山苦しめられたんだからこれくらいしてもらわないと!」

「…………まぁ確かに」


 あいつの今までの行いを考えればこの程度で許されるはずもないだろう。別に問題ないな、


「お待たせしました」


 真っ先に入ってきたのは先程のギルド員。そしてその後ろをミケラ並みの巨漢の男が入ってきた。

 膨れ上がった筋肉や、金髪ボサボサの髪、三白眼の鋭い目付きは明らかに熟練のそれである。

 本能的に分かる。こいつは結構強い方であると。まぁだからといって俺達に敵うのかと聞かれるとそうでもないと思うが。


「貴様らが話題の集団か」

「態度が横柄だな。よし帰ろう」


 いきなりで話し掛け方が腹立つ。王族だが何だか知らんが人を呼んでおいて上から目線というのが気に食わない。


「結論早過ぎだろ!? それくらい許してやろーぜ」

「言ったろ? 礼儀をわきまえないような奴には横柄になると。こんな奴の話を聞く必要性が分からん。鍛冶屋で武器使ってる方がまだ有意義だ」

「そうですね、帰りましょうか」


 元々今日は研究所の襲撃の予定だ。それを邪魔された挙句この態度、うん殺してもいいんじゃなかろうか?


「王である我に向かって随分な態度だな」

「王だろうと何だろうと知るか。大した情報も持ってねぇのに呼びつけておいてゴミみたいな奴を相手にしてられるか。殺すぞ」

「と、刀夜くん……! 表現が直接的過ぎるよ……!」


 そうだった、ムイとミケラは巻き込めないな。しかし仕方のないことだろう。俺はもう自分を偽る気はない。ゴミにゴミと言っても問題はない。


「では我の頼みを聞く気はないと?」

「ねぇな」


 こんな奴の頼み事を聞いてメリットがない。そもそも何を頼まれるのか次第なところもあるだろうが。

 王は懐から金貨の束を投げ付けてくる。直撃したら大怪我だろうがこいつ。


「前金だ」

「いらん」


 思い切り投げ返してやった。王はまさか返されるとは思ってもいなかったのだろう。反応が遅れていた。

 すかさず隣にいた先程のギルド員がそれを受け止めた。直撃すりゃよかったのに。


「随分と乱暴では?」

「そいつも同じことをしたろ」

「こちらは立場が上です。当然です」

「立場……ね」


 俺はホルスターに入れていた拳銃を取り出して後ろの壁に向かって銃口を向ける。遠慮なく引き金を引くと大きなビームが建物を貫通し彼方へと飛んでいった。


「お前らこそ立場をわきまえろ。俺は対等な奴としか話をする気はない。お前らがどんな身分でどんな人生を送ってきたのか何て欠片たりとも興味はない」


 流石に銃の威力に驚いているようだった。ルナが風穴を開けてしまった壁を土魔法で治していたので元通りではあるが。


「ちょっと刀夜さん? ルナちゃんに直させるの分かってるんだから建物を撃つのはやめなさい」

「わ、悪い……腹が立って」

「それは同感だし殺したいとも思ったけれどルナちゃんが可哀想でしょう?」

「そ、そうだな……ごめんルナ」

「いえ、気にしないでください」


 ルナがにっこりと笑って許してくれる。女神だな、うん。


「お前らちょっとは話聞いてやろーぜ……」

「はぁ……お前がそう言うならいいけどよ。大した話じゃなかったら一蹴するぞ?」

「ということで話していいぜ〜王様」


 お前も随分な態度だなおい。まぁこんな奴に気を遣う必要性を感じないのは概ね同感ではあるが。


「…………貴様らは何者だ」

「ただの冒険者。あー、俺は異世界人か」


 俺だけは少し特殊な生い立ちになるのだろうか。この世界にとっては。どうでもいいことだけどな。

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