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第64話 当たり前だと思ってたけど意外と凄い発明だった件

 目が覚めると既に昼頃だった。意外だったのは全員寝起きだった点だろう。昨日の件でかなりの心配を掛けてしまったからな。


「…………おはよう」

「あぁ、おはようさん」


 アスールがいつも通りに挨拶してくる。着替えたのだろうか、昨日と服装が違うが仕方ないか。


「…………平気?」

「あぁ、大丈夫だ。ありがとな」


 アスールの頭を優しく撫でた後にキッチンへ。忙しなくルナとアリシアが昼食を作っていた。


「…………そんなに急がなくてもいいんじゃないか?」

「確かに今日は何もございませんが……」

「みんなお腹空いてるよね?」

「まぁ腹は減ってるが……」


 仕方ない。俺も何か手伝うか。


「何作ってるんだ?」

「皆様寝起きですので軽くパンにしようかと思っているのですが」

「うん、思ったより時間掛かるね……」


 なんでパンを一から作ろうと思ってんだろうか。と思ったが魔物の素材で便利なものがあるから早いと見越していたのだろう。

 パンは作ったことはないがなんとなく作り方くらいは分かる。俺はアリシアの隣に並んでパン生地をこねる。


「刀夜くんは休んでていいんだよ? その……」

「浅野のことなら気にしなくていい。昨日散々泣いたから」


 俺がそういうとルナやアリシア、加えて聞こえていたのだろうコウハやマオにも驚かれた。え、何この雰囲気は。


「ご主人様が……泣いたことを認めました!?」

「そんな馬鹿な!?」

「刀夜くんどうしたの!? 体調悪い!?」

「本当に平気なのかしら!? 1日と言わずにもっと休みましょう!?」


 めちゃくちゃ詰め寄られた。事情を知っているだろうアスールだけはどこ吹く風だ。助けてくれる素振りすら見せない。


「大丈夫だって。別に俺が泣いても怒っても嫌いになったりしないんだろ?」

「それは当然ですが……」

「ということでこの話はおしまいだ。浅野の件は仕方ないことだったし俺の力不足が原因でもある。1日も休んでられない。今日からまた色々と覚えていくから悪いが付き合ってくれ」


 明日はまたあの研究所に行くのか、それとも本陣を攻めるのかを決めなくてはならない。いや、多分研究所の方に首謀者も場所を移しているだろう。ガバガバで穴だらけの施設に留まる必要性はないからな。


「それより早く飯作るぞ。一分一秒も無駄にしたくないからな」

「う、うん……」

「刀夜殿がそう言うなら……」


 行く前にクロとヒカリに会いたいな。正確に場所を確認してから向かいたいものだが……流石に都合良く現れたりはしないだろう。

 とにかく今日は休日だ。何をしようか……。特技に関してもっと詰める必要があるが何度か使ってみて理解した。

 特技というのはやはり前衛職の仕事だということだ。俺は鍛冶師、そこまで求めていくともう何が何やら分からなくなる。

 あくまでもベースは鍛冶師として。その上で覚えるべき特技がないかを探ってみるとしよう。

 向かうとすれば図書館か。時間を無駄には出来ない、効率的に時間を使用するとして……ただ今日だけで恐らくどんな特技があるのか分かる程度のものだろう。


「今日はどうされるご予定なのですか?」


 パン生地をこねながらルナが何か期待した様子で聞いてくる。


「図書館に行こうかと。特技に関してちょっとな」

「そう…ですか……」


 あれ、なんかシュンとされてしまったんだが……。俺なんか悪いこと言った……?


「それじゃあ私も行ってもいいかな?」

「あぁ、それは別に構わないが……」

「っ! わ、私も行きます! 行かせてください!」

「お、おう……なんでそんなに必死なんだ……?」


 必死な様子のルナに少し引きながら頷く。俺と何かしたいことがあったんだろうか。だとしたら申し訳ないことをしたな。


「私も行くわよ?」

「うむ、私もだ」

「…………何の話?」


 コウハとマオも顔を出す。2人は聴覚が優れているからか聞こえていたらしい。アスールはキョトンとしていた。


「今日は図書館に行こうって話だ」

「ん…………行く」

「ガウ!」


 どうやら全員行く気らしい。別にそれは構わないのだが全員何かしたいことがあるのだろうか。


「それよりお腹空いたわね……」

「うむ……」

「ん……手伝う」


 全員空腹のようだ。ひとまず全員でパン作りというなんともほんわかした時間となった。

 遅過ぎて昼食となった朝食を食べ終わると早速図書館へ。俺は早速特技に関しての本を探す。

 特技というのは2種類あるらしい。1つは体力を消費し、魔法並みの武器術、格闘術を扱えるもの。紫電の突きや紫電の矢、神速の太刀や神速の一閃はこれに分類される。

 もう1つは体力を消費し、魔法並みの事象を起こすもの。例えば投擲した物の速度を上げたり武器や防具を硬化したりがこれに分類される。

 恐らく前衛職が得意とするのは前者。名称としては攻撃特技というらしい。もう片方は補助特技だ。

 つまり俺が覚えるべきは攻撃特技ではなく補助特技の方だろう。むしろ俺としてはこっちの方が使えるんじゃねとまで思っている。もちろんどこまで速度が上がるのかとか硬化させられるのかとかが分からないのでなんとも言えないが。


「ふむ…………」


 ひとまず速度を上げる特技と硬化の特技は覚えるつもりだ。これは補助特技の入門編とまで言われるくらいに簡単かつどんな時にでも使える素晴らしいもののようだ。というか補助特技を覚える上での基本らしい。


「補助特技……ですか?」


 俺の肩からひょこっとルナが覗き込んでくる。距離近い。あとその仕草物凄く可愛いんだが。


「知ってるのか?」

「いえ……申し訳ありません」

「いや謝ることじゃないけどな」


 ルナは魔法関連しか極めてないからな。残念ながら特技に関してはすっからかんだ。


「でもルナ、特技を覚えてみてもいいかもしれんぞ。特に補助特技は使えそうだ」

「そうなのですか?」

「この辺り見てみろ」


 先程読んだ箇所をルナに見せる。


「加速と硬化ですか」

「おう。例えば撃ち出す形の魔法に加速を使用したり土魔法の盾に硬化を使えるなら……」

「っ! 確かに凄い力を発揮しますね!」


 ルナにもこの凄さが分かったらしい。しかし世の中思い通りには行かないものだ。コウハが苦笑いを浮かべる。


「魔法と特技は同時には使えないぞ?」

「そうなのか?」

「うむ。魔力と生命力だからな。上手く発動しないんだ」


 魔法と生命力を同時に使用するというのがまず出来ないのか、それとも難易度が高いのか。いや、でも問題ないよな……?


「ライジン使いながら特技使えてんだからいけるんじゃねぇか? 使えないのは同じ人間の魔力と生命力とか」

「…………」


 あれ、なんか空気が凍り付いた。俺なんか変なこと言ったか……?


「ほ、ほほ、本当だ!?」

「もしかして革命なんじゃないですか!?」

「…………刀夜の発明ってもしかしてヤバイ?」


 何やら騒ぎ出した一同。うーん、俺そんなに凄いことしてるのか?


「ということで問題無しだな。で、コウハ。補助特技はどの程度の力を発揮するのが分かるか?」

「補助特技か? そうだな……劇的に変化するわけでもないと思うが」

「つまりパッと見あんまり変わらない程度か?」

「うむ、そんな感じだ」


 もしかしてあんまり期待出来ないのだろうか? いや、でも戦闘とはその一瞬の隙を突くもの。戦い方次第では大きく変わる可能性もある。

 魔法に魔法同士をぶつけると最悪消滅する。だから今までの構造はそれをしなかったが特技と併用は出来るのならそれ相応の武器も考えれるわけだ。


「幅が広がったな」

「はい! 私も特技を覚えて新しく魔法に組み込んでみたいです!」


 ルナもやる気になっていた。といってもやはり中心は魔法のようだったが。


「…………私も覚える」

「皆がやる気になっている……流石刀夜殿だ」

「……? 俺が何かしたのか?」

「そして鈍感なところも流石刀夜殿だな……」


 何やら呆れられてしまった。俺本当に何かしたか?


「まぁいいか……それよりアリシア、コウハ、マオ、いいか?」

「なんだ?」

「うん、どうかしたのかな?」

「何かしら?」


 全員がキョトンとする。間違いなくこの3人は特技に関しても一流と呼べるだろう。他の奴らと遜色ない程に使用しているわけだしな。


「悪いんだが特技に関して教えてくれないか? 今までなんとか1人で、とか思ってたけどやっぱり無理そうだ」

「ご主人様はとても練習もされているんです。ですがその……結果が振るわなくて」


 ルナが全力で援護してくれてるわけだが……全員何言ってんのみたいな顔してんだけど。


「そんなの知ってるよ? 刀夜くんならすぐに覚えれると思ってたんだけど……」

「そうね。刀夜さんだもの、それくらいしてるでしょうね」

「うむ。刀夜殿だからな」


 なんだこの分かってますよそんなこと、みたいな空気は。俺って何やら凄い努力家だと思われてないか?

 俺は非効率なのが嫌いなだけなんだがな。まぁ遠回りをしてもいいかもと思ってもいるわけだが。


「意外よね。刀夜さんでもすぐに覚えられないものがあるだなんて」

「うん、本当にね」

「うむ。刀夜殿のことだからあっさりと習得しそうで怖かったんだが……」

「お前らのその俺への全幅の信頼は何なんだ……」


 俺は別にそこまで凄い奴だとは思っていないんだが。でもまぁ最強だけどな。誰にも負ける気は無いしそこは譲らない。


「それじゃあ私が教えよう。補助特技に関しても少しは使える。刀夜殿を満足させてみせる!」

「ズルいわよコウハちゃん。私だって刀夜さんに教えたいわ」

「そうだよ。ここは公平にジャンケンで決めよ?」


 何でこいつらは俺に関して争ってるんだろうか。


「全員にいっぺんに教えてくれればいいだけじゃないのか……?」

「皆様ご主人様のことが大好きですから。うぅ、私もあそこに混ざるだけの技量があれば……」

「…………今は耐えるのみ。……でもいつか3人を超えて刀夜に教える」


 何やらルナとアスールもやる気になっていたが……。うーん……何だろうかこの空気感は。こいつら俺の事好き過ぎるだろ。そのうち病んだりしないよな?

 まぁいいか。ひとまず特技に関して教えてもらって明日はもうひと頑張りというところだろうな。

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