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特別編アスール視点第5話 姉、妹、母

「…………何するの? ……エッチなこと?」

「いや、そんなことは……しないこともないかもしれない」


 珍しい。刀夜がそういうことを命令してくるなんて。普段からある意味適当である意味真面目な刀夜はそういうことを滅多に要求しない。


「アスール、目閉じててくれ」

「……? ん……」


 刀夜に言われた通り目を閉じると肩を優しく掴まれる。…………これってまさか?

 案の定刀夜からキスしてくれた。嬉しい。嬉し過ぎて心臓爆発しそう。


「…………もう一回してもいいか?」

「ん…………」


 刀夜が求めてきてくれる。私はそれに応じて目を閉じる。何度も何度もキスをしてもらい私の心はどんどんと満たされていく。


「慰めてくれてありがとな」

「ん……恋人なら当然」

「……あぁ」


 優しく抱擁される。刀夜の背中に手を回すと優しく抱き締める。


「コウハとマオには気付かれてるな……」

「…………多分リルフェンも」

「そうか……」


 それでも刀夜は抱擁を解かない。私も刀夜を抱き締めたままだ。


「…………2回戦、早くしよ」

「ハマったのか?」

「ん……」


 刀夜とこういうことが出来るのならハマるに決まってる。多分コウハとマオとリルフェンも同じ事考えてる。

 手を繋いで居間に戻るとルナとアリシアから目をパチクリとされてしまう。繋がれた手に視線が釘付けになっていた。


「負けられないわね」

「うむ……私も刀夜殿とああいうことをしたい」

「ガウガウガウガウ!」


 やっぱりやる気になってた。でも刀夜の番号を選べるかどうかは運次第。


「あ、では次は私が箱を回しますね」


 手を繋いでいる私よりもルナに任せてしまった。ルナは丁寧に紙を箱に入れると笑顔で私と刀夜の方へ持ってくる。


「どうぞ」

「また俺からでいいのか?」

「はい。ご主人様が一番です」


 それで誰も異論がないから凄いところ。刀夜が紙を引くと続いてルナは私に箱をつけてくる。


「次はアスール様お願いします」

「ん…………」


 刀夜が一番で変動なし。その次は先程とは反対周りに箱が回されていく。刀夜は微妙な表情を浮かべていた。


「別に俺に気を遣って一番にしなくてもいいんだぞ……?」

「気を遣っているんじゃないですよ?」

「私達が刀夜さんを中心にしてるだけだから気にしなくていいわよ」


 それが理由になるかは微妙だけど仕方ない。それに刀夜は私と手を繋いだまま。王様の命令は剥奪されたから離す義理は刀夜が命令に選ばれる以外はもうない。


「それじゃあ開きましょう」


 片手で紙を開くと私は5番だった。王様は……。


「あ、私です」

「ルナちゃんなら安心ね」

「うむ……アスール殿が王様なら……」


 私が王様で何か不都合があるの?


「う、うん……変な命令されちゃいそうだね」

「…………否定はしない」

「そこはしてくれよ……」


 ゲームを面白くするなら1人くらいそういう役回りが必要になるはず。


「えっと……ではそうですね。4番が私の膝の上に座るでどうでしょうか?」

「ガウガウ!」

「リルフェンね」

「リルフェンでしたか……。それじゃあお願いします」


 刀夜を後ろから抱き締めたかったに違いないルナ。リルフェンがルナの膝の上に座ると後ろから抱き締められる。


「ガウ〜♪」

「ふふ、ふわふわします」


 なにこの可愛い生き物。刀夜も何やら癒されてるご様子。


「ああしてるのもいいもんだな……」

「ん……」

「次に王様になったら俺も誰かにあれを要求するか……」


 そんなこんなでどんどんとゲームが進み、真夜中に刀夜が強制的にお開きにさせた。

 スッキリした様子の刀夜に全員が安心して寝静まる。今度こそ全員ちゃんと寝てるだろう。刀夜も寝てる……?


「…………」


 刀夜の頬に手を伸ばす。するとパチリと刀夜の目が開いた。


「どうした?」

「…………まだ起きてたの?」

「あぁ……」


 刀夜は私の背中に手を回すと目を閉じて胸元に顔を埋めてくれる。可愛い。


「しばらくこうしてていいか?」

「ん…………しばらくと言わず気が済むまで」

「…………ありがとな」


 刀夜の頭を撫でながら疑問を投げてみる。


「…………ルナの方じゃなくていいの?」

「ん?」

「…………ルナの方がおっぱい大きい。……たぷんたぷん」


 抱き心地でいえばルナのおっぱいの方がいいはず。わざわざ私の所に来なくてもいいはずなのだ。


「別に胸の大きさで抱き着いてるわけじゃないんだが……」

「…………そうなの?」


 男の子はみんな大きいおっぱいが好き。特にルナのような包容力のある女の子に弱い。刀夜がそっちに甘えたくなっても仕方ない。


「ルナやアリシアは確かに甘やかしてくれるけどな。でもその分余計な心配も掛けそうだからな」

「ん…………そうかも」


 2人とも心配性だから。それが優しいってことなんだと思うけど。


「だから落ち込んだ時はこうしてお前と馬鹿なことしてる方が落ち着いていい」

「…………そう」

「それにお前も優しいからな。甘えさせてくれる人がいるだけで嬉しいもんだな」


 刀夜が気持ち良さそうに私のおっぱいに顔を埋める。その仕草ひとつだけで本当に可愛くて胸が高鳴る。

 傷心の刀夜を見て心が痛むけど悪いことばかりじゃなかったかも。もちろん普段みたいに格好良い雰囲気の方が私は好きだけど。

 暗かった雰囲気はもう刀夜の中にはなかった。代わりに子供のような無邪気な雰囲気があって本当に可愛い。

 母親に甘えるような仕草で抱き着いてくる刀夜に私はからかうように笑みを浮かべた。


「…………ママって呼んでいい」

「ついに姉を飛び越えたか……」

「ん…………我が子はかわゆす」


 刀夜可愛過ぎる。それこそドキドキするくらいに。


「俺がパパということなら受け入れよう」

「…………つまり子供は別に必要?」

「そういうことになるな」


 確か刀夜の世界では夫婦って言うんだっけ。刀夜の世界では愛し合った男女がある儀式をするとそうなるらしい。ちょっとロマンチック。


「…………じゃあリルフェンで」

「ガウ!?」

「突然名前を呼ばれて本人が驚いて起きたんだけど……」


 リルフェンが起きてしまった。名前を呼ばれたら起きる習性が裏目に出たのかもしれない。そういう風に躾けたのはマオだけど。


「気にしなくていいぞ」

「ガウ?」

「寝とけ寝とけ」


 刀夜が抱擁を解いてリルフェンの頭を優しく撫でる。ちょっと寂しい。


「…………親離れされた」

「お前は俺の親じゃねぇよ……。恋人だろ?」

「ん…………でも今はママでもいい」


 刀夜にそう呼ばれる日が来ればいいのに。もちろん刀夜とは恋人のままの方がいいけど。


「近親相姦とか業が深いな……」

「…………刀夜、そういうこと言うのはめっ」


 息子の矯正はお母さんの仕事。不穏なワードにはすぐにツッコミを入れないといけない。

 私が注意すると刀夜が微妙そうな表情を浮かべる。あんまり子供扱いし過ぎるのも可哀相?


「アスール、目閉じろ」

「ん…………」


 いつものお仕置きだろう。頬を摘まれるだけだけど。

 しかし予想外にも刀夜は頬に手を添えてきた。そしてそのまま優しくキスされる。


「…………親にこういうことしないだろ? 俺はアスールとこういうことしたい」


 それは刀夜の願望なのかもしれない。強い瞳で私を見つめる刀夜に胸がキュンキュンする。

 確かに親にこんなことはしない。近親相姦ならするのかもしれないけど刀夜は親としてではなく恋人としてそういうことを望んでくれてる。


「…………親は駄目で姉はいいの?」

「姉はなんというか、ほら、近所のお姉さん的な?」

「…………分からなくはない」


 確かに幼馴染のお姉さんを姉と慕う人はいるはず。刀夜にとってはそういう感覚なのかもしれない。だから愛し合っても問題ない。


「だろ? 年上はみんなお姉さんって呼べるだろ」

「ん……年下は?」

「…………妹とは呼ばないな」


 以前刀夜は妹にしてやるなんて言ってた。姉に対抗して、ということなのだろうけど年下を妹と見る人はあんまりいないと思う。


「でもほら、妹みたいな奴的なニュアンスが」

「…………若干苦しい」

「ですよね」


 なんとか誤魔化そうとしていたみたいだけど上手い言葉が見つからなかったみたい。刀夜は視線を逸らす。


「…………あれは駄目だったな」

「……そう? …………お兄ちゃん大好き♪」

「萌えるけど燃えないな」

「…………?」


 どういう意味?


「ほら、姉だと萌えないけど燃えるだろ?」

「…………そう? ……人間はよく燃える」

「いや、物理的な話じゃなくてだな」


 もちろん分かってる。でも刀夜は勘違いしてる。


「…………ロリコンは背徳感を楽しむもの」

「ロリコンじゃねぇから分かんねぇよ」


 残念。


「……刀夜は姉が好き?」

「んー……いや、別に年齢は問わないけど」

「…………ロリから熟女まで豊富」

「ちょっと待て。そのまとめ方は誤解生むからやめてくれ」


 駄目らしい。刀夜なりのこだわりか何か?


「…………何歳から何歳までならいいの?」

「下は17、8くらいだな。上は…………1340歳?」

「……それはルナ」


 多分ルナ限定だと思うけど。でも意外と普通で驚いた。刀夜のことだから子供でも受け入れそうだったから。


「まぁ恋愛対象として見る奴らは決まってるからもうどうでもいいけどな」

「…………ん」


 刀夜は本当に嬉しいことを言ってくれる。でも奴らってことは複数人いるということ。私達はその中の1人というだけで誰か1人が選ばれたわけじゃない。

 刀夜にもっと愛されたい。唯一で特別でありたい。そういう気持ちが溢れてくる。


「…………私、もっと頑張る」

「え、何をだ?」


 キョトンとする刀夜を置いて私は1人静かに決意した。

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