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第63話 仲間達は仲間の異変に超敏感

「よかった! 無事だったんだね」

「あぁ。どうした?」


 ルナ達に合流すると不思議そうな顔をされてしまう。特にルナ、アリシア、マオは俺の顔をじーっと見つめてくる。


「な、なんだよ?」

「…………もしかして泣いてたのかしら?」

「あ、マオさんもそう思った?」

「私もそう思いました。何か悲しいことがあったんですか……?」


 全員が心配そうに覗き込んでくる。バレるにしても早過ぎないか。それどころか目が腫れたのも道中で収まってるってアスールから聞いたはずなんだが?

 アスールを見ると相変わらずの無表情ながら首を横に振った。


「…………その程度で刀夜への愛は消えない」

「お、おう……」


 マジかよ。せっかく隠せると思ってたのに。でもまぁ別に隠すことでもないって言われたしな。


「ご主人様?」

「…………浅野を殺した」

「え?」


 キョトンとされてしまう。そして次第に全員が目尻に涙を溜め始めた。


「大丈夫ですか……?」

「刀夜くん……! 辛い時に側にいなくてごめんね……大丈夫……?」

「え、えっと……お、おっぱい揉んだら元気になるかしら!?」


 3人とも慌てた様子だった。マオだけなんか慰め方おかしいけどな。


「大丈夫だって。それよりどうしたんだ? 割と進んでるようだが何で戻ってきたんだ?」

「私があなた達の気配を感じたからよ。というかそれよりって何かしら!? 本当に大丈夫なのよね!?」


 何やらとんでもなく心配されているわけだが……。


「大丈夫だって。アスールとコウハが慰めてくれたしな」

「…………あれじゃ足りない。……もっと甘えるべき」

「そうだぞ! あの程度でその……何とかなるものでもないだろう?」


 どうしたものか……。とりあえず何とか今は考えないようにとしているのにまた涙が溢れそうになっちまう。


「俺のことはいいから現状の話をしよう。研究所はどこなんだ?」

「それが見つからないんだよ。どこを探してもね」

「マジか……」


 これは予想外だ。すぐ側は海、そして陸では森と建てるのにはかなり不便な場所のはず。そんな制約条件の中、マオの探知にも掛からずに隠れられるものなのか?

 どうしたものか……。とりあえず俺達は何も確認出来ていない状態だ。こいつらがそう言うのなら間違いはないはずだが……。


「研究所を移動……とかは普通しないよな」

「普通は、だけどね。相手は普通じゃないから可能性はあるかな」


 確かにそうなんだよな。どうしたものか……。


「つかもうわざわざ魔人を襲う必要ってなくないか?」

「フレイ、クロ、ヒカリが現状だと危険だからな。もうやりたくないっていうならお前は行かなくてもいいんだが……」

「それはねーな。俺はリケラの敵討ちが目的だからな」


 確かにそうだろうな。多分今のは俺達に対して言った言葉だろう。


「それに俺は浅野の命を弄んだ分はやり返す。あいつだけ死んで他は生きているなんて許す気はない」


 私怨というのは醜いものかもしれないが俺自身がそれを納得出来ないのだ。浅野を殺したのは俺だ。しかしだからといって他の奴らがのうのうと生きているのを見過ごせる程に俺の心は甘くは出来ていない。


「でも日も暮れてしまってきてる。このまま続けてもいいけど夜になったら危険だと思うよ」

「視認魔法が……っていうのは確かに頼り過ぎは危険か。…………仕方ない。今日はここまでにして体勢を立て直そう」


 早くやり返ししたい気持ちはあるがそれでも今は抑えないと。ルナ達を危険な目には遭わせられない。ただでさえ現状が危険だってのに。


「悪いが魔力に余裕がある奴が転移魔法使ってくれるか? ちょっとやることがあってな」


 俺は銃を構えると引き金を引く。隠れて様子を伺っていた化け物達の頭部を貫通するとともに破裂して殺害する。

 恐らくはここの魔物は気配を探知するのに優れているのだろう。加えて化け物もそれに近い性質を持つようだ。大量の魔物達が押し寄せてきて俺達に迫ってくる。何このゾンビみたいな軍勢は……。


「それ以前の銃ですよね?」

「あぁ。森を焼いてもいいんだけどな」


 余計なものまで焼いてしまっては仕方ないからな。まぁ別に焼いてもいいんだけど。


「確かに研究所の場所も分かっていないのにそれは駄目かもしれませんね。では私もそちらで……」


 ルナが太もものホルスターから銃を取り出す。ちょ、健康的な太もも見えてるんだが!?


「ムイ、ミケラ……お前ら見たな?」

「ちょ、ま、待って刀夜くん……なんか怖いよ?」

「そ、そうだぞ〜。落ち着けよ〜……」


 周囲の魔物や化け物を一掃しながら2人に詰め寄る。2人は顔を蒼白とさせながら後ろに下がる。


「ていうか今のはルナちゃんが悪いだろ!?」

「ルナが悪いことなんてないに決まってんだろ? ルナがする行動は全て正しいんだから」

「そ、そうなのですか!?」

「めちゃくちゃ言ってるぞこいつ!?」


 にっこりと微笑むと2人に銃口を向ける。躊躇いなく引き金を引くと2人は思い切り目を閉じる。


「と、刀夜くん!?」


 驚いた様子のルナ、アスール、アリシアだったがコウハとマオは分かっていたらしい。弾丸は2人のすぐ横を通り抜け、直線状の遠くにいた魔物の頭部を貫いて殺害する。


「お、お前びっくりさせんなよ〜……」

「う、うん……驚いたよ……」


 2人が安心した様子だった。ミケラが魔法を発動させて俺達の援護に加わる。殲滅力が一気に上がっていく。


「なぁ、これは俺の世界で伝わることなんだが……」

「ん?」

「脳に強い衝撃を与えると記憶が飛んでしまうらしい。ということでお前ら2人とも。帰ったら記憶がなくなるまでぶん殴る」

「え」


 ルナの太ももを見た罪は重い。忘れてもらうしかないだろう。


「ご主人様……! わ、私が悪かったのですからお2人を責めないでください」

「ルナ……お前ももっと人の目を気にしろよ?」

「はい……すみませんでした」


 反省した様子のルナ。その腕は魔物を銃殺しているので反省した様子が皆無だが状況が状況だ。仕方ない。


「あなた達随分と余裕あるわね……」


 マオも援護に入っている。転移魔法を開いてしまえば簡単なのだが全員なんとなく分かっているらしい。

 ここで大まかに魔物を殲滅しておけば次に攻める時に楽だよなと。

 流石に魔物を殺し過ぎたのだろう。化け物を残して他の魔物達は俺達に恐れて逃げていく。これで問題ない。次に来る時は本能的に俺達の気配を感じた瞬間に逃げるはずだからな。


「さて、帰るか」

「あ、魔法陣は私が開くね」


 アリシアが魔法陣を展開する。化け物は残ったままだがこいつらの数は計り知れないので放置だな。

 全員が魔法陣の上に立つと瞬時に転移する。懐かしの街に帰ってきたというのに気分は全く晴れない。


「ふぅ……」

「刀夜くん大丈夫……?」


 アリシアが心配そうに顔を覗き込んでくる。大丈夫なのかどうかは恐らく精神的なもののことだろう。

 大丈夫か大丈夫じゃないかで言われれば大丈夫じゃない。でも俺は余計な心配は掛けたくない。


「大丈夫だ。それより早く帰るぞ」

「ん…………早く帰って寝る」


 全員結構な疲労度だ。長時間の極度の緊張度というのはしんどいものだろう。街に帰ってきたことで気が抜けてしまったのだ。


「それじゃあ僕とミケラ師匠はここでお別れかな」

「そうだな〜。あ、その前に5人ともちょっと来てくれ」


 ミケラに呼ばれてルナ達が集まる。なんかロクでもない話をしてそうでちょっと心配だ。


「刀夜くん」

「なんだ?」

「…………元気出してね」

「…………」


 やはり落ち込んでるというのが分かるのだろう。相当顔に出てしまっているのか?


「お待たせ致しました、ご主人様。それでは帰りましょう」


 ルナ達が戻ってくる。その表情は何故か決意に満ちたものになっていたんだが……何吹き込まれたんだ?


「何言ったんだお前……?」

「別に何も〜。それじゃーな。また2日後くらいに顔出すな〜」

「それじゃあね刀夜くん」


 2人と別れると何故かルナとアスールに両手を引っ張られる。更にはアリシアとコウハとマオが3人掛かりで背中を押してくる。


「な、なんだ?」

「早く帰りましょう!」

「ん…………それで落ち着く」

「刀夜殿には精一杯癒されてもらう」


 癒されるって……やっぱりミケラに何か吹き込まれたな。

 その為にわざわざ1日空けたんだろうな。明後日に来るって言ってたからな。

 余計な心配、とは言えないな。1日でもいいからゆっくりしたかったから。だからありがたくこの時間を堪能させてもらうとしよう。

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