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第62話 向かう先は研究所

 少し経ってようやく身体に力が戻る。アスールとの抱擁を解くとへし折れた刀を拾いにいく。


「…………もういいの?」

「あぁ、充分だ。早くあいつらと合流しに行こう」


 少し時間が掛かってしまった上に魔力もそろそろ尽き掛けている。本格的に特技を使いこなせるようになる必要がありそうだ。

 感覚は大体分かった。魔力の代わりに生命力を、というのも結構きついものだ。連発すると息苦しくなるのは本当に命を削っているからだろう。


「…………帰ったらいっぱい甘やかす」

「うむ、刀夜殿のしたいこと何でもしてあげたい」

「お前らな……。とりあえず女の子が何でもとか言うなよ」


 そんなこと言われたら期待しちまうだろ。あれか、アスールとマオだけでなくコウハも追加するパターンか。


「っ!」


 咄嗟にその気配に気付いて銃口を向ける。浅野を相手にした後だからか気配に敏感になっているらしい。隠れているだろう敵の姿まで手に取るように分かる。

 引き金を引くと隠れていた化け物が焼失する。シルエットしか見えなかったが恐らくタコみたいな人間としか言えない。


「魔力があまり残ってないからな。銃主体で早く行くぞ?」

「ん…………」

「うむ!」

「おう」


 すぐに駆け出すと現れる化け物は全て銃殺する。ビームは範囲が広い分避けにくくはなるがその分派手にもなるな。以前の貫通力重視の銃と二丁持ちにする方が良さそうだ。

 来た道を戻ると未だに入って来た直後に襲って来た角の生えた四足歩行の巨獣が穴にハマって動けなくなっていた。呼吸とかいらないのだろうか?


「あいつどうするんだ?」

「無視だろ」

「ん……相手にすると面倒」


 それを無視して横を通り抜けて建物の外へ。そのままダンジョンを抜けるように突っ込む。

 通常の魔物は化け物に比べて弱い。極力森を焼かないように銃を貫通力重視の物に持ち替えて進む。


「こんな森焼いちまえばいいんじゃねーの?」

「確かにそうだけどな。焼くとお礼が出来なくなるからな」

「お礼?」


 キョトンとする一同。俺はニヤリと笑みを浮かべる。


「浅野の命を弄んだ礼だ。たっぷり苦しめてからぶち殺す」

「…………刀夜怖い」

「刀夜殿……」


 特に人の命を弄ぶような奴は一番嫌いだ。それが運命で必然なことであるのは分かっている。

 生物というのは他者を犠牲に生を謳歌する。だから今のこの惨劇すらも当然と言えば当然のことかもしれない。

 しかしだ。不要なもののはずなのに。こんなことをしなくてもいいはずだというのにそれをしているのは悪であると言わざるを得ない。

 どれが正しくてどれが悪かなど人の主観でしかないがそれでも俺はただ命を軽々しく見ている行為そのものが許せないのだ。

 そういう奴らには命の尊さと自分の命の可愛さを思い知った後でじっくりたっぷりと殺していく。


「…………刀夜」

「なんだよ?」

「……敵は瞬殺。…………それは守って」

「…………?」


 確かに今まではそうしていたが……。もちろん俺のワガママで生かした命もあるにはあるが。


「…………追い詰められた生物は怖い」

「…………そうかもな」


 確かにその通りだ。俺の憎しみとこいつらの命、それを天秤に掛けてどちらに傾くかなど決まっている。


「……悪い」

「ん……気にしなくていい。…………刀夜の気持ちもよく分かる」


 アスールも仲良くしたい、仲良くなりたいと思った人間を失っている。確かに俺の気持ちはよく分かるだろう。

 ダンジョンを出るとコウハが転移魔法陣を展開する。一応研究所近くの街にはアリシアが行ったことがあり、事前に全員で一度行っているのだ。


「では行くぞ」


 コウハが転移魔法を発動させると辺りが真っ白になる。その白い靄が晴れると見慣れない海岸の街へとやって来た。


「刀夜、これ飲んどけ〜」

「何だそれ」


 走り出そうとしたその瞬間、ミケラに紫色の液体が入った小瓶を渡される。なんかすっごく見覚えがあるな。


「魔力回復のポーションだ」

「お、おう……」


 そうだった。こんな毒々しい色合いの飲み物を飲まなきゃならないのか。だがここから何があるのか分からない以上は仕方ないな。

 一気に口の中に入れると薬物のような苦々しい味が口いっぱいに広がる。何これクソまずい。


「その苦いのを一気飲みする奴は初めて見た」

「…………吐きそうなくらいだ、後悔してる」

「飲むの初めてかよ!」


 仕方ないだろ。飲む機会がなかった上にあんまり飲みたいとも思わなかったのだから。


「アスールちゃんとコウハちゃんも飲んでおけよ〜」

「ん…………刀夜、口移しする?」

「なっ!? それはズルいぞアスール殿!」


 そこで何する気だとかじゃなくてズルいが来る辺り、コウハも見事に毒されてきてるな。大丈夫だろうか。


「しない」

「…………本当?」

「…………そういうの家帰ってからにしてくれよ。興奮したらどうするんだ」

「お前も微妙に否定しきれてないんだよなぁ〜……」


 だって好きな奴からそんな魅力的な提案されたら男だったら誰だって……なぁ?


「いいから早く飲んじまえ。さっさとルナ達と合流するぞ」

「ん……」

「うむ」

「そうだなぁ〜」


 全員一気に飲み干して口元を押さえた。そうなるよな……。


「…………ゲロ?」

「もうちょっと表現改めろよ」


 確かに分からなくもないけどな。うん、でも二度と飲みたくなくなるからその表現だけはやめて欲しい。


「…………魔力回復してる」

「そうだな。その実感はあるな」


 ポーションか。あまり頼らなかったが意外な効力だな。これなら俺達も使うべきかもしれないな。

 アホみたいに貯まりまくった金を使うチャンスでもあるだろう。もちろん最低限の生活する分には確保しておかないといけないけどな。

 仮にここでムイと初めて会った時の決闘のような賭け事が行われた場合は何故か普段は金の管理に真面目なルナまで暴走しちまうからな。主に俺に全額賭けるという意味で。

 一気に街から研究所までを駆け抜ける。方向的には合っているはずだがルナはどこまで進んでいるんだろうか。


「…………もうちょっと会わない方がいい」

「え?」

「…………目、腫れてる」


 あー、まぁそうなっちまうか。でもそんな悠長なことは言ってられない。


「心配されちまうだろうがそこはもう諦めるしかないな」

「…………言い訳考えてる?」

「お前は俺の思考を先読みするのか……?」


 考えようとした瞬間だったぞ。俺の思考回路バッチリ理解されてしまっているらしい。


「…………言い訳しなくていい」

「え、お、おう?」

「…………刀夜は最強。……それは変わらない事実」


 そうなのか? 俺の思い描く強さとアスールが考える強さにはかなりの差があるみたいだ。これで幻滅でもされようものなら俺はもう死ねる。


「…………多分みんなも大丈夫」

「そうだぞ? 刀夜殿は弱みを見せないことが強さだと思っているみたいだがそれは違う」

「あれか? 弱さを知ってるのが強さとかアホみたいな幻想の話か?」

「アホみたいって酷ーなお前…………」


 だってそうだろう。なんで弱さを知っているから強いってことになるんだよ。優しさで世界が救えるとでも思ってんだろうか?


「…………純粋なまでに勝つ人が最強。…………刀夜は勝った。……それだけ」

「…………俺個人としては勝利だと喜べる結果じゃないけどな」


 確かに世間一般からすれば魔人に勝った人間と評されるだろう。だが現実は違う。1人の友人すら救えなかった愚かな人間というだけだ。


「ん……でも気持ちと最強は別物」

「まぁそうかもな……」


 思いと結果は必ずしも一致しない。だから俺が最強だと認められている間は最強なのだろう。


「お前ら夢がねーな……」

「じゃあお前が思い描く最強って何なんだよ」

「俺か? そうだなぁ〜…………まず第一に強いよな」


 確かにそれは大前提だろう。力がなくて何が最強か。


「加えて躊躇いなく自分を犠牲に出来て、仲間の為に何でもする奴とかな」

「それは刀夜殿だろう」

「…………どう考えても刀夜のこと」


 いきなり俺の話になったんだが。


「それじゃあ俺の考える最強は刀夜になっちまうな〜。あ、好きな男の為に自分の身を犠牲にするような女も強いと思うぜ?」

「…………そりゃこいつらのことだろ」


 つまりこいつの思い描く最強は俺達だということだが。でも俺としてはこいつのような柔よく剛を制すタイプが強いような気がしてならない。


「精神論で結果が変わるってのは認めるが自分を犠牲にしただけで最強だっていうのは違うと思うぞ?」

「結果出してる奴に言われてもな〜」


 何だそのジト目は。なんか腹立つ。


「ん?」


 視界の隅に少し見慣れてきたような光景が入ってきた。焼け焦げたようなおおよそ化け物だったのだろう人間の残骸だ。


「コウハ、戦闘音は聞こえるか?」

「えっと…………いや、まだ聞こえない」

「そうか。ならもっと突っ込むぞ」


 ルナとアリシアが無双してるんだろう。銃の扱いに関しては俺よりもルナの方が上手いからな。手先が器用だからだろうか?

 更に先に進むと前方からルナ達が走ってくるのが薄っすらと見える。コウハはもう既に完全にその姿を捉えていることだろう。


「何かあったのか?」

「さぁ……とりあえず行ってみよう」


 何が会ったのか聞いてみないと分からないな。さっさと行こう。

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