第56話 新兵器は圧倒的火力にて敵を殲滅する
転移魔法で本陣近くへとやってくる。ムイが知っててよかった。
「ほい」
俺は早速刀を抜いてライジンを使用しながら目の前の暴走状態で変化しようとしていた男の首を斬り裂いた。
首チョンパされてまだまだ動くのは知っているのでその顔面を踏み潰して完璧に殺し切る。
「お前開幕一番のグロ映像はやめろよ……」
「敵がいたんだから仕方ないだろ。しかし反応が早いな……」
自動で俺達が近付けば変化するようなプログラムをされていたのか? 何かそんな感じがして怖い。
まぁ今はそれも不明だ。しかしこいつがここにいるということはやはりここが本陣で動いていない可能性が高い。
クロの時にも思ったが迎撃態勢は万全のようだ。もちろんこれも想定内だ。世界一最強の生物を作ろうとしている奴がたかだか人間のガキ共に怯える必要性はないからな。
「さて、やるか」
ライジンで即座に突っ込むとダンジョンの中を駆け抜ける。現れる化け物共はルナ達も応戦して即殲滅する。
変化するタイミングが俺達の目の前であれば瞬殺出来る。その程度くらいは相手も分かっているはずだが……。
これはただの時間稼ぎかもしれないし長期戦にして俺達を振りにしようとしているのかもしれない。仕方ないが新兵器を使うしかないだろう。
「お前ら、次からの敵は俺とルナとアリシアでやる」
腰のホルスターから新型の銃を取り出すとルナとアリシアも頷く。無駄な魔力消費避けたい。
「こんな森で使っても良いのでしょうか?」
「一瞬で焼失させるから大丈夫だろ」
燃え広がるものが撃った瞬間に消えているのだ。被害が広がることは……なくはないか。
「まぁもしそうならこんな森焼いちまった方が早いかもな」
「刀夜くんって時々乱雑になるよね……」
「はい。男の子です」
そこ男も女も関係ない気がするが。どうでもいいことに目を向けないだけだ。この森は別にダンジョンといっても何処かの町の資源になっているわけでもないしな。
「おっと、早速お出ましか」
咄嗟に眼前に見えたバケモノに銃口を向ける。引き金を引くとまるでビームのような炎の光線が飛び出して一瞬にして化け物の身体を、そして射線上の木々を焼失させる。
ルナが加えた魔法にも耐えられる銃だ。その一撃は上級属性魔法であることから威力は既に特級を大きく上回っている。
また反動の軽減の為に若干こっちも熱くなってしまう。噴き出す炎に対して反対側に冷却した風を送り込むように設計してあるのだ。しかし発射される炎から風は熱風へと変化してしまっている。もちろんここが妥協点でありこれ以上を望もうとすれば風魔法がカマイタチになって返ってくる可能性もあったので流石にやめた。
「なんだかとてつもない威力になってないかい?」
「やべーなその兵器」
初めて見たのだろうムイとミケラは微妙そうな表情を浮かべていた。ただしこれは初心者には渡せない。
「こいつは慣れなきゃ射線にも入らないからな。流石に無力になっちまうから初心者には渡せないぞ?」
「あ、うん。もちろんそうだろうね」
「お前らの努力の方向性ってなんかズレてるよな」
「そうか?」
確かにこの世界からすればそうかもしれないな。強くなりたいなら魔法や特技という便利なものがある。わざわざ武器を作って慣れようなんて技術面を鍛えるというのは少ないのかもしれない。
「でも力では人は魔物には敵わない。化け物には敵わない。だからこその技術と兵器だろ?」
「確かにそうだな〜。人間の身体能力じゃ限界があるからな〜」
こんな雑談を交えて呑気なものである。
少しして見えてきた白い大きな直方体の建物。こういう建物があるからこそ安易に動けないのだろう。
「入り口どこかしらね」
「ぶち抜けばいいだろ?」
「え?」
俺は即座に走ると刀を抜いて鍛錬魔法を発動。壁に打ち付けてその性質を変化させる。蹴りを入れて壁を破ると中へと侵入する。
「おっと、なんだ準備万端か?」
中には大量の人間がいた。俺の姿を見るなり目を大きく見開いていた。
「隠密行動する気なしね……」
「まぁそうだな」
こっちは元々陽動だ。派手に動くくらいが丁度いいだろう。
「さて」
俺は刀を鞘に納めるとすぐ様もう一方の銃を抜いて二丁持ちに。ルナとアリシアも銃を抜くと3人で引き金を引く。
「ぐぼぇ!?」
「ががががっ!」
いきなり身体が変化しながら襲い掛かってくる化け物達に向かって発射されたビームは一瞬にして中の大量の敵を殲滅していく。
「これもう直接攻めた方が早くないかな?」
「油断は禁物だ。俺の予想だと……」
敵の対応が早過ぎる。いきなり通路の壁を大きく破壊して10m程の巨大な獣が姿を現した。
二本の大きな角に黒色の皮膚。漆黒のたてがみに四足歩行のその獣はいきなり落ち着いた様子で俺達を観察しながら大部屋内を歩く。
俺達も流石にこの別格の化け物と一定の距離感を保ちながら室内へと侵入する。
先に仕掛けたのはこちらだ。引き金を引いて銃を撃つ。炎のビームは大きな的を的確に撃ち抜いた。撃ち抜いたはずなのに……。
「グオォ!」
「き、効いてない!?」
「魔法に耐性でもある生物なんだろ。大体予想通りだ、やるぞ」
銃をホルスターにしまう。ルナ、リルフェン、ミケラにとっては厄介な相手だろう。やるなら前衛である俺達の物理攻撃か。
魔法も効かない身体だ。物理攻撃も効かないなどになればもうどうしようもないな。ひとまず落ち着いて対処するしかないだろうが……。
「ルナ、この間に他の奴らが来る可能性が高い。魔法耐性がない奴なら全部その銃でぶっ飛ばせる」
「もちろん分かってます。私達魔法使いは援護です!」
「あぁ」
流石はルナだ。言うまでもないことだったろう。
「さて、さっさと殺すか」
もう少し陽動の為にも奥に突っ込みたい。こんな所で立ち止まるわけにはいかないだろう。
「神速の一閃!」
ムイが高速の剣技で化け物の懐に飛び込んで切り掛かる。しかし多少の傷を付けただけで大したダメージにはなっていない。
「やっぱりな……」
そうだよな。物理的な攻撃にも耐性があると思っていたさ。乱雑に身体を振るう化け物。ムイがギリギリ、紙一重のギリギリでなんとか距離を取る。
「お前危ない橋渡るなよ……」
「キミが突っ込むよりはマシだよ。それに今ので攻略法が難しくなったね」
こいつはその為に真っ先に突っ込んだんだろう。俺が少し離れた位置から全体を見れるように。だから俺が突っ込むよりはマシだと。
「はぁ……ひとまず散開した方が良さそうだな」
「そうだな。マオ殿がサポートに回ってくれている分、動きやすい」
「んじゃ各自各々で適当によろしく」
無駄な命令を出すより自主的に考えて行動させた方が良い。というかこいつらは命令するよりそちらの方が良い動きをするしな。
「適当だね……」
「詳しく指示が必要か?」
「ふふ……不要だよね」
嬉しそうにアリシアが離れる。さて、誰がターゲットにされるのか。
「グオォォォォ!」
目を付けられたのはコウハだった。俺は一気に距離を詰めると刀を振り上げる。
「硬いな……」
確かに硬い。多少の傷は付けられるが致命傷にもならないか……。むしろかなり浅くとも傷を付けたムイを褒めるべきだろうな。
振り上げた腕を勢い良く振り下ろした化け物。速度はなく回避は余裕。しかし殺すのに時間が掛かる上にかなりの疲労と魔力消費になるだろう。
今はこれが目的ではない。退避するのも手ではあるが……。
「遅いな」
コウハがバックステップであっさりと攻撃を躱す。速度はなくとも威力は高く、地面が深く抉られる。
四足歩行で巨体だ。それを支えるのに相当な筋力があるのだろう。つまりそれを防ぎさえすればいい。
「コウハ! こっちまで走って来い!」
「え、あ、うむ!」
コウハが旋回するように距離を取りながら俺の元へと走って来る。当然化け物の視線も俺達に向く。
「グオォ!」
「どうする気だ?」
「動きを封じる。さっきみたくバックステップで躱してくれ」
「うむ!」
勢い良く走って来ると共に片腕を振り上げる。そのまま跳躍するように飛び込んで来る。
俺は振り上げられた腕とは反対方向に飛び込む。同時に銃を抜いて反転する。
「刀夜くん!? 銃は効かないんじゃないの!?」
「問題ねぇよ」
俺が銃口を向けたのはコウハ……の足元だ。
「ふっ!」
「グオォォ!」
コウハがバックステップをしたと同時に引き金を引いた。
振り下ろされた腕が地盤を破壊する。しかしその壁は高熱のビームによって既に穴が空いており、化け物はその穴に腕を突っ込む形となった。
体勢を崩した化け物のもう片腕の床に向けて土魔法を発動させる。床の土を左右に盛り上げる。つまりはこちらにも穴を空ける形だ。
「グオォ!?」
両腕が地面に埋まった化け物は前のめりに倒れる。ルナにちらりと視線を向けるとにっこりと微笑まれながら土魔法を発動させた。
上半身が地面に埋まってバタバタと足を振るだけで何も出来ない。無力化は完了だ。
「一応固めておきますね」
ルナが更に土魔法を発動させて大穴を閉じる。これで窒息とかしてくれりゃいいんだが……まぁ期待せずに放置でもしておこう。
「ちょっと魔力を食っちまったが許容範囲内だ。さっさと行くぞ?」
「う、うん……何でも出来るね本当……」
「実質刀夜とルナちゃんだけで無力化したな」
ルナとハイタッチするとそのまま奥へと走る。全員走って来るもののその表情は少し複雑そうだった。
「何だその顔」
「うーん……刀夜くんとルナさん、息ぴったりでちょっと嫉妬しちゃう」
「ズルいわよね、視線だけで何をするか分かっちゃうんだから」
「うむ……ルナ殿がリードしているのか?」
「…………再審議を要求」
何だそれは。というかルナも何故か顔真っ赤にして恥ずかしそうだし。
「ガウガウ」
「ん? あぁ、はいはい」
前方に見えた化け物の数々を銃で焼失させながら会話を続ける。
「で、何が不満で何がリードしてるんだ?」
「刀夜さんは気にせず前を向いてなさい! もっと真剣にしないといつ死んでもおかしくないのよ!?」
「普段なら怒らないだろ……」
仕方ない。話の続きは諦めて目の前の敵に集中するとしよう。




