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第15話 大好きなあなたに伝えたいことを

 ギルドに戻るなり俺とルナはあの巨大ゴブリン討伐の功労者として大変ありがたい評価を受けまくった。リアが功労者ではなく討伐パーティーだあり自分達は何も出来なかったと不機嫌そうだったのが印象的だった。

 そしてあのゴブリンはゴブリンの変異種という扱いでゴブリンを統率することからゴブリンキングと名付けられた。

 そして俺の拾ったあの玉は魔物の核というらしく全ての魔物を形成している重要部分。この玉が残る確率は大変低く、それを1発で、それもゴブリンキングという新種の魔物の核ということでギルドに保管されることになった。報酬金はたんまり貰った。一生遊んで暮らせそうなレベルの。

 本当に今日1日は疲れた。俺なんて何度死を覚悟したか。それでも簡単に乗り越えられたのはあの絶望から立ち上がったから。俺自身の心の成長なのか、鍛冶師としての本能なのかはよく分からない。


「まさかこんなに評価されるとはな……」


 ひとまず俺達はゆっくりと歩いて宿へと向かっている。ルナの特級魔法は消費魔力が凄く、氷の壁で壁の破片を防いだりとしている内にほぼ無くなってしまったらしい。もし俺がゴブリンキングを倒していなければ本当に死んでいたと言っていた。


「ご主人様はそれだけ凄いことをしてくださったんですよ」

「突破口を切り開いたのはルナだけどな」


 本当にルナがいなければ隙を作ることすら難しかっただろう。それがなければ俺も危険だった。


「しかしかなりの時間戦ってたのか? もう夜だな……」


 この時間帯に出歩くのは初めてだ。街には家の電気の光くらいのもので街灯がない。日本よりも暗いという印象を受ける。


「そ、そうですね……」


 ん? ルナが急に頬を染め始めた。どうかしたのだろうか?


「ここって……」


 それは石造りの橋に差し掛かる所だった。そこは蛍のような、されど様々な色を放つそれらが飛び交っており大変魅力的な雰囲気を放っていた。

 おおっと、これは大事な話をするにはとても良い場面じゃなかろうか? だからルナも頬を赤く染めたんじゃないか?


「あ、あの、ルナ?」

「ひゃい!?」


 ほらー、絶対期待しちゃってるよ。恥ずかしい!


「あ、あのな……えっと……」


 ヤバイ。ヤバイヤバイヤバイ。何がヤバイって何がヤバイのか分からないくらいヤバイ。死に掛けたあの時以上に緊張してるんじゃないか?

 ルナに見捨てられたらもう俺一生立ち直れない。大丈夫だよな? き、キスも出来るような関係になれるんだよな!? 童貞にこれ以上の想像は厳しい!


「あの……ご主人様。先に私の方が言ってもよろしいでしょうか?」

「え? お、おう……ど、どうした……?」


 ルナから? も、もしかして先に告白されてしまう!?


「私、今日感動しました」

「へ? あ、は、はあ……ありがとうございます?」


 えっと、何にだろうか? 俺のこと? いやそもそも俺のことじゃなければ俺が礼を言うのも変だな。ヤバイ、緊張し過ぎてまともな思考回路が出来てない。


「ご主人様が頑張っていて……私は何も出来なかったのに……これじゃあメイドも失格です……」

「…………」


 え、この流れで泣きます?


「ご主人様に何も出来ない私なんて必要ありませんよね……」


 違う。そんなことはない。俺にはルナが必要だ。ルナがいなければ逆に俺の方が何も出来ない。何も出来ないままだったかもしれない。


「それでも……私のワガママで一緒にいたいと思ってしまう自分が嫌で……だからご主人様の方から私のことを!」


 気付けば俺はルナを抱き寄せていた。ルナの口からそんなことは聞きたくない。本音だけを聞きたい。


「ルナ、俺はお前が役立たずなんて思ったことは一度もないしさっきのワガママを言ってくれて嬉しい。でもな……」


 俺自身もルナに謝らなければならない。ずっと隠してきたことを。自分に嘘を付いていたことを。


「俺もお前に言わないといけない。俺は……お前が慕ってくれるような凄い奴じゃないんだ」

「そんなことありません! ご主人様はいつだって素敵です!」

「そんなことないんだよ。俺は親がいないからってそれを理由に逃げてきた。友達を作るのも、それにお前との関係も」

「私との関係も……?」


 怖かったのだ。離れられるのが。そして何よりも裏切られたり失望されたりすることが。ルナが慕う凄い奴なんて実際には存在しないのだから。


「キスの時も……俺は本当に強くなる気ではいても最強になんてなれないと思ってた。だからルナとの関係を引き延ばすために理由を作っただけだった」

「ご主人様……」

「ルナが離れていきそうで怖くて……失望されたくなくて……だから弱い自分を受け入れて最強を目指すことを諦めてた」


 怖い。罵られるだろうか? 失望されてしまっただろうか? でも何も告げずにただ関係を進ませても意味なんてないと思うから。


「でもそれじゃあいつまで経っても変われない。これ以上ルナに失望されたくなかったから……俺は今日……」

「はい……」


 ルナが優しく抱き締め返してくれた。それだけで涙が出そうになるくらい安心してしまう。本当に情けない。

 人はすぐには変われない。でも変わる努力は出来るし踏み出せば変われる。それを今日分かったから。


「ルナ……今度は俺から言わせて欲しい」


 本当にどうしようもない程愚かで臆病な俺だから。


「俺はこれからももっと強くなる。もっともっと強くなって本当に誰も寄せ付けないくらいに最強になる。最強であり続ける」

「はい」

「俺が弱いと思ったら見限ってくれていい。俺に失望したなら罵ってくれてもいい」

「はい……」

「だから……俺がお前の中で最強であり続ける間だけは…………」


 恥ずかしいし穴があったら入りたいくらいに俺の顔は赤くなっていることだろう。それに涙も流れてきてとても見せられない顔になっていることだろう。

 それでも、羞恥心より何よりも優先したいものがある。伝えたい言葉がある。それを言わなくては何も始まらないから。


「ずっと……俺のそばにいて欲しい」

「私も……ご主人様のそばにいたいです」


 ヤバイ。嬉しい。泣きそうなくらい嬉しい。何だろう、初めての告白が成功するとこうも嬉しいものなのか。


「ルナ……キス、していいか?」

「はい……」


 どちらがともなく顔を寄せ合い、お互いに初めてのキスをする。それはどことなく甘く、そして何よりも充実感と幸福感あふれるものだった。


「ご主人様……もう一度したいです……」

「俺も……」


 お互いに求め合うというのがどういうことかよく分かった。こんなにも嬉しいものなんて。こんなにも幸せなことだったなんて。


「あ、ママ! あっちでお兄ちゃんとお姉ちゃんがちゅーしてる!」

「こら! 見ちゃいけません!」


 おい、気分台無しなんだけど。それに見ちゃいけないって何だ。キスして悪いのかよ。そうですよね、子供に見せちゃいけませんよね。


「ご主人様……宿に戻りませんか?」

「おう……」


 何だろうかこのお約束感。でもそれってキスする前に来ないか? 何でキスしてる途中で来るんだよ。余計に恥ずかしいだろうが。

 俺達の初めて結んだ関係は何とも恥ずかしい結果に終わった。こういう締まらない感を治すべきではないかと俺はこの世界に問いたい。

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