特別編ルナ視点第4話 羞恥心に悶え、やはりご主人様はお優しい
「私が幸せにしたいです」
…………。わぁぁぁぁ!! 言ってしまいました言ってしまいました!!
その場の空気に当てられてつい本音が出てしまいました! わ、私まだご主人様の一番でもないのになんて大それたことを!
むしろ私の方が幸せにしてもらってるじゃないですか! 私の馬鹿馬鹿馬鹿!
「くぅ……!」
自室のベッドに寝転がり枕に顔を埋めて悶えてしまいます。私はなんてことを! あんなにも恥ずかしい台詞をあっさりと!
「うぅ〜! うぅぅ〜〜!!」
ベッドにゴロンゴロンと転がってしまいます。もうご主人様にどんな顔をして会えばいいんですか!?
思い出しただけでも顔が火照ってしまいます。もう駄目です。ですが……今日からご主人様に私の魔法を組み込んで武器を製作してもらう約束です。
「オシャレして行った方がいいんでしょうか? いえ、それだと汚れてしまった時に困ります……」
ですがご主人様には素敵に着飾った私を見て欲しいです。汚れても良くてなおかつ動きやすく、またご主人様が失望なさらない服装で……。
ということは戦闘服でしょうか? いつもの赤い着物であればご主人様も見慣れていらっしゃるでしょうし……。
「これは外したくありません……」
ご主人様からいただいた三日月と星で円を作ったとても綺麗なネックレスです。こちらは今では私の宝物として毎日身に付けています。
出来れば戦闘中も身に付けたいのですがもし仮にそれで壊れてしまっては私の心が持ちそうにありません。絶望です。私ショックで死んでしまいます。
「ご主人様……」
ネックレスに触れながらご主人様の顔を思い浮かべます。ご主人様には様々な気持ちをもらいました。それらが蘇ってきます。
初めてご主人様に会った時のこと。初めての依頼。ゴブリンキングとの戦闘。それからアスール様、アリシア様、コウハ様、マオ様、リルフェンと色々ありましたね。
思い出に浸っていますと部屋がノックされます。もしかしてご主人様でしょうか?
「ど、どうぞ」
少し赤くなった頬を隠すことも出来ませんでしたので諦めました。
「ん…………刀夜が呼んでた」
「あ、はい」
「…………呼びに来たのが刀夜じゃなくて残念?」
「えっ!?」
図星でした。過剰に反応してしまいもう誤魔化しが効かなくなってしまいます。
「…………分かりやすい」
「す、すみません……。け、決してアスール様のことが嫌いなわけではないんですよ!?」
「ん…………気持ちは分かるから気にしなくていい」
アスール様は怒った様子はありませんでした。よかったです……。
「……それより覚悟した方がいい」
「な、何の覚悟ですか?」
もしかしてやっぱり怒っていますか? か、覚悟……。
「…………今の刀夜は危険」
「え?」
ご主人様が危険……ご主人様が!?
「…………アリシアとマオもやられた。私も逃げて来た」
「え? え?」
逃げて来た? ご主人様が危険な目に遭っているのにですか?
いえ、落ち着きましょう。そんなことはありません。ご主人様が危険ならもっと慌てているはずです。アスール様の落ち着きようはそういうものではない気がします。
「ちょっと様子を見に行きますね」
「ん……鍛冶屋にいる」
「ありがとうございます」
アスール様と別れると着替えて鍛冶屋へ。何でしょうか……ご主人様が危険?
鍛冶屋のドアを開くとそこには私の想像もしていなかった光景が広がっていました。
「ご、主人様?」
「ん? あぁ、来たか」
お風呂上がりのご主人様でした。かなりぶかぶかの黒いシャツを着ていらっしゃって肩にはタオルを掛けていらっしゃいます。リラックスしてる様子でした。
しかしなんでしょうか……こ、この色香は。向かい合ってるだけですのに気分が高揚して頬が赤くなってしまいます。
「ルナ?」
「ひゃい!?」
「そんなに緊張しなくても……。ほら、こっち来いよ」
そ、そんなイケメンボイスでとんでもないことを! 駄目です行けません! ここから動いてしまっては私の心が持ちません!
で、ですのに身体が勝手に前に進もうとしてます!? 駄目です! あ、私もう駄目かもしれません!
「なんか足取りゆっくりだな……。まぁいいんだが……」
ご主人様は立ち上がると私に近付いて来ます。近付くごとに私の心臓がとんでもないことになっていました。
「風邪か?」
ご主人様の少し硬い手が私の額に触れました。触れましたよ! もう駄目です、目が回りそうです。
「ご、ごごごご!」
「どうした? 本当に大丈夫か?」
「だ、だいじょばないです!」
「なんだそれは……」
大丈夫じゃないですが変な言い方になってしまいました。いえ、結果的にはご主人様に心配をお掛けしなくて良かったのかもしれません。
「そんなに緊張しなくてもいつも通り落ち着いてやればいいんだって。俺もフォローするから」
「は、はい……」
決して鍛冶のことで緊張しているわけではないのですが。いえ、そちらも出来るのかどうか分からなくて心配はしていますが。
「それじゃあ始めていくか。といってもしばらくはお前も見てるだけだと思うが」
「は、はい」
見てるだけ、ですか。そ、それって物凄く緊張してしまうんじゃないでしょうか? 私の心臓本当に大丈夫でしょうか?
ご主人様は真剣な表情で短剣で斬り裂いたり突きをしたりして部品を作っていきます。普通は削ったりなどされるんでしょうがご主人様は冒険者です。剣術の方が楽なのかもしれません。
「…………」
その真剣な様子がとても格好良くてつい見入ってしまいます。不思議と目が離せません。ですが逆に心臓は落ち着いてくれました。これがご主人様の魅力なのかもしれません。
まるで命を吹き込まれるかのように形作られる部品の数々。それらがどんどんと並べられていきます。
「さて、組み立てるか。もうちょいで魔法陣を組み込んでもらうぞ?」
「は、はい!」
気付けば数時間があっという間に経過していました。ど、どれくらいご主人様を見ていたのでしょうか。お風呂上がりだったのが既に髪も乾いてしまっていました。
「えっと……4時間くらいも暇だったろ」
「いえ、そんなことありません! むしろ普段見れなかったご主人様の姿が見れてとても良い時間でした」
「そ、そうか」
ご主人様が照れたように視線を逸らします。可愛いです。愛おしいです。
どんどんと組み立てられていく銃。ですがここで1つ気になった点がございました。
「どうして既存のものをご使用なさらないんですか?」
「既存のもの? あぁ、普段使ってるやつか」
「はい」
そちらを使えば分解するだけで済むような気がするのですが。もしかして取り外せないような構造になっているのでしょうか?
「そっち使っちまうとこれ完成させなきゃ戦闘で使えなくなるだろ?」
「確かにそうですが……」
「5日しかないんだ、完成出来ませんでしたじゃ戦力が停滞するどころか下がっちまう。それにこいつもまだ性能検査は必要だ。試し撃ちが必要な段階だ、流石に完成品は使えないな」
確かにその通りです。やはりご主人様は色々と考えていらっしゃいますね。
「ですがその……このタイミングはやめた方が良かったですね。すみません……」
「ん? 何でだ?」
「いえ……だってご主人様はご自分の武器を作るおつもりだったんじゃないんですか?」
クロ様との戦闘で折れてしまっておりました。私やアスール様、コウハ様との戦闘時には普通の刀を使用しておりましたしまず間違いなくご自分の武器は製作なさっていません。
「確かにその通りだがこれが成功すれば俺達の武器全員にも恩恵を得られるだろ? ならこっちの方がいい」
「確かに魔法は私の方が強いですが……」
それは魔法使いだからというだけです。いえ、だからこそと考えるべきなんでしょうか?
「お前の魔法を組み込む実験が成功すれば全員の武器に応用が効く。だからこれはその前段階ってことだ。ほら、俺の武器より優先すべき事項だろ?」
「それは分かりますが、それならミケラ様の魔法でもいいんじゃないでしょうか? いえ、ミケラ様の魔法の方が高い恩恵を得られるんじゃないですか?」
ミケラ様は本当に世界一の魔法使いです。私なんてまだ足元にも及びません。複数の魔法陣を同時に使いこなすあの技術を越えられるイメージが私には出来ませんでした。
「これは俺の個人的な見解なんだが……。多分人間よりも魔力の扱いに優れている精霊の方が魔法に関しては上だ。いや、ルナ本人が才能がある上にミケラを超えれると思っていると言うべきか?」
「そ、そんな風に思ってくださっていたんですか?」
ご主人様の私の評価が凄かったです。もちろんご主人様の主観ですがご主人様はこう言う時に嘘を吐くような方ではありません。
「ということでこれは二重の意味での未来への投資だ。だから気にせず付き合ってくれ」
「は、はい」
ご主人様は優し過ぎます。本当に……。
「ご主人様……」
「ん?」
「私、ご主人様の期待に添えるように頑張りますね」
「あぁ。頑張ってくれ」
俄然やる気が出ました! これからももっと沢山魔法に関してお勉強しませんと。
「あ、でも程々にしろよ? 身体壊したら意味ないからな」
「は、はい」
そしてやはり優しいご主人様がいらっしゃいますと私はどこまでも頑張れそうな気がしました。




