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第44話 刀夜&リルフェンvsルナ&アスール&コウハ

 何故か二手に分かれたルナ達。片方はルナ、アスール、コウハの3人。もう片方はアリシア、マオの2人だ。


「刀夜さんに真正面から挑んで勝てる気がしないもの。私達でチームを組ませてもらうわ」

「それじゃあ俺はリルフェンと組んでいいのか?」

「はい、問題ございません」


 問題ないらしい。舐めすぎだろこいつら。


「よしリルフェン、これが終わったらご褒美に肉料理をたらふく食わせてやろう」

「ガウ!? ガウガウガウ!」


 リルフェンもやる気を出したようだ。なんというか、単純だなこいつら……。


「さて、どっちからやるんだ?」

「私達からでいいだろうか?」

「それはいいけれど後の方が絶対有利よ?」

「うむ、だからこそだ」


 コウハは正々堂々としたいらしい。連戦だと流石に俺もキツイな……まぁ短期決着を心掛けるとしよう。


「2人もいいか?」

「はい、大丈夫です」

「ん…………問題なし」


 2人も問題ないようだ。しかしこの組み合わせはかなり不利だな。

 ルナの方がリルフェンよりも魔法は強い。更にその規模も大きく上回っている上に前衛のコウハの足止めも必要だ。加えてアスールのアシストがあると考えるとリルフェンには荷が重いかもしれない。ならばここで取るべき作戦は……。


「リルフェン、どう足掻いてもルナの魔法の規模には勝てない。だからお前にも近接戦闘してもらう」

「ガウ!」


 その辺りはリルフェン本人も分かっているのだろう。流石俺の仲間である。最強だな。


「それじゃあ始めようか」


 さて、初撃はどうくる? まずはコウハかルナか。

 一番警戒すべきはアスールだ。防御魔法は核が内側にあるせいで俺でも破壊は出来ない。その点では不利になる。

 しかし同時に防御魔法の弱点もある。直線的な攻撃しか出来ない上に魔法の発動はアスールの周辺からスタートされる点だ。魔法の伝達は範囲が限られるからな。

 つまりこれが初撃に選ばれることはない。コウハがこちらに突っ込むのも一歩遅れるだろう。先制を取られると厄介なのは分かっているはず、リルフェンの魔法は警戒されていると見ていい。

 つまり最初はルナから。だからその流れからぶった切る。


「それじゃあ行くわね。用意、スタート!」


 マオの合図とともに戦闘が始まる。一瞬にしてピリピリとした空気が場を占める。

 俺はすぐ様短剣を精製してルナに向かって投げる。咄嗟に魔法を使おうとしていたルナだ、やはり予想外の攻撃だったのだろう。

 しかしそれがルナに届くことはなかった。アスールの防御魔法で短剣が阻まれてしまった。

 防御魔法が解けると同時に大量の魔法が飛んでくる。ちっ……先手を取られたか。

 最低限飛んでくる魔法を刀で斬り裂いて消滅させる。その間にリルフェンが上級属性魔法を使用した。


「ガウ!」


 ライジングスピア。雷の属性魔法だ。くねくねとした軌道で読めず、また雨のように降り注ぐ魔法の連続をかいくぐってルナに迫った。

 魔法の規模では負けるだろう。しかし状況次第でしかなくそんなに単純であれば戦闘はもっと簡略化出来るはずである。

 しかしそうではない。リルフェンがルナに下剋上することも出来るのだ。


「ん」


 アスールが防御魔法でライジングスピアを防いだ。その間、ルナの魔法の雨も止まる。


「今の内に近付きたいんだが……」


 少し前に前進するとコウハがこちらを睨みつけながら警戒している。コウハの一撃は重い。食らえば相当な魔力消費になるだろう。

 クロとの戦闘でもあったが大剣を相手にするのは結構厳しい。特にこちらから刀を打ち付けなければ鍛冶魔法を発動する前に刀ごと俺が斬り裂かれて終わる。なかなかに厄介だ。

 しかし逆に手数は俺の方が上ということ。ひとまずは様子見に突っ込んでみるか。

 足に力を込めると一気に駆け抜ける。初撃で大剣を破壊出来れば万々歳。無理でも二度同じでは食わないようにすればいい。

 俺の突進に合わせてカウンターで大剣を振り下ろすコウハ。やはりそうくるか!


「刀夜殿の手には乗らない!」

「知ってる」


 くるりと横に回転して大剣を躱すと同時に踏み込んで斬り込む。


「くっ!」


 紙一重でそれを躱すコウハ。魔法の弱点は味方が近くにいる場合は不用意に撃てないことだ。

 追撃に更に踏み込むとコウハは大剣を手放して殴り掛かってくる。


「残念」

「っ!?」


 俺はそれも読んでいた。刀を振っていないのがその証拠だ。

 コウハの拳を避けると同時に懐に入り込むと掌底打ちで顎を殴り上げる。


「ぐっ!」


 コウハの視線を強制的に上に向かせる。


「コウハ様!」


 ルナが咄嗟に初級属性魔法を飛ばす。仮に被弾してもコウハへのダメージは最小限ということだろう。しかし無駄だ。


「ガウ!」


 俺達とルナの間に立ったリルフェンが氷の壁を作ってそれを防いだ。

 俺はその間にコウハの足を払って体勢を崩させる。刀では最悪殺してしまう可能性があるからな。無難にぶん殴るべきだろう。

 刀から手を離すと思い切り振りかぶる。


「やっ!」

「っ!」


 緑の魔法陣を展開したコウハは後ろから強力な追い風を発生させて体勢を強制的に元に戻した。いつかに俺がしたことがあるがまさか普段魔法を使わないコウハがそれを真似るとは!

 俺の拳はあっさりと受け止められると同時に腕を引っ張られる。


「ちっ!」


 前衛職であるコウハの方が力は強い。男の俺が、と思うが身体強化魔法とはそういうものだ。

 体勢を崩されてしまう。が、ここから回避するなど誰が決めた?


「終わりだ!」


 コウハが腕を振りかぶる。同じことをしてもいいがそれでは芸がないだろう。止まっているなら丁度良い。

 俺は掴まれた腕に二重の緑の魔法陣を展開する。コウハには悪いが付き合ってもらおう。


「なっ!? それって!?」

「ふっ」


 発動させた魔法は乱回転をしてしまい俺とコウハの腕を切断した。


「ぐぅっ!?」

「そこで引くと隙になるぞ」


 俺は踏ん張って体勢を整えると共に片腕を振り抜いた。


「ぐふっ!?」


 腹部にめり込んだ腕がコウハを吐血させる。恋人にこんなことをするのは心苦しいが、しかしここで引くわけにはいかない。


「この!」


 コウハが負けじと腕を振るう。マジか、こんなに早く反撃されるとは思わなかった。咄嗟に腕でガードすると顎を蹴り上げられた。


「ぐっ」


 やっべ! いや、まだやりようはあるな!

 強制的に顔を上に蹴り上げられて視界は空だ。次にコウハが何をしてくるのか分からない。

 しかしクロとの一戦。あれは俺としても学ぶことの多い戦いだった。後手に回れば負ける。なら常に相手の想像付かないレベルの攻撃を繰り出せばいい。

 俺は自分の足元に魔力装備生成魔法を発動させると地面から巨大な大剣を精製し、更には操作魔法で思い切り上へと突き上げた。


「なっ!?」


 突き上げられた大剣にコウハの踏み込みが止まる。俺はその間に顔を下に向けると突き上げられる大剣の柄を掴んだ。


「ふっ!」


 大剣の腹で叩くように横薙ぎに振るう。斬り裂いたら一刀両断して殺しちまうからな。流石に為す術はないだろう。避けるには間に合わない。大剣はただでさえ大きいのだ、攻撃範囲が広過ぎる上に一撃の威力が大きい。


「ガイアクエイク!」

「うおっ!」

「なっ!」


 ルナが咄嗟の機転を利かして上級土魔法で地面を揺らす。バランスが崩れて大剣が触れない。地震の規模のそれは流石の一言だ。

 俺もコウハも地面に手を付かせられる。その間に俺達の間にアスールが防御魔法を展開した。


「仕切り直しか……」


 俺は風魔法で宙に浮くと同時に切り離した腕を拾い上げながらリルフェンの元へ。


「ガウ!」


 リルフェンがアスールに向けてホーミングフレイムを飛ばす。しかしアスールは防御魔法を盾に隠れてやり過ごす。その間にコウハも腕を拾ってルナ達の元へと戻っていた。


「リルフェン、まだ行けそうか?」

「ガウ!」


 リルフェンもまだまだ萎えていないらしい。俺とコウハは回復魔法で腕をくっ付けるとぐるぐると回す。

 刀は置いてきちまったが仕方ない。創り出すってのも手だが極力魔力消費は避けたいな。

 恐らくコウハも武器を取りに行くはずだ。つまり先に取った方が有利!

 俺とコウハは同時に走り出した。更にルナが魔法の援護をする。


「ホーミングフレイム!」


 やはことは1つ! 武器を取る……その前にコウハを叩く!


「ふっ!」

「やっぱりそうくると思ったぞ!」


 俺と同時にコウハも拳を突き出していた。互いに拳同士がぶつかり合う。


「ちっ!」


 ホーミングフレイムの軌道を読んでコウハを盾にするように回り込む。コウハはタイミングが分かっているのかホーミングフレイムが当たる直前にバク宙をして躱した。

 そうか、音か。エルフ族のコウハは目と耳が良い。飛んでくるホーミングフレイムの音を拾って自分の当たるタイミングを見計らっていたのだろう。

 ここまでコウハの誘導通りだとすればここからは誤算だろう。俺はあえて片腕を盾にホーミングフレイムに向かって突っ込んだ。


「なっ!?」


 復活させた腕をあっさりと捨てる。酷い火傷を負って動かなくなってしまうが関係はない。

 空中のコウハの腹部の衣服を掴むと思い切り地面に叩きつけた。


「がは!」

「リルフェン!」


 俺は更にコウハをリルフェンに向かってぶん投げた。リルフェンはルナの魔法を掻い潜りながらこちらに向かって走っているのだ。


「……させない」


 空中のコウハに噛み付こうとしたリルフェンの行く手を飛んでいるアスールが牽制する。そういや飛べたんだった。あんまり見てないから忘れてた。

 ひとまずこの勝負は俺の勝ちだ。刀を拾い上げると同時に鍛冶魔法を使いコウハの大剣をへし折った。


「バウンドフレイム!」


 ルナが二重炎魔法で跳ねる炎を繰り出した。俺はそれを刀で斬り裂くと同時にルナに向かって走る。


「リルフェンを見捨てるんですか?」

「そんなわけないだろ?」


 コウハだけでもきついだろうが更にアスールまで加わると手に負えないのは目に見えている。俺だってその2人と戦いたくない。だからサポートはしているつもりだ。


「アスール殿! 気を付けろ! 刀夜殿の攻撃が行っているぞ!」

「…………?」


 アスールが首を傾げる。そう、何もない。何もないはずなのにコウハは攻撃が来ていると言う。

 視界には見えない風魔法がアスールの右肩から右翼に掛けてを切断した。


「……え?」


 一瞬何が何だか分かっていなかったアスール。そのまま落下して初めて気付いたらしい。


「…………泣きそうなくらい痛い」

「平気そうだな……」


 無事ならいい。割とぶっつけ本番だったんだよな。まぁ出来るのは知ってたというかこっそり試してたんだけどな。

 今の間にルナを戦闘不能にする。アスールのことだ、回復魔法を使用することに関しちゃ数秒と与えてくれないだろう。


「クロスフレイム!」


 十字架の炎が眼前に迫る。おっと、というか避けやすいなこれ。

 だからこそあえて破壊する。避けやすいからと避ければそこを突かれる可能性が高い。


「そうくると思いました!」

「なっ!」


 そこまで考えてたのか! ルナが土魔法を二重に重ねる。いきなり地面が柔らかくなって足が取られてバランスを崩す。土は俺のくるぶし辺りまでを飲み込んで固まってしまう。動けなくなったんだが。

 足を切断してやろうかと考えたが土の中から掘り出すのは大変なんだよな。だから仕方ない。

 上級風魔法で切れ味を上げ、刀で俺の周りの土を斬り裂く。そして先程同様魔力装備生成魔法で棍を創り出す。


「抜け出させません!」


 ルナのライジングスピアを発動させた。くそ、抜け出すにはちょっと遅いか。

 俺は魔力装備生成魔法で盾を創り出すとライジングスピアを防ぐ。雷に耐性のある盾だ、このくらいは余裕だろう。

 棍を上に突き上げてその勢いでルナの元へと迫る。足は岩で拘束されたままだがこのくらいは大したことはない。


「ウォーターウィップ!」


 二重の青色の魔法陣を展開したルナは水の鞭を創り出して俺に向かって振りかぶる。


「俺ばかり見てていいのか?」

「え?」


 操作魔法で操ったままの棍が射出されるように飛んでいき、ルナの腹部にめり込んだ。


「うっ!」


 棍はルナにダメージを与えると上向きになり、俺の岩に向かって飛んでくる。

 棍に岩を砕いてもらうと同時にそれを掴んでアスールに向けて投擲した。


「くっ!」


 コウハがアスールを庇うようにして棍を掴んで止める。あっちは止められちまったが仕方ない。


「チェックメイト」

「うぅ……やられてしまいました」


 ルナの首元に刀を突き付けてルナは戦闘不能。さて、残りは2人な訳だが。


「ガウ!」


 リルフェンが隙をついてコウハの足に噛み付いた。俺はすぐ様リルフェンの方へと走る。


「うぅ!」


 コウハの足が血で滲む。牙が深く突き刺さっており確実に機動力を奪っていた。


「…………リルフェン、めっ」

「ガウ?」


 アスールに注意されてリルフェンが牙を離す。


「…………隙あり」

「ガウ!?」


 アスールはキョトンとしたリルフェンに頭に思い切りチョップをしていた。傷も治ったみたいで、動いても平気そうだが……なんかこう、せこくね?


「私達の負けだな……」

「ん…………でも一矢報いた」

「それはズルくないか……?」


 コウハにまで言われちまってるじゃねぇか。はぁ……全く。溜息しか出ねぇ。

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