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第43話 模擬戦は新しい技術とともに

「バウンドフレイム!」


 ルナが地面に手を付いて赤い魔法陣を2つ展開する。火の玉が発生し、地面に当たった瞬間に弾むという奇怪な現象を引き起こす。

 軌道が読みづらいが当たらないというわけではない。俺は短剣を投げ込むと核を破壊して消滅させる。


「アクアウィップ!」


 続いてルナが繰り出したのは青い魔法陣を両手に2つずつ。発生した水がまるで鞭のようにしなる。

 繰り出される鞭を躱しながらルナの懐へと飛び込んだ。緑の魔法陣を2つ展開し魔法を発動させながら腕を伸ばす。


「……あれ?」


 しかし気付けば肘から先がなかった。スパンと綺麗に刃物で切り裂かれたようで大量の血が噴き出してしまう。


「自滅してますよ!?」

「腕飛んでいっちまったな」


 ひとまず模擬戦を中断して腕を拾うと大慌てでやってきたアスールに回復魔法を掛けてもらう。


「悪いな」

「ん……平気?」

「貧血になるかもな。そのくらいだから気にしなくていいぞ」


 肩を回したりしてくっ付いた腕の感触を確かめているとミケラが微妙そうな表情を浮かべていた。


「どうした?」

「いや……何で腕ぶっ飛んで平気そうなんだろーなと思っただけだ」

「あー、慣れた。この世界に傷なんて当たり前の話だしな」


 そもそもこの程度で苦しんでいては隙になる。次の攻撃に備える為にも痛みには慣れておく必要がある。


「そもそも俺は拷問された経験があるくらい……らしいからな」

「らしいって曖昧なのか?」

「なんか妙な薬みたいなので身体を小さくされていてな。記憶がない」


 今となっては少し懐かしい。いや、そんなに時間は経っていないはずなんだがな。毎日が濃厚な日々だからということだろう。


「ガウ、ガウガウガウ」

「ん?」

「慣れていても危険だからやめてって言ってるわね」

「んー……そういうわけにもいかない世界だからな……」


 危険だからという理由でやめていて死んでしまうくらいならその程度のリスクを選ぶだろう。だからやめてと言われてもはいやめますと素直には言えない。


「でもまぁ心配は嬉しいぞ」

「ガウ……」


 目に見えて落ち込まれてしまった。普段は静かなせいかこういう心配の時に声を出されると余計に愛らしくなってくる。ウチのペットは可愛い。

 優しく頭を撫でると気持ちよさそうに目を細めた。やはりウチのペット超可愛い。


「それにしてもルナちゃんはもう使いこなせてねーか?」

「そんなことありません。今も接近を許してしまいました」

「そうだな。普段ならもっと苦戦するところだもんな」


 実戦で使えないなら役に立たない。そういうのは覚えるだけ無駄というわけだ。しかし今はそれを使いこなしている最中だ。結論付けるのには早過ぎるだろう。


「普通の魔法と織り交ぜながら、って方がいいと思うが……」

「魔法陣の二重展開はとても魔力を使用しますから」


 二重にしている分消費魔力も2倍だ。いや、そもそもなんだが……。


「複合魔法だと違う属性だから魔力は2種類いるだろうし消費は必須だが……同じ属性魔法だとどうなるんだ?」

「あ、確かにそうです。必要ないかもしれません」

「そうだろうな〜。でも魔力を使わずに魔法陣を展開するのは難しいぜ〜?」

「え、そうなのか?」


 俺は魔力を消費せずに魔法陣を展開してみせる。ルナも当たり前のように展開してみせた。


「え」

「いや、だってなぁ?」

「はい。もし魔法が発動してしまっては建物が崩壊してしまいますから」


 俺達の魔法陣展開速度の向上は練習によるものだ。そしてその練習は魔法陣を展開、消失、展開、消失と繰り返す。

 ここでミスして魔法陣を発動してしまっては駄目だ。展開速度だけなら安全な魔法を選べばいいが咄嗟の時にどの魔法が出るのかと言われれば練習した魔法だろう。

 そういう観点から威力の高い魔法を選択し、展開と消失を繰り返している。そうしているうちに魔力を込めるか込めないかを選べるような展開方法を取るようになったのだ。

 もちろん咄嗟の時に展開した魔法陣に魔力がなければアウト。だから比重はもちろん魔力含めた方が多いのだが。


「その2人は規格外なのよ……」

「そうだよね……。私も練習してるんだけどね……」


 魔法を少しかじった程度のアリシアはまだまだだった。一応中級属性魔法が使えるが上級はまだまだ練習が必要だ。


「一撃の威力を重視する場面は必ずあるからな。魔法と特技を合わせた合技ってのも練習しててな」

「お前特技とか使えるのか」

「いや……練習してもそっちは何故か上手くいかないんだよな…………」


 本当になんでだろ。ムイにも剣術を教わったりしているが困ったような笑みを浮かべられてしまった。相当出来の悪い弟子のようだ。


「魔法と特技は別物だ。同じ要領じゃねーよ。だから反復練習が基本、特にお前は鍛冶師だ。そっちの才能がない分努力を怠ればそーなるわな」

「努力はしてる……はず」

「そうですよ! 丸一日頑張っていたりするんです。ご主人様は努力されてます!」


 ルナの援護が今は才能がなさすぎてが使えないと言われてるようで泣きたくなってきた。心優しいルナの無意識の言葉は心に刺さる。


「まぁ今は目先の話だ。何で俺の魔法不発したんだ……?」

「…………不発じゃなくて自滅」

「そうよ。自分の傷をなかったことにしようとしないで欲しいわ。戒めなさい」


 そんなこと言われても。俺の腕くらい安いもんだろ。


「まぁ腕が飛んだのは予想外だったな。何が原因なんだろうな」


 緑の魔法陣を二重に展開して魔法を発動させる。まるで竜巻のような風が俺の腕を纏っており空気を切り裂き抉るように回転している。


「ライジンの速度で使うからだろーな。速度を落とすか風の調整が出来るくらいにするべきだろーな」


 そういうことか。ライジンを使用すれば当然その分の空気抵抗や風に影響される。通常時で使うのとライジンを使用しながら使うのでは話が別ということか。


「速度を落とすのはない。却下だな」

「時には諦めた方が良いこともあるんだぜ?」

「だから却下だっての。俺は最強だ。だから常に頂点しか目指さない」


 これに関しては妥協しないと決めているのだ。諦めたり投げ出したりはしない。


「強情だな〜」

「人にはそれぞれ譲れないものがあるってだけだ」


 ワガママだと言われようともそういう感情は大切だ。そこから更に技術が発展していくんだからな。


「私もご主人様を譲れません」

「ん……同じく」

「私も譲れないよ」

「私も無理だ」

「当然じゃない。譲るなんて言えたならそもそも刀夜さんに好かれないもの」


 何言ってんだこいつらは……。譲れないってか俺は既にこいつらの物なんだけどな。


「お前好かれ過ぎじゃね?」

「こいつらは物好きだからな」

「俺は理由は分かる気がするけどな〜」


 え、何言ってんのこいつ?


「ちょっ、おい、何故距離を取る」

「いや……身の危険を感じてつい」

「俺の好きはそういう好きじゃねーよ!」


 いや、分かってんだよ? 分かってんだけどこうなんというかな?


「…………キマシタワー」

「いや、それ違う」


 アスールは何故そんな言葉知ってるんだよ。俺は教えたことない上に使い方間違ってんだよ。


「…………違うの?」

「それは女同士の時に指す言葉だ」

「……男同士はなんて言うの?」

「そんな言葉ねぇよ」


 だから男同士っていうのは正直あんまり好かん。というかノーマルの俺が何でホモになるんだって話だからな。


「…………やらないか?」

「だから違うっての。お前何でそんなこと知ってるんだ?」

「…………なんとなく」


 なんとなくの域を超えてる気がする。アスールの隠されたとんでもない力が無駄なところで発揮された。


「はぁ……まぁいいや。それよりルナ、もう一戦頼む」

「はい。お身体は大丈夫ですか?」

「むしろ動かないと落ち着かない。あと次は真剣にするから俺に勝ったら何かご褒美を要求していいぞ」

「本当ですか!?」


 こう言えばこいつはやる気を出すからな。いや、魔法に関しては普段から真剣なんだが俺が相手だとどこか遠慮するところがある。

 こういう時は目先の欲で釣ってやる。まぁルナのご褒美なんて大したことないどころか俺も嬉しいので別にいつでもウェルカムなんだが。こういう機会でないとお願い出来ないということもあるだろう。


「なら私も参加したいわ!」

「私も参加するよ!」

「私もだ! 刀夜殿のご褒美が欲しい!」


 おっと? なんか別の人達が反応してしまったぞ?


「…………私もする」

「お前はやめておいた方がいいんじゃないか?」


 アスールは戦闘じゃなく補助だ。いや、普通に戦えるんだが前衛職でない分やはり戦闘経験は劣る。


「…………私も最強。……どんな分野でも負ける気はない」

「…………なら仕方ねぇな」

「ん……仕方ない」


 そもそも俺達はそういう集まりだ。止めること自体愚問だったな。


「んじゃ、俺も参加だな〜」

「え」

「だから何で距離を取る!」


 だから身の危険を感じたからだ。


「…………キマシタワー」

「だからちげぇって」

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