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第42話 やはり酔っ払いは面倒くさい

 ということで夕食をそのままにミケラに連行される形で飲み屋へ。居酒屋みたいというかまんま居酒屋だった。嫌だな……飲みたくねぇ……。


「俺のいた世界ではそういうのパワハラになるんだぞ……」

「なんだパワハラって?」

「パワーハラスメント。立場の上の者が下の者に何かを強要することだ。分かったら俺の方は見るなクソ師匠」

「ひっでぇ!」


 酒臭いんだよお前……。開幕早々飲んでんじゃねぇよ……。


「刀夜さん……」

「どうした? って顔赤っ!」


 マオが俺の太ももに手を置いて詰め寄ってくる。こいつもしかしてもう酔ってないか?


「お前も開幕早々飲むなよ……」

「だってぇ〜……意外と美味しいんだも〜ん」

「マオさん? なんかキャラが違いません?」


 なんかすっげぇ甘えてくるんだが。あの甘やかしプレイ大好きのマオさんはどこに行ったんだ?


「刀夜さん良い匂い……それに可愛い……」

「ちょっと誰か助けてくれ」


 俺1人では無理だ。というかマオは酒に弱いんだな。


「マオ様、ご主人様にご迷惑をお掛けしてはいけませんよ?」

「や〜! 刀夜さんから離れたくない〜!」

「お前人の股に顔突っ込むなよ……」


 強引にマオを抱き抱える。もう仕方ない。こうなってしまっては仕方ないのだ。


「はぁ……ルナ、もういい。抱っこしてりゃ寝るだろ」

「は、はあ……マオ様が起きた時に羞恥心でとんでもないことになりそうですが……」

「…………そうだな」


 でもそれはマオの自己責任ってことで。まぁ絡むのが俺でまだよかった。これで暴れ出したりされたら抑えなきゃならないからな。

 少しの間、マオの頭を撫でているとうとうととしてきたようだ。この分ならすぐにでも眠るだろう。


「ご主人様、お食事出来ておりませんよね?あーんと口をお開けください」

「え、お、おう」


 マオを落ちないように支えているので今の俺は両手が塞がっている。いや、マオが寝てくれれば片手でも充分支えられるんだけどな。

 ルナに刺身を食べさせてもらう。うん、味が濃くて美味いな。濃過ぎる気がするが酒のつまみにもなっているのだろう。


「どうですか?」

「美味い」

「ふふ、よかったです」


 安心したようににっこりと微笑む。天使かよ。いや、女神でした。


「…………私もしたい」

「わざわざ席立ってまでするのか」

「ん……あーん」


 アスールが持ってきた肉を口に加える。意外にもさっぱりとしていて噛めば肉汁が溢れ出てくるが油というよりはスープのような味わいだった。美味い。


「美味いな」

「ん……これ美味しい」


 アスールのお気に入りらしい。だから食べさせに来たのだろうか。美味しいものは共有したくなるもんな。


「私も食べる……」

「あー、そうだな。何も食ってないもんな」


 マオが少しふらふらとしながら俺から離れて立ち上がる。大丈夫か……?

 なんとか席に着くと隣に座っているアリシアが慌てた様子で支えた。


「大丈夫?」

「えぇ、平気よ〜」

「全然そんな風には見えないんだけど……」


 アリシアがいるのでマオのことは大丈夫だろう。焦ったがようやく一息つける。


「刀夜殿、この野菜も食べて欲しい」

「ん? あぁ」

「あ、あーん……」


 恥ずかしそうに頬を赤く染めたコウハはその野菜を箸でつまんで俺に差し出してくる。俺はもう両手空いてるんだが……。

 多分あーんしたいだけなんだろうな。まぁ俺も嬉しいからいいか。

 コウハの野菜をあーんで食べさせてもらう。野菜炒めのようだがシャキシャキとした食感が残っており、また塩味が丁度良いくらいでこれも美味い。


「どれも美味いな」

「うむ。良いお店だ」


 どれも絶品だ。流石は福引きの一等賞だな。


「あの」

「ん?」


 いきなり店員がやって来た。何やら色紙を持っているが……なんだ?


「すみません、萩 刀夜様ですよね?」

「そうだが……」

「サインください!」


 いや、なんでサイン? というか書いたことねぇんだよな……。


「俺なんかのサインよりそっちのおっさんのサインにすりゃいいんじゃねぇの?」

「おいおい、俺より有名人だろお前〜」

「はぁ……」


 名前書けばいいんだよな? 仕方がないので色紙とペンを受け取って自分の名前を書く。


「これでいいのか?」

「ありがとうございます! 家宝にします!」

「そんなことされても困るんだが……」


 なんで家宝になるんだよ。そもそも俺のサインに価値なんてないだろ。


「知ってるか刀夜。お前のサイン、1枚10万Gで売買されてるんだぞ?」

「はぁ?」

「偽物が飛び交っていて色々と困る人続出らしいぞ〜」

「マジかよ……」


 何してんだよ。というか俺のサインなんて何がいいんだか……。


「そうでした! いつものあのお店もご主人様のサインが欲しいと仰っていました」

「えぇ……」


 いつものってあれだよな? 海鮮丼の。そんなに俺のサインが欲しいのか……。


「世の中酔狂な奴が多いな」

「他種族の恋人作りまくってるお前には誰にも言われたくねーんじゃねーかな……」


 確かにその点に関しては俺も変わり者なのだろう。しかしだ、人間というのは駄目だ。まるで分かっていない。


「マオの耳とか触ってて超気持ち良いんだぞ?」

「愛護的な感覚じゃねーの?」

「お前魔法以外本当に馬鹿だな……」

「この点に関しちゃお前に同意は出来ねーよ」


 どうやら無理なようだ。まぁ好みは人それぞれ押し付ける気はないけどな。


「ご主人様! 私は何かありませんか!?」

「ルナ? うーん……精霊核が近いお陰か大きくても胸が敏感?」

「そ、それほどでも……」

「ルナ殿、褒められていないぞ?」


 ルナは嬉しそうに照れていた。コウハのツッコミが入るが残念ながら聞いている様子はない。


「ん…………ルナのおっぱい凄い」

「揺れるからな」

「ん……たゆんたゆん」


 俺とアスールがルナの胸を思い出していると頭を軽くチョップされてしまう。痛くはないがなんなんだ。


「なーにクールな顔でエロい話ししてんだよ」

「だってたゆんたゆんだぞ?」

「お前そんなこと言って俺が想像したらどうするんだ?」

「お前の男としての象徴を切断した後に2度とルナを直視出来ないように眼球を抉り取るな」

「酷過ぎんだろ!」


 それくらいしなきゃ駄目だ。ルナの安全の為にも。俺の平静の為にも。


「萩 刀夜様でもそういう会話をなさるんですね」

「俺のこと聖人か何かと勘違いしてないか……?」

「違うのですか?」


 おおう……本気でそんなこと思われているのか俺。


「他種族を軽蔑することもなく、また困っている人は誰であろうと助ける素敵な方です」

「誰だよそいつ」


 残念ながら軽蔑だってするし困っていようとも俺に関係なければ見捨てるぞ。


「とある姉弟が親の仇を討ってもらった上に報酬金まで譲っていただいたというお話がありますが」

「あぁ、あのカイル・レイルとやらの時にいたあの2人か」


 指名手配犯を捕まえた時の話だろう。なかなかに強い……部類の奴らしい。瞬殺したから全然分からなかったが。


「今は魔人という種族に関して追っているとか」

「そんなに有名なのか……?」

「はい、有名です」


 何でこんなことになってんだろ……。というか魔人はあまり刺激しない方がいいんだがな。あいつらもひっそり生きてるし。

 まぁもっともその大元、魔人を操っている奴からすれば隠匿してもっと戦力を集めたかったのだろうが。

 間違いなく俺達は敵視されたと見ていい。操っているということはこちらの行動は筒抜けの可能性が高く、また俺達は魔人の角をへし折るだけの強さを持っていると理解されたのだから。

 クロとヒカリの話を聞くのもいいが向こうからも何かしらのアクションは起こしてくるはずだ。そこを突いて返り討ちに出来ればいいんだがそんなに甘い相手だろうか。

 残りの魔人の数は2人。その2人をなんとか出来れば大元であるそいつに辿り着けるかもしれないな。


「まぁあまり首を突っ込むな。死ぬぞ」

「はい。ふふ、やはり噂通りの優しい方ですね♪」


 とんでもないことを言い残して店員はサイン色紙を嬉しそうに抱いてスキップして奥へと消えてった。

 俺のサインがそんなに嬉しいのかよ。まぁ確かに売れば10万だもんな。何枚も書けば一儲け出来そうだ。


「私もご主人様のサインが欲しいです」

「貰ってどうするんだよ……」

「部屋に飾ります」


 それ飾ってどうするんだよ……。そんなことするくらいなら俺は集合写真が欲しいくらいだ。


「ん? そういやリルフェンは?」


 忠犬の如く付いてくる上にお利口なお陰で外では全く鳴かなくなったリルフェンさんは何処へ?


「あ、リルフェンならこっちにいるよ?」

「クゥ〜ン」


 見るとアリシアがマオとリルフェンの両方の面倒を見ていた。アリシアは真面目に世話好きだと思うわけだが……こう、損な役回りが多そうだ。


「リルフェン、こっちに肉あるぞ?」

「ガウ!」


 リルフェンを肉で誘き寄せると口元に入れてやる。美味そうに何度も咀嚼しているのを見ると和む。


「よいしょ……」

「ガウ!?」


 リルフェンの脇腹に手を回して持ち上げると反転させて後ろから抱き締めるように座らせる。


「もふもふだなお前」

「ガフ!」

「すまん……マオがいなけりゃ何言ってるのか分からん」


 とりあえずこのまま何事もなく過ぎればいいんだが……無理だよな。


「リルフェンずるいわよ! そこは私の席よ!」

「ガウ!?」


 ほら……絡まれた。面倒くせぇな……。

 しかしマオが相手だと悪い気もしないから不思議だ。なるほど、これが恋人補正というやつなのだろう。


「ちょ、おい、マオ。押すなよ。ほら、こっち側開けてやるから」

「えぇ! ふふ……」

「ガウ〜♪」


 マオとリルフェンを抱き締めながらだと手が塞がるわけで。ということは当然……。


「ご主人様、あーんです」

「…………私も食べて」

「2人だけズルい! ん? 今アスール殿とんでもないことを言わなかったか?」


 とんでもないこと言ったな。こいつも酔いが回ってるんじゃなかろうか? いや、普段通りだな。

 俺も飲んで忘れてしまおうか? いや、そうすればこいつらは誰が連れて帰るんだって話だな。やめとこ……。

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