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特別編アリシア視点第6話 仲間とはライバルである

 優しい抱擁。触れ合う素肌が気持ち良くてつい目を閉じてそれに浸ってしまう。男の子らしい硬い身体がとても安心する。包み込んでくれているかのような錯覚に陥ってしまう。

 そんな幸せな時間を体験して気が付けば既に夜が明けていた。時刻は6時前。やっぱり深夜にしちゃったこともあってこんな時間になっちゃった。

 でもとても気持ち良かった。何より刀夜くんの優しさが胸に染みてきてとても暖かい気持ちになった。


「……私もう駄目かもしれないね」


 刀夜くんがいないともう生きていけない。刀夜くんがそばにいない人生を考えたくない。好き……好き好き好き!


「すぅ……すぅ……」

「あ、寝ちゃったかな」


 中途半端に寝ちゃってたから眠かったのかな。刀夜くんがゆっくり眠れるように私は抱擁を解いた。


「ん……な、なんだろう……我慢出来ない」


 もっと刀夜くんに触れたい……。触れて欲しい……。

 我慢出来ずについ刀夜くんを胸に抱き締めてしまう。刀夜くん可愛い。刀夜くん愛してる。やっぱり大好き!


「ん……んぅ……アリシア……ちょっと緩めて。苦しい……」

「あ、ごご、ごめんね!」


 薄く目を開けた刀夜くんに注意されてしまう。私は腕の力を緩めると刀夜くんはゆっくりと目を閉じて再び眠りについた。

 少し寝ぼけているのが可愛い。多分起きた時に今のこと覚えてないんじゃないかな。

 うぅ……落ち着かないと。刀夜くんを愛おしい気持ちが溢れてきて止まらないけど落ち着かないと。


「すぅ……すぅ……」


 再び心地良さそうな寝息を立てる刀夜くん。私のおっぱいに頬を預けて気持ち良さそうに眠っている。

 もっと触って欲しいなぁ……。抱き締めるだけじゃなくて抱き締め返して欲しい。あと刀夜くん可愛い……。

 わ、私もしかしてもっと刀夜くんに抱いて欲しいのかな。こ、これって欲求不満なの!?

 こんなの変態だよ。刀夜くんに嫌われちゃう。…………あれ? マオさんも普段からこういう感じだから問題ないのかな?


「落ち着いて……落ち着いて……」


 眠る前の不安や悲しい気持ちはどこへやら。あれだけ悩んでたこともどこへやら。今の私に残っているのは刀夜くんへの愛だけだった。

 うぅ……刀夜くんが愛おし過ぎて止まらない……。な、何か別のこと考えよう。

 えっと……私が欲しい刀夜くんに作って欲しい武器は……。刀夜くん褒めてくれるかな? それとも今より強くなったら悔しがるかな?

 って結局刀夜くんのこと考えてる!? どど、どうしよう!?


「あ、朝ご飯作ろう……」


 ここにいたんじゃいつまで経っても刀夜くんのことが頭から離れない。抱き締めてるのが駄目なんだよね。刀夜くん離れしないと。


「すぅ……すぅ……」

「刀夜くん可愛い……」


 最後に寝顔を見ようとしたらもう駄目だった。私刀夜くんのそばにいたい。もっと撫で回したり愛したりしたい。刀夜くん好き好き好き好き!

 刀夜くんの1番でいたい。刀夜くんがルナさん達よりも頼ってくれるようなそんな自分でいたい。

 今まで1番を争っていたような軽い気持ちなんかじゃない。確かに私は刀夜くんの1番が良かったけど今は違う。1番じゃなきゃやだ。

 独占欲なんて本当は持ったら駄目なんだけど……。でも刀夜くんをこんなに愛してるんだからもう仕方ないよね。


「ルナさんとアスールさんもこんな気持ちなのかな」


 初期からルナさんとアスールさんは刀夜くんのことで衝突してた気がする。誰にも取られたくなかったのかな。

 今その気持ちは私の中にもある。私も刀夜くんを取られたくない。誰よりも1番でいたい。


「浅野くんのこと、なんとかしてあげたいな……」


 だからこそ苦しんでる刀夜くんを見ていられない。浅野くんのこと、なんとか解決出来ないかな?

 魔人との戦いはこれからもっと激化していく。だって私達は魔人の目的を潰してしまおうとしてるから。

 なれもっと強くならないといけない。刀夜くんだけに重荷は背負わせない。私も一緒に背負って生きていきたい。


「よしっ!」


 気合いは充分。刀夜くんが愛おしいけど今は刀夜くんの役に立てる自分でいたい。

 刀夜くんに武器を作ってもらわないといけないけど私は私なりの考えをまとめておこう。

 名残惜しいけど仕方ない。最後に刀夜くんに極力優しくキスすると私は服を着て刀夜くんの部屋を後にした。

 キッチンへやってくるとルナさんに教わった手料理を作る。槍の扱いに手慣れてから包丁も使えるようになってきた。薙ぎ払う時はもっと大雑把になっちゃうけど突いたりする時は精密さが重要。

 包丁も同じ。むしろ槍よりも切れる幅が広がってるから使いやすいかもしれない。あんまり長くないからたまに距離感間違えちゃうけど。


「ふんふふんふ〜ん♪」


 鼻歌を歌いながら手早く朝食の用意をすませる。あの様子だと刀夜くんは少し遅くなるかな。

 大好きな人の顔を思い浮かべると料理も楽しくなってくるね。いつもルナさん達と楽しく雑談しながらだけどたまにはこういうのもいいかも。


「…………何してるのかしら?」

「え? あ、マオさん。おはよう」

「えぇ、おはよう。それで……何それ?」


 マオさんがキッチンにやってきて怪訝な目を向けてくる。


「何って朝食だよ?」

「それは分かっているけれど……多過ぎないかしら?」

「え?」


 多い? 改めて自分が作ったものを見ると……あれ!? いつのまにか2日分くらいあるよ!?


「い、いい、今何時!?」

「8時半よ」

「2時間も!?」


 私いつのまにか2時間も料理をしていたらしい。つ、作り過ぎちゃった……。


「……何かあったの?」

「え? あ、う、ううん、なんでもないよ?」

「…………随分と機嫌良さそうだったわよ?」


 マオさんがちょっとしつこく聞いてくる。うぅ、これはもう逃げられないかな……。寝てたからあの会話は聞こえてないと思うんだけど。


「と、刀夜くんがね。私の悩み事全部解決してくれちゃって」

「ああ、それで。納得よ」


 マオさんはあっさり納得してくれた。もしかしてもう経験とかあるのかな?


「どうせ回りくどいやり方で解決してくれたのでしょう?」

「回りくどい……確かにそうかも?」


 わざわざ夜に抜け出したり、それに曖昧なこと言いながらも核心を突いてたり。

 普通の人ならもっと慰めたりするのに刀夜くんの場合は論破してくるよね。でもそれが優しいのが分かってるからこんなにも好きになっちゃうんだろうけど。


「それでかしらね。随分と嬉しそうね」

「うん……」


 マオさんも少し笑みを浮かべていた。私のことなのに自分のことのように嬉しそうにしてくれる。

 そんなマオさんだからこそ私は気持ちを隠したくなかった。だからこれは宣戦布告と同時に友情も兼ねている。


「ねぇマオさん」

「何かしら?」

「私、刀夜くんのことが大好き」

「え? えぇ、知ってるわよ?」


 私の真剣な表情にマオさんは少し戸惑っている様子だった。


「だからね……負けないよ」

「何を……かしら?」

「刀夜くんのこと。刀夜くんがみんなのこと好きかもしれないけど、大好きなのは私だけになるように」


 マオさんは目を見開いて驚いた。人間の私がこんなことを言ったらマオさんに嫌われちゃうかな? でもマオさんにはどうしても言っておきたかった。


「…………そう」


 マオさんは何か納得したように頷いた後に真剣な表情を浮かべた。その表情は敵対……とは違ってどちらかというと嬉しそうな気がした。


「私だって刀夜さんの1番は譲る気ないわよ。確かに恋人なのは認めるけれどそれ以外は許容しないわ。私だって負けないわよ」


 マオさんは正々堂々と勝負してくれる。ふふ、本当に良い人だ。


「おはようございま……な、何ですかこの一触即発の雰囲気は!?」

「も、もしかして喧嘩か?」

「…………仲良くしなきゃ駄目」


 みんなが起きてきて私達の雰囲気を察して慌てる。でもそんなんじゃない上にこの人達も含まれるんだよね。


「みんな……ごめんね」

「何があったんですが?」

「ううん、何もないよ。ただ……」


 私は少し深呼吸してはっきりと言う。マオさん以上に手強そうなんだよね……。でも負けない。負けたくない。刀夜くんを譲りたくないから。


「私、刀夜くんの1番になりたい。だからみんなには負けないよ」

「え、あ、そんなの私も負けませんよ!」

「ん……当然譲れない」

「うむ、譲るわけにはいかない!」


 みんな真剣で、でも仲良し。この関係性を口にするならなんて言えばいいんだろう?


「…………仲間と書いて仲間ライバル

「あ、確かにそうかもしれないね」


 そんな感じかな。ふふ……仲間ライバルかぁ。うん、しっくりくるね。


「おはようさん……。つかまだ眠い」


 刀夜くんも起きてきた。お昼頃まで寝てると思ったんだけど。その顔を見るなりトクンと心臓が大きく跳ねる。

 こ、こんな調子で私大丈夫かな!? 刀夜くんに近付くだけで顔が真っ赤になっちゃう!?


「…………えらい量の朝食だな」


 あ、忘れてた……。こ、これどうしよ。

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