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第27話 甘えたり甘やかしたり嗅いだりする関係性

 昼食の準備、昼食と経て少し暇な時間が出来た。ここで何かしら武器でも作っておこうかと考えているとアリシアに肩を叩かれる。


「お昼寝しよっか」

「え、いや、食べてすぐに寝るのは身体に毒だぞ」

「大丈夫だよ。ほら、ベッド行こ?」


 何かエロいんだが。しかし今日はいつにも増して強引だな。まるで前から既に予約してて待ち切れないみたいな。


「今日は刀夜殿とアリシア殿が一緒に寝るのか」

「あら、そうなの? 刀夜さんで遊ぼうと思ったけれど仕方ないわね」


 ほら誤解された。というかマオ今なんて?


「うん、ごめんね」


 あっさり認めてしまう。普段アリシアはこんなことをするような奴ではない。つまり安易にこれは2人きりになりたいというアピールだろう。

 なんという可愛い奴。俺と2人きりになりたいが為にこうして色々と策を練ってくれたらしい。

 まぁ冗談は置いておいて何か相談事かもしれないしな。ここは話を合わせるとしよう。


「まぁ約束だったからな」

「っ! うん」


 嬉しそうに微笑むアリシア。目的はよく分からないがアリシアのことだ、悪いものでもないだろう。

 俺の部屋へとやって来るなりアリシアはいきなり俺を優しく抱き締めてくる。な、何事?


「浅野くんのこと……無理しなくていいんだよ?」

「アリシア……」


 その為に俺と2人きりに……。誤解されてるんだがこうして想ってくれてるのは素直に嬉しいな。


「別に無理なんてしてないぞ?」

「本当?」


 ここで嘘を吐くのは簡単だがアリシア相手にそんなことをしたくない。そもそも心配してくれている相手にそれは失礼過ぎるだろう。


「あぁ。浅野の気持ちを確かめないといけなくなったけどな」

「……そうだね」


 アリシアは優しく俺の頭を撫でる。慰めるように。

 ここまでされるのなら盛大に甘えてもいいだろうか? せっかくアリシアが母性全開でこうしてくれてるわけだし。


「なぁアリシア、本当に昼寝しないか?」

「眠いの?」

「まぁそれもあるんだが……」


 なんだか恥ずかしくなってきた。何故俺は今彼女の胸に顔を埋めるように抱き締められながら昼寝の提案してるんだろうか。まぁ嬉しいからいいんだけど……。


「うん?」


 アリシアがキョトンとしている。ええい、仕方ない。これはもう言ってしまうしかない。


「あ、甘えたいだけだ……」

「刀夜くん……か、可愛い……!」


 ほらこんなこと言われちまった。絶対に言われると思った。

 アリシアにベッドに押し倒され、そのまま胸に顔を埋められるように抱き締められる。なんという包容力。ルナに次いで巨乳であるアリシアの胸だ、相当柔らかい。


「他にも何かして欲しいことある? 刀夜くんのしたいこと全部するよ!」

「女の子がなんでもするとか言うなよ」

「あ、えっと……え、エッチなことでもいいんだよ?」


 マジですか。確かに恋人同士なら問題ないかもしれないが。それでもこんな真昼間からするのもアレだろう。


「止まらなくなってもいいのか……?」

「う、うん。そんなに愛してくれるの?」


 むしろ受け入れ態勢万全だった。というかアリシアもしたいのだろうか?


「したいのか?」

「え!? そ、それは……」


 あれ、そういうわけじゃなさそうだ。アリシアも優しいが自分のことをあまり話さない。俺としてはもっと色々と打ち解けて欲しいんだが。


「それじゃあアリシアのしたいことをしよう。何かないのか?」

「刀夜くんに甘えて欲しいかな」


 なんでそっちに走っちゃうんだアリシアは? 結局全部俺の為になっちまってるじゃねぇか。


「だからね、刀夜くんが甘えたいって言ってくれて本当に嬉しいよ」


 そんな満面の笑みを浮かべなくても。そんな表情されたら俺も何も言えなくなってしまう。

 ルナも世話好きだと思ったがアリシアは別格だな。本気で俺のことを甘やかそうとしている。それが世界一の喜びであるかのように。


「あ、手が冷たい……刀夜くん大丈夫?」


 不意に触れられた手が冷たいということでアリシアに心配されてしまう。えっと……そんなことまで気にされるのか。


「手が冷たい人は心が暖かいって言うよね」

「あぁ、そうらしいな」


 実際にはあんまり関係は……なくもないのか。


「それじゃあ刀夜くんは心が暖かいんだね」

「それだと今手が暖かいアリシアは心が冷たいってことになっちまうから却下だな」

「そ、そうかな?」


 当たり前だろう。アリシアみたいな良い人が心が冷たいとか言ったら世界中の人間全員心が冷たいことになってしまう。


「手の冷たさってのは血液の循環に関わるものだな」

「そうなの?」

「あぁ。人は恒温動物だ、体温を一定にしようとする。血液を指先にまで循環させて温度を調整しながら心臓へと送り届けるらしい。だから手が冷たくなったり暖かくなったりする」

「それじゃああんまり関係ないのかな?」

「そうとも言えないな」


 そんな単純な話でもない。もしそうなら既に解明されてるだろうしな。否定された話が出ないということはそういうことだ。


「そうなの?」

「それじゃあ何故人が体温を上げ下げするのか。気候や気温ってのもあるが、人は焦ったり恥ずかしかったり緊張したりすると体温が上がったりする。手が冷たいということはそういう機会が多い人なのかもしれないな」


 つまりは感受性が強いということだろう。だから心の暖かさというよりはそういった機会が多いと言うべきなのだ。


「……つまり刀夜くんは今緊張してたりするから手が冷たいわけだよね?」

「…………」


 ……墓穴掘った。


「もしかして私が隣にいるからドキドキしてくれてる?」

「し、仕方ないだろ!? こ、こんなことされて意識しないわけないだろ……」

「刀夜くん可愛い……」


 また言われてしまった。何故こうも可愛いと言われてしまうのか。

 確かに俺は自分でも思うくらいには中性的な顔立ちだ。おっさんらしくないというのはよく言われる。20歳なのに。いや、20歳はおっさんじゃないか。

 しかし可愛いとも言われたことはない気がするが。多分この世界ではゴツい男達が多いから自然とそうなってしまうんだろうけど……。


「別に可愛いと言われても嬉しくないんだが」

「ごめんね。でも本当に可愛いよ?」

「…………」

「ごめんごめん。そんな睨まなくても」


 睨んではいないが不満そうにはしてしまったかもしれない。普段はあまりしないのだがアリシア相手だからかつい本心が出てしまう。

 俺はもっと世渡り上手だとは思ったんだがな。日本でもそれなりに上手くやれていたし、そういうのにまぁまぁ自信はあったんだが。これもひとえにアリシアの魅力なのだろう。

 自分の気持ちを押し殺すことがない。むしろ甘えたい気持ちすらも受け入れてくれるのだから当然泣きついてしまう。

 世話好きを極めるとこうなってしまうわけだ。……それじゃあこいつは誰に甘えるのだろう?

 だからこそ俺はこいつにも甘えて欲しいと普段から言っているんだろうな。俺だけじゃなく対等でいたいから。


「んー……」

「何か考え事?」

「どうしたらアリシアが甘えてくれるのかを考えてる」

「え?」


 浅野のことはひとまず置いておいて現状はアリシアのことだ。俺にとってはこちらも大切なことだからな。

 アリシアを甘やかす方法……俺も大人の色香を見せ付けるとか? ねぇな……。

 アリシアを見習うとすれば色々な点に気付くことだ。アリシアは俺が浅野のことで悩んでいることを見抜いた。俺もアリシアが何に悩んでいるのか、そして何を感じているのかをある程度見抜く力がいるわけだ。

 コミュ障にそれは無理だな! くっそ! 勝てる要素が見当たらねぇ!


「刀夜くんは私に甘えて欲しいの?」

「あぁ」

「それじゃあ甘えさせてもらおうかな?」


 ん? 何やら甘えてくれる流れになった。

 アリシアは少し俺から離れると顔を付けて優しくキスしてくる。そしてそのまま俺の胸に顔を埋める。


「確かにこうされるとドキドキするね」

「キスしたからじゃないのか?」

「それもあるけど……なんだろうね。包まれていて落ち着くんだけどドキドキするっていうか」


 それ矛盾してないか? いや、人間の気持ちなど案外そういうものかもしれないが。


「刀夜くんは本当に良い匂いがするよね」

「そうか? 加齢臭とかしないか?」

「うん、全然しないよ。マオさんもよく嗅いでるよね」


 そうなのか? 確かに良い匂いだとは言われるがそこまで嗅いだりしたことあったっけ?


「あ、これは失言だったかな………」


 それってつまり普段は俺にバレないように嗅いでるってことだよな? いつの間にそんなことされていたんだ。


「あ、あの、怒らないであげてね?」

「怒りはしないが。俺もあいつの匂いを嗅いでやろうかなとは思ってる」

「それくらいならいい……かな?」


 いいらしい。変態とか言われるかと思ったんだが。俺は別に匂いフェチじゃないんだけどな?


「ち、ちなみに私の匂いも大丈夫かな?」

「全然普通に良い匂いだけどな?」

「そ、そうなんだ。よかった……」


 やっぱり女の子だとそういうの気にするらしい。俺は加齢臭がしても仕方ないと諦めてしまうからな。もちろんこいつらが嫌だというのなら本気で考えるが。


「でもどこ匂っても良い匂いだな」

「そ、そう?」

「あぁ、脇も良い匂いするぞ?」

「そ、そんなところまで匂わなくていいよ!」


 おっと、怒られてしまった。とこんなくだらないことをしているといきなり部屋のドアが勢いよく開いた。


「うお、ビックリした」

「ど、どうかした!?」


 部屋に入ってきたのはマオだった。もしかしてさっきの話聞こえてたり?


「寝るからって譲ったけど結局イチャイチャするんじゃない! だったら私も混ぜて欲しいわ!」

「え、あ、ご、ごめんね。それに秘密にしてたことも言っちゃったし……」

「そんなことはどうでもいいのよ! 2人でイチャイチャしてて羨ましいわ!」


 マオは聴覚が凄いから全部丸聞こえだったんだろうな。寝ると言ったのに全く眠る気がない上にあれだけイチャイチャしてたら腹が立つだろう。


「秘密にしてたのにどうでもいいの!?」

「そんなので刀夜さんに嫌われないからいいわよ。それよりも私も刀夜さんの匂いを嗅ぎたいわ!」

「お、おう……」


 そんなはっきり言わなくても。でもそう思ってくれてるってことは少なくとも嫌われてるわけじゃないだろう。変な匂いとかさせたらマオに避けられちまうな。それだけは避けないと。


「もしかして刀夜くんの匂いを嗅いでたから羨ましかったの?」

「そ、それは……」


 あ、図星っぽい。顔真っ赤になったし。


「ふふ……それじゃあ一緒に刀夜くんの匂いを嗅ご?」

「え、えぇ!」

「何その変な誘い方」


 しかしアリシアも大人っぽくなったものだ。以前ならあっさりとマオを受け入れたりしていない気がする。もちろん優しいから簡単に了承は出るだろうけど。

 俺だけじゃなくこいつらも変わっているのだろう。そうやって甘えたり甘やかしたりしてどんどんと大人になっていくのかもしれない。


「刀夜さん良い匂いね……」

「うん、本当にね……」


 …………同時に変態になってきたような気もするが。

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