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第25話 魔人の少年と綺麗な女性

 翌日の朝、俺達は早速アデラアの街へとやってきた。アリシアがこの街に行ったことがあって助かった。時間が経てば経つ程にここに留まってくれる可能性が低くなるからな。

 索敵には主にマオがいるから心配はしていない。問題は広大な森の中でそいつを発見出来るのかという点だ。

 幾らマオが索敵に優れているといってもこの広大な森全域を対象に出来るわけがないのだ。つまりは見つからない可能性も大いにあり得る。


「ひとまず行くか。ここはダンジョン内。転移魔法が無効化されるから気を付けろ」

「はい」


 俺達は早速その森の中へと入っていく。入るなりいきなり巨大な大蛇が口を開けながら俺達に襲い掛かってきた。

 俺は即座に刀を抜くと同時に緑色の魔法陣を展開、それを切り裂くように刀を振るう。まるで斬撃が如く風の刃が飛んでいき、その大きな口から出て胴体に掛けてをスパンッと切り裂いた。


「……毒か」


 牙には毒があったようだ。倒れた蛇の牙が地面に触れた瞬間溶けてなくなってしまった。

 ここはそういうダンジョンだと思った方が良いだろう。


「刀夜さん冷静よね……」

「おっと、悪い悪い」

「いえ、私が手を出すまでもなくて安心したわ」


 音で気付いていたのだろう。マオが既に弓矢を取り出して矢を引こうとしていたのだ。

 とにかくダンジョン内では常に臨戦態勢である必要性がある。拠点を立てるのも良いが俺達は別にダンジョン攻略をしにきたわけじゃないからな。

 先へ進むと何やら更に魔物が襲ってくる。今度は馴染み深いゴブリンの集団だった。

 俺が冒険者となって初めて敵対した魔物だ。少し懐かしいな。まぁ今では脅威でもなんでもなく別にという感じだが。

 今度はマオが矢で全てのゴブリンを撃ち抜いた。流石に前衛の出る幕はないな。

 このダンジョンはあまりレベルは高くないようだ。残念ながらそこまで警戒する必要もないのかもしれない。

 しかしだ、魔人のような奴がいるとなるとどうしても強張ってしまう。ひとまずこいつらには危険が及ばないようにしないとな。

 俺達は最強だ。負けるはずはもうない。もうないはずだが警戒するに越したことはないだろう。最強でもミスればすぐに死ぬんだから。


「マオ、何か特殊な気配を感じたらすぐに言ってくれ」

「えぇ。でも分かっているとは思うけれどある程度近付かないと駄目よ?」

「あぁ。流石にここで手分けして、とかは言わないが。索敵はお前とコウハが頼りだからな」


 特に鼻が利くマオは匂いだけでそれが人間が人間じゃないかを判断出来る。今回の作戦では特に重宝する能力だ。索敵出来る後衛とか俺の仲間超優秀だな……。


「ん? 刀夜さん、かなりの数の魔物が近付いて来るけれど」

「魔物……」

「何でしょう……何かから逃げてるみたいな感じよ」

「私も音で感じる……。凄い数だ」


 ということはここにいるとマズイか? とりあえず逃げる魔物まで相手をしていてはキリが無さそうだな。


「ルナ、上に」

「はい!」


 ルナが茶色の魔法陣を展開、すぐ様周囲の土を盛り上げ、俺達の足場を上空へと上がる。そこまでいくと俺にも見える。

 大量の魔物が大急ぎで逃げている。魔物というのは本能で生きる生物。リルフェンのようなケースの方がむしろ珍しい。

 今逃げている魔物というのは本能的に何かを感じて逃げているのだろう。つまりはそれだけ強い何かがいるということ。

 普段ならそういうのは避けるが今回はそういう相手が目的だ。魔物が逃げるのと逆方向に向かえばいい。

 魔物の軍勢が通り過ぎたのを確認すると再びルナが土魔法を発動させて盛り上がった土を下げる。


「足場悪っ」


 魔物が踏み荒らしたせいで足場が足跡だったりでデコボコしていたりする。ちょっと面倒なことになったな。

 だが魔物がそうも逃げる相手か。確かに希望が持てそうだ。


「行くぞ」


 俺達は逃げられないようにライジンを使用して一気に駆け抜ける。先程逃げていったお陰で幸い魔物はいない。もしいてもマオがすぐに知らせてくれるだろう。


「刀夜さん! こっちに人間の気配ともう一つ魔人が混じったような人間の気配があるわ!」

「了解だ」


 片目が黒いということは半分魔人であるということ。安易に想像は付いていた。マオが魔人の気配と言うのならこれは当たりだろう。

 マオの案内の元、そちらへと向かうといきなり黒い影が眼前に現れる。


「ふんっ!」

「っ!?」


 咄嗟に腕を交差させてガードする。ガードの上から何者かの拳が俺を殴り飛ばした。

 痛っ!? でも咄嗟にバックステップしたお陰で威力は分散出来た。何とか腕は折れていない。打撲とかその程度だろう。


「刀夜殿!」


 木にぶつかりそうなギリギリのところでコウハが受け止めてくれる。しかし速いな、ライジンと同等の速度を出せる奴など限られている。


「お出ましか」


 その男は片目が黒い。瞳の色は両目とも赤かった。鋭い瞳の白髪ポニーテールの男だ。身長は俺と同程度、鍛えられた筋肉を持ってはいるものの痩せ型で普通に格好良いなこいつ……。

 そんなイケメンは殺意の衝動を抑えられないのか、それとも抑える気がないのか聞く耳を持ちそうにない雰囲気だ。


「人間……? ……いや、俺の攻撃を防ぐ奴が普通であるはずがないか……」


 男は一瞬訝しげな表情を浮かべるもののすぐに冷たい表情へと変わった。


「ちょ、待ってくれ。俺達は別にお前をどうにかしようというわけじゃない」

「…………」

「魔人に関して話が聞きたいだけだ。俺達が追っている魔人がいてな」


 魔人という言葉にピクリと反応を示す男。より一層冷たい雰囲気を放たれてしまう。やっべ、逆効果だったっぽい。


「ちょ、ちょっと待って!」


 そんな中、慌てた様子で声を掛けながら女性が現れる。男はその一言だけですぐに矛を収めた。

 黒髪ロングに長い前髪で左目が隠れた綺麗な女性だ。右目の下には泣きボクロもあって少し色っぽい。

 スラッとしていて全体的に痩せ型ではあるが出るところがしっかり出ておりそれはルナに引けを取らないほどだ。


「…………止めるな。こいつらの目的は魔人、生かして返す理由はない」


 確かにそうなっちまうか。誤解を解こうと思ったら何をすればいいのだろうか?


「他種族を沢山連れてる……だから多分彼が萩 刀夜くんだよ」

「何っ……?」


 男は意外そうな表情で俺を見る。これは良さげな流れだな。


「あぁ、萩 刀夜だ。魔人に関して聞きたいことがあるだけで危害を加えようとしてるわけじゃない」

「だって。話、聞いてみてもいいんじゃない?」

「……信用出来ないな」


 用心深いな。まぁ良いことだが。

 俺はポケットからステータスカードを取り出すと男に向かって投げる。男はそれを受け取るなり鋭い目付きになった。


「魔人に何の用だ」

「俺の友達に浅野って魔人がいてな。そいつが現状行方不明なんだ」

「浅野……浅野 ユキか」

「知ってるのか?」


 浅野のことを知っているのなら丁度良い。それにこいつも敵というわけでもなさそうだしな。


「奴は俺の教育係だった。魔人の中でも最弱だったからな」

「そうなのか?」


 あれが最弱なのか……。しかし今の俺なら結構やれるかもしれないな。


「……身体能力だけは俺の方が上だ」

「お前って半分魔人で半分人間なんだろ? それなら浅野の方が上のように感じるんだがな」


 人間の身体能力は低い。残念ながら魔人のそれとは比べ物にならないほどに。


「でもまぁよかったよ。情報通りで」

「……悪いがお前が望む情報は提供出来るとは思えない」

「それでもいい。今は手探り状態で何も分かってない状態だからな」


 少しでも情報は欲しい。何かあるなら何でも知りたいのが現状だ。それにこいつは浅野を知っている。情報としては一番だろう。


「ひとまず落ち着ける場所に行かないか?」

「そうだね。ここは落ち着けそうにないしね」


 言いながら女性は青い魔法陣を展開、氷魔法で毒蛇を串刺しにしていた。確かに落ち着かないな。


「ルナ、頼む」

「はい」


 ルナは例によって土魔法を発動、地面を盛り上げて俺達を上へと上げる。


「どうしていきなり上に?」

「転移魔法が使えるようにな。ダンジョンってのは特殊な空間で転移魔法を崩す力があるらしいがここは森、上空は別なんだよ」

「そうなの……?」


 周知の事実ではなかったのか。こいつらも事情があるだろうしそれを含めて色々話を聞いてみよう。


「俺の家でいいか?」

「…………」

「そんな警戒しなくても……。別に悪い風にはしないっての」


 そもそも話をするんだ、相応のものは用意するつもりだ。見たところこの男は魔人の血が入っているので人間離れしているがこちらの女性は別だ。

 女性は確かに魔法が強いがそれくらい。恐らくルナの方が上だろうし特別な力を感じるわけでもない。

 対価とすればライジン装備とかか? あまり他者に渡すのもアレだがこいつらが人に受け入れられる可能性は限りなく少ない。

 だからこそ人を見つけてもまずは敵対してしまうのだろう。でもそれだからこそ他の奴らに渡る可能性が少ないわけだ。

 まぁ仮に他の奴らに渡ってしまっても俺がそれ以上に強いものを作ればいいだけの話だ。構わないか。


「そうだな……。お前は必要ないだろうがそっちの女が必要なものを渡そう」

「私が必要なもの?」

「……なぜお前がソルティアの必要なものを知っている」


 女性の名前はソルティアというらしい。まぁ後でこちらの自己紹介もしておいてこいつの名前も聞いておこう。


「ライジンって分かるか?」

「…………さぁな」

「雷属性の特級属性魔法だよ? 世界最弱の魔法って言われてるね」

「……最弱?」


 こいつはあまり魔法に詳しくないようだ。まぁ確かに魔人になってしまうくらいだ、何か俺の想像の付かない過去があるのだろう。


「最弱なのはアホみたいに魔力を消費するせいで数秒と持たずに魔力切れになるからだ。でも今俺が装備してるこいつは外気の魔力を使う。つまりノーリスクでライジンを使用出来るわけだ」

「…………ソルティア、こいつは何を言っているんだ?」


 えぇ……分かりやすく言ったつもりなのに理解出来てないっぽい。いや、そもそもそんなことが可能じゃないと思われてるわけか。


「何なら今試しに装備してみるか?」


 俺は鞄からライジン装備の呼びを取り出した。なんとなくルナと同じくらいなのでルナのと同じサイズである。


「あ、その前に身体強化魔法は使えるよな?」

「え、うん、使えるよ」

「流石に身体強化魔法使えないと身体ぶっ壊れるからな。はい、どうぞ」


 装備をその場に置いて距離を取る。まだ信用されてないしな、そういうのは時間が解決してくれるだろうけど。


「……ソルティア、危険だ」

「大丈夫だよ。それじゃあ試させてもらうね」


 ソルティアは遠慮なくライジン装備を装着して魔法を発動させる。ライジンライジンなので今俺達が装備しているそれと同等のものになるはずだ。


「確かにライジンだね。それじゃあ動いてみるね」


 迷いなくソルティアは動いてみせる。男と同等の速度を出すのでソルティア本人よりも男の方が驚いていた。


「おっとっと」


 流石に足場が狭過ぎたのだろう。ソルティアは落ちそうになるのをなんとかバランスを取っていた。しかしその表情はどこか満足げだった。


「どうだ? 話を聞かせてもらう代わりにそれをやろう。交換条件としては悪くないと思わないか?」

「うん、確かにこれは凄いね!」

「…………そうか」


 男は納得したように呟くと俺に向き直り頭を下げる。


「無礼をした」

「いや、別に気にしなくていいって。それでどうだ?」

「……そうだな。出来ればそちらの話も聞かせて欲しい」

「あぁ」


 話は決まった。よかった、平和的に終わってくれて。ソルティアが静止してくれなければ間違いなく争ってたな。感謝しかない。

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