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第22話 情報というのは裏の人間の方がよく持ってるものだったりする

「キャァァァァァァ!!」


 響き渡る悲鳴の声。それは街のすぐ手前。運悪く遭遇した魔物が女性に襲い掛かっていた。

 女性は冒険者ではなく一般人。故に抵抗する手段など持ち合わせていない。

 ライジンを使用して一気に距離を詰めるとその魔物の首を斬り裂いた。大量の血を吹き出した魔物はゆっくりと倒れ、魔力の粒子となって散っていく。


「あ、ありがとうございます……」

「……いや。それより聞きたいことがあるんだが」


 冷静に返してくれるだろうか? 死に掛けた後だ、あまり心が落ち着いていないかもしれない。だからこそ本音が聞けるとも言える。どっちだろうか。

 まぁ質問するだけだ。冷静に返してくれなくてもいいか。こちらには実害はない。


「魔人って言葉に聞き覚えはないか?」

「ま、魔人ですか? い、いえ……」


 魔人というのはあまり世間一般には知られていない存在らしい。おっさんは知っていたが、一般常識とは程遠いのだろう。


「じゃあ角が生えた目が黒い人、もしくは情報を知っていそうな奴に心当たりはないか?」

「いえ……すいません」

「そうか。仕方ないな、ひとまず街まで送ればそこからは大丈夫か?」

「は、はい!」


 女性を街まで送り届けると腕を組んで顎に手を当てて思案する。

 風邪が治った俺は現在ルナ達にも協力してもらい、分かれて情報収集している。一応念の為にチームは作っているが……。

 まず第一チームは俺のみ。多分アリシアが気を利かして1人にしてくれたんだろう。本当に世話になりっぱなしだ。ありがたい。

 次に第二チームはルナ、アスール、コウハのチーム。第三チームはアリシア、マオ、リルフェンのチームだ。

 当然リルフェンとマオはチームを組ませた。何言ってるのか分からなくなるからな。そしてアリシアとコウハは前衛なので分ける。ぱっと見見た目は人間であるルナとアリシアが人に聞けるようにと分けた結果がこれだ。

 現在時刻は10時過ぎ。一応17時に一度集合することになっている。

 仮に17時に来なかった場合は緊急事態だ。もっとも情報収集くらいでそんなことにはならないと思うが。

 あらかじめ担当の区画は決めてあるのでその辺りを重点的に探すことになるだろう。

 さて、俺は俺として残りの時間を情報収集に当てるわけだが……全く何もない。これは困った。

 街に何もなさそうだったので外に出てみればこれだ。本当にこの世界色々と残酷だな。

 こういう裏情報を一番持っているのは裏の人間。日本で言えば極道やらに値するようなその辺りの人間だ。

 しかし残念なことに俺はそれを知らない。加えてまずこの世界にはそういったものがあるのかも分からない。

 これはいよいよ詰んだか? そう思いながら街に戻ると手配書が見えた。


「あ」


 裏の人間に一番関わっていそうなのはこういう連中だ。手配書はギルド側が定めたものだ。

 例えば任務中に人を無作為に殺したなど、日本でも裁かれそうな罪を犯した人間のことを指す。

 こいつらを見つければ何か情報を得られるかもしれない。ついでに捕獲すれば金ももらえて一石二鳥。その分危険だが。

 回り道をすることも悪いことじゃないと気付いたからこそこうする。普段の俺なら間違いなく直接的な手段を探していたことだろう。

 魔人はあまり広く知れ渡ってはいないがこういう奴らは結構コロコロと情報が転がっているものだ。

 一応魔人に関しても聞いてみるが本題はそちらにさせてもらおう。

 ということで街に戻って情報収集を再開してみる。一番有力なのはまずはギルドだろうか。

 知らない街のギルドというのは何故こうも居心地が悪いのだろうか? まぁ悪いことしてるわけでもない。別に気にする必要もないと思うんだが。


「ちょっと聞きたいんだがいいか?」

「はい、何でしょう?」


 ギルド員に話し掛けると早速俺は本題に入った。ちょっと可愛らしい子だからとここでナンパとかはしない。というかルナ達には負ける。


「魔人、ってのに聞き覚えとかあるか?」

「魔人ですか? いえ……特には」


 残念ながらこちらは空振り。まぁ特徴だけでも伝えておくか。


「黒い瞳に角が生えた人間みたいな奴だ。知らないか?」

「いえ、申し訳ありません」


 まぁ魔人ってのが分かってなかったらもう半分諦めなんだけどな。


「それじゃあ指名手配されている中で場所が分かってる奴とかいるか?」

「指名手配ですか? 一名ございますが……」

「そいつの場所と特徴を教えてくれ」


 ギルド員がカウンターの下から紙を取り出した。手配書と依頼書だった。


「こちら、大量虐殺により指名手配されております。カイル・レイルという者です」

「お、おう……」


 かなり高額な懸賞金を掛けられた奴だった。ということは実力も相当なものなのだろう。

 依頼書には場所も書かれている。俺の区画内。なら問題はないな。

 どうやら妙な組織を立てており、その頭をしているらしい。お陰でほとんどの冒険者が返り討ちに遭っておりそのせいで懸賞金が上がっているということだった。


「…………」


 ちょっと危険だな。ひとまず様子見をして無理そうならルナ達を呼ぶ形で日を改めよう。


「んじゃその依頼受ける」

「お一人でですか?」

「まぁな」


 俺はポケットからステータスカードを取り出してギルド員に渡す。ギルド員はそれを見るなら大きく目を見開いた。


「俺なら問題ないだろ?」


 恐らくムイでも問題はないはずだ。でもまぁ俺の名前もなかなかに広まっているのだろう。

 魔人である浅野の耳にも入るくらいだ。そのくらいは安易に想像出来る。


「あ、あの」

「ん?」

「レベルが?になっているんですが……」

「あー、それな。100越えたか何か知らんが表示されないんだよ。気にしてないけど異常か?」


 驚くべきなのは魔物倒すだけでなくルナ達との戦闘訓練でもレベルが上がる。まぁ確かにこの世界のレベルの概念は少し特殊だ。妙に現実的な部分があるからな。

 しかし単純に考えればルナ達との訓練も充分に俺の経験になり得ている。魔物を倒せば経験値が、なんて方がおかしいのも頷ける。

 加えて人は慣れるものだ。俺も多分ライジンの速度に身体が強制的に慣れさせられているのだろう。たまにかなり物事がスローモーションに見える時がある。恐らくライジン使用時の情報処理能力がそのまま影響してきていると考えるのが普通だ。


「とりあえず俺なら受けても問題ないだろ?」

「は、はい、大丈夫です」


 ステータスカードを返してもらうとポケットに突っ込んだ。流石は身分証、なかなかに効力を発揮してくれる。


「さて……早速行くか」

「あ、あの!」

「ん?」


 早くに向かおうとした瞬間男の子に止められた。手には花束を持っており今にも泣きそうな悲しい顔をしている。


「その依頼……受けてくれるんですか?」

「あぁ、そのつもりだが……」


 この男の子はもしかして俺をずっと待っていたのだろうか? いや、正確には俺ではなくこの依頼そのものを受ける人を。


「お願いします……その人を捕まえてください……」


 何か訳ありのようだな。大方こいつに誰かを殺されたとかそういうことなのだろう。


「…………お前、家族は?」

「お父さんもお母さんも殺されて……お姉ちゃん1人……」


 殺されたのは両親ってことか。なるほど、確かにそれはこういう所で待っていることになるかもな。

 残された姉弟で健気に過ごすしかない。他に頼れる人がいなければの話だが。


「サイ!」


 男の子の面影を少し残しつつも可愛らしい女の子がやってくる。恐らくは先程言っていたこいつの姉だろう。


「こら! 迷惑掛けないの! 呼び止めてしまってすみません」

「いいや、別に構わない。安心しろ、今日中に片付けてやるよ」


 男の子の頭に優しく手を置くとそのまま歩き出す。様子見するつもりだったが作戦変更、組織は必ずぶっ壊す。

 まずはそこに向かう必要がある。こいつの為にもこの悪人は裁かれなくてはならない。

 もちろん俺個人が気に食わないタイプだというだけだ。この男の子の為にということではない。

 転移魔法陣を展開すると即座に近くの街まで移動してくる。場所は分かっているのだ直接乗り込むだけではあるが。


「…………」


 真正面からなんて馬鹿なことはしない。それで殺されてしまっては元も子もないからな。だからある程度作戦は考えよう。

 ひとまず重要なのは地形だ。まずどういった地形なのかを把握する必要がある。闇討ちするのもいいが時間が掛かるのは避けたい。

 ひとまず見晴らしの良いこの街で一番高い場所にでも行けばいいか。組織の本拠地は依頼書によると山の崖の洞窟らしい。いかにもという感じだが。

 一本道故に敵との衝突が避けられない地形だ。なかなかに厄介ではあるが仕方ない。

 最低限の戦闘で済むように誘き出したりしながら、というのが理想的だ。もっともそれ以下の相手にそんな回りくどい戦法を取る必要性はないが。

 何よりもスピード重視。一人一人に苦戦しているようじゃ時間も魔力も足りないからな。


「あ、こんなことしなくても直接聞けばいいのか」


 冒険者でありしかも俺は現状1人。その組織にとっては格好の的である。囮作戦で俺自身が囮になって下っ端を誘き出した方が早い。

 そうと決まれば早速行動に出るだけだ。指名手配犯でありかなりの高額な賞金首だ。これはこの世界の人間の力を改めて知るチャンスだろう。


「さて、やるか」


 俺は早速ライジンを使用しながら街の外を高速移動で駆け抜けた。

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