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第16話 実験は時に良い方へ転ぶこともある

「ここをこうするとこうなって……いや、魔力を通すには穴が必要だからここに開けるとして強度を上げる為に……」


 ぶつぶつと呟きながらどんどんと構造を頭の中でイメージしていく。ある程度必要な鋼材にも目星を付ける。

 良さそうな鋼材は既に本に付箋を貼りまくっている。色ごとにきちんとその性能も分けているので分かりやすい。

 本を片手に鋼材を片手に。実際に触ったり叩いたりして耐久度などを確認しながら構想を練るのが俺のやり方だ。


「ご主人様、大丈夫ですか?」

「ん? あぁ、大丈夫だが……どうした?」


 訪ねてきたルナが心配そうに俺を見つめる。何だろうか? 何か心配させるようなことあったか?


「いえ……浅野様のお顔を見ておりませんので」


 浅野の姿が見えなくなって数日。俺の方から家へ様子を見に行ったものの誰もいなかった。

 俺はあいつのことをまだあまり知らない。魔人というのもあいつがどう過ごしてきたかさえも。

 だからこちらからアクションを起こせないというのが現状だ。もどかしいものがある。


「…………何かあったのかもな」

「ご主人様……」


 俺が少し考え込んでいるとルナが優しく俺を後ろから抱き締めてくれる。胸の感触やら良い匂いがするが、それ以上に安心する程の包容力を感じる。


「ありがとな、ルナ。でも心配しなくても大丈夫だぞ」

「そう……ですか」

「あぁ。それより色々試したいから実戦訓練にでも行くか?」


 今悩んでいるのは腕に付けるリストバンド型の魔装備。風魔法で空を駆けることが出来るライジンにちなんでフウジンと名付けた。

 どうしても構造が決まらない。リストバンドにすると厚みがなく、強度が脆い。直接攻撃を受ける場所ではないがライジンなどと併用することを考えたり激しく動き回ることも考えるとそれなりの強度が必要なのだ。


「実験も兼ねて行きますか」

「は、はい。ご主人様がどういったものをお作りになられたのか楽しみです」


 そういやライジン装備見直すって誰にも言ってないな? きちんと出来てるのかは分からないが成功すれば驚くことだろう。ちょっと楽しみだ。

 全員で街の外へ向かうと何やらギャラリーが。いつのまにかこれも恒例になってきたっぽい。


「萩 刀夜がまた何かするらしいぜ!」

「どんなのだ!? すげぇ!」

「美人揃いだな! やっべ、興奮してきた」


 最後の奴、ぶち殺そう。絶対に。


「刀夜くん、それって新しいライジン?」

「あぁ、流石目ざといな」


 アリシアに一発で気付かれた。でもまぁ性能の向上性を見るとかなり違うのだろう。コントロール出来るのか心配だが……。


「ルナ、試しに大量に魔法を撃ってくれるか?」

「はい。かしこまりました」


 ルナに頼んで少し距離を取る。ライジンを使用する。

 まずは水魔法が発動し、ぐるぐると回転するようにしてエネルギーを生み出す。同時にその魔力がライジンへと吸収されていく。

 簡単に言えば水力発電による電気と魔法という異世界ならではのものと地球のものを融合させた形だ。

 もちろん発生した電気をもライジンは取り込むので更に出力を上げている。水は定期的に排出されるようになっておりかかと部分から射出して少しでも推進力の足しにしている。

 ライジンの出力が上がったからだろう。周囲のものがえらくスローモーションに見える。ヤバイなこれ。気持ち悪くなりそうだ。


「いきます!」


 ルナが声を掛け、大量の魔法陣を一気に展開してみせる。その展開する瞬間すら目視出来る。俺の予想と想像を遥かに超える出力になったようだ。

 少し横に移動しようとして一歩踏み出したその瞬間、ライジンの推進力でとんでもなく距離を取ってしまった。これ結構扱い難しい。


「あ、あれ!? ご、ご主人様どちらへ行ってしまいました!?」

「いや、こっち……」


 ルナが完全に俺を見失う程。つまり今の俺の速度は魔人のそれに引けを取らないってことか?

 ライジンにライジンを重ね、更に電力を取り込むとここまでになるのか。扱いが難点だが使い続ければ慣れる程度だ。これは成功だな。


「ひとまずこれで魔人の基本性能には劣らないと思う。力に関してはまた武器を強くするしかないわけだが……」


 これを応用すれば銃も作れそうだ。しかしこんな速度で銃は乱射出来ない。やはり中衛のルナが持つべきだろう。


「ひとまず魔法撃ち続けてみてくれ」

「は、はい!」


 ルナに頼んで更に魔法を増やしてもらう。俺は刀を創り出すと一気に駆け出した。

 ひとまず身体を慣らしながら飛んでくる魔法を斬り裂いて核を破壊する。散った魔力の粒子するスローモーションに見えて新鮮だ。

 魔法を避ける、斬り裂いて核を破壊するのを繰り返しながら一気にルナに近付いた。


「はい、確保」


 言いながらルナを抱き締める。戦闘中にこんなこと出来たら確かに余裕だよな。これで基本性能とか魔人ずるいな。


「ご主人様……♡」

「ちょっとルナさん……? そんな甘えた声で抱き付かれると観衆の目もあって恥ずかしいんだが」

「はっ!? す、すみません!」


 慌てたように顔を真っ赤にして離れるルナ。ちょっと寂しいとか思ってない。家に帰れば出来るしな。


「凄いわねそれ」

「おう。ライジンにライジンを重ねたものだ。ライジンライジンだな」

「その名前のセンスはどうなのかしら」


 駄目か。ライジンライジン、格好良いと思ったんだがな。


「刀夜殿、それも全部外気の魔力を使用しているのか?」

「あぁ。だから使用者は最低限身体強化魔法をな」


 身体強化魔法があればライジンに耐えられる。そしてライジンに耐えられれば更に上のライジンに耐えられる。どれか一つでも欠ければ終わりそうだな。


「流石だ……」

「そんなに褒めても同じのしか出ないぞ?」

「既に人数分用意してるのが刀夜さんよね……」


 こういうのは早い方が良い。どうせ徹夜して暇だったしな。他の装備の構造を考える片手間に作っただけだ。データは多いに越したことはないしな。


「しかしこれ……」

「どうかなさいましたか?」

「あぁ。胸が弾む。だから女性陣は危険だな……」


 こんなに激しく動いたらそれはもう激しく揺れることだろう。特にルナが。


「そんなことまで考慮していただかなくても……」

「揺れる胸を見れるのはいいが見られるのはないな。まぁ敵対した奴は必ずぶち殺すのは確定としてどうやって抑えるか」

「ルナちゃん、この子の私欲だから気にしなくて良さそうよ?」


 ん? そもそも俺はそういうの気にしながら作ってるんだが。デザインも黒色で良いよな?


「ちゃんと色もあるから好きなの取ればいいんだが」

「刀夜さんって見た目も結構重視するわよね?」

「当たり前だろ。俺が個人で使うならまだしもお前らが使うんだから」


 やはり女の子には可愛いものや格好良いものをな。俺も見ていて眼福だし。


「と、刀夜さんが珍しく乙女心を分かっているわ!?」

「…………明日は雨」

「酷いなお前ら……」


 俺が乙女心が分かったからってそんなに言います? 確かに俺はそういうのに疎いのは認めるが。驚かれる程か?


「可愛いデザインで良いではないか。みんなもその方が好きだろう? 刀夜殿がせっかく考えて作ってくれているんだ。ありがたく使わせてもらうべきだろう」

「コウハ! 分かってくれるか!」

「うむ! 刀夜殿は多少鈍いところもあるけど可愛いからな!」

「いや、全然分かってないな……」


 俺が可愛くなったところで意味ないんだよ……。そもそも俺が使うならこんな外観気にしない。適当に強度重視で作る。


「刀夜くん、浅野さんのことは……」

「…………」


 俺のこれが浅野が行方不明であることに対しての気の紛らわせ方だと思われているんだろうか?


「ちょ、アリシアちゃん! そこに触れたら……!」


 何だ、全員気遣ってたのか。浅野のことになるとこいつら神経過敏になり過ぎじゃないか? まぁ多分俺が夢を見て泣いていたのが原因なのだろうが。


「気にしなくていい。こちらから出来ることは何もないんだ、もどかしいが仕方ない」


 多分あいつにも何か事情があって俺達に近付けないのだろう。それがやはりこいつらを殺す選択を取っているのか、それとも誰かに操られているのか。

 考えられる可能性が多過ぎて絞ることは出来ない。俺個人としては敵対しない未来を望むがそう上手くも行くかは未来になってからでないと分からないのだから。

 浅野を……いや、魔人という種を作ったのは誰なのか。異世界転生や異世界転移をすることが条件なのか、それとも何か要因があってそうなっているのか分からない。


「…………」


 しかしだ。人が魔物になるというのは何か意図的なものがあるような気がする。魔物というのはそもそも魔力核から生まれる生命体だ。人間のそれとは身体の構造が大きく違う。

 浅野の身体は明らかに異常だ。元は人間ベースでもあり得ない速度を出し、その負荷に耐えられるだけの身体をしている。

 例えば有翼種はどうだろうか? 有翼種は出生率が著しく低い。理由は人間という身体に魔物の身体が完全に合わないからだ。

 子供が出来たとしても高確率で魔物の身体に耐え切れずに死ぬ。そういう意味では適合しているアスールはとんでもない奇跡を起こしていることになるわけだが。

 そんな確率を偶然で片付け、それを3人も創り出したというのがあまりにもおかしな話だ。

 もし魔人の創造主というのがいるのならそいつは間違いなくこの世界においての敵だ。魔人を使って何かをしようとしている。黙認は出来ない。

 今は3人だと言っていてもこれから増える可能性もある。そうなれば人類などあっという間に淘汰されることだろう。

 思えばあいつは魔人のことに関しては一切話していない。自分のことを分かって欲しいという思いは感じ取れたというのに。

 ということは何かしら口外出来ないようになっているのかもしれない。魂を縛り付けられているだけの何かである可能性があるわけだ。


「…………全部憶測か」

「ご主人様?」


 憶測で考え過ぎるのはやめておこう。ひとまず何も出来ないのなら準備だけでも整えておきたい。


「残りの武器も急いで作る。ひとまず帰るか」


 とりあえずは準備を急ぎたい。しばらくはイチャイチャも控えないとな。


「…………ルナ」

「は、はい、何ですか?」

「夜食頼む」


 転移魔法陣を展開しようとしていたルナに声を掛ける。こいつは何でも自分でしようとする。さっきので魔力使ったのにまだ消費しようとするかね普通。

 まぁそれがルナの良いところでもあるんだが。とりあえず代わりに俺が転移魔法陣を展開しておく。


「かしこまりました」

「んじゃ帰るぞ」


 俺達はそのまま転移魔法陣で家へと戻った。さてと……作業始めますか!

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