第13話 いつもの日常の中、感じる違和感 は気にしたり気にしなかったりする
ギルドへの報告は既にムイとおっさんが済ませてくれていたらしい。大変ありがたい話だがおっさんには素直に礼を言うのはどうなんだろうか?
とまぁそういう心情を持ちながら俺はベッドでだらだらと時を過ごしていた。
浅野は今寝ているのだろうか。もう夜中だし寝てるんだろうな。
「刀夜…殿?」
「ん?」
いきなりコウハに名前を呼ばれる。全員で寝ているせいでかなりギュウギュウだ。そして案の定眠れない。
こいつらを不安にさせたせいかここ最近はずっとこの調子だ。おかげでエッチも捗り過ぎてて色々持たない。
今も全く眠れないしな。心臓がやかましい。
「どうして……泣いているんだ?」
泣い……てる? 頬に触れると確かに俺の目から涙が出ていた。全く気付かなかった。
「だ、大丈夫か!?」
「しーっ、みんな寝てんだろ?」
流石に起こすのは申し訳ないしな。
「その……大丈夫なのか?」
「あぁ。欠伸してただけだ」
「そ、そうなのか」
どうやら納得してくれたらしい。まぁ俺もなんで涙が出たのか分からないしな。昔のことを思い出していたからだろうか?
「でも……刀夜殿はこういう時自分のことを隠すからやっぱり駄目だ」
「いや、何がだ?」
涙を拭っていると何故か駄目だという判断をされたらしい。何が駄目なのかよく分からん。
「刀夜殿、そういう時くらい甘えてくれ」
「え」
コウハは少し辛そうな表情を浮かべて俺の背中に手を回す。そのまま胸に抱きとめてくれた。
「こ、コウハ?」
「刀夜殿が辛いと私も辛くなる。我慢しないで欲しい」
我慢……はしてないつもりなんだがな。まぁコウハがそう感じてしまったのならそうなのかもしれない。
俺は自分の気持ちについて全く分からない時がある。多分、だからこそ平気で人を殺せるし自分の命も平気で捨てられる。
「まぁコウハの胸に顔を埋められるならなんでもいいか」
「そ、そんな邪な理由だったのか!?」
「ん? 嫌か? 離れた方がいいか?」
「…………」
そこで黙るということはさては嫌ではないな? でも認めるのも恥ずかしいと。なんて可愛い奴。
「お前は可愛いな」
「なっ!? いきなり何を言うんだ!?」
「だからしーっ! 起きちゃうだろ?」
あんまり恥ずかしがらせたら駄目だな。でも実際可愛いから仕方ない。
「それに可愛さで言ったら刀夜殿の方が上だろう?」
「お前こそ何言ってんだ?」
俺が可愛いわけないだろ。というかどちらかというと浅野に当てはまる気がする。童顔だし身長低めだし。
「こうして甘えてくれるのも可愛い♡」
「おいおい、そんなこと言うなら胸揉むぞ?」
「うむ、いいぞ?」
まさかの了承である。というか普通にいいのか? マジで?
「触りたいのだろう? 私もその……触って欲しい」
少し頬を染めたコウハの可愛らしいおねだり。なんという破壊力! というかこの状況でこのタイミングでそんなこと言うなんて大胆な!
「それじゃあ遠慮なく」
「んぁ! と、刀夜殿……いきなり強く揉まないで欲しい」
「え、わ、悪い」
興奮し過ぎて強く揉んでしまった。それにしても今日のコウハは少しおかしい。
「刀夜殿……」
「コウハ……」
でもエロいから問題なし。俺達は熱いキスを交わす。そのままコウハの服に手を掛けて……。
「んあ…………?」
目を開けると見慣れた顔が間近にあった。えっと……あんなに幸せだったのにまさか……夢?
「あの……刀夜殿…………」
「ん? 何だコウハか。どうした?」
見慣れた顔はコウハだった。さっき胸を揉んでいたせいで少し気まずい。
「あの……寝惚けていたから怒りはしないんだけど……。その……手が胸を揉んでいるんだけど……」
「へ?」
まさか夢の影響で? 現実でも同じことをしていたとは。
「ふむ……」
「なんで更に揉むんだ!? んぅ……! と、刀夜殿!」
「駄目か?」
「駄目だ!」
夢のようには行かないらしい。くそ、やはり俺の願望が入っちまってたか!
「そ、そんなに触りたいならよ、夜に頼む……」
「え、夜?」
夜ならいいのかよ。というか今何時だ? 夜だと思ってたけど外みたら明るいなおい。
「もう昼だぞ?」
「マジですか?」
「うむ。もうお昼ご飯も食べた後だ」
そんな時間まで寝てたのか。まぁあんな時間まで起きてりゃそうなるか。でも気持ち良かったな、6P。
「ふぁぁ〜…………」
「ふふ、大きな欠伸だ。それよりお腹空いているだろう? ルナ殿が軽食を用意してくれてるはずだ」
「おう……助かる……」
流石に腹減ったな。軽食があるならありがたくいただこう。
「そういやなんでお前は俺の部屋に?」
「刀夜殿の寝顔を見に来ただけだ。何故か胸を揉まれてしまったが……」
「それは悪かった。寝惚けてただけだ」
本当はもっと触りたかったんだがな。まぁ夜まで我慢しよ。夜なら了承は得たしな。
居間へとやって来ると全員既に揃っていた。まぁ全員同じベッドで寝たわけだしベッドにいなけりゃそりゃいるよな。
「おはようございますご主人様」
「あぁ、おはよう。といってももう昼なんだろ?」
「そうですね。おにぎりを作っていますのでお持ちしますね」
「頼む」
ルナはなんと優しいことか。昼まで寝てたのに何のお咎めもないなんて。
「おはよう刀夜くん。ふふ、寝癖立ってるよ?」
アリシアが顔を覗き込んできてくすりと微笑む。これも夢なんじゃというくらいに平和な光景だな。
アリシアが俺の髪を優しく撫でて寝癖を整えてくれる。
「ありがとな」
「ううん、私がしたくてしたことだから」
しかし何やら今日はいつも以上に全員優しいような気がするが。いや、普段から俺にダダ甘なのは分かってるんだが。
「…………刀夜、こっち」
「え、お、おう」
アスールに腕を引っ張られ、ソファに座らされる。俺何かしたっけ? むしろしちまったから全員を姉と呼んだんじゃなかったっけ?
ソファに座ると隣に座ったアスールが抱きついてくる。更にはアリシアも反対側の俺の隣に座ると抱きついてくる。
「結局俺食べれなくね?」
「それは心配しなくていいよ」
「え?」
アリシアが何やらにっこりと告げる。心配しなくていいって何だ?
ルナがお皿に入れたおにぎりを持ってくるとその隣にいたマオが手に取った。
「お前が食うのか……?」
やっぱり何か怒ってる? 腹減ってるのに目の前で食われるのか?
「何を惚けているの? あーんしなさい」
「え、何だそれ。1人で食えるって」
「駄目よ、あーんしなさい」
強制らしい。何でこんなことに……。しかも全員微笑ましげだし。
やっぱりなんか全員違和感があるな。普段通りと言われればそうとも取れるような気がするが。こう、違和感がある。いつもより優しいというか。
とりあえずマオにあーんしてもらっておにぎりを食べる。うん、美味い。
「どう?」
「美味いけど……それより何これ?」
「昨日刀夜さんが全員をお兄ちゃんって呼ばせるなんて言っていたでしょう? けれど可愛い刀夜さんを兄なんて呼びたくないもの」
何だその理由。というか誰が可愛いだ、誰が。
「代わりにご奉仕しようと思って。私もご主人様って呼んだ方が良いかしら♡」
「そんな!? 私のアイデンティティが!?」
アイデンティティだったのかそれ。まぁ確かに唯一のメイド感だったもんな。しかしマオがメイドか……似合わねぇな。
「女王様の方が似合いそうだけどな」
「今の状況でそんなことを言ってもいいのかしら?」
え? あ、そういえば今両手塞がってるんでした。あれ? ということはこのままあーんは継続されるわけだから……。
「ふふ……あなたの望む女王様よ♡」
「すまん、俺はドMじゃないんだが」
そもそもそんな素振り見せたこともないんだが?
「なら調教してあげるわよ♡」
「アリシア、助けてくれ」
俺にはこの女王様を止められる気がしない。
「こらマオさん? 本来の目的忘れてるよ?」
「あら、そうだったわね。刀夜さんを喜ばせるつもりだったのだけれど」
何故そうなるのだろうか? お兄ちゃんなんて冗談に決まってるのにな。アスールは本当に言ってきたけど。
「あのなぁ、別に冗談だったんだから真に受けなくてもいいんだぞ?」
「自分の言葉には責任を持ちなさい。はい、あーん……」
そんな使われ方するとは思わなかった。それって悪いことした時に言うことじゃないのか?
まぁこいつらがそうしたいというのなら俺も受け入れるけど。でも何となく違和感があるからやめて欲しいような気もする。
この違和感の正体がよく分からないがとりあえずそれとなく聞き出してみるか。俺にそんなコミュニケーション能力は備わってないけどな。




